東方紅邪譚   作:東へ旅立つ

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第六話(裏) : 紅視点

「あんな無茶な約束しやがって・・・!」

 

 

魔理沙が紅に詰め寄る。もちろん紅は焦ったような表情をするが、なんとか魔理沙を宥める。橙とにとりも心配そうな表情で見つめるが、紅は心が痛むのをグッとこらえて案を出した。

 

 

「俺は敢えて『撮った写真を使ってもいい』って言いました・・・それはつまり、写真映りが悪ければ意味が無いんです。」

「なんだと?」

 

 

魔理沙は動きが止まる。一見とんでもなくヤバい提案をした紅が、もしかしたらあれだけの対価を提示するだけの考えがあるのかもしれないと興味を持った。

 

 

「まず俺は・・・このダンマクシューターが六発しかない事を強調します。」

 

 

◇◇◇◆◆◆◇◇◇

 

 

作戦を練り終わった紅達は、頭の中で何度もシミュレーションし、にとりの合図と共に弾幕ごっこが始まった。

 

 

<これは私からのアドバイスだが、アイツは初っ端から突っ込んでくるぜ。だから橙、絶対に速攻で間に入って守れよ?>

 

 

魔理沙の助言通り、弾幕が一切展開されていない初手に突っ込んできた。

 

 

(本当に来た! やっぱりこのスペルで正解だった・・・!)

 

 

「星符『飛び重ね鱗』!!」

 

 

紅と文の間に割って入るという条件であれば、移動と同時に弾幕を展開する『飛び重ね鱗』はまさに的確なスペルだった。

 

 

<そしたら多分橙さんを集中的に狙うと思います・・・なんとかしないと俺を撮るのが難しいですし・・・>

 

 

(完全に橙さんの方を見てる・・・!! あとは俺が・・・)

 

 

橙の方に視線が向かったのを確認し、狙いを定めて引き金を引いた。しかし初の実戦に加え練習と違って片手撃ち、更には左の背中を痛めている。

 

 

「いっ・・・!?」

「大丈夫か?!」

「は、はい・・・」

 

 

しかしそれがかえって文からしてみれば躱しにくくなっていたのは紅は気づいていない。

 

 

<そうなりゃ確かに私に近付く利点もないし、距離を置いて時間を稼ぐかもしれないな・・・>

<それはある意味助かります・・・俺も目が追いついてないので・・・>

 

 

橙が挑発に乗り、魔理沙から少しづつ引き離されてしまうが、時間稼ぎをしている以上写真を撮られる事もなく、彼女の動きを観察できるチャンスでもある。

 

そして橙のスペルカードも終わりを迎える。

 

 

<あの天狗の速さに追いつくなら・・・スペルは必須だよ・・・>

<なら、私のスペル発動中を狙うだろうな・・・橙は連続で使えるか?>

<・・・あ、あの・・・同時って、厳しいですか・・・?>

 

 

魔理沙がスペルカード、『ミルキーウェイ』を発動する。そのタイミングに合わせて橙は魔理沙達の元へ戻り、妖力を練り上げる。

 

 

<魔理沙さんが発動すれば、間違いなく俺を狙いに来ます・・・でも来るのは必ず俺達の左手側からです・・・!>

 

 

密着姿勢を取るために、紅は必ず顔をどちらかに向けている。それを今回は意図して左側にしていた。

 

弾幕の隙間を抜けてくるとしても左手側と分かっていれば、予め構えておく事もできる。

 

 

(音を聞くんだ・・・文さんは速いから、小さくても必ず風の音が聞こえる・・・・・・ッ! 来てるっ!!)

 

 

紅はその微弱な音を頼りにある程度予想をつけて構え、黒い影が見えた瞬間に引き金を引いた。紅の予想通り、文は左手側から来た。

 

 

(シャッターを切った・・・!! 橙さん、お願いします・・・!!)

 

 

<いいか、タイミングを少し遅らせろよ? それで文の虚を衝いてやるぜ!>

 

 

「化猫『橙』ッ!!」

「なっ・・・?!」

 

 

<あと、無闇に弾幕は展開しなくていい。お互いに手加減して、動きだけを制限するぜ!>

 

 

ルール上、絶対に回避不能であってはならない為、橙と魔理沙・・・特に魔理沙は加減をかなり考えて展開する。

 

超速で背後から狙い、両脇は魔理沙の星型弾幕で塞ぐ。

 

 

<動きが制限できたら・・・俺がやります・・・!>

 

 

魔理沙のミルキーウェイの回転する渦に合わせて文も動き、紅はダンマクシューターを構えて引き金を引く。

 

可動域の狭い空間内で器用に躱す文を見て、単発では当てるのさえ難しいと改めて実感させられる。

 

しかし確実に惜しかったのは事実。

 

 

(痛みは今は忘れるんだッ・・・! 腕が壊れても撃って当てないとッ!!)

 

 

今度は二発連続で放つ。いや、本当はもっと連発したかったところだが、完治していない左腕では二発が限界だったのだ。

 

 

しかしそこで橙が即興で背後から攻撃を当てに行く。それはかなり惜しく感じられ、魔理沙も悔しそうな表情を浮かべる。

 

だがそれにより姿勢が崩れたのは好機、紅は残りの弾を全て撃ち切った。

 

 

文の器用な回避により命中とはいかなかったが本当の狙いはここからだった。

 

魔理沙のスペルカードが終了し、展開されていた弾幕は消える。

 

 

<弾が無い事を見せつけます・・・だから、隙を見て力をこれに込めてくれませんか・・・?>

<じゃあその隙を私が作るよ!>

 

 

(写真を撮らせない事は絶対・・・! ついでに当たってよもう!)

 

 

文がカメラに手を添えたのを見て橙は超速で文に距離を詰め、攻撃を仕掛けつつ、紅を庇う。

 

 

「魔理沙さんっ・・・!」

「あぁ、これでいいか?」

 

 

魔理沙の後ろで弾倉に触れてもらい、文から見えないように魔力を込める。そして装填して最後の作戦に出る。

 

 

(俺が見るのはやっぱり・・・左手側だっ!!)

 

 

まだ文が動き始める前から左手側に銃を構える。しかし、想像以上に速く、反射神経でどうにかなるものでもないレベルだった。

 

 

その刹那、紅の脳内には何の思考すらない。ただ考える前に、引き金を引いた。

 

 

カシャッとシャッターが切られた音が聞こえる。

 

 

(と、撮られた・・・?! いや、分からない・・・でも、撮られたかもしれないなら・・・!!)

 

 

紅は魔理沙の腰に回していた手を離した。身体が浮くような感覚、全身が何かに触れているという感覚が無いという摩訶不思議な体験。

 

そして、そのまま引っ張られるように地面目掛けて落下していった。

 

 

(下は川のはずッ・・・!! 最悪水に落ちればッ・・・!! で、でもっ・・・!!)

 

 

怖い

 

 

走馬灯なのか、紅はやけにゆっくりと時間が流れるように感じた。風景が止まって見える。色々な思考が脳を過ぎる。

 

そして、その広がる視界の先に、急速に接近する文の姿が見えた。

 

 

(・・・ごめんなさい。文さんの優しさを・・・利用してしまって・・・)

 

 

しかし、そうでもしなければ勝つ事はできなかった。自分の命を守る為に、自分の命を賭ける・・・これでようやく対等なのだ。

 

 

非情になる。そして、文には当てないように引き金を引いた。

 

勝利を祝う祝砲のように、星型の弾が空に舞っていった。

 

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