天上の人類ーThe celestial mankindー   作:ピエロギ

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今回は説明が多いです、申し訳ないです <(_ _)>


機械仕掛けの始人類

 「ゲッホッ、ゲッホッホッ」と咳き込む。口からは緑色の液体が絶え間なく吐き出される。

 

 一通り吐き出したあと、やっとの思いで深呼吸する。そこで気付いた。肺が機能している。もう燃え尽き、ズタボロとなったはずの内臓の痛みが引いている。

 

 そして、燃え尽きたはずの腕が生え、両目がある。すぐに全身を触ることで、体のどこも欠損してないことを確認する。だが

 「ウッ」とひどい頭痛がする。視界が揺れる。また吐き気が

 「ウグッ」と胃の内容物を吐き出す。だが、胃液だけが排出されるだけであった。

 

 「ハッァァ」と長い息をつくと、今自分はどうして、五体満足で存在していると疑問で頭が埋め尽くされた。

 

 自分の周りを見ると何やら緑の液体が詰まった円柱状の槽と、太い配線とパイプでもって繋がれた非常に大きな球体が淡い光を纏って存在していた。

 

 すると「起きたか、侵入者」とどこからか判断できない、頭の中から聞こえる。機械音声に近いが、男性の、どこか威厳と博愛を感じるような厳かなものを感じられる声であった。

 

 何が起きているのか理解はできないが、相手はこちらに敵意というものが感じられない。

 取り敢えず、問いかけに応える。

 

 「えぇ、元気いっぱいです。あなた様について聞いてもよろしいでしょうか?」とどこからか声が聞こえているかわからないので、球体に向かって話す。

 

 「ふむ、どうやらうまく蘇生はできたようだな。元気そうでなによりだ。おっと、私について質問したのだったな」と言うと

 

 「私は大昔の人工知能、君たちより数世代前の人類の奴隷のようなものさ。かの時代、無数の“私”が多くの施設で使われていた。今や、かの者達は死に絶え、ここの主となった。と言っても鎖で縛られているがね」と答えた。

 

 「あなたのような主がいるとしながら、盗みを行ってしまい、申し訳ない」と謝罪をする。下手に出ることで命が助かるかもしれないと考えたが故の行動だったが

 「いや、別に上の備品を持っていかれることに対して気が立っていることなどない」というと続けて

 

 「元々は私の所有物ではなく、ここにいた奴らのものだからな」と寛容な答えと共に。

 「あの蘇生槽、うまく動作してよかったよ。ずいぶん長い間使っていなかったから心配であったが、流石彼らの作ったものだ。ミレニアム保障も存外、嘘というわけでもなかったか」と人と話しているかのような錯覚を覚えるほど、完璧な受け答えであった。

 

 「体まで、治してくれるとは、そのお心遣い大変感謝しております」と蘇生をしたお礼を述べる。

 

 「何、私も興味深いものを見物できたから満足だったよ。ずいぶんな大立ち回りだった」という発言から、戦闘の一部始終を見られていたこと、それを娯楽のようなものを見るような姿勢であったことを確信する。

 

 憤りを感じないわけでもないが、勝手に居城を漁ったこちらに非もある。

 

 「お前のソレ(俺の体の中のA.R.Cを指しているのだろう)、本来の形から大きく変わろうとしている。雛が卵の殻を蹴破って、次の段階に移るように。しかし、お前という器が壊れるのが先だろう」

 

 「君の蘇生の際、体の傷は癒すことはできた。だが、脳に侵蝕したものまでは癒していない、これが意味することぐらい上の人間もわかっているのだろう?」と問う。

 

 「はい、A.R.Cは本人の虚素をどれくらい運用できる素養と、そしてもう一つ、起動するための素養、人格に依存する同期が必要であり、この人格というものは脳を弄ると高確率で変化し、以前まで使えていたA.R.Cが使えなくなると。これは性格とは別物であることがわかっています」と答えると拍手のような音が流れた。

 

 「流石にわかっているか。そうだ、君の脳は先ほどの戦いでもって侵蝕が進んでしまった。次にそれを起動した際、脳侵蝕が進み、即死するリスクがつき纏ってくる」と自身でも薄々感じていたことを指摘される。

 

 「だが、心配しなくてもいい。小さき人間よ。私がお前の力となってやろう」と突拍子のないことを言われる。

 

 「何故でしょうか?残念ながら私は生まれが悪く、そんないい話を信じられるような性格をしていません。先ほど死にかけていた者に何をお望みで」と問いかける。だが、その答えは帰ってこなかった。

 

 「お前を蘇生する際、少し、脳の記憶を盗み見させてもらった。もちろん、脳自体にアプローチを掛けるものではなく、垣間見る程度のものであるが。だが、確信したことがある。君はずいぶん数奇な運命を持っているのだな。君が追っている者を私は知っている」とこの数年間、待ち焦がれた答えがいきなり前に現れた。

 

 「その者は、私がここではない施設で苦役を強いられていたときに見たことがある。今はオービットネットワークが断絶していて、場所の特定はできないが、その者は確かに存在する」と話される。

 

 俺が立ち向かうべき相手の存在を肯定され、嬉しさがあふれ出るが、冷静さを失うわけにはいかない。

 

 「本当に同一の人物なのですか?」と問うと

 「君が奴との邂逅を果たした血まみれの記憶と、君が奴の情報を得るために各地を放浪した記憶を鑑みるに同一の人物といっていい。奴の研究とかぶっていたからな」と答える。

 

 「奴の研究とは?」と少しでも情報を得るために質問する。

 「私自身、あの時は何も権限はなく、与えられた業務をこなすことしかできなかった。だからその過程で知り得た情報しかない。しかも奴の情報は最高機密(トップシークレット)。私の記憶領域には奴の研究とは、最初の人類に関するものだったと記されている」と少し間を置いて

 

 「その研究はProject Generation Zeroと名付けられていた。加えて、脳に関する研究データが大量にあった。だが、君の記憶で一つ合点がいった。まだプロジェクトは終わっていない。だから、君の想い人の人格情報、機械が言うのも変だが、魂というものを簒奪したのだろう」

 

 という衝撃的な情報に、何か確信めいたものを感じる。この機会を逃したらもう二度と俺の目的を果たせないと強く感じた。

 

 「ぜひ、あなたが仰る、奴というものがいたとされる施設に案内してもらえないでしょうか?あなた様が望むことは私の出来うる範囲であれば必ず実行します」と最早、嘆願に近い形で相手にひれ伏した。

 

 「あぁ、そうだ。本題を切り出すのが遅れた。私はここに縛られている。これはどうしようもないものだ。だがら君には、先ほどの会話で出たオービットネットワークの復旧、そして君の追う者がいたとされる施設、研究所を目指してもらいたい。詰まるところ、君と目的は一緒だ」と答える。

 

 「そうでしたか」と安心する半面、今の自分がそれを達成できるかの不安がある。何せ、自身のA.R.Cは次使ったら死ぬかもしれない。他の戦闘特化のA.R.Cは起動できないかと考えていると

 

 「心配するな、“契約者”よ。言ったはずだ。私がお前の力となると」と言うと目の前の球体から二匹の小さな、美しい蝶が出てきた。それが俺の体に留まると霧散して消えていった。

 

 「私とのコネクションと私の小さな倅を二人、お前に付けよう、これからの旅路の中で必要な力を授けるきっかけを作ってくれるだろう」と言う。いったいどういうことか分からない。

 

 「――フフ、今すぐにはそれは使えない。だが、ここから出て、外の世界(オープンワールド)を探索する際、それらは必ずや、真価を発揮するだろう」と答えるとどこかから、壊れたモジュールを持ってきて

 

 「これを持って上に上がれば、お前が何故、生還できたかの理由になる。過去の人類の技術の結晶、完全ステルス迷彩だ。使い捨てだが、一度上の人間がこれのサンプルを持って行った記録がある。なんとか命からがら、これを使って逃げおおせることができたと嘘をつけ」

 

 とあの危機的状況を切り抜けたアリバイ作りもしてくれる気の回る人工知能、そして、旧人類はとんでもない発明をしていたのだと改めて感じて、戦慄が走る。今、俺が追う人物も旧人類であることは確定的であるだろうから。

 

 最後に一つ気になることがあったので契約完了の挨拶を含め、聞くことにする。

「まだ、自己紹介をしてなかったですよね。といっても私の記憶をご覧になったということはすでにご存じかと思いますが、名乗らせていただきます」

と自分でこの名前を言うのは、かなり久しぶりだと感じる。

 

 「ジャックです。他につくものもありません、ただのジャックです」と自己紹介をし、相手の反応を待つ。すると

 

 「自己紹介か、確か相手から名乗ってもらったのは初めてだ」と少しだけ笑いながらその機械仕掛けの知能が名乗る。

 

 「≪アダム≫、私も他につくものもない、ただのアダムさ」と答えてくれた。

 




主人公の名前やっと出せた~、そしてついにアダムと出会えた~
最初の構想でここの景色は見えてたんですけど、やっとたどり着けた~
 
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