天上の人類ーThe celestial mankindー   作:ピエロギ

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聴取と打ち上げ

 「それじゃ、座れ」と目の前の兵士、あの時、エレベーター前で引き留めた上級兵士に言われた。

 

 「ミーム汚染と生物汚染検査でお前はなんにも暴露してないことはわかっているからな」

 「あ、ありがとうございます」と疲れた様子を隠すことができない返事をしてしまった。

 

 エレベーターの扉が開いた瞬間に、大量のガスマスクを着けた兵士たちに囲まれ、

「動くな、喋った瞬間殺すぞ」と殺気が入った忠告をされた。

 

 すぐに黄色のバイオスーツを着た兵士がやってきて、消毒液だろう液体を大量にぶっかけられた後、手と口に拘束具を付けられ、ロビーの奥の方へ連れていかれた。

 

 採血やレントゲン検査のようなものから、決まった文字列や絵を見る検査や様々な発光体を連続的に見るなどして計測する検査を終えて、今は取り調べ室にいる。

 

 「また会えて嬉しいよ、ルーキー。エレベーターからお前を見たときは階下の化け物がお前に寄生してきたのかと思ったが、生きて戻ってくるなんて大した奴め」

 「良かったです。蜂の巣にされなくて」と安堵したことを伝える。

 

 「まぁ、悪いと思うが緊急プロトコル後の階下の変化ってのは全部判明してないからな。こっちは外に出たらまずい生物兵器系や精神汚染系の検査設備を揃えて対策してるんだ。因みに検査費は報酬から天引きだから、そこら辺はよろしく」

 

 「了解です」と答える。バックアップをしてくれる所の依頼は、天引きされることは珍しくない。有無を言わさず殺されなかったことだけでも温情だ。

 

 「それと、お前は報告義務もある。緊急プロトコル後に起こった出来事を話してもらうぞ。といっても、お前が持ってきたあのモジュールからだいたい予想できるが」

 「はい、分かりました」と言ってあの時、緊急プロトコル後のことに話す。

 

 「緊急プロトコルが作動した後に、廊下が大きく移動しました。そして動きが止まったときは廊下から大きな部屋と変化していました。そこには、セキュリティカードが必要なクレートが置いてあり、死んだジャガーノートの中にあったセキュリティカードを使って開けた結果、あのモジュールがありました」

 

 「ふむ、どうやって起動させた?」

 「モジュール上部を捻って引っ張ると内部から電気のようなものが流れ、体が透明化していました」

 

 「お前が持っていた銃や防具はどうした?」

 本当は、全部燃えてしまった。今着ているアンダーウェアはアダムが着ていたもの再生してくれたものだ。

 

 「極力、軽装になるため捨ててきました。もうあの状況では戦うことは死に繋がると判断し、透明化がどれくらい長く持続するか分かりませんでしたので、少しでも効果が長続きするよう、透明化するものが少ないほうがいいと考え、装備を捨て、逃げることに注力しました」と整合性を考え、答える。

 

 「なかなか、いい所に目を付けたな。確か、アレは使用制限があったはずだ」

 「えぇ、エレベーターホールを見つけた頃にはもう自壊して動作しなかったです」

 「過去の遺物のいくつかは、敵に鹵獲されないよう使用限度か使用時間が一定以上たった後に自壊するよう設定されているものもあるからな」と説明された。

 

 そのあと、階下で見たものについて聞かれた。アダム以外のことは洗いざらい話す。都市を統括する都市企業統括省の“絶対規則”においてアダムのようなAIの存在を許さないといったものがあるからだ。

 

 それに、俺自身に秘密を守るためでもある。

 

 最後に

 「今回は運が良かったな、過去、このバンカーを発見した頃にGHの先遣部隊が緊急プロトコルに巻き込まれて全滅している。それがあってから無人機を使って調査をしているんだが、すぐに通信不良になって…」と話していると、取り調べ室のアナウンスで

 

 「主任、それ以上は上にガチで怒られますよ」と若い男性の声が流れた。

 「おっと、口が滑っちまった。まぁ、この後帰ったらGHのオフィスに寄っておいてくれ、聴取と報酬について話されると思う」と言われるとついに長い尋問が終わった。

 

 部屋を出るとエレノア、ライと負傷していた彼らの仲間たち、そしてレオが待っていた。

 「悪いな、心配させた」と咄嗟に言葉が出た。

 「今回ばかりは本当にヤバいとおもったぜ、また俺のせいで…」と涙ぐみながら言葉を紡いでいた。

 

 「あの時の救助に行く選択は間違いじゃなかった。でも、そんなに気に病んでるんだったら、今度はお前のおごりで飲みに行かせろよ」と返すとレオは

 「あぁ、もちろんだ」と言い、頷いた。

 

 続いて、ライたちが感謝の言葉が伝えられた。

 「本当に!無事でよかった!」

 「ありがとう、あなた達二人がいなかったら…」と俺とレオに対しての感謝を受け取った。

 

 「それじゃ、帰る準備してきます」と言って、ここに置いてきた装備をまとめる。

 道中、あからさまにこちらを見ている同業者や兵士がいたが、気にせずに帰り支度をし、帰還予定時刻の少し前に集合場所で待つ。

 

 ほとんどの人はもう集まっており、すぐに帰りの昇降機が降りてきた。

 

 ここで昇降機に各階層で持って帰ってきた戦利品をまず運んで、その後に自分たちの装備を運んだ。エレベーターの扉が開き、昇降機のある建物の扉を開ける。

 

 漏れ出た日の光に思わず、目を細めてしまう。目が慣れていくと外の景色が広がっていた。ただの荒野だが、長い間地下にいた。そのせいで思わず、空を仰ぎ見る。雲一つない快晴だ。薄くだが、三日月が見える。その奥には、元々はまん丸であったであろう惑星が大きく欠け、内部が露出しているものが見えた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「今日は無礼講だ!好きなだけ飲んでくれ!乾杯!」というライの言葉と共に色とりどりのグラスが持ち上げられた。目の前には様々な料理が並んでいる。

 

 ここは、GHのオフィスから離れた歓楽街の大きめのレストランのようなお店である。

 GHで持って帰ってきたものを鑑定してもらい、買い取ってもらったあとに打ち上げとなったのだ。ここのレストランの一室を貸し切りで打ち上げするのがバンカー依頼で全員生還した後の慣例らしく、お代は経験者組が払うことになっている。

 

「本日のMVPチームはレオとジャックの二人よ。色々聞かれることになると思うからそこのところは覚悟しておいてね」とエレノアが言ってきた。

 「えぇ、お手柔らかに」と答えていると司会をやっていたライが近づいて、

 「少し話せないか」と小声で伝えてきた。

 「いいですよ」と返答し、人がいないバルコニーに出て、ライは口を開いた。

 

 「あの時は、本当に助かった。俺たちを助けようと二人が救助に来たこと、君が自分自身を犠牲にする選択をあの一瞬で行ったこと。そのすべてに改めて感謝をしたい」と言う。

 

 だが、感謝を述べるだけであるならわざわざこんな所に呼ぶ必要もないだろう。

 「だから、疑うこともない。脚に負っていた傷がロビーに戻ってきたときに治っていたことも」と続きの言葉に一瞬動揺してしまった。

 

 そうだ、あの時に負傷していたことをライは知っている。なら俺がどうして無傷で戻ってこられたかを疑うのは道理である。しかし、彼は疑問を飲み込んだ表情で

 「あの後何が起こったのかを知りたいとも思わない。だから君が嘘ついている理由も聞かない」と話してくれた。

 

 ハンター、いやサーヴレイブとして都市に生きるもので長続きすることに必要なこと。それは他人の秘密に深く干渉しない。彼はそれができる優れた人物であり、自分とは異なる優秀なリーダーだろう。

 

 「それじゃ、みんなの所に戻ろうか」と言って宴の場に戻っていくと何やら先ほどより騒がしくなっていた。

 

 「いや、それがね。相棒はエレノアちゃんのプライベート用の連絡先を知りたくて、命を懸けて助けに行ったんだよ」とレオが周りに集まった聴衆に向けて話していた。近くには空になった酒が入っていただろうボトルがあった。俺は後ろから一気に近づいて、強めのデコピンをレオのうなじに叩き込んだ。

 

 「レオ、羽目を外しすぎだ」

 

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