天上の人類ーThe celestial mankindー   作:ピエロギ

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Cp.2 煤に塗れて
アベル(兄)とカイン(弟)


 「早い再会だったな、契約者よ」という声が目の前に異形から発せられる。声色で分かる、アダムだ。

 

 「ここは、どこなのですか?」と問う。ここは真っ白な部屋だが、既視感がある。

 厳かな声が再び、響く。

 

 「ふむ、君との間にコネクションを確立したのは覚えているかね?ここは君の夢、いや君の心象風景と言えばいいだろう」

 確かにこの場所は俺にとって馴染み深い、忘れることのない場所の景色を元に作られていることが分かる。

 

 「あの蝶のときに?」

 「うむ、その通りだ。そして、そこの二人が私の倅」と言いながら、優雅な仕草でもって私とアダムの間にいる、二人の子供を紹介した。

 

 「こっちの朱色がアベル」と赤を基調にしたコートを羽織り、スカートを履いたショートカットの美しい少年がアダムに向かってスカートを摘んで、恭しくお辞儀をし

 

 「こちらの翠色がカインだ」とアベルと異なり、緑を基調にしたコートを羽織った、スカートの、【こういった髪型はツインテールというのだろう】をした少女のような見た目をしたカインと呼ばれた方も、アダムに向かってスカートを摘んで恭しくお辞儀をした。

 

 「この二人が君と、そして君と目的を共にする仲間を助ける協力者だ」という言葉をかけられる。

 「それは、どういう?」と聞こうとすると

 

 「さっきから質問が多いぞ。お父様の御厚意によって運よく生き残ったミジンコがッ!」とアベルと呼ばれた子供に言葉を遮られた。

 

 「お兄様、コレは非力ながらも緊急プロトコルを一時的とは言え耐えきったのです。ガガンボ程度の実力はあるでしょう」と辛辣な言葉をカインと呼ばれた子供から放たれた。

 

 「二人とも、これから彼とは長い付き合いなる。身の振舞い方を考えなさい」とアダムが注意すると途端に背筋を伸ばして

 

 「「お父様、申し訳ございません」」と息ぴったりに謝罪する。

 アダムは少しだけ、くたびれた様子を見せたような気がするが、次の瞬間には、そんな姿勢を感じさせない上品さを取り戻し、言葉を紡いだ。

 

 「君には、これからある施設に赴いてもらう。今では、瓦礫しか残っていないだろうが、旧市街地の地下にある、軍事研究所だ。ナビゲーションは二人が手伝う。その施設内の最奥部にオービットネットワークの再起動コンソールがあるはずだ。まずはそこに向かえ。そのあと然るべき力を得る機会を君に授ける」

 

 「その施設は無人でしょうか?どこかの企業が発見していたら、手出しはできないと思います」と危惧すべきことを提案すると

 

 「オービットネットワークで繋がっていなくとも、バンカー近くの施設であれば微弱な通信網で位置は分かる。バンカーと同じく何者かに占領されていれば、独特な周波を出すはずだ。私の見立てでは、そういった反応はない」と返答し続けて

 

 「といっても範囲は広くはない。だが、オービットネットワークを拡大していけば、さらに、かの時代の施設は見つかるだろう。これを続けていけば私と君が探しているものも自ずと見つかるだろう」と

 

 「了解しました。何か必要なものはありますか?」と言ってアダムとブリーフィングを行う。どれくらいの規模の施設か?危険性についてはどれくらいを想定すればいいか?何日程度は必要か?といった具体的なことを話し合う。

 

 アベルとカインは大人しく、アダムの近くで背筋を正して待っていた。話し合いが終わったころには少しプルプル揺れて、疲れているように見えた。

 

 「ここ以外の場所では、主にアベルとカインが助けてくれるだろう」とアダムが言うとアベルとカインそれぞれが

 

 「よろしくだ、契約者」とアベルがぶっきらぼうなもの言いで答え

 「よろしくお願いいたします。契約者」と誠意を含んだもの言いでカインが答える。

 「おい、カイン。下手に出ると舐められるぞッ!」とアベルがカインに突っかかるが

 「いいえ、お兄様。私はお父様のお言いつけを守っているだけですよ。お兄様こそ、注意されるべきでは?」と小馬鹿にしたようにカインが言うものだから

 

 「何だと!」と怒ってしまった。すると

 

 「二人とも戯れはそれくらいにしないかッ」とアダムが静かな、しかし厳格な声色でもって二人を叱り、しょんぼりさせてしまった。

 

 アダムは小さく、ため息をつく。しかしその所作でさえ優雅であった。そして

 「痴態を晒してしまったな。君には余計な心配をかけた、謝罪する」とアダムが言うものだから、しょんぼりしていた二人が今度はオロオロしてしまった。見ているこっちも申し訳なく思ってしまう。しかし、続いてアダムが

 

 「もう、時間だ。起きたら準備は抜かりなく。そして君の連れも説得して連れて行ってくれ」と言うと視界が白んできた。本当にもうそろそろ覚醒するらしい。

 

 すると最後に

 「期待には応えるぞ、契約者」

 「ご期待には応えます、契約者」

 

 という二つの幼い声が聞こえ、心の中で大変なことになったなと呟くと、目の前が真っ黒になり、瞼を開くとそこは自身が寝ているベッドであると分かった。

 

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