天上の人類ーThe celestial mankindー   作:ピエロギ

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顕現室

 「レオ、起きているか?」とドアを叩くと、寝ぐせの付いた、眠そうな顔のレオがドアを開けてくれた。

 

 「どうした?今日は、流石に依頼を受けないだろう?装備の点検もしなくちゃならない」

 「あぁ、“個人的な”仕事だ」とレオに言うと、さっきまでの雰囲気が変わり、真剣な眼差しになる。そして

 

 「…わかった」という短い言葉を残すと、外出の準備を整えにいった。

 

 数分待った後、「悪い、待たせた」と言ってレオが出てきた。

 

 「今回はどんな感じの所だ」とレオがバイクや銃を保管しているガレージに向かう道すがら聞いてきた。

 

 「シティ郊外の市街地。そこに旧人類の建造物の残骸がある。今ここでは、理由は言えないがシティを出てから必ず言う。ここじゃ誰が聞いているか分からないからないからな」

 「了解」

 

 そうこうしている内にガレージ、作業場も兼ねている建物が見えてきた。表面が少し錆びた重厚な鉄製の扉、壁に描かれた活きのいい落書きがここら辺の治安を物語っている。

 

 場所としてはスラムの近くであるが、駐車場を含んだ作業場を借りるとしたらこういった場所か、俺たちの所持金では決して一カ月も借りられないようなシティ内部の場所となる。

 

 錆びた扉を開けると内部には、オートバイやカスタムの為のパーツで溢れている。壁にはツールボックス、床には油やグリスの跡が見られる。奥には、ワークベンチがあり、様々な工具が置いてある。

 

 「さぁ、やるか」という皮切りに、準備を始める。

 

 「銃はどうする?」とレオが聞いてくる。

 「今回は建物内のインファイトになる。デカイライフルではなく、取り回しのいい消音器付きのアサルトライフルでいい」

 

 「了解、バイクの燃料はどれくらい持っていくか?」

 「10ガロンあれば余裕で足りる、これを終わらしたら、給油所で補給してくる」と目の前の小銃を調整しながら答える。前まで使っていたものだ。

 

 もう、ダイラタンシーで譲ってもらった共鳴弾もない。バンカーの報酬も割高だったが、武器防具を新たにしていたら赤字だ。今揃えられる装備で行くしかない。

 

 「あとは、水と食料か」とレオが呟くので

 「チョコミント以外で頼む」と言うと、「了解」という言葉を残して買い出しにいった。

 

 

 「それで、どうして廃墟なんか目指していんだ?」とレオがシティの外壁を抜け、数キロ進んだ辺りで聞いてきた。

 

 「レオには話しておきたい。あのバンカーで何があったのかを」と言って話す。緊急プロトコル後に俺が全力で戦って、敗れ去り、アダムという管理者によって命をなんとか繋ぎ、戻ってこられたということ。

 

 「そうだったのか…そのアダムは信用できるのか?正直言って信用ならない部分が多い」とレオが指摘する。

 

 「その件について、まだわからない。俺の命を助けた理由もオービットネットワークというものの復旧といっていたが、自分自身で、もしくは俺以前に他の協力者を見つけてやってないのかということもある」

疑問点があるのは確かだ。

 

 「胡散臭いことこの上ないな」とレオが言うが

 「現状じゃ、アダムに頼っていくしかない」と返す。

 「今までのことも大概だったけど、今回は飛び切りだ」と話しながら、目的地へ向かう。

 

 廃墟が乱立しているのが、遠目に見える。昔は美しい摩天楼であっただろう、その廃墟たちは、今や植物に覆われ、所々は崩れ落ちている。

 

 レオが崩れ落ちた建物を見て「ここか、それで?どこに行けばいいんだ?」と聞いてくる。

 

 「あそこだ」と言って、一つの建物を指さす。他の廃墟よりは形は保っているが、その大部分を植物に覆われている。あそこの地下にある研究所が今回の目的地だ。

 

 「取り敢えず、近くまで行ってみるか」と提案し、クリアリングしながら進む。こうした廃墟は4,5類の蟲系変異種が巣を作っている場合がある。そして何より、今接敵したくないのがスカベンジャーと、レイダーどもだ。

 

 ガラクタや死体漁りをしているスカベンジャーは装備の面で負けることはないが、数が多い。戦闘になれば、無駄に殺すことになる。

 レイダーは武装がスカベンジャーよりも充実しており、下手なハンターよりも手強い。戦闘になったら、大きな消耗は避けられない。

 

 建物の入り口まで近寄ってこられた。壊れた正門をレオとクロスファイアできる位置取りで制圧をしていく。すると

 

 『――おい、階段下から来るぞ』とアベルの声が背後から聞こえた。咄嗟に後ろを見てしまい、レオが

 

 「おい、どうした」と声をかけてくるので、再び、正面、指示が出た階段のある方を注視すると動きがあった。蟲、巨大な蟻のようなそれらが這い上がってきた。

 

 「コンタクト!階段下‼」とレオに伝え、トリガーを引く。三点バーストによって放たれた精確な弾丸が、蟻の頭部を飛ばす。

 

 すると、床部分の隙間から次々に蟻の牙が次々と突き刺さると、できた隙間を無理やりこじ開け、這い出てきた。

 

 次々と出てくる蟻を処理していく。

 「リローディング!」と言って弾倉を交換する。次にレオが弾倉を交換する時にカバーできるように息を合わせ、処理していく。

 

 時間にして1,2分経った頃には、蟻の死体とその体液が床と壁一面に飛び散っていた。新たな蟻が出てこなくなったのを確認すると

 

 「さっきどうした?」とレオが聞いてきた。

 「話したと思うが、俺をサポートしてくれるらしいアベルという子供の声が聞こえたんだ。そっちは何か聞こえたか?」と聞く。

 

 「いや、何も聞こえなかった。その声のおかげで気が付いたのか」

 すると『感謝しろよ』と頭の中で声が聞こえた。レオの方を見るとやはり、聞こえていないようだ。

 

 「レオ、少し会話してみる」と伝え、アベルに話しかけてみる。

 「アベル、この声、レオに聞こえるようにならないのか?」

 『ふん、しょうがない。カイン、コネクションをつくってやるぞ。お前はそいつの首についている装置に手をかざせ!』

 

 『分かりました。お兄様』というカインの声も聞こえ、指示に従い、レオのサービジョンに手をかざす。

 

 「おっ、なんだ?」とレオが聞くので

 「これでお前も聞こえるようになるらしい」と答え、数十秒後に

 『聞こえますか、レオとかいう者?』

 

 「ウワッ、頭の後ろの方から声が聞こえる!?」と驚いた様子だ。

 『聞こえるようですね、これから私たちが補助を行うので指示に従うように』

 「なぁ、これ俺たち二人に同時に聞こえているのか?」とレオが聞いてきた。

 

 「あぁ、さっきの会話も聞こえてきたぞ」と答えると

 『片方だけに聞こえるようにすることもできるが、今は必要ないからやってないだけだ』とアベルが答えてくれた。

 

 『お兄様、お話はこれくらいにしましょう。二人には早く仕事を』とカインが言うとアベルは『そうだな』と短く答え、

 

 『お前たちにはこれから地下に向かうため、地上部分で最低限の電力を地下に送ってもらう。そうしないと研究所の扉が開かないからな』

 

 『上層がここまで綺麗に残っていたのは僥倖でしたね。配電盤をうまく使えば、こっちでなんとかします。お前たちはこちらの指示に従って配線作業をしてもらいます。建物内は虫が蔓延っていますが、適宜処理しなさい』とカインが話す。

 

 「了解」と言って、指示を仰ぐ。

 『では、まず、一階の電気室に向かいましょう』とカインが言うと視覚上に薄く矢印(カーソル)が出てきた。

 『こっちだ』とアベルが指示を出し、その矢印に向かって進む。

 

 

 目の前に動かなくなった蟻を見て「ずいぶんと数が多いな」とレオが言うので

 「あぁ、残弾をマメに確認しないとな」と返す。

 

 今俺たちは電気室にあったデカイ電線を引きずりながら、建物内を駆け巡っている。そして、植物で覆われている差込口に入れている。

 「これで最後だ」と差込み、一階に戻ると

 

 『よし、これで進めるな』とアベルの声が聞こえ、下に向かう。地下一階は、駐車場のようでコンクリートの太い柱が所々にある。

 

 カインが『奥にまた階段があります、そこから研究所にアクセスできるはずです』と伝え

 

 アベルが『生命反応がある。注意しろ』と伝えてくれる。

 事前にどこに何があるかを二人が知らせてくれるから、スムーズに制圧することができる。

 

 何体かの蟻が死骸になった頃、シャッターが見えてきた。隣には割れているが、操作パネルがあった。

 

 『よし、操作パネルに手をかざせば開けられる』とアベルが

 『シャッターが上がる騒音に蟲が集まってくることが考えられます。開ける時は準備を』とカインが伝えてくれる。

 

 レオと弾倉に弾を込めて、射線が通りやすい場所の位置取りをする。準備をしたあとに

 「頼む」と言ってパネルに手をかざす。

 

 するとガラガラという金属が擦れる音が駐車場中に響き渡る。俺たちが見張っているほうも騒がしくなってきた。蟻たちだ。

 

 『右、4 中央、8、左、5来ます』というカインの声から数の多い、中央から来た蟻たちを処理し、レオと分かれて左右の方向から来た蟻を処理する。

 

 「まだ、来るか?」とサポートの二人に聞くと

 『中央方向から、他のやつより生命反応が強いのが来ている』とアベルが言う。確かに今までの蟻より一回り、体の大きい戦士タイプの蟻が来ている。セミオート射撃からフルバーストにし、集中砲火する。

 

 弾倉が尽きる頃には、その蟻の体の傷から体液を流していたがまだ殺しきれていなかった。こっちに近づくと牙で胴体を切ろうと噛みついてきたが、ジャンプし躱す。

 垂れた頭部にナイフを思いっきり突き刺すと動かなくなった。

 

 すぐに体勢を立て直し、リロードする。

 『開いたぞ!さっさと入れ!』というアベルの言葉を聞いて、空いたシャッターの下をくぐっていった。俺たちが入るとシャッターはすぐに閉まり、外に居る蟻の引っかく音が聞こえた。

 

 『早く下に行きなさい。下の扉ならあの程度の生物なら突破できないでしょう』というカインの言葉に従い、シャッターの奥、アスファルトの坂道を下っていく。

 

 坂道の端には、確かに先ほどのシャッターとは比べ物にならないほどの重厚な扉があった。また、パネルが近くにあり、手をかざすと、ゴゴゴッ、という音が鳴って開いた。

 

 

 中は思ったより綺麗であり、白色の長い廊下が続いていた。警戒しながら、足を踏み入れると後ろの扉が再びしまった。

 

 「それで?これから奥を目指せばいいのか?」と聞くと

 『敵性存在は確認できませんが、警戒しながら進みましょう』とカインが答えてくれた。「了解」と答え、研究所と呼ばれている地下施設に侵入していく。

 

 この研究所はかなり広い施設だったのだろう。道中で見た限りだが、カフェテリアに、ガラス壁で仕切られた会議室や研究室のような場所、そしてシャワー室などがあった。

 

 『次は右に行け』というアベルの指示が出される。アベルとカインの指示があって迷わずに進むことができる。そしてついに

 

 『ここだ』というアベルの声と共に目の前の白亜の巨大な扉の前に俺たちは止まった。

 

 すると、その扉がゆっくりと開閉した。

 

 中は司令室といったように非常に大きい円形の机と、大きなスクリーンが目に入った。

 

 『進んで下さい、中央のコンソールまで案内します』

 「了解」と奥に進む。すると、スクリーンに備え付けられたこの施設で見た中で一番でかいパネルがあった。操作するために近き、タッチパネルに触れると

 

 『『偉大なる存在への帰趨を、天地創造の如く述べよ』』

 

 と二人が起動コマンドだろうか?を詠唱した。ずいぶんと仰々しいが、その声に応える形で青色の波紋が流れていく。すると、さっきまでは最低限の照明しかついてなかった部屋が一気にまぶしくなる。

 

 『これで終わりだ。お前たちご苦労だったな』とアベルの声がする。

 「これで、そのなんたらネットワークはつながったのか」とレオが聞くと

 『その通りだ。そしてこれから、お前たちはここを利用できる』

 

 「どういうことだ?」とレオが返すと後ろから何かの起動音した。確かめるべく、見に行く。するとさっきまではなかった部屋へと続く道ができていた。その先に進むと2つの大部屋だろうか、左右に別れて、存在していた。ルームプレートにはただ“顕現室”と書いてあった。

 

 近くで確認するために寄ると、電光板が光る。そして、次の様な文言が綴られていた。

 

 クラス:アッシャー:希望の灯を売る者




 突撃銃にサプレッサー付けても結構、発砲音が響いてしまうのですけど、付けてないときと比べたらマシなので、敵に位置を特定させづらくするため装着しています。
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