天上の人類ーThe celestial mankindー   作:ピエロギ

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外の日常

「コイツは酷でぇ。全部スカベンジャーの死体だ」と目的地の道中、偵察するために建物の屋上へ移動したレオから死体が複数あることを無線で伝えられる。

 

 「状態は?」と聞くと

 

 「何か所か噛み千切られている。血の色からそれほど時間は経ってない。それに、死体を引きずった跡が血痕になって見える」

 

 「変異種に喰われたか。銃声はしなかったよな?」

 

 「落ちてるものを見るに槍やこん棒ぐらいしか持ってなかったようだ。急いだほうが良い。死体に惹かれて奴らが来るかもしれない」

 

 「わかった。何か見たら教えてくれ。スナイパー」

 

 「あぁ外の脅威は俺が片づけるぜ!」と勢いの良い返答が帰ってきてから通信を切る。

 

 現在、俺は大型店舗とカインが言っていた施設の倉庫にいる。所々の崩れ落ちた屋根の合間から日光が差し込むが全体としては暗く、中は空になった箱や割れたガラスが散乱しており、略奪された後であるということは明白であった。

 

 「今度はどっちに向かえばいい?」

 

 『左手の通路に抜けてください。地下の販売所に通じる階段があるはずです』

 

 「了解」

 

 アベルとカインはここにはいない。どうやら、彼ら二人は施設外に出ることはできないと言う。厳密に言えば、物理的な肉体をもって活動はできないらしい。これは彼らの創造者が付けた鎖であると。

 

 といってもここに来た時と同様にサポーターとして力を貸してくれている。

 

 カインの指示に従い、通路を抜けると螺旋階段があった。どうやらここは崩落していないようであった。

 

 

 

 「カイン、階段を見つけた。こっちは通れそうだ」

 

 『そうですか…良かったです。もしそこがダメでしたら掘削用ロボを造る必要がありましたから」

 

 「あぁ…俺たちはツイてるな」

 

 地下に続く道はどこもかしこも瓦礫に埋もれていた。その度に、この廃墟を走り回る羽目になったがついに目的地にたどり着ける。

 

 階段を降りていく。空気がどんよりとしたものに変わる。ナイトビジョンに切り替え、階下に降りると意外な光景が飛び込んできた。

 

 下は人が住んでいただろう痕跡。生活の痕が見える。寄せ集めの素材で作られたテントが並びんでおり、数人という規模じゃない。

 

 しかし、誰一人残っているようには見えない。それに、嗅ぎなれた鼻腔に絡みつく臭い。死臭だ。

 

 「カイン、生体反応はあるか?」

 

 『待って下さい……人間ほど大きな生物の反応はありません。周囲を調べてください』

 

 コンクリがむき出しになった地面には、缶や布切れ、ゴミといったものが散乱していた。

 

 ダクト配管の近くには焚火の燃えカス、そして錆びたパイプが銃身の即席銃が放り投げられ、床にはベットリと黒い血。

 

 『奇襲された後みたいですね』

 

 「この密閉空間で、奇襲か…」

 

 そういって、奥の方を見ると巨大な穴が開いていた。それも一つや二つじゃない。襲撃者の正体は蟻たちだろう。

 

 「外部から侵入されないように出入口が塞がっている地下を拠点にしたせいで、油断したってところか?」

 

 『状況からして、そう判断していいでしょうね。すぐに、目的の物を回収しましょう』

 

 そうして、血濡れの廃墟を突き進む。

 

 

 

 

 唐突に甲高い音、缶の倒れる音が足元から響く。

 

 それは、不恰好なブリキのおもちゃだった。胴の部分にはプラチナという潰れた文字。…….子供もいた証だ。

 

 「……」

 

 『何をしているのですか。早く前に進んでください』

 

 「…わかった」

 

 真っ黒になった布地を裂き、奥へと進むと、鍵のかかった扉を見つけた。

 

 『この奥です』

 

 鍵穴に目掛けて一発だけ発砲。キィーンという甲高い音と共に扉が開く。

 

 中にはガラクタの山。どれもこれもここにいたスカベンジャーが集めた戦利品だろう。

 

 「火事場泥棒だ。完全に」

 

 『運がよかったですね。ここにいた人間が敵対的であった場合は戦闘になっていましたから』

 

 「…ああ、そうだな」

 

 弱肉強食、この理はどこも変わらない。弱者は奪われることが当たり前。それを拒むのなら強者になれ。

 

 ここにいた者達は強者側の蟻に蹂躙され、俺たちはそのおこぼれを甘受する。その点からして、俺たち、いや俺は蟻たちに感謝すべきだろう。

 

 俺は、ここにいた弱者(子供)から奪うことを選べたと思えない。

 

 『それはカバーがいらないので外してください』

 

 

 手に取った電子機器の外部部品を取り外しながら、そんな悠長なことを考える。

 

 片っ端からリュックサックに詰め込んでいる。無心になるためだ。

 

 リュックサックが少し膨れた時、唐突に地響きが鳴り、体が揺れる。

 

 すぐに戦闘態勢に移行し、通ってきた扉の外を慎重に制圧する。

 

 『蟻たちが入ってきたわけではありませんね』

 

 「なら、さっきの地鳴りは?」

 

 そう答えるとレオから連絡が来た。

 

 「スナイパーから連絡!建物が一棟崩壊、近くで銃声と悲鳴、スカベンジャーが蟻と戦ってるぜッ!」

 

 「…どっちが優勢だ?」

 

 「蟻たちだッ、次々と出てきてやがる!!」

 

 「もう目的の物は手に入れた。退却するぞ」

 

 『そうですね。わざわざ危険を冒す必要はありません』

 

 そうカインの言葉で会話が終わると思った。しかし、もう一人の支援者は納得していなかったようだ。

 

 『A.R.Cの試験運用の絶好の機会じゃないか?』

 

 『確かに、ここまで順調に進んできましたから今回の目的の一つが未達成でしたね』

 

 「それなら、研究所に来る蟻で試せばいいんじゃねぇのか?」

 

 『近頃は落ち着いて、数が非常に少なくなっています』

 

 『そんな数じゃ、A.R.Cの力を見るに足りないだろう?」

 

 「分かった。やるか?レオ。スカベンジャー達から蟻の巣について何か情報を得られるかもしれない」

 

 「オッケェーだ。合流するか?」

 

 「いや、上からアサルトライフルで援護してくれ。すぐに地上に出る」

 

 

 「ヤメロッ!!クルナ!!クルナァァ…」

 

 槍を振るった男が恐怖で、蟻の硬い外骨格に攻撃し、弾かれる。

 

 その隙を蟻たちは見逃さずに、巨大な顎で、男の脚にかぶりつき、次々と蟻たちが出てくる穴へ引きずり込んだ。

 

 近くのパイプガンで応戦している薄汚れたコートを着た男が声を上げる。

 

 「引けェ!!散らばって逃げろッ!!」

 

 散弾が飛び出し、目の前の蟻の頭が吹き飛ぶ。

 

 しかし、相手は次々と出てくる新手に弾も威力も足りてない。

 

 カチッという、空砲を意味する音が響いた時、彼の声は途切れ、代わりにガリガリと骨が砕ける音だけが木霊した。

 

 「助けて…助けて…お願い…もうやめて」

 

 血まみれの女性が地面を這いずる。彼女の目は絶望に染まり、声はすでにかすれている。

 

 彼女の祈りも虚しく、蟻たちは彼女の体に群がった。悲鳴を上げることさえできず、ただ、肉を引き裂く音と蟻の甲高い鳴き声だけが残る。

 

 蟻たちの複眼は、次なる獲物を写す。




残虐な描写、苦手...
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