天上の人類ーThe celestial mankindー   作:ピエロギ

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蟻の女王

 柱の陰に隠れ、見つからないように息を殺す。

 

 下のレオは、卵の影に隠れている。

 

 早く爆弾を仕掛けなければ。

 

 焦る心を落ち着かせ、爆弾を固定、確実に破壊できるように設置する。

 

 ハンドサインでレオに設置が終了したことを伝えると、女王蟻は咆哮、いや下僕がいないことへの癇癪を起こした。

 

 (逃げるぞ…)

 

 柱にしがみつきながら、グラップルを回収し、下の卵の影へ移動、出口まで向おうとする。

 

 ちょっとずつだが、確実にばれずに動けている。しかし、時間をかけすぎてしまった。

 

 丁度、前の卵にある黒い影が活発に動き出す。女王蟻の咆哮に呼応したのか、それは生まれた。真っ白な蟻の幼体だ。

 

 すぐにナイフに切り替え、生まれたばかりの命を刈り取る。

 

 だが、こいつだけじゃない。他の卵も孵化が始まっている。

 

 クイーンにばれずにナイフだけで対処するのは不可能な数だ。

 

 「レオ!!銃を抜けッ!!」

 

 俺が言い切る前に、すでに銃を構えていた。

 

 卵ごと鉛玉打ち抜き、幼体ごと駆除する。

 

 だが、後ろの方で大きな音がした。女王蟻が俺たちに気付いた。

 

 「走れッ!!」

 

 目の前の幼体を押しのけ、発砲し、全力疾走する。

 

 ドゥァン、ドゥァンという巨大な物体がぶつかる音が近づく。

 

 「ヴェアヤァァァ!!」

 

 巨大な空間から、細長い穴に切り替わる寸前に腰に着いた手榴弾のピンを抜き、後方に投げる。

 

 爆発音と共に、俺とレオはこの巨大な孵卵空間から脱出した。

 

 後ろを見れば、爆発で小さい蟻や卵の残骸が飛び散っていたが….

 

 「グギャァ!!グギャァァァ!!」

 

 怪物はくたばっていない。穴に頭を突っ込んでこっちを喰おうとしてくる!!

 

 相手は巣を破壊してでもこっちを喰いたいらしい。俺たちは来た道から脱出しようとするが、相手は無理やり体を押し込み、こっちを追ってくる。手榴弾を使い、相手の進行を遅らせているが…

 

 「オイッ!!前!!」レオの声で前、正確には上から蟻がぼとぼとと降りてきた。

 

 「流石に女王の声が外に漏れたかッ!?」

 

 持ってきた弾にも限りがある。

 

 「クソ、もう残っている弾倉はこれで最後だッ!!」

 「できるだけ手榴弾でまとめて吹き飛ばせッ!!」

 

 そうこして、何とか地上付近まで上から襲撃してくる蟻に対処しながら進んでいったが、手榴弾、弾の両方が尽き始めた。

 

 「どうするッ!!このままじゃ、ジリ貧だぜ!?」

 

 このままじゃ、蟻たちに貪られる運命だ。外へ通じる穴まで行こうとするなら、確実に物資が足りない。なら、こっちも覚悟を決めなくては。

 

 「レオッ!!1分、息止められるか!?」

 

 「…マジかよ」

 

 「やるしかないッ!!」

 

 俺が手に持ったA.R.Cを見て大体察したようだ。あの熱線で地上までの穴を開け、そこから脱出する。

 

 そう決めたら、行動は早かった。俺は、蟻たちに炎をまき散らした。女王蟻にも火を付けたが、炎が回りづらい。

 

 いや、再生力が高すぎて炎が負けている。その力を見るに3類上位か…

 

 だが、十分な煤が溜まった。炎を解放し、地上に向けて放った。

 

 

 

 「ハァァ、ハァ、何とか成功しただろ?」

 

 「ゲホォ、ゲホォホゥホ、間違ったら俺たち丸焼けだったぞ」

 

 俺たちは青い空の下に戻ってこれた。

 

 『どういう状況だ!?そっちに生体反応が無数にあるぞッ!?』

 

 「あぁ、クイーンに気付かれて追われている」

 

 『早く避難しなさい。十分に距離が離れてから起爆を』

 

 俺は相棒の肩を持ち、廃墟の影に隠れた。これ以上時間をかけると女王が引っ込んだしまうかもしれない。

 

 バックの中に手を突っ込み、いくつかのボタンが付いた起爆装置を操作し信号を送る。すると足元から、ドンッ!!という衝撃。

 

 熱線で作った穴がある辺りの地盤が緩み、落下する。

 

 周りは砂微塵に覆われ、何も見えない。目さえ開けていられないほどであった。

 

 「これで、大人しく死体になってくれればいいんだが…」

 

 そう、レオが願う。これで死ぬような獲物であったならどれだけ良いか。

 

 地響きが聞こえる。これは、さっきの爆発によるものじゃない。

 

 それを聞いたのかレオが吐くようにして呟く。

 

 「ずいぶんと…しぶとい女王だ…」

 

 するとアベルから通信が入る。

 

 『こっちで援護する。お前たちは指定した場所に避難しろッ!!」

 

 ブーーンという音と共にドローンが爆心地の方へ飛んでいくのが見える。

 

 疲れ果てた相棒に「行くぞ….」と声をかけて、移動を開始する。

 

 凄まじい轟音が鳴っている。囮となっている無人機が壊される前にレオを退避させなければ。

 

 廃墟の瓦礫で作られた山を越え、とても平坦とは言えない道を進めば、研究所のある建物が見えてきた。

 

 「ここまでで…十分だ…後は俺一人で歩く」

 

 本当は大丈夫か?と聞きたかったが、これからやる俺の役割を考えての発言だと思った。

 

 「…分かった」

 

 ならば、一人の相棒として信頼すべきだ。

 

 「それと、あのクソ蟻を…後悔させてやれ…」

 

 「あぁ、もちろんだ!!」

 

 相棒の言葉を浴び、覚悟が決まった。

 

 向かうべき場所は、背後。砂煙に覆われながらも、その巨大なシルエットが見える。化け物を殺しに向かう。

 

 

 

 「ギァァーァ!!ギァァェーエッ!!」

 

 鳴き声だ。そこら中から聞こえる。フェロモンで引き留めていただろう蟻たちは、自身の主の危機を察知し戻ってきている。黒い波が、廃墟となった街を飲み込み、俺の進む先へと集まっている。

 

 「カイン!!アベル!!、状況はッ!!」

 

 『各地点から、蟻が集結ッ!!一部はまだ引き留められていますが、時間の問題です!!』

 

 『…ドローン機、完全沈黙。やられた。後残っている戦力はお前だけだ』

 

 事前の打ち合わせにおいて、様々な状況を考えた。物資、時間といったものが許すまで、最善のものを考えていたはずだ。

 

 フェロモンによる敵戦力の別地点への移動、俺とレオで爆弾を設置、巣における重要物資、卵と女王の巣を破壊。

 

 以上の作戦を立てて、最も憂慮すべきことは、”女王蟻が外に出ないこと”。

 

 女王が生き残ってしまったら、どれだけ蟻や巣、卵を破壊しても意味はない。つまり…

 

 「順調だな。…カイン、フェロモンの放出を止めてくれ。後は俺がすべて殺る」

 

 燃料()が自分から集まりに来てくれているこの状況は、すべて作られたものだ。

 

 「アンナ、悪いな。今回はかなりの量だ。苦労を掛ける」

 

 そうして、手に持ったA,R,Cを再び起動させた。

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