天上の人類ーThe celestial mankindー   作:ピエロギ

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Welcome to Hawelka Office

 

 「何だよこれ…どんなモンぶっ放したんだ…!?」

 

 「ピー坊…そんな慌てふためくな。ここには他のオフィスの奴らもおる。ウチらのオフィスに泥を塗る気かェ?」

 

 「ごめん…ばあちゃん。でも…これは…」

 

 隣でそんな孫とのピクニックみたいな会話をされていたら、嫌でも耳に入る。フードをしていてもだ。

 

 若干のため息を出しながらも、ここにいる全員が見ている光景を再び見る。

 

 眼下に広がる焦土、元々はシティ近郊にある旧人類の廃墟街であった場所は、変貌。

 

 2日前に高エネルギー反応が確認された。シティに敵対する企業の攻撃の可能性もあったため万全を期して手練れのサーヴレイブが招集され、現在に至る。

 

 「どう見ますか…モルガナさん」

 

 私の部下が小声で聞いてくる。

 

 私も小声で「どういう意図だ。抽象度が高い質問は嫌いだ」と返す。

 

 「いえ…その…これが、東部企業の新兵器だとか…」

 

 「わざわざ、シティの近くの廃墟に撃つ馬鹿がいると思うか?」

 

 「そう…ですよね…」

 

 「それに事前調査でここは蟲の巣、蟻が巣くっていたらしい」

 

 「確かに…あそこに大きな蟻の死骸がありますね」

 

 奥の方、巨大な黒い炭の塊となった蟻の残骸がある。

 

 「あれは、クイーンだろう。アレを殺すのに討伐隊を送る計画があったらしい。巣自体へ立ち入る大規模なものがな。その仕事は見ての通り、取り消されたがね」

 

 GHからの依頼をオフィス経由で私にも知らされていた。一級サーヴレイブも出張る仕事。

 

 「降りるぞ。手掛かりがあるかもしれない」

 

 「了解」

 

 他の調査員同様に、この焦土となった大地へ足を踏み入れた。

 

 「そっちはどうだ?」

 

 部下にそう聞くと

 

 「手掛かりは何も。薬莢一つ落ちてませんでした」

 

 「普通、これほどの威力を出す兵器は何かしらの痕跡を残す。となると…」

 

 私の推理は、突然後ろに現れた人物によって奪われた。

 

 「A.R.Cによるもの…だろうかねェ?ハヴェルカのとこの嬢ちゃん」

 

 先ほど、隣で話をしていた老婆だ。

 

 「マダム・カルラ…貴女も同じお考えで?」

 

 「これほどの火力となると並みのA.R.Cじゃないだろうねぇ~」

 

 尋常ではない威力、流石にこの数のクレーターは何度も攻撃したことで生まれたものであると思うが…

 

 「イェツィラークラスでしょうか。となると一級程度の実力者がここで戦闘をした…」

 

 イェツィラーの使用許可は一級から。もしくはレギオンの精鋭部隊での使用が許可されている。

 

 「その可能性が高いかもねぇ。わたしゃ依頼者にはそう報告しておくよ」

 

 そういうと貴婦人は去っていた。もう帰る準備を始めている。

 

 「適当ですね…」と部下が言うのですぐに口を黙らせる為に腹を殴る。

 

 ウグッという短い嗚咽。

 

 「言葉に気を付けておけ。彼女は真の実力者だ。ウチのチーフと共に戦ったことのあるな」

 

 「…ハ、ハイ」

 

 聞かれなくて良かった。あそこのオフィスは面子を気にする。シティで最も信頼されているオフィスだから。

 

 しかし何故、彼女が現場に。下の人間に任せればいい。その程度の任務だ。

 

 ふと、圧を感じる。これは…殺気。

 

 少し離れた老女から、とんでもない圧力を感じる。

 

 (怖すぎ!!どんな生き方したらさっきのでそんな殺気放てるんだよッ!!)

 

 しかし、すぐに鬼のような殺気は一気に霧散し、老女は去っていった。

 

 「ふぅ」冷や汗を拭う。となりの馬鹿は放心状態だ。

 

 「…さっさと行くぞ。私たちはもっと調べる必要がある」

 

 今度は頭を小突いて、蟻の女王の死骸がある所へ向かった。

 

 「これは…すごい…」

 

 「すごいと言うだけなら、誰だってできるぞ」と部下の発言を返す。

 

 「いや、バッサリ一刀両断ですよ。熱で体が融解してますけど、とんでもない威力だ」

 

 「この死骸はデカイ証拠だ。他にもっと有益な情報を調べろ。こっちはドローンで近くを調べる」

 

 二手に分かれて、調査を開始する。すると、ドローンが一つの死骸を見つけた。

 

 他の蟻よりも外骨格が固かったのか、紫色のそれはまだ形を保っていた。

 

 地面に勢い良く衝突したのか死骸は潰れていたが、その頭部には…

 

 「ビンゴ」

 

 金属片。それもかなり鋭利な。武器か何かの破片。

 

 「モルガナさん。こっちの死体、体の一部を持っていかれた可能性があります。まぁ、変異種が喰らっていったということもありますけど…」

 

 「分かった。こっちは良いものを見つけた。後で解析に回す」

 

 謎が徐々に明らかになる感覚。ここで何が起こったのか。好奇心に飲まれていく。

 

 

 「婆ちゃん。もう帰ってよかったのか?」

 

 「もう、ええ。いや~久しぶりに滾ったわ~」

 

 男の方の顔が歪む。引いているのだ。

 

 「勘弁してくれ…年寄りの貪欲な顔ほどみっともないのはないぜ…」

 

 「そう言うなや、坊。50、いや60年振りかねぇ。選定者が生まれた」

 

 すると、老婆の顔が喜々とした少女のような無垢なものになる。

 

 「今度こそ…甘い蜜を吸わせてもらおうかねぇ」

 

 漆黒の、荒野に見合わない高級車が走っていく。だが、乗っている者が纏う空気は荒野でさえも怯えさえるような何かを持っていた。

 

 

 木目の壁と天井から吊るされたヴィンテージ風のペンダントライトの柔らかな光、グリーンの観葉植物、中央にはアート作品が飾られた、洒落た一室にレオと一緒にいる。

 

 「こちら、契約書、医療記録、武装許可証、死亡保険の同意書です」

 

 俺とレオの前に腰掛ける無表情な男が黙って受け取る。このオフィスは、今では珍しく専用の紙を用いて雇用契約を行う。

 

 すぐ近くの別の紫のスーツを着た男が

 

 「本契約の立会人はメディエンス・オフィス所属ブラックウェルが担当します」

 

 協会の中の部門に契約履行を担当する所がある。メディエンスはその系譜だろう。職員は皆、優秀な人材である。契約に関する知識に抜けがない。加えて…

 

 「ここでのやり取りのすべては活字として保管され、お互いの有利、不利に働くことになります。契約不履行の際は私共が立会い業務の遂行に従い、契約書に書かれた通りの処置を行うことをここに告げます。両者、返事を」

 

 ここにいる皆が了解を意を伝える。

 

 「「「本契約を履行することを誓う」」」

 

 立会人の腰に下がっているものは、仰々しい鈍器、メイスというものか。

 

 荒くれ者も多いこの業界で契約を履行させるには、並大抵ではない武力が必要だ。

 

 契約違反者がいれば、容赦はしない。その姿勢が彼らの仕事の信頼性を高めている。

 

 もちろん金で雇っている以上、金額以上の仕事はしないが。

 

 「それでは、最終確認を…」

 

 淡々と業務に向かう姿は、仕事人として高いスキルと自信があることが伺える。

 

 オフィスに入社する為の小さな契約であってもその整然とした態度は変わらない。

 

 「では、私はこれでお暇させて頂きます」

 

 そう言うと、一人退出していった。残された俺、レオ、そしてこのオフィスの人事部の人間。

 

 「それじゃ、歓迎しよう。契約では、明日から正式な所属になるが」

 

 と一旦、声を区切って、握手を求められる。

 

 「ハヴェルカ・オフィスにようこそ」

 

 相手の手を取り、俺たちは握手した。




これにて、チャプター2は終わり—。Cp3は全く手を付けてないので年内に新しくは出せません。
矛盾点、ここおかしいだろ!!みたいな所あったら感想で教えて下さい。
面白くないっていう感想でもいい!!
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