天上の人類ーThe celestial mankindー 作:ピエロギ
フローターの体からカードを引き抜く。Sカード一枚と溶けかけたPカード2枚であった。銃弾に直撃しても大した傷の付かないカードと壁や床でさえ、凹凸ができるほどの威力であった。
「すごい、威力ですね。床と壁も溶けるほどなんて」
「こういった閉所だと強力ですが、乱戦時や近接戦だと巻き込まれる可能性があるのであまり使い勝手のいいものではないのですがね」とローシャが床に落ちた球体を拾う。再使用できる代物なのだろう。
「溶けたカードどうしようか?このまま回収する?」とミンリがローシャに聞く。
「損傷が激しいものは上の生産ラインでは使うことが禁止されているし、ボックスがあったらそれに使おうよ」と答えながらミンリに近づき、一緒に拾った球体、アークを渡す。
俺たち二人は食堂奥の廊下を目視で偵察する。何部屋か見えるが、一つ、扉の前に十字のマーク、多分メディカルルームであろう部屋がある。
「見たところ、医療室があるみたいだ。」と皆に伝える。ミーティングでバンカー内の医薬品関係はGHが高く買い取ると聞いている。
「ローシャさん、ミンリちゃん、どう?」とレオが聞く。出会って数十分という人物のミンリにちゃん付けをし、ローシャにさんを付けるのはうまく彼女らの人柄を読んでいるなと思う。
「まだまだ、余裕ですからいけます」
「こっちも元気バリバリっすよ」
「了解だ、徘徊しているソルジャーがいないか、クリアリング後、部屋に向かうぞ」
ここまでの戦闘である程度のスムーズな動きもできるようになり、少ない時間で周りの安全を確保する。巡回していたソルジャーを掃除しつつ、医療室の内部を確認する。
どうやら中には何もいないようだ。
「内部、クリア、ここら辺に敵はいないようだ」
「あっ、壁を見てください。」とローシャが指さす方向に壁が少しへこんでおり、赤色の発光ダイオードが付いた、所謂、壁に備え付けの金庫のようなものがあった。
左側に縦に長い長方形の差込口があり、上辺の上にRと書かれたものが2つ、Sと書かれたものが1つある。
「ちょうどいい、ここでカード使ってみますか?」
「最低ノルマ分のカードはもう集めきっているから、いいんじゃないですかね」とレオが。
「それじゃ、開封お願いします」とローシャに言い、カードを渡す。
最後のSカードを入れるとプッシュと金庫内の空気が外にでた音と、金庫の発光ダイオードが緑色に変わった。
開けると中には白い拳銃のようなものがあった。
取り出してみるとそれは銃の形をした注射器であり、シリンダには何か透明な薬品が入っている。また、他にもシリンダ単体が2本あった。
「内部の薬品については調べなくてはいけないですけど、期待できそうですね」とローシャが言い、注射器をバックに入れる。
「よし、戦利品も手に入ったことだし、奥に向かうか」と廊下の突き当り、多分この階層の最奥部であろう部屋の前に向かう。
「レオ、索敵頼む」
「了解」とレオが部屋の内部を少し開けた扉の隙間に小型のカメラを挟み込む。
「敵影はどうだ」
「多い。フローター3体、ソルジャーが4体、目視で見える。内部は倉庫になっているみたいで広そうだ。死角となっている所も多い。ここは正面突破するしかなさそうだ」
(そうか、ここで直接戦闘は避けられないか)と少しばかり不安がよぎる。
ここまでは戦闘と言っても先制攻撃に専念して、火力を集中させ、一方的に戦ってきた。
しかし、ここは正面戦闘、死ぬ可能性が今までよりもぐっと上がる。
だが、倉庫ということは潤沢な物資がある可能性も高い。
「ローシャ、ミンリ、直接戦闘は避けられないが、リターンも多そうだ。乗るか?」
と二人の方を見ると了解のサインで答えてくれた。
「俺、レオが前衛、ローシャ、ミンリは後方から支援してくれ、肉腫弾を使用する。レオ、ネイルの準備は?」といいながら、GHから提供されたバイオハザードマークの付いた弾薬の弾倉に交換する。
「もう換装した、いつでもいけるぜッ!!」
「こっちも準備完了です」、「ぶちかましましょう!!」と後ろで二人が答えたのが聞こえた。
「了解だ」と深呼吸をし「3、2、」と間を開けて
「突入‼‼」と無線越しで伝え、部屋に押し入る。
部屋内部に入ると正面右にソルジャーが4体、フローターが1体、左奥の方にフローターが3体いるのがわかる。
一体のソルジャーがこちらを向く、目があった。手に持った軽機関銃をこちらに向けてきている。
そのトリガーが引かれる前に発砲、銃器を持つ腕が破裂する。
こうすることで戦闘不能にさせる。他のソルジャーとフローターも侵入者が入ったことを気付いた。
レオ、ローシャ、ミンリの射撃音が重なる。皆、ソルジャーの銃器や腕を破壊する。最初のファーストアタックが成功した。
「レオ、右フローターァ‼」と射撃音にかき消されないよう声を上げる。レオはこちらの意図を理解し、フローターに向かってネイルを豪速で投げ飛ばす。
フローターの上半身、その装甲、肉をえぐる。しかし、それだけでは、フローターは倒れない。だか、十分すぎる。
装甲がはがれ、肉が露出している部分に三点バーストで弾を撃ち込む。そうするとフローターの体が破裂した。いや、自壊したのだ。
「右に寄る!!MOVING!!」と新たな射線を確保する。残ったフローターは3体、武装はショットガン。跳弾の危険がある。
「レオ!もう一回だ!」と合図を出すとフローターに向かってまたネイルが飛んでいく。
武装がはげた部分にまた撃ち込み、また体がはじけ飛んだ。
(立て続けのアークの使用、レオも限界に近いだろう、ここからは武装解除で戦う)
「武装破壊を最優先!レオも狙撃に回れェ!!」とレオの方をみる。やはり、かなり摩耗しているようだ。
弾倉をFMJ(対物用の弾丸)に変える。フローターもバカスカ、ショットガンを撃ちまくっている。
跳弾で頬が切れる。体にも鈍い痛みが奔る。8発ほど撃ったあと、弾が切れたのだろう、攻撃が止んだ。
その瞬間、4つの銃口からの総攻撃により、銃器、腕が破壊され、無力化に成功。最終的には勝利を掴むことができた。
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「全員、負傷の報告を」
「直撃なし、かすり傷です」とローシャ
「アーマーに損傷、体には傷は追ってないっす」とミンリ
「足に跳弾を喰らったが、ボディは無事だ」とレオがそれぞれ報告する。
レオの方を見ると確かに足に傷を負っており、バックから痛み止めを取り出し、服用している。
「レオは中央に、挟み込む形で陣形組んでこう、まだ油断できない」
倉庫の奥まで安全を確保するように、クリアリングをし、奥が行き止まりであることを確認する。
「よし、これで仕事は終わりだな。ここで、めぼしいものを拝借してからエレベーターに戻ろう」と戦闘で軽くなったバックパック内にめぼしいものを詰め込む。
倉庫というだけあって、銃器のパーツや機械の部品、何かしらの配線などのガラクタもある。奥の方には過去に使われていただろう、電子機器などの高価そうなものから優先的にバックに詰め込む。装備込みで90KGぐらいだろう。サービジョンの体幹補強システムとサイバーウェアによる筋力の増強によってそれくらいの重量であってもまだ動ける。
皆、それぞれ回収できたようだ。戻り道も敵を倒してきたが、注意を払いながら、何とかエレベーター前までたどり着くことができた。
エレベーターの扉が閉まり、上階へ移動し始めたとき、緊張が解けた。これで俺たちの仕事は完遂できた。
今回みたいな仕事は初めてやったが、企業お抱えの仕事をこなしていけば、その分、知れる情報も多くなるだろう。その中に俺が探しているものがあることを祈る。
一瞬、過去の記憶、いや情景が蘇る。大きく人としての形を失った死体だらけの中、切り裂かれた愛した者の躯を、血だらけの自身の手を。
ソルジャーやフローターの武器はかなり重く、重量当たりの価値が低いため持ち帰るにはコスパが悪い。基本は武装破壊で制圧するのでそもそも壊れてることがほとんど。