天上の人類ーThe celestial mankindー   作:ピエロギ

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前投稿したのが約三ヶ月前......うごごごご....申し訳ないです(┬┬﹏┬┬)


Juggernaut

 程なくして、エレベーターはロビーのある1階に着いた。扉が開かれると数刻前にいた安全地帯に戻ってこられたことを強く実感した。それは皆も同じようで、肩の力が抜けている。

 

 「3階担当、4名帰還」とロビー内にアナウンス音声が流れる。すると、GHの職員が出てきて

 

 「怪我人は、奥の医療室にて治療が可能です」と声を掛けられ、レオは職員の肩を借りながら運ばれていった。

 

 するとローシャが

 「――怪我しているなら治療室に行った方がいいと思うのですが...」と傷を案じる発言をする。

 「大丈夫、かすり傷だ。自分で治療はやれる。でも、気遣いは感謝する」と問題がないと返答する。

 

 「そうですか、もし、必要なことがあったらなんでも言ってくださいね。今回は助かりました。それとあまり無理はしないように」

 「了解。それじゃ、少しばかり休ませてもらおうかな。職員にカードを渡しておいてくれないか」と言って持っていたカードをすべて出す。

 

 「わかりました」といってミンリと共に離れていく。

 エレベーター近くの腰掛けに持ち物を床において、治療用具を出す。救急キットや神経ポリマー剤などなどを使い簡単な施術をする。

 

 慣れたもので、体の傷を少しずつ縫合しつつ、細かな傷は消毒していると誰かが近づいてくるのが感覚で分かった。その人物は大柄であった。

 

 「よ~、ルーキー、ご苦労様だったな!ずいぶんスマートに切り抜けたみたいだな」と俺たちが出てきた3と書かれたエレベーターホールの方を見ながら、しわがれた声で話しかけられた。

 

 相手を見ると、まずGHの兵士であること、注意深く観察すれば階級章のワッペンがいままでに見たことのない、つまり上級階級であることを意味している。

 

 「評価していただけるとは恐縮です」

 「なに、そんなにかしこまらなくていい。俺もこんな僻地で警護任務に追いやられた老兵さ。それはともかく、お前さん、A.R.Cを使ってないだろう」

 

 A.R.C ……Ancient Residents’ Coffin

 

 かの時代、第一人類と第二人類が争った際に使われた技術、遺物によって生み出されたものの総称である。レオのネイルやローシャ、ミンリのグレネードがそれに該当する。

 

 「ご明察の通り、使っていませんね。何分、私の適用A.R.Cは使い勝手のいいものではありませんので」と正直に答える。実際、俺はレオのネイルも扱うことができないし、ほとんどのA.R.Cの起動さえも不可能だ。

 

 「なら、今回の任務は適任だったな」とその大柄の男性は隣に腰を下ろした。そうして、俺たちが出てきたエレベーターホール、正確には中央にある円柱型の計測機を見ながら話を続ける。

 

 「大体4分の1といったところか……..ほとんどを銃器による戦闘。出てきた奴の損傷具合からほとんどを奇襲もしくは一方的な攻撃で、必要な場面のみに必要な手札を切ったお手本のような戦いだな」と口をニヤニヤさせながら話している。

 

 あの計測機はそれぞれの階層の放出された虚素を示しており、A.R.Cの使用で上昇、一定値を上回るとその階層は緊急プロトコルに移行すると最初のブリーフィングで伝えられている。

 

 「耳が聞こえないものたちでしたから、慎重に制圧することは私たち以外でも簡単にできたでしょう。それに他のメンバーも優秀でしたから、うまくいったのではないかと思います」と率直な感想と何だか嫌な予感がしたのでこのまま話を切り上げて立ち去ることにしようと考えていると

 

 「確かに相手が聴覚を失っているというアドバンテージは優位に働いただろうが、それを今日、人数合わせで組んだパーティ、しかもハンターの慣れない屋内での戦闘をここまでやれるのは場数を踏んだ指揮官(コマンダー)でないとできないと思うがな」とさっきよりも口角を上げながら話す。

 

 「どうして、私が指揮したと?他のメンバーである可能性は?」と問う。

 「なに、先ほどの会話の仲間との聞いてね。短い間にずいぶんと信頼を置かれているようじゃないか?それに君の姿勢は死線を潜り抜けてきたもの特有のものだ」と言葉を切り続けて

 「ハンターというより協会務めの純粋なサーヴレイブ(Servlave)に近いな」と言われる。

 

 サーヴレイブは都市の“様々な仕事”を請け負う者たちの総称である。ハンターもサーヴレイブの一種であり、武力を使用するため、形式的に登録されている。

 

 「俺が何でも見境なく請け負う便利屋に見えますか?」と返してしまった。先ほどのサーヴレイブ達は同業者の中では、地位として高い。だが、それは、多くの血によって得たものだ。

 

 「いや、全く見えない」と強い口調で言い返された。

 「それならなぜ?」

 「なんでだろうなぁ。おれでもわかんねぇーんだよ。これが。どことなく雰囲気が似てるんだよな、翠煌の涙に」とかなりのビックネームが出てきた。

 

 「ブリアークラスの人間に似ていると言われるのは光栄ですね」と少し考える。翠煌の涙はシティ所属であの災害に……と逡巡していると

 

 「あぁ、特定人蝕災害。月蝕禍星が起こってもう4年か。あの時に亡くなったブリアークラスのサーヴレイブも多い。シティ以外のところだと刻む静謐、瑞兆の懇望者、黒き遺灰と晧白の紡織が有名か。つっても確かな情報ってわけでもねぇ」と遠い目をしながら話す。

 

 「少し話が脱線したな。まぁ、俺がいいたいことはお前のことを期待してるってことだ」というらしく、いろいろと聞かれた。

 今までどんな仕事をこなしてきたかとか、放浪の旅をしていたときの別の土地の話だとかいろいろだ。

 

 「ここに来る前に寄った都市、要塞港湾ダイラタンシーで見た巨大捕鯨船スターバックはそれは見事なものでしたよ。あのあたりは溶接技術と特殊な海産資源によって….」と話しをすれば、満足したのか

 「そろそろ、仕事に戻る」

 

 と言い残して去っていった。自由奔放な人であった。あんな上司では部下は大変だろうと思ったが、それは俺には関係のないことだ。

 

 いくらか時間が流れると4階のエレベーターが動いた。

 

 「4階担当4名、帰還」とアナウンスが先ほどと同じように流れた。ぞろぞろと中から人が出てくる。彼らはブリーフィングであった人物であったが、血を流し、仲間に肩を持たれている者たちもいる。

 

 彼らを医務室まで運ぶのを手伝うことを決断するのにためらいは起きなかった。傷を負っている人に代わり、肩を持つ。

 

 「傷が深い、医務室に運ぶ」と言うと

 「わりぃ」と疲労と絶え絶えの息を吐きながらでた短い返答が帰ってきた。

 彼らを医務室に運び、職員に引き渡す。彼らは慣れた手つきで負傷者を介抱している。

 

 医務室を後にすると外でレオが待っていた。

 「怪我は大丈夫か」とレオに聞くと

 

 「こっちは大丈夫だったぜ、なんせ、ジェネシスのアンプル剤を打ってくれるから、脳みそが無事なら蘇生できるって驚きだよな」

 「あぁ、中核企業様様だよな」

 「あと、やっぱりマメだよな、あんた。エレベーター前で待ってたの負傷者が出てきたら助けるためだろ」

 「こうして、少しでも繋がりを広げておけば、もしもの時に頼み事しやすいだろ?」

 「それじゃ、俺をあの時助けたのも、打算ありきの行動だったのか?」と聞く。

 二年以上前のレオとの出会いについて思い出す。

 

 「情熱的な出会いだったよな、危機的状況に白馬の騎士様ってお前が男じゃなかったら惚れてただろう」

 「騎士様ってお前はいつからテンプル社の実働部隊になったんだよ」と半笑いで聞いてくる。

 

 「やめてくれ、あんな狂信者連中と一緒にされたら困る」とこっちは真剣な顔を装って返すとレオは腹を抱えて笑った。

 「無駄話はあっちでもできる、次は手伝ってもらうぞ」

 「了解」とエレベーターホールに向かう。

 

 

 エレベーター近くにある待合室には、先ほど話した上級兵士がいた。

 「おぉ、さっきぶりだな、ルーキー」

 「ええ、医務室にいった仲間と合流してました」

 「おぉ、なら丁度いい、実は話したいことがあってだな、今、GHは人手不足でな、少しでも手練れが必要だ。それで、お前たちに専属契約の…..」と言葉を紡いでいる兵士の携帯端末が振動した。

 

 「悪い、すぐに出るのが決まりでな」と言うと、俺たちに背を向け、無線に出た。

 少しの問答をしたかとすると、その兵士は表情が険しくなっており、

 「お前たち、少し手を借りるぞ、ついてこい」と短く、指示が出された。

 

 6階層に続くエレベーターの前まで行くと待機するように言われた。

 「何があったんですか?」と聞くと説明すべきタイミングと考えたのか、次のように説明された。

 

 「6階にジャガーノートが出た。ツイてない、不意打ちを食らったんだろう。4名の内、1名が瀕死、もう一名が重傷者を連れて撤退、残り2名が奴さんの足止めをしている。お前たちは上ってきた2名を医務室まで運んでもらう」

 

 6階を担当していたのはライ、そしてエレノアだったはずだ。そう考えながらも、担架を準備し、いつでも医務室に運べるように準備をする。

 

 本当に短い時間であったが、時が遅く感じた。そしてついにエレベーターがこの階に目指して昇ってくるのがわかった。

 

 ついに、昇降機の扉が開かれた。

 

 その中はどす黒い赤で満たされていた。床は血と強化骨格を動かすための油が混ざり、真っ黒になっており、今もなお、液体が流れ出ている。その流れ出ている元は真っ赤な断面であった。

 

 本来は腕があったであろう肩甲骨あたりがバッサリ切られている。彼らはレオとエレノアと一緒にいた者たちであった。

 

 「―――ボッサっとすんな!早く運べ、衛生の心得ぐらいあるだろう!」と声があの上級兵士から掛けられ、今自分がなにをすべきかを考え、選択する。ひどい出血、いち早く担架で運び、医務室の治療を受けさせる。

 

 俺と兵士で協力して、慎重に、かつ速やかに運ぶ。医務室の扉を開けると前に入った時にはなかった仰々しい機械があった。メディックの兵士たちは設備の準備をしていたのだろう。彼らの指示に従い、急患を専用の台に置いた。

 

 さっき運んだ人物と一緒にエレベーターに乗っていた負傷者は、レオが背負ってここまで運んできた。そっちは四肢はあったが内臓に達する刺し傷を受けており、立っているのがやっとであった。

 

 できることはやった後に医務室を後にし、レオと会話をした。

 

 その後に自身の持ち物から青色の2発のシェルと無骨なソードオフショットガンをサイドアームとして携帯する。

 

 俺たちはすぐに6層に向かうためのエレベーターへ向かった。その道中、先ほどまでに一緒に急患を運んだ上級兵士がエレベーターの前に立っていた。

 

 「さっきはただ働きさせてしまってすまなかったな。感謝する。お前たちの仕事はもう終わりだ、それとも何かあるのか?」と聞いてきた。

 

 「救助には向かわないんですか?」

 「俺たちは原則、階下には立ち入らないよう規則で決まっている。可能性があるのは5階の奴らだろうが、消耗している状態で人命救助なんて行わないだろう?」

 

 「つまり、見捨てる。そういうこと認識でよろしいんですね」

 「あぁ、あれほどの手練れをみすみす見捨てるのは惜しいが、こぼれ落ちていくものを掬うがあまり、本来は持っていたものを失うのでは本末転倒だからな」とのことだ。

 

 「わかりました。本契約時に死亡した際についても自己責任ということになっていましたから残念ですね」とここで言葉を区切り、本題を切り出す。

 「ですので、私たち二人が救助にいくことにします」と言うと目の前の男は目を丸くして

 

 「馬鹿か、お前ら、こんな仕事してるんだから人の生き死にぐらいとんと経験しているだろうに、それに契約時に任された仕事以外を行うのは….」

 「ええ、契約違反ですね、しかし、あなた、先ほどお前たちの仕事はもう終わりだとおっしゃっていましたよね。私たちの仕事は担当の階下の掃討、終了した後の守秘義務については当然守っていきます。しかし、それ以後の行動については詳しく明記されていなかったはずです」

 

 「なにを屁理屈を、こんなことで評価を下げたら今後に仕事の依頼は来なくなるぞ」と語気を強めて詰め寄ってくる。

 「確かに、GHからの評価が下がることは本意ではありません。しかし、GHが贔屓にしているハンターを救助したら情状酌量の余地はありませんか?」

 

 「ハッ、ここまで口が回るとはな、お前の本当の目的はなんだ?人命救助ってわけないだろう?」と今度は訝しげな顔となり、問いただそうとしてきた。

 「前任者の翠煌の涙の情報」と短く答える。

 「死人の情報に命懸けるってマジでいってんのか?」

 「俺はいつもマジですよ、ほんの少しでも知りたいことなんです」と相手の目を見て返す。そうすると瞳孔がピクリと動くのが見えた。

 

 すると、その上級兵士は道を開け

 「お前たちが野垂死のうが俺は関係ねぇ、だが、ライとエレノアは死ぬには勿体ない,お前たち、あいつらを救ってくれ、俺が持つ翠煌の涙の情報が報酬の依頼だ」と言う。

 

 「ありがとうございます」と礼をいって横を通りすぎ、エレベーターに乗る。階下に向かうボタンを押す前にエレベーターの前に立っていた上級兵士が口を開いた。

 「煎餅だ。翠煌の涙はエレノアの姉だ、これ以上は本人から聞け」と伝えられると鉄の扉が閉まり、階下へ向かうため昇降機は下っていった。

 

 

 レオが申し訳なさそうな顔しながら「あんな出まかせ言わせてすまん」と言う。

医務室を出たあとにレオから提案されたのだ。世話になったエレノアを助けたいと。

 

 「全部出まかせってわけじゃない、翠煌の涙についてはいつか知る必要があった。今の俺たちじゃアクセスできない情報だったからな。それに、勝算がないってわけじゃない」と先ほど持ってきたソードオフ、そのバレルの中には青色のシェルが入っているものを見る。

 

 「それに、もし本当にヤバかったら俺がアレを使うから問題ねぇ」と言うとレオの表情は曇る。

 「やめてくれ、本当にそんな状況になったら俺のことは見限って逃げてくれ、あの力は自分のためだけに使ってくれ」と返された。

 「あぁ、わかったよ」と短く返答すると話を変えるためにさっき聞いたことについて話題を出す。

 

 「エレノアが翠煌の涙の姉妹とは驚いた。そんなこと、他の同業者や関係のある人間からは聞いたことがない」

 「確かに、少し奇妙だ。隠し事にしちゃうまくやりすぎだと思う」とレオが顎あたりを触りながら答える。

 

 「姉妹というのも額面通りに受け取るのもやめておいたほうがいいかもしれん、特にブリアークラスの情報は注意して精査したほうがいい」

 そうこうしていると、エレベーター特有の慣性が体にかかる。目的の階層に着いた。

 

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