天上の人類ーThe celestial mankindー 作:ピエロギ
「クソッ」と吐き捨てる。目の前の丸みを帯びたフォルム、非常に厚い外部装甲をもった旧時代のスーパーアーマーがその手足から生えた凶悪なかぎ爪でもってこちらに急接近してきた。
脚部のA.R.Cを起動する。_迅速電脚_高速移動を可能にするA.R.Cでもっても奴_ジャガーノートの直線移動においては奴のブースター加速の方が速い。
ドドドドドドドドド!と空気を揺らす爆音が、奴のブースター装置から鳴り響く轟音。
空気抵抗を減らすため、その丸いボディを縮めて一直線に距離を詰める。そして、標的に近づいた時に一閃、その爪を俺に振り下ろす。
すんでの所で急旋回をし、攻撃をかわす。速度はあっちが上だが、旋回能力はこっちの方が上であった。しかし、完全には避けることは出来ず、アーマーの上に着ていたベストに入れた弾倉がきれいに断ち切られていた。
攻撃を躱した男、ライは奴が旋回してまたこちらに突進をするまでの間に思考する。
(――マズイ、さっきの攻撃、出会った最初のときに躱したやつより鋭くなっていやがった。学習型か?...このままじゃジリ貧。しかも)とA.R.Cである自身の脚を見る。
(A.R.Cの使用限界もある、現状、奴の装甲は通常兵器じゃ豆鉄砲だ。望みがあるとすればエレノアだが、もしあいつが回避のできないエレノアに標的を絞ったら本当に終わる…)
ライは再び、加速体勢となったジャガーノートを見定める。こいつが現れたのはエレベーターがあるほうであった。つまり、俺たちが必死に
見落とした場所などない、すべての部屋は探索していた。ゆえに慢心していた。まさか、どこかの部屋の中で
「こっち、廊下を右!雑魚は片づけたわ」とサービジョンごしにエレノアから連絡がきた。エレノアが先行して他の敵性存在を排除、俺がジャガーノートの相手をして時間を稼ぐ。広い部屋に入れれば、そのまま奴の隙をついて入れ違いを狙ってエレベーターに向かうのが算段だ。だが、エレベーターまであいつが追ってくる可能性も考え、奴のブースターを破壊しとくのがベストだ。
指示の通りに右へ進み、後ろから追ってくる追跡者に気を配りながらひた走る。そしてついに、待っていた連絡が入る。
「倉庫部屋が次の廊下を左折した後にあるわ、そこで決めましょう」と
「わかったッ!」と返し、紙一重でジャガーノートの攻撃を躱したあとに左に抜け、扉を蹴り開ける。中は金属製の棚といった障害物や死角を付ける場所がある適した場所だ。また、床にはこの部屋にいたであろうフローターが転がっていた。
「エレノア、どれくらい消耗してる?」と問うと
「大丈夫、一発ぐらい矢は放てるわ」と額に汗をにじませながら答える。
「俺が奴の隙を作る。奴が攻撃するとき前腕を大きく上げる。そのときに露出する駆動装置を狙ってやれ」と言うとエレノアは狙撃しやすい場所に移る。するとすぐに、扉が切り刻まれた。しつこいストーカーの登場だ。
こっちを視認したのかすぐに突進体勢になった。また、ブースターの加速音が鳴り響く。目の前の障害物を気にもせずに一直線に向かってきた。
ギリギリまで引き付ける。最大限のチャンスをエレノアに掴ませるために。
目の前がスローになる。相手の動きが寸分違わずに見て取れる。
_加速スピードが上昇する_そして_かぎ爪を振るうために腕が動く__
と今までと同じく腕を広げると予想したが、その広げ方はいままでと違って狭い。
嫌な予感がする。まさか……
「こいつッ!フェイントだ‼撃つな‼」とエレノアに向かって声を上げたがもうすでに遅い。
エレノアはその矢を放っていた。その軌跡は正確無比でそこにあったであろう構成部品を打ち抜いていただろう。しかし、その矢は引っ込まれた巨大な手によって防がれた。
「なんでッ・・」とエレノアが短く言ったのが聞こえた。相手は自身の手を貫通した矢を見るとすぐにエレノアの方に向き、方向転換した。
「走れエレノア‼」と逃げるように指示を出す。すぐに奴が入ってきた倉庫の出口扉に向かうがジャガーノートは加速の準備を完了させていた。
(ヤバい、全速力でA.R.Cを使っても庇うこともできない!!)と今までの経験からわかった。様々な後悔が目に浮かんだ。だが、それでも走る。全力で命を張る。
しかし、現実は無常であり、背を向けて走るエレノアに、その凶刃が襲い掛かろうと今度は上腕を大きく開き、質量を持ってして切り刻もうと振るわんとしていた。
その時、二人の人影が飛び出し、短く
「耳塞げ‼」と声を張り上げながら、そのうち一人が持っていた小さな銃から弾丸が発射された。