天上の人類ーThe celestial mankindー 作:ピエロギ
ライの声から反射的に、レオ達のいるほう、脅威が存在していないほうへ限界まで力をこめてダイブをする。
何かが背中をかすめ、左足の太ももの下、鼠径部から膝あたりから鋭い痛みが、シグナルとして脳に送られてくる。体を捻り、何が起こったのかを確認すると、完全に倒れたと思ったジャガーノートが腕だけを辛うじて動かしながらこちらに追撃しようしていた。
(こいつ、死んだふりをッ‼)
今ここでの最優先の選択は、とコンマ1秒以下の時間で考え出す。それは、こちらに向かっているレオにネイルと渡すことだろう。
滞空している間にネイルをレオがいる方へ投げる。
そして携帯している小銃を構える。
もうそろそろ地面に背面が着く。
鈍い衝撃が背中を襲う。目の前にはこちらを刺突しようと爪が迫っていた。だが、
「させねぇーよ‼」とレオが俺の前に入り、ネイルを奴のかぎ爪を間に噛ませる。しかし、死に体であっても奴の出力するパワーは人間のそれとは比べ物にならない。レオが押し切られそうになっている。
すぐに、奴の腕の関節部、比較的に装甲が薄い部分に射撃をする。何本かの配線を打ち抜き、火花がスパークする。
だが、奴の勢いは収まらない。ミシミシとネイルが音を立てている。もともと、A.R.Cの強度はかなり高い。虚素によって素材となっている物質以上に硬度と強度が高くなっているからだ。
レオは強度を高めるため、さらにネイルに虚素を送る。だが限界も近い。
そのとき、ライが加速しながら、奴の顔面に向かって回し蹴りを炸裂される。非常に大きな、巨大な鋼鉄と鋼鉄が高速でぶつけられたような音が響き渡ると奴はついにこと切れた。
「おい、レオッ!!」と相棒の名前を呼ぶ。だが、返事は帰ってこなかった。持っていたネイルを落とし、膝から倒れる。痛む足を引きづりながら、腕の力で匍匐前進をして近づく。
完全に気を失っている。
上まで戻ることができれば回復できるはずだ。と考え、やっと危機は去ったと思った。だが現実は非情であった。
廊下にある電灯が赤色に変わる。そしてサイレンのようなアラームが鳴るとアナウンスが流れた。
「6階層にて、虚素の異常な上昇を確認、150秒後、緊急プロトコルを執行します。戦闘員は所定の指令を遵守し、非戦闘員はマニュアルの指示に従ってください。繰り返します、6階にて…」
(クソッ、戦闘で散々A.R.Cを使用したが許容限界に達したのかッ!?)と考えていると
「マズイ!早くエレベーターまで戻らねーと全員死ぬッ!」とライがこっちに向かって叫ぶ。
(今、俺たちの中でまともに走れるのはライだけだ。ライの脚なら二人を背負っていけるだろう。つまり、誰かがここに残らないといけない)と一瞬で考え、決断を下す。
「ライ!俺を置いて行け‼、元々お前たちを助けるために来たんだ。レオを背負って行ってくれ‼」と叫ぶ。
するとライは歯を食いしばり、ほんの少しだけ目をつぶった。だが、すぐに目を開けた。決断を下した特有のまなざしをその瞳から感じられた。こちらの意志を汲んでくれたようだ。ライはレオを背負うと短く
「こんな不甲斐ないことになって申し訳ないッ」と言うと走り去っていった。
「不甲斐ないのはこっちだ。奇襲をまんまに受けちまったんだからな、それに俺だったら、もしかしたらなんとかできるかもしれねぇ」ともういないライに向かって小さく答えた。
腰に付けた医療ポーチから医療用ジェルを取り出し、脚の傷に思いっきりつける。ジェルを付ける際に痛みが全身を走るが、ジェルには麻酔成分も含まれており、徐々に痛みが引くだろう。それに、これから引き起こされる痛みと比べたら些細なものだろう。
次に医療品の詰まったサイドバックから、小さなケースを取り出す。中には注射器とオレンジ色のシリンダーが入っており、注射器にその液体を入れ、肩、僧帽筋あたりから注射を行う。強心剤だ。かなり強力な。
一瞬、自分自身がどこか遠くへ飛んだような感覚になる。徐々に意識が鮮明になってきた。心臓の音がうるさい。血が沸騰しそうだ。
「緊急プロトコルまで60秒前、非戦闘員は戦闘予測地点から離れてください。変遷は30秒後に行われます」とアナウンスが新たな情報を告げる。
強心剤のおかげで、なんとか壁によりかかりながら立つことに成功する。息も絶え絶えだが、準備をしなければならない。
自身の体内に埋め込まれたA.R.Cの起動準備をする。前までに掛けていた制限を、コマンドを唱えて解除していく。
「変遷開始」とアナウンスが流れると、様々な方向からの慣性がかかる。今自分のいる廊下自体が動いているのだ。一つ確実なのは、今いる所はここより地下に向かっている。
(ここ、地下6階が最下層じゃないんか)と思ったがもう取返しがつかない。
「変遷完了」とアナウンスが流れる。廊下であったこの部屋は、2つの巨大なコンテナのある、今までこのバンカーで見たこともない巨大な部屋の一部となっていた。
その巨大なコンテナから派手なスパークが上がる。中に入っていたものが外にでるため、金属製のコンテナをせん断しているのだ。
二つのコンテナから大きな影が出てきた。先ほど戦ったジャガーノートと類似している。だが、持っている武装は大きく異なる。まず肩には、巨大な機関銃となにかしらの砲が装着され、手のかぎ爪の代わりにビームサーベルのような発光している剣状のものが付けられていた。装甲も先ほどジャガーノートよりも厚く感じる。
その二体の旧時代兵器は、ここに運ばれたであろう哀れな侵入者を見定めると戦闘態勢に入った。
明らかに上で戦ったものとは格が違うと確信した。もう、出し惜しみはできない。
そうして、自身のA.R.C、使ったのは1年以上も前か、に自身の虚素を送る。するとある言葉が脳内にリフレインする。
「お前はいつも甘い、爪も性格もだ」という言葉だ。レオではない。それより以前の“仲間だった“ものの言葉だ。
(確かに、俺はいつまでたっても甘い。それは変わらなかったな)と自嘲気味に答える。二体の巨兵はこちらに近づいて白兵戦を仕掛けるものと遠距離で攻撃するものに分かれた。そして、今まさにこちらに攻撃を加えようとした時に、短く、だが力強く、A.R.Cの起動コマンドを発語する。
≪黒葬≫と
ついにここまできた、、、、