クローゼットからミカ出てきた【完結】   作:おとしあな

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ミカ、ハッピーバースデー。君に幸あれ。


誕生日おめでとう

 ゴールデンウィークをバイトして遊んで帰省してだらけて……と存分に満喫してからの久々の大学。一日を終えた頃にはどっと疲れていて、ミカのいる家に帰ってようやくほっと一息ついた。

 夕飯を作ろうとキッチンに立つと、当然のようにミカも並んだ。すでにエプロンをつけて手も洗っている。

 

「はぁ、ゴールデンウィーク明けの講義ってやっぱりしんどいわ。もっと休ませてくれって思っちゃうよ」

「あはは、お疲れ様。夕飯作るの手伝うよ」

「ありがと。何食べたいとかある?」

「乙花が食べたいものにしよ? 今日はあんまりお腹空いてないから私の分は大丈夫」

「食べてきたの?」

「うん。ケーキだから、あんまり食事したって感じはしないんだけどね」

「ケーキかぁ。なんかイベントでもあった感じ?」

「……あー、うん。まあね」

「今日ってなんかあったっけか。確かイースターってもっと先だよね?」

「え、イースターならもう終わったよ?」

「違ったか。ってことは誰かの誕生日かな? それとも普通に食べたくてケーキ買った?」

「あ、うん、その……私の誕生日、みたいな?」

「は?」

 

 マジか。何も用意してないんだけど。

 

「お腹あんまり空いてないんだよね?」

「今はあんまりだけど数時間経ったらたぶんお腹空いてくると思う……。その、全然気にしなくていいんだからね? そんな、祝ってもらえるほどのものでもないしさ」

 

 所在なさげに縮こまったミカが、目線をあちこちに揺らしながら言った。いや、どうしてそんな気まずそうなんだろう。

 

「なんで? ミカの生まれた日がめでたくないわけなくない? 誕生日だったら堂々と『本日の主役』です! って胸張りなよ」

「いや、でも……」

「でももだってもないんですぅー。わたしが祝うって決めたんだから大人しく祝われて」

 

 今家に何があったかなぁ。……うん、なんとかなるかも。食べきれなかったら最悪わたしが平らげよう。

 

「よし、一緒にケーキ作ろう!」

「えぇ?」

 

 そうと決まれば準備しなくちゃ。

 

 ボウルを二つ用意した。それぞれに卵と牛乳、そして魔法の粉ことホットケーキミックスを投入して、ミカにバトンタッチした。

 

 泡立て器を片手に、もう片手にボウルを持ってミカがガシャガシャとホットケーキミックスを混ぜる。その手つきに迷いはない。

 

 あれ? 誕生日の人をなんでわたしは働かせてるんだ? ……まあミカが楽しそうなので良しとする。

 

 ウインナーを切ってフライパンで焼いておく。そこにボウルに入ったホットケーキミックスの片方を流し込んでピザ用チーズを投入。ついでにマヨネーズもかけたら蓋をして放置。

 もう一つのボウルには、電子レンジで溶かしたチョコをホットケーキミックスに投入して、さらにミカに切ってもらったバナナも入れた。

 さっきのウインナー入りホットケーキを皿に移し、フライパンを軽く洗って拭いてチョコ入りホットケーキを焼き始める。

 そしてチョコバナナのホットケーキも無事に焼き上がった。

 

「完成だね!」

「ごはんアンドおやつホットケーキです。……まあ、その、ケーキの範疇だよね? これも」

「もちろん! こういうケーキも新鮮ですっごく嬉しい! ありがとう、乙花」

「えへ、どういたしまして」

 

 いつものようにちゃぶ台に運んでいただきますと手を合わせる。

 

「無理して今食べなくていいからね。あとで食べてもいいし、明日の朝ごはんにしてもいいし」

「うん。でもせっかくだから今ちょっと食べちゃう」

 

 それはそれとしてわたしはお腹が空いたので遠慮なく夕飯にさせてもらおう。

 

「あ、そうだ。せっかくのバースデーケーキならロウソク欲しいよね。あったかな……?」

 

 買った記憶がないからたぶんないだろうなぁ。探してみるも案の定ロウソクなんてうちにはなかった。

 

 あ、そうだ。いいこと思いついた。

 

 買ったお菓子を入れている棚を漁る。幸い、お目当てのものはすぐ見つかった。

 チョコバナナのホットケーキのほうに、持ってきたお菓子……ポッキーを刺していく。

 

「じゃーん。ロウソク代わりにポッキー立ててみた」

「お、おお? 乙花ってば面白いことするね〜」

「そう? でも代用品だとこれくらいしか思いつかなくて。ロウソクと違って火はつかないけど」

「いや、これはこれでアリだよ!」

 

 早速ホットケーキを切り分けようとしたら、ちょっと待ってと制止された。

 

「写真撮るから! まだ切らないで」

「分かった分かった。……せっかくだしわたしも撮っちゃお」

 

 ミカとホットケーキを画角に入れてスマホのシャッターボタンを押す。真剣にホットケーキの写真を撮るミカは自分が撮られたことに気づいていないようだ。

 

 切り分けた自分の分は食べ終えて、ミカが食べきれなかった残りにラップをかけて冷蔵庫にしまう。

 

「で、その……ミカの誕生日プレゼント、なんにも用意できてないんだよね」

「ホントに大丈夫だから! ケーキ作ってもらったので十分嬉しいし! 気にしないで、ね?」

 

 そうはいかない。だってミカの誕生日だもん。知らなかった、というか知ろうとしなかったのは完全にわたしの落ち度だ。

 なにかないかな……今から自転車を飛ばせば駅前のお店もまだやってるはず。いやでもそんなすぐには良いプレゼントを思いつかない。

 せめて一週間くらい猶予があればよかったんだけど。

 

「……あ。そういえば」

 

 少なくとも渡せるものはあった。

 あまりうまくできなかったからミカに渡すつもりはなかったのだが、何もないよりはマシだろう。

 机の引き出しを開けて、先日完成したばかりのそれを取り出した。ミカは不思議そうにわたしを見ている。

 

「だいぶ拙い出来だし、包装紙も用意できないんだけど……よかったら、もらってくれる?」

「……えっ」

 

 手渡すとミカが目を白黒させていた。

 

「可愛い……。もしかしてこれ、乙花が作ったの?」

「まあ、うん。ミカからもらった隕石をペンダントに加工してから手芸にハマってて」

 

 ビーズを編んで作ったチャームだ。リボンの付いたそれは、バッグに付けてもいいし部屋に飾ってもいい。少し不恰好なのがやっぱり気になるけれど。

 

「ほんとにもらってもいいの?」

「そりゃもちろんどうぞ」

「ほんとにほんと? 返せって言われても返さないよ?」

「煮るなり焼くなり好きにしてください。それはもうミカの物です」

「ありがとう……大好きっ」

 

 片手に大事そうにチャームを握ったミカからぎゅっと抱きしめられた。なんだかミカが鼻声な気がする。

 ……泣いちゃうくらい喜んでもらえたなら、それ以上に嬉しいことはない。

 

「えっと、また今度ちゃんとしたプレゼント用意するから、今日はそれで勘弁してね」

「やだ」

「えっ」

「これがいい」

「えっと……?」

「これじゃなきゃ嫌だ。せっかく乙花の手作りのアクセがもらえたのに? これ以上のプレゼントなんて存在しないから」

「ええー……?」

「とーにーかーく! 本当に本当に嬉しいんだから! ありがとう乙花、このお返しは絶対する!」

 

 別にそんなに気にしなくていいのに。

 だって、ミカがこうやって来てくれること自体がわたしにとってはプレゼントみたいなものなんだから。

 ……まあ、でも、ミカからなにかもらえたらきっとすごく嬉しいんだろうなぁ。実際隕石をもらったときめちゃくちゃ嬉しかったし。

 

「そうだ、せっかくだしこれ付けてよ」

「どこに?」

「翼」

 

 あ、そうなるんだ。てっきりバッグとか携帯とかに付けるのかと思ってた。

 確かにミカの翼にもたくさんアクセサリーが付いてるし、羽があるとそうなるんだ。

 

「どうやって付ければいいの?」

「もうちょいこっち寄って……」

 

 チャームを渡され、その手を右の翼の方に導かれる。柔らかな羽根が指先に触れた。そのまま羽根の中に指が沈み込む。

 

「もう、くすぐったいってば」

「あはは、ごめんごめん」

 

 謝りつつ撫でるのをやめない。いつまででも撫でていられる手触りだ。きっとすごく気をつかってお手入れしているのだろう。

 ……セクハラとかにならないよね?

 

 さすがにそろそろミカの目が険しくなってきたのでチャームのストラップ部分を翼の上部にくくりつける。

 

「痛くない?」

「大丈夫!」

「あとで自分で調整してね」

 

 ミカが鏡でチェックしている。どうやらお気に召したらしく、大きく頷いた。

 

「本当……ありがとうね」

「こっちこそありがとうだよ」

「……何が?」

「生まれてきてくれて、ありがとうってこと」

 

 

 

 

 

 

 今日は朝からパーティーのためにシャーレのオフィスは大忙しだ……と、聞いている。なんで伝聞の形かって、今日に限って私がシャーレの当番から外されてしまったからだ。

 

 先生が言うには、お偉いさんが来るからどうしてもノウハウの分かる生徒が当番にいなくてはいけないとかなんとか。

 先生が乙花だと分かって以来、ほぼ毎日のようにシャーレで当番をしていたから正直に言うと少し寂しい。

 

「はぁ……なんで今日だったんだろ、よりによって。コハルちゃんもそう思わない?」

「そ、そうですね?」

 

 なんで私なんだろう、とコハルちゃんの顔に書いてある気がする。

 当番じゃないからといってシャーレのビルの中にいてはいけないなんてことはないだろうと、シャーレに併設されているカフェに入ったらたまたまそこにコハルちゃんがやってきたのだ。

 せっかくなので相席しているが、こうも緊張されてしまうとなんとも言えない。

 

「えっと……ミカ様はなにか頼まれますか?」

「とりあえずアイスティーかな。コハルちゃんこそ何頼む?」

「私は……私も同じ物で」

 

 ほどなくしてアイスティーが二つ運ばれてきたが、なかなか会話が弾まない。それにコハルちゃんはチラチラとスマホをチェックしている。

 無理やり相席にするんじゃなかったかも。コハルちゃんだってカフェでやりたいことがあったのかもしれないし、申し訳ないな……。私からだとやっぱりどうしても断りづらかっただろうし……。

 そんな風に一人でぐるぐると考え込んでいると、コハルちゃんが「あのっ!」と声を上げた。

 

「あの時のこと、ずっとちゃんとお礼が言いたくて……」

 

 急にどうしたんだろう。心当たりがないからちょっと困惑してしまう。

 

「私のこと、助けてくれてありがとうございました!」

「……えっ。どういたしまして?」

「遺跡跡で助けていただいた時、ミカ様にちゃんとお礼が言えずじまいで」

「そういえば、そうだったっけ」

 

 思わず口元が綻んでしまう。そんなこともあったなぁ。

 

「でもお友達を助けるのは当然のことだから。むしろ、よく知らない誰かのことを助けられるコハルちゃんの方がすごいと思うな、私は」

「え? そんなこと……」

「私こそ、ずっとコハルちゃんにありがとうって言いたかったのかも。あの時は本当にありがとう、コハルちゃん」

 

 コハルちゃんが目を丸くしている。きっと私を助けたって自覚もそんなにないんだろう。

 

 私、いろんな人に助けられてばっかりだ。コハルちゃん、ナギちゃん、セイアちゃん、先生……乙花。他にもたくさん。

 

 そんなみんなにたくさん私が助けられてきた分だけ、私も誰かのことを助けたい。それが私の贖罪でもあり、恩返しのやり方だと思うのだ。

 

 ふと、スマホに目を落としたコハルちゃんが立ち上がった。

 

「ミカ様、少しついてきて欲しい場所があるんですが……」

「いいけど……どこ行くの?」

 

 ちびちび飲んでいた紅茶を飲み干して立ち上がる。お会計を済ませてコハルちゃんの後を追えば、オフィスの方へずんずん進んでいく。

 

「待ってコハルちゃん、今日のシャーレは大事なお客様がいらしてるから立ち入り禁止のはずで」

「大丈夫です」

 

 ついに先生のオフィスの扉の前までやってきてしまった。さすがにこれ以上はまずい。コハルちゃんが何を考えているのかはわからないけれど、早く引き返さないと。

 だけど、静止する間もなくコハルちゃんが扉を開けた。

 

 破裂音。

 

「「ミカ(さん/様)、お誕生日おめでとう!」」

「──え?」

 

 破裂音の正体はクラッカーだった。紙吹雪とリボンが舞い散る。

 

「さあ早く座って、本日の主役」

「えっ、えっ?」

 

 あれよあれよと言う間に『本日の主役』と書かれたタスキと王冠を被せられ、椅子に座らされる。

 オフィスの中は友達でいっぱいだった。学校問わず様々な子たちが集まっている。

 

 見渡す限りパーティー仕様だ。

 壁は紙鎖と風船で所狭しと装飾されている。ホワイトボードに可愛い筆跡で「HAPPY BIRTHDAY MIKA!!!!」の文字が踊っていて、デフォルメされた私のイラストも描かれていた。

 目の前の机にはめちゃくちゃ豪華なケーキが置いてある。乗せられているチョコプレートには「ミカちゃんお誕生日おめでとう」の文字が。他の机にも所狭しと料理が並んでいる。

 

 ここまで来て、ようやく実感が湧いてきた。

 

「サプライズパーティー、ってこと?」

「はい!」

 

 笑顔のコハルちゃんが答える。

 

「実は私が足止め兼誘導役でした」

 

 だからスマホをちょくちょく見てたってこと?

 

「やあミカ、サプライズされた気持ちはどうかな」

「うまくいったみたいでよかったです。……バレるんじゃないかと冷や冷やしていました」

「二人とも……」

 

 セイアちゃんとナギちゃんが私の前に立った。

 

「二人が企画してくれたの?」

 

 二人とも首を横に振った。

 

「こんな大々的にミカの誕生日を祝うのは、今のティーパーティーには無理だよ」

「ミカさんこそ、企画したのが誰かなんてもうとっくに分かっているのでは?」

 

 うん。さすがに分かる。クラッカーから飛び散った紙吹雪とテープをせっせと拾い集めているその人に、立ち上がって駆け寄る。

 

「先生〜! ありがとう!」

「どういたしまして。でもミカの誕生日パーティーをしたいって言った時に、サプライズにしようって言ってくれたのはティーパーティーの二人だし」

 

 二人が照れたように微笑む。

 

「ケーキや料理を用意してくれたのはミモリとイチカとセリナとフウカ。……私もちょっとだけ」

 

 談笑していたミモリちゃんとフウカちゃんが手を振っている。イチカちゃんもひらひらと手を振っていて、セリナちゃんはぺこりと礼をした。

 それぞれみんな、シャーレに来るようになってから仲良くなった子達だ。

 百鬼夜行のミモリちゃんはすごく優しい子でいつの間にか友達になっていた。フウカちゃんは先生の指揮でよく共闘するうちに、ゲヘナなのになぜか仲良くなっていた。

 イチカちゃんとセリナちゃんは、トリニティだからこそ関わり方が難しかったけれど話しているうちに打ち解けていた。

 

「予算周りはユウカがやってくれたし、コハルもお迎えに行ってくれたし、会場の装飾はみんなでやっていたかな」

「すごい……」

 

 見る限りトリニティだけでも補習授業部、正実、救護騎士団の子達はいる。他にも何度か一緒に戦ったことのある他の学校の子達や、シャーレに通ううちに仲良くなった子、あまり話したことのない子もいる。

 みんな、楽しそうだ。私に笑顔で手を振って、口々にお祝いの言葉を述べる。

 

「ここにいるみんながミカの誕生日を祝いに来たんだ。これまでミカがいろんな子達と絆を築いてきたからこその光景だよ」

 

 返事ができない。

 泣くつもりなんかなかったのに、涙が止まらない。悪い子で、裏切り者の魔女で──そんな私のために、こんな素敵なパーティーを開いてもらえたなんて。

 

「さ、ミカ。せっかくのパーティーなんだから楽しまなくちゃ」

「──うんっ!」

 

 

 

 

 楽しいパーティーが終わって、みんなが帰って行った後のシャーレ。片付けも済んでしまって、もうすっかりいつも通りの光景が広がっている。

 パーティーの最中、「今日、少し残れる?」と先生、いや、乙花に耳打ちされたのだ。だから私だけここに残っている。

 

「ミカ、こっちおいで」

「なになに? プレゼント?」

 

 はい、と手渡されたのは一冊のアルバムだった。表紙には以前シャーレでパーティーしたときの集合写真が貼ってある。

 1ページ1ページめくる。今日来てくれた子が、みんな一人一枚ずつ写真を貼ってメッセージを書いてくれたらしい。

 強大な敵に協力して立ち向かったこと。怪我した時に治してもらったこと。敵から庇ったこと。料理の話で盛り上がったこと。音楽の話で盛り上がったこと。先生の事務作業を一緒に手伝ったこと。

 ひとつひとつ思い出が蘇る。

 これだけでも緩み切った涙腺は決壊していたのに、最後のページには。

 

「乙花、これはズルいよ……!」

 

 私と乙花の、あの頃の写真。キッチンで大惨事を起こして半泣きになっているもの、真剣にアニメを鑑賞しているもの。半目の乙花が微妙なピースをしている隣で楽しそうに笑っているツーショット。星空、青空。

 いつ撮られたのか記憶にないものから、ノリで撮った写真やあの時のプリクラまである。

 

 それから、先生と私の写真。

 これは数が少ないけれど、まだ私が乙花が先生だと知る前の微妙に距離のある写真が数枚。今よくよく見れば、写っている乙花の笑顔は全部作り物みたいだ。何かを堪えている表情をしている。……本人は、多分無自覚だろうけど。

 

 最後に、今の私たちの写真。

 バレンタインにデートした日の写真。カラオケでデュエットした日の写真。カフェでジャンボサイズのパフェに挑戦した写真。二人でそれぞれ着て欲しい服を買ってきてお互い着た日の写真。

 

「ミカがいてくれて良かったって思ってる人がこれだけいるってこと、わかってくれた?」

 

 乙花は柔らかく笑っている。答えられずにいると、優しく抱きしめられた。

 

「ね、ミカが諦めず、腐らず、誰かに優しく手を差し伸べて生きてきたから全部ここにあるんだよ」

 

 頭を撫でられる。

 

「もちろん、わたしも。ミカがいたからこそ、ここにいる」

「……私、幸せだって思っていいのかな。誰かを傷つけたのに、のうのうと笑っていていいのかな」

「いいんだよ。もし誰かが許さないって言っても、わたしが許すよ」

「乙花」

「ミカが幸せだって思えるなら、なんだってする」

 

 顎に手を添えられ、そっとキスされた。

 

「ミカに幸せになってほしい人は、わたしだけじゃない。どうか、それも覚えていて」

「……うん」

「ミカ、誕生日おめでとう。生まれてきてくれて、ありがとう」

 

 ──私は今、幸せだ。

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