自称吉良吉影(TS高校生)の奇妙な冒険   作:キラークイーンは既にISに触れている…

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『キラークイーン』は既に君に触れている

時は流れ、早くも決戦のときを迎える。

オルコットと織斑が一戦目、私とオルコットが二戦目、私と織斑が三戦目だったか。試合の公平性を保つために試合内容を見せず、控え室で籠っていろとの事だが、あまり気分は良くない…閉鎖空間と言うのは嫌いだ。

 

しかし、誰の監視もないと言う点に関しては良いところもある。私は拡張領域から先日拝借した『手』を取り出す。

そして、触る…うん、心地よいな。安心できる。更識 簪と言う私の理想の究極体の女性ほどの安心感は得られないが、その場しのぎの一時的な幸福感にはなる…心の平穏を得て、安心した状態でこそベストが尽くせると言うもの…。

 

試合の方に話を戻そう…この吉良吉影、そして我が相棒『キラークイーン』…負ける道理はないがしかし、油断するのはより不味い結果を生みかねない。

やはりここは『速攻』、そして『圧勝』…それこそ私の平穏に繋がるであろう。二度と歯向かってくることのないように格の違いを見せつけてやろうじゃあないか。

 

《セシリア・オルコット、SEゼロ。勝者 織斑 一夏》

 

ふむ…彼が勝利したか。試合内容を見ずとも、ここから予測できるのは、彼が初心者であれ圧倒的な技量を持っているのか、あるいは逆転の札を所持しているのか。どちらにせよ私のキラークイーンに勝てるとは思えないが…念には念を入れよう。彼には特に速攻を心掛ける。

 

しかし、彼が勝ったか…正直驚いたな。あんなナリでもセシリア・オルコットは国家代表候補生、初心者が勝てる相手ではなかっただろう…彼にも『運』が味方してくれているのか…

 

『吉良、オルコットの用意が整った。カタパルトデッキに移動しろ。』

 

織斑千冬からの連絡が届く。腕時計を身に付けていることを確認し、控え室から出てカタパルトデッキを目指す。

道中、少し複雑な表情をした織斑とすれ違ったので少し声をかけようかと思ったが、織斑千冬に怒られるのは勘弁なのでスルーし急ぐ。作程遠くなかったため3分程度しかかからなかった。

 

『…吉良、そちらの準備はどうだ?』

 

「問題ない。」

 

『分かった。ではオルコットにもそう伝えておく。…お前はカタパルトは使わないのだったな?』

 

「ISの特性上、仕方がないと思って欲しいな…迷惑をかけてしまうが、文句は開発元に頼むよ。」

 

織斑千冬と少しばかりの打ち合わせを終え、カタパルト──には進まず、アリーナでの緊急事態が起こったときに対応するための非常階段を降りてアリーナに立つ。

まだオルコットが来ていない。少し時間でも潰すにはどうしようか──なんて、そんなマヌケな事を考えながらしばしの時を待つ。

 

『…お待たせしましたわ。』

 

「遅かったじゃあないか…待ちくたびれてしまったよ。」

 

『…あなた、ISは展開しないのですか?現在の服装も制服のまま…私程度にはISを見せる必要すらないと言いたいのですか…!』

 

「いや、私のISは少しばかり特殊でね…まあ見せたほうが早い。『キラークイーン』…!」

 

直後、私の衣服が変わる。制服から、緑色をしたシャツに紫色をしたコート、ズボン。茶色の革靴。そして髑髏が刻まれたネクタイ、と言ったおかしなサラリーマンのような服装へ。

空中に待機するオルコットを見上げる──ふむ、驚愕7割、不安2割、後は…何だか分からないものが1割と言ったところか。

正直こんなんで動揺されちゃあ困るなぁ…私のISは君たちとは土俵が違うんでな…!

 

「…これが私のIS、『キラークイーン』。こちらの準備は整った、さあ、始めようじゃあないか。」

 

『これ以上、負けるわけには行きませんの…勝たせていただきます!』

 

《試合開始3秒前 3 2 1…》

 

開始の合図と共に射撃が飛んで来る。地面を蹴ることでそれを回避。続けて銃口が私の脳天を追い、引き金に手を掛ける──その瞬間、バックステップ、靴底とコートの内側に装着されたブースターで瞬時加速を行い自身の直前まで描く筈だった軌道を無理やり変更。二射目も無事回避する。

 

そして続く3射目が放たれようとした、その時

 

「…悪いが、『キラークイーン』は既に君に触れている…!!」

 

右手の人差し指の先端あたりを親指で押す。

 

コンマ1秒に満たない時間が流れたあと、爆発。発生元はオルコット。ISの破片が飛び散っている。腕や足のパーツも飛んで言っているなぁ、文字通り『爆発四散』って感じじゃあないか…。

 

《セシリア・オルコット SEゼロ。勝者 吉良 吉影》

 

「な、に…が…?」

 

「ふむ、困惑しているのかね…?」

 

ジャリ、と音を鳴らしながらオルコットへと近づいていく。それに気づいたようで、微かに悲鳴を上げ、涙ぐんでいる。その頭を無造作に掴み、グッと顔をこちらへと近付ける。鼻先が触れそうになるほどの距離で、私は口を開く。

 

「…『意気地無し』、と言ってくれたなぁ?いや、『臆病者』だったか?まあいい…とにかく、君は私をコケにしてくれた訳だ…。私は常に『敬意』を持って戦うよう、そう心掛けている…。侮辱なんかしちゃあ、それこそ再戦を挑まれたりして平穏を乱すトラブルに他ならない…。だがな、この吉良吉影もまだ未熟…『平穏』が乱されそうになると…カッとなってしまうタチなんだよ…もう少し冷静さを欠いていれば『君をなぶり殺していたかもしれない』なんて程に…。

まあ、そうだな…そう言う風に感情が高まり、平穏が乱されそうになればなるほど()()()()()()()()()()()調()()()()()()…その状態の私とキラークイーンに勝てる者など一握りなのだよ…。その高みに君がいなかっただけだ…。『実力』の差だよオルコット…君が一番好きだろう?エリート様。」

 

言うだけ言って、手を離してやる。脱力し、へなへなと俯くオルコット。オルコットは泣いている。赤子のように泣きわめく事こそしなかったが、水滴が落ちる音をハイパーセンサーが拾っていた。それがうざったかったからISを解除。元の制服姿へと戻る。

…流石に言いすぎたか。しかし、あんな甘ったれた精神なら直ぐに折れてくれるだろう…私の心の平穏を乱すものは誰であろうと真っ当に生かしておく訳にはいかない…それがまたトラブルだとか争いを呼んでくる…それがこの社会なのだ。

だが、あのオルコットが突っかかってきたのが原因なのだ。此方に非はそこまでない、と言っても良い…少しはこちらの気持ちを汲んで欲しいものだ、そう思っても仕方がないであろう。

 

『吉良、次は織斑とだ。少し休憩をとっても構わんがどうする?』

 

「不要だ。このままここで待つとするさ…。それより私の目の前のオルコットをどうにかして欲しいものだが。」

 

『山田先生のラファールがそちらに向かっている。オルコットの無事が確認されたら第三試合へと移る。…それにしても、やはり手加減は抜きか?』

 

「当たり前だ。私のISじゃあ正面戦闘には少し不安があるからな…。それにいずれ対策されるだろう。ならば今の使える内に使っておかなくちゃあいけない。」

 

『…格闘主体の機体を使っておきながら何を言う。洞察力と動体視力がウリのお前なら近接戦の読み合いも出来るだろうに。』

 

「やるからには被弾を減らす…あなたがそう言ったんじゃあないか。」

 

オルコットが回収され、織斑が来るまで久方ぶりに上司と雑談する。日本国家代表候補生としての活動の一貫として織斑千冬との手合わせ、と言うものがある。無論、私が勝利したことは一回もない。最強と言うのはそこまで届かぬ位置にある。…しかし、私が求めるのは『平穏』…決して名誉なんて物のためじゃあない。そこを履き違え、平穏を乱すことのないようにしなければならない。

 

暫くして山田先生がオルコットを回収する。少し前まで焦燥した表情を見せていた彼女だったが、今では緊張の糸が切れたのか、気を失ったかのようにだらんと腕を垂らした状態で運ばれている。…いや、あれは諦めか。折れるならそこまでの人物だったと言うだけだ…折れてしまえば彼女はここで終わりだ。『手を出す』のもやぶさかじゃあない…どちらにせよ、明日以降彼女がどうなってるか次第だな。

 

『オルコットの無事が確認された。これより第三試合に移る。一夏が来るまで待っていろ。補給は不要か?』

 

「ああ、していなかったな…すまない、補給だけさせてもらうとするよ…。」

 

『試合開始まで五分近くはある。どうせエネルギーしか削れていないのだろう?さっさと補給してこい。』

 

『キラークイーン』を展開し、PICを利用してカタパルトからデッキに戻る。少し歩いてベンチのある場所まで進むと、そこには見慣れた人影があった。

 

「おや、簪。」

 

「来ちゃった。お疲れ、吉影。エネルギー補給でしょ?私がやるよ。」

 

サムズアップしながら迎えてくれたのは我が同室簪だった。お言葉に甘えてキラークイーンを実体化。簪は慣れた手付きでISをエネルギー供給用のケーブルと接続し、補給を開始する。

 

「ねぇ、やっぱり卑怯じゃない?キラークイーン。」

 

「撹乱型戦術と言って貰おうか。真っ向からやりあうのは得意じゃあないんでな。」

 

「…不意打ちでの一撃必殺戦法はどちらかと言うと暗殺型でしょ。」

 

「…ごもっともだな。」

 

ぐうの音も出ない。しかし攻撃をまともに食らうと痛いし、万が一があれば血もたくさん出て死んでしまうかもしれない。そんなリスクを犯してまで接近戦をしようなんて甘い考えを抱いちゃあいない。

 

「ん、終わったみたい。ほら。」

 

「ありがとう。…これで、織斑を倒す。倒して私は平穏な日常を取り戻す…!」

 

補給が終わり腕時計型へと戻ったキラークイーンを受けとる。『覚悟』を決める。真っ向から立ち向かい平穏を乱すトラブルを無くすための戦いへ向かう覚悟。その覚悟をもってまだ見ぬ敵を打ち倒す。

 

「…では、行ってくるよ。」

 

「うん、行ってらっしゃい。頑張ってね。」

 

簪の激励を受けながら、先程と同じように階段を降りる。アリーナには既に織斑が居た。

 

『…なぁ、吉良さん。』

 

「何かね?」

 

『試合を見てた訳じゃないから何とも言えないけど…あそこまで、あそこまでセシリアを追い込む必要があったのか!?ボロボロになって、涙もずっと流してて…しきりにあんたに謝ってた。…俺には、あんたが意図的に心を折ろうとしたようにしか見えなかった。』

 

目敏い。そして正義感もある。…なるほど、厄介な奴だよ、君は。

ISを展開。臨戦態勢へと移る。オルコットと違い織斑には驚愕はない。あるのは疑問と、憤怒と、憐れみ…どう生きればこんな真っ直ぐ過ぎる程に育つのだろうか。ああ、煩わしい。

 

《試合開始3秒前》

 

「…もし、そうだと言えば?」

 

《3》

 

『…俺があんたをたたっ斬る。そして俺が勝ったら、セシリアに謝ってもらう。』

 

《2》

 

「ほう、面白い。やって見せろ…出きるものならな!」

 

《1》

 

『やって見せてやるさ…!』

 

急加速による接近、直後に続く斬撃をバックステップからの二重瞬時加速によりいなす。軽量化とブースターの増設により圧倒的な機動力を手に入れているこの機体相手にスピード勝負を仕掛けても無駄だ。そして近接戦において空振りと言うのは絶大な隙を生む…これでケリをつけるべくキラークイーンによる止めの一撃を加えようとしたその時。

 

『…ッ!ソコか!』

 

一閃。振り向いて虚空に向けて斬撃を放つ。本来空を斬る筈の刀は、あろうことか空中でコンマ一秒静止し、そのまま甲高い音と火花を立てながらナニカを斬った。

斬られたナニカが空間を歪ませながら出現する──否、透明化が解けていく。

猫を連想させるような顔。髑髏を象った悪趣味なベルトとガントレット。そして筋肉質の薄紫の肌。さしずめ『獣人』と呼ぶべきような存在がソコに居た。

 

「クソッ!戻れ、『キラークイーン』!!」

 

キラークイーンを量子化し、追撃を防ぐ。

それにしても、見えたのか。『キラークイーン』が。…違うな、ヤツは直感でキラークイーンを探し当てた。一番厄介なタチだ。一度見破られてしまっても通じなくなる、何て事はないが少し立ち回りを考えるとしよう。

そのためにも一度距離を取る必要がある。ここは一度後方に──

 

『させるかよ!』

 

突貫してくる織斑。あの刀──雪片か?ならば不味い。単一能力に目覚めていないとは思うが万が一もある。ここは差し返すかそれとも──否、考えている暇はない。ヤツは近距離パワー型と言ったところ。素早さはあちらに分がある。ならばここは一先ず──

 

「迎撃しろ!『キラークイーン』ッ!」

 

再び『キラークイーン』を呼び出す。今回は能力を使うための実体化ではなく、格闘戦のための実体化のため透明化はしていない。

 

刀を振るその瞬間に織斑の懐にキラークイーンを滑り込ませる。動揺したようだが、それも一瞬だけで即座に柄での殴打でキラークイーンにダメージを与えようとする。

 

その行動を見てからキラークイーンを量子化。私自身が加速し飛び込む。

腰を捻りながらコートやベルトなど様々な所に潜ませてあるブースターを点火。瞬間、爆発的な加速力を得た蹴りを織斑の右腕部へと打ち込む。

 

剣を手放させる事は出来なかったが、これで少しは隙が出来た。即座にキラークイーンを呼び出し、両手でラッシュを叩き込む。2、3発しかあたらなかったが本命はキラークイーンの能力。

触れたものを『爆弾』に変える能力…例えどんなものであろうと触れてさえしまえば爆弾に変えることが出きる。それがISであろうと。

 

「命はもらった…!点火!」

 

人差し指の先端を強く押す。直後、織斑の機体を伝播するように起こる爆発。驚愕の表情がもろに外に出ている。…チャンスだ。チャンスは訪れたッ!!

キラークイーンを見破られると言うピンチに冷静に対処した結果がこれだ!!やはり運命はこの吉良吉影を好いてくれている…!!

 

ヤツは近距離型と言うこともあり装甲が他の機体よりもあったのであろう。爆発を耐え抜いたようだ。しかしもう虫の息。止めを刺すべくキラークイーンを透明化状態で出現させ、私自身も加速し蹴りを叩き込む──

 

『…掛かったな。吉良吉影ッ!』

 

展開される刀身。スライドし中から出てきたソレは──

 

「零落、白夜だと…!?」

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

間合いは完全にヤツの距離。ここから回避することは不可能。即ち、一撃必殺の代名詞たる零落白夜の直撃を受けなければならないと言うこと。私の機体は耐久性は劣悪だ。被弾すれば絶対防御が起動しSEを大幅に持っていかれてしまう。

 

──だが、それは今回においては当てはまらない。

 

「──ハハハ、ハハハハ!勝った!勝ったぞ!」

 

『何──!?』

 

炸裂装甲(リアクティブアーマー)。キラークイーンと共に歩むなかで編み出した防御技。出力や爆風の方向を調整し、弾丸や近接戦時において相手の腕ごと武器を爆風で弾くと言う目的で発展させたこの技巧、初見で破った者はいない。あの織斑千冬でさえ一度は弾いて見せたこの技は、この状況下で猛威を振るう。

織斑の刀を弾き飛ばす。無慈悲にも10メートル以上飛んだその刀を、ここから掴むことは出来ない。

そして素手となった織斑の頭を掴み、非展開状態で私を通じてキラークイーンを発動。直接爆弾化し、即座に爆破。

 

《織斑 一夏 SEゼロ。 勝者 吉良 吉影》

 

「言っただろう?私は誰にも負けん、とね。」

 

『…ああ、悔しいけど、完敗だ──。』

 

勝者と敗者。明確な差。圧倒的な壁。ほら見たことか。こんな死闘など行って何が楽しいのだか。敗北の先にあるのは挫折と後悔が殆どだと言うのに…。

 

 

ああ、今日もまた誰かが地に伏せる。

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