初めて彼女と出会って会った瞬間、これは初恋で両想いだと感じた。彼女の顔が彼女の身体が彼女の匂いが自分の頭に直接塗りつぶされるように───
しかし、その恋心の邪念が浮かび上がる。あまりにも出来すぎてはいないかと───
理由は牛頭討伐において難所だ。
難所は二つある。牛頭討伐と討伐後の迷宮の脱出だ。
どう攻略をするかを考えていた時、彼女が現れそしてこれが答えかであるように鞠と短剣を手渡してきた。
まるで物語のような手際の良さだ。
そして、次の疑問が浮かんだ。
彼女は本当に私の事が好きなのか───
・・・そして、私の船の白い帆が黒く変色した瞬間、その疑問が確信に変わった。
私達は神に操られていた。
しかし、またしても新たに疑問が浮かび上がる。
ではどこからどこまで間私達は操られていたのか。
私が生贄へと捧げられる惨劇を見て許せないと思ったあの感情は!牛頭討伐に為に立ち上がった私の意思は!アステリオスを助けられなかった時に湧き出たあの慚愧は!
・・・果たして私のものだったのか。それとも神のものだったのか。
それこそ神のみぞしる問題だろう。
そしてかの戦いが終わった後、彼女と別れた。
理由は簡単、世継ぎを望まなかったからだ。それは王として世継ぎを残さなければならないためや世継ぎを残さない王妃が居れば民衆や部下の指示が揺らぐという表向きな事はいえるが、きっと私は彼女の愛を疑い、彼女の愛を信じれられなくなったのだろう。
だからこそ、私はこの夢を追い求める。「神意や運命に流される事なく、自分の意志で生きてゆく」
そんな世の中を作るのだと───
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「聖杯戦争?」
「はい、篠森(しのもり)少将殿。」
「海外から君をはるばる呼び出したのはそんな奇天烈な話ではなく魔術後進国の我らのために魔術師として教えを乞う為なのだがな。」
「その交換条件として1つ出来る範囲であれば何でも協力するといったはずです。」
「それが聖杯戦争とやらか?」
「はい」
「して、聖杯戦争とは何だ?」
「簡易的に説明すると英霊と呼ばれる過去の英霊7騎を召喚し、殺し合いをする儀式です。」
「その儀式にたった1組まで生き残ると何でも願いが叶う聖杯が手に入るのです。」
「何でも願いが叶うとはまた胡散臭い。してその聖杯が望みか?」
「いえ、そんなものには興味はありません。」
「?」
「私が興味があるのは聖杯ではなく英霊召喚です。」
「私はこの召喚において神霊、すなわち神を呼び出せるかの実験をしたいのです。」
「神か・・・聖杯ですら怪しいのにそんなものが可能なのですか?」
「それは分かりません。ですがやってみないと分からない上、わからないからといってやらない理由にはなりえない。」
「はは、それはまた学者らしい、いや魔術師らしいですな。」
「恐縮です。」
「よし、あい分かった。パーソン教授の申し立てだ。協力しよう。」
「ありがとうございます。」
「ああ、そうそう。聖杯戦争の参加は日本軍が参加してもよろしいか?」
「ええ、構いませんよ。私は召喚の実験さえ出来ればいいですから」
「では・・・花宮くん!出てきたまえ!」
「これはまた珍しい・・・女性の軍人ですか。」
「・・・よく言われます。」
「この人は花宮花子くん。先祖が魔術師の家系で魔術師として我が組織の中で中々優秀だ。何か必要なものがあれば花宮くんを通して連絡してくれたまえ。」
「分かりました。私も花があればやる気もあがるというもの。」
「ハハ、あの学びの鬼と呼ばれたパーソン教授も人の子という訳か。」」
そんな会話の中、花宮は機嫌が悪そうに冷ややかにこちらを見つめている。
「では後は頼みましたよ。」
篠森少将がそそくさと出ていく。
(少将も忙しい身、必要な事は最小限にしたほうが良さそうですね)
「・・・あなたも私を女だと蔑むのですね。」
「いやそういう意図は無かったつもりなのですが。」
「本当にそうでしょうか?こんな国に自分の知識を切り売りしている人なんて信用できません。」
「ほー魔術師の家系というのは嘘では無いようだ。」
「当たり前です。魔術というのは本来秘匿するものです。それを金に目が眩んだか知りませんがそれを他人に公開するなんて魔術師としては貴方は最低だ。」
「ハハ、手痛い言葉だ。」
「それに篠森少将は───」
「それは存じてますよ。篠森少将は魔術自体に興味があるのではなく、どう魔術を兵器に運用できるかのみしか興味が無い。」
「自国の軍事力が他国より劣っている事が分かっているからこそ出てくる手段。まさに軍人らしい考え方だ。」
「それが分かってるならなぜあなたは魔術を広めているのですか。」
「それは単純ですよ。それが私が根源に到達出来る近道だからです。」
「どうだが。」
「───さて余談はここまでにして、聖杯戦争を説明をしましょうか。」
「聖杯戦争は聖杯に選ばれたマスターがサーヴァントという英霊を召喚します。マスターが選ばれたかどうかは令呪という手の甲に紋様みたいなもので判別できます。私の手にあるこれですね。」
「そして、令呪にはサーヴァントを律する事や逆に一時的ではありますが通常より力を上げれる事が出来ます。」
「しかし令呪には回数制限があり3回しか使用する事が出来ません。」
「ここまで何かご質問は?」
「マスターというのは他人に簡単に渡す事が可能なのですか?」
「ええ、合意であれば可能です。サーヴァントがすぐ順応できるかは別なので戦いの最中で行いたいのであれば令呪を使った方が良いですね。」
「なるほど、わかりました。」
「あと流石に無責任にマスターを任せるのは酷と思うので今回の聖杯戦争に置いては2つ裏技を使います。」
「裏技?それは一体───」
「1つ目は私の魔術刻印の特性をサーヴァントに付与させる事です。私の魔術刻印の特性は多元世界の未来視でその未来視を使って聖杯戦争の始まりから顛末までサーヴァントに付与させます。あまり意味はありませんが無いよりかはマシでしょう。」
「多元世界?」
「おや知らない?魔術師家系であれば基本中の基本ですよ?」
「ほとんど没落した魔術家系なので・・・というかあなたちょっとバカにしてませんか?」
「いえいえ、してませんよ。知らないのは恥ずかしい事ではありませんよ。私だって知らない事だらけですから」
「・・・はぁ、もういいです。さっさと説明してください。」
「多元世界を一言で言うのであれば複数の選択肢があるのであればその選択肢の数の分だけ世界があるという理論ですね。」
「つまり、あなたと会った今の私とあなたと出会わなくてよかった他の私がいるという事ですか?」
「そうなります。」
「それはなんというか・・・必要ですかそれ?」
「推理小説の二次創作を読ませた上で推理小説の謎を推理していくようなものですから特段役に立つ代物では無いのですが何、二次創作も案外役に立つかもしれませんよ。」
「では2つ目の裏技については・・・まぁ後で分かる事なのでおいておきましょう。」
「パーソン教授。2点ほど良いですか?」
「どうぞ」
「まず1つ目。あなたは神の召喚を以て根源に至るつもりと仰ってましたが具体的な方法はあるのですが?まさか本当に英霊の召喚で神を召喚できると?」
「次に2つ目。なぜあなたは聖杯戦争に挑まないのか?神の失敗した時の保険に使えばいいはずだ。」
「なるほど。では1つ目から」
「そもそも直接神を召喚するつもりはありません。そんな大それた事が出来るのであれば聖杯を手に入れた方が手っ取り早い。」
「具体的な方法としては神の知識だけを頂くのです。」
「知識?」
「そうです。神そのものを呼び出すのではなく神の知識だけをもった英霊を召喚します。」
「そして、その知恵をお借りし、根源に至るための設計図のみを頂く。至るためのプロセスは途方で困難かもしれないがその設計図さえ広まればいずれどんな人間も根源に至る事が出来る。全知はいずれ全能に至れる。私はそう信じています。また、召喚した英雄が拒否するのであれば令呪を使ってもいい。その後、私が殺されても設計図が残り続けるのであれば別に構わない。いずれ同じ志を持った者が活用する事でしょう。」
「それは魔術師というより・・・狂った科学者のようだ。」
「ええ、私。魔術より科学の方が好きですから。」
「なるほど根源のプロセスは分かりました。ですがそんな英霊がいるのですか?神の知識を持っている英霊なんて中々居ませんよ」
「ええ、1つだけ該当します。それはファラオです。」
「ファラオも神霊に近いものですが。他の神よりも人に近いですし、そして聖杯の召喚条件にも満たしている。」
「あなたは王家の呪いという都市伝説をご存知ですか?」
「ええ、小耳の程度なら。」
「今話題のその王家の呪いという伝説を依り代とした上でその情報を肉体とし知識だけはツタンカーメン。つまり、ファラオという
神の知識を宿す事が出来るかもしれない。」
「これはチャンスなのです。その伝説の真偽が不確実だからこそ英霊になり得るかもしれない。」
「都市伝説を英霊に・・・それが本当に可能なのでしょうか?」
「聖杯がこの都市伝説を英雄として判定するかどうかですね。都市伝説なので反英雄として扱われ召喚できないかも知れない。
ですが可能性はあります。あの都市伝説はメディアにとっての英雄だ。経営不振だった会社であれば救世主に近いかも知れない。その信奉に全てを賭けてみたいのです。」
「具体的に誰を召喚するかは分かりましたがどうやって召喚するのです?」
「おっと説明し忘れていましたね。英霊を召喚する際、ただ召喚するのであれば召喚者と相性の良い英霊が召喚されますがもう1つの召喚方法があります。それが聖遺物を用いた召喚です。」
「聖遺物?」
「英霊に縁のある品の事です。この品を依り代にする事で自分の好きな英雄が召喚出来ます。私が今回使うのはコレとなります。」
「それは・・・西洋の新聞?」
「はい、これを聖遺物に使います。」
「あなた。頼みの綱をそんな新聞の紙切れに託すつもりですか!?」
「ええ。仮に令呪が効かなさそうな本物を呼ばれても困ります。頭脳だけは本物のようなそんな偽物だからこそ良いんです。」
「それでもただの新聞を聖遺物にするなんて・・・」
「魔術も科学もそんな思いかげないもので一変するものですよ。」
「そんなものなのでしょうか?」
「そんなもんです。」
「次に2点目についてお答えしましょう。」
「解答としてはしないのではなく、できないが正しい。」
「その理由としては私個人の魔力では英雄を召喚するまで至らない。つまり私の魔術回路は数本も満たないからです。」
「さしとてその魔力不足を補助する設備を用意する金もコネもありません。そして他の者の邪魔が入らない土地でかつ財布の紐が緩そうな貴方達、日本軍に白羽の矢が立った訳です。」
「聖杯戦争の参加を条件にすればきっと貴方達は乗り気になるだろうと思っていましたので。」
「それは舐められたもんですね。っというかそれであれば召喚した後で裏切れば良いのでは?」
「それも出来なくは無いですが、私の魔力は平均的な魔術師より少ない上、戦闘も向いていません。魔術を使った防御すら私は使えない。そんな者が聖杯戦争に出ても3日も持ちませんよ。」
「仮に召喚の条件である西洋限定の英雄という縛りさえ無ければこの地で最も強力な英雄「織田信長」を召喚ができるので私も聖杯戦争に希望が見えるのですが。それはたらればだ。」
「なるほど大体の事は分かりました。」
「では、次に私の方から聞きます。この聖杯戦争勝てると思いますか?」
「聖杯戦争自体、どれだけ運に恵まれていたとしても、どれだけ相性の良い英雄だったとしても、協力な必殺技である宝具や強い能力を持ったサーヴァントが有利なのは事実。」
「そして、その強力なサーヴァントを呼び出す為には貴重な聖遺物が必要であり、その聖遺物を手に入れるには膨大な時間と膨大な資金が必須となる。」
「それをせず戦いに挑むという事は相性の良い使い慣れた日本の銃のみで戦車や戦闘機に挑むのと同義。」
「それでも貴方は本当に勝てると思いますか?」
「それは分かりません。ですがやってみないと分からない上、わからないからといってやらない理由にはなりえない。ですよね?パーソン教授?」
「───」
「ハハ、まさか聞かれてた上に私の言葉で一本取られるとは。なんとも恥ずかしい。」
「恐縮です。」
「良い機会です。お時間取らせて申し訳ないですが私の独白、独り言を言わせて下さい。」
「私は魔術そして魔術師が嫌いです。魔術は神代以降の現代では神秘の秘匿という一部に独占し続けなければ行使できない欠陥品です。知識を共有し様々な思想によって向上させる科学の方がはるかに上です。それなのに魔術師は根源の為だけに子供を作り子供に否が応でもい自分の魔術回路を移植する。」
「そして根源という勝手な夢を背負わせる。実にエゴイストな集団だ。人でなしとも言っていい。幸い私は根源自体には興味があったので不幸中の幸いでしたがさりとて興味のない魔術師にとっては悪夢そのものだ。しかも根源にたどり着けた者は私が聞く限り全く居ないと来た。笑い話にもならない。」
「だからこそ、この方法で根源にたどり着けるのであれば魔術師全員いや全ての人間に根源を見せて魔術を根絶させる。それが私の夢です。」
「その夢が叶わないのであれば妥協として魔術の行使ができなくなるまで魔術を広めさせようという考えに行き着きました。」
「これが貴方達、日本軍に協力した理由の2つの内の1つです。」
「もう1つは貴方達の姿勢です。正直いってこの国はいろんな面で遅れていた。ですがそれにヤケをおこさずここまで成長しました。」
「才能も絶対に叶えたい夢も無くただ興味のある事しかしてこなかった私にとってはそれはあまりにも・・・羨ましい。」
「だからこそその姿勢があり続ける限り、私は貴方達の味方であり続けます。」
「これで私の独白は終了です。これで多少は信用してくれてますか?篠森少将」
そう言った後、彼女の何も持っていない手から無線機が現れる。
「どこからお気づきで?」
「彼女が現れた時からですよ。聖杯戦争の話をした時だけやたらと流れが良すぎる。そしてこの廊下を観察し
ていたら案の定、結界が張り巡らされていた。張り巡らされてる以上、その結界内での話は筒抜けという訳です。大方、彼女は私の味方だと装って私が裏切る可能性や真意を測っていたのでしょう。」
「では私達の目的も?」
「聖杯戦争の参加でしょう?貴方達は願掛け程度では無く本気で聖杯を取りにいくつもりだ。だがしかし、聖杯戦争の参加者として参加するには聖杯に選ばれる必要がある。つまり日本軍の中で令呪を持った人が現れるか。持った人間から奪うかだ。だがしかし令呪が宿すほどの力量を持った人材も無理やり令呪奪う方法も分からない。」
「よって令呪を宿した弱そうな外部の魔術師を自分の陣地に呼び出し譲るように懐柔する。それに従わなければ拷問して無理やりにでも奪う。そういう算段では?」
「大方あってますな。ですが、まさかあなたの方から聖杯戦争の話を振ってくるとは思いもよりませんでしたが。」
「どこで聖杯戦争の事を聞いたかもおおよそ予想ができます。あの八枚舌のダーニックからでしょう?」
「あやつの事まで知っているとは・・・流石は時計塔出身の魔術師だ。」
「こんな考察なんて初歩の初歩ですよ。才能もない人間が考察も出来なければ時計塔に入学すらできない。」
「さてもう一度、お聞きします。八枚舌のダーニックは米、独、日という三ヵ国の組織の力を利用して今回の聖杯戦争挑みに来ている。この聖杯戦争に挑むという事は米、独の二か国を敵に回すという事。それでもやりますか?聖杯戦争を」
「覚悟の上だ。どんな犠牲を払おうともどんな敵であろうとも私達は戦う。いや戦わなければならぬ。それが国を日本国民を守る事に繋がるのであればそれこそ軍人の務めだ。」
「わかりました。これで冬木は血の海になるでしょう。出来る限り冬木から死人を出さないようよろしくお願いします。」
「心得ている。」
「これで多少なりともお互いの腹の内は見せあったでしょう。では私は人先早く研究室に向かいます。ごきげんよう」
「花宮くん。彼は嘘をついた痕跡はあったか?」
「いえ、真偽魔術では引っかかりませんでした。魔術回路が少ないのも事実でしょう。」
「詐称されている可能性は?」
「ほとんどありません。もし、詐称するほどの力があるなら我々を暗示にかけて聖杯戦争の協力をさせた方が手っ取り早いはずです。」
「また足の運びや手の動きは素人同前なので仮に心変わりして裏切ったとしても私1人で抑えこめます。」
「なるほど。報告感謝する花宮くん」
「では───」
(たしかに嘘では無かったが結局、裏技の2つ目はぼかされたままだ。完全に信用するにはまだ時期尚早ですね)
───
そして月日は流れ、聖杯戦争開始翌日
パーソン教授と花宮少尉の二人が研究室で立ち尽くしていた。
「ここまで長かったですね。」
「ええ、全くです。では始めましょうか」
「汝の身は我が下に我が命運は汝の剣に。この意、この理に従うなら応えよ。汝、三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ。未来を観た天秤の守り手よ───!」
その言葉を発した瞬間は光は放たれ、その光は人型へと収束する。
「───ひとまずは成功のようだ。」
その光から現れたの輝く黄金の棺そのもの。しかし、その棺が黒く変色をしたのち棺から扉から勢いよく人型のものが現れる。
その風貌はまさに映画に出てくるミイラそのものであった。
「あれが英雄───!?」
「キャスター。ツタンカーメン、召喚に応じ参上した。はーまたてめぇかよ。」
「ったく。お前の顔も見飽きたを超えて逆に愛着が湧きそうだぜ。なぁ、元マスター?」
「多元世界の記録の付着も成功ですか。元マスターという事はかなり近い世界の記録のようだ。」
「まぁどこまで一緒かは見てみないと分からんがな。」
「で、あなたは神の知識を持っていますか?」
「んじゃあ言わせて貰うぜ」
「残念ながら持ってない。お前はツタンカーメンの偽物を引き当てた。ただそれだけだ」
「───」
数秒の沈黙によって場が鎮まった。
「───そうですか。分かりました。」
「結局、あんたの計画は何かを諦めて他に頼った時点で失敗だって事だ。というか、そこまで自立してるなら神が作った根源に至るための設計図より人間が作った根源に至る設計図を作った方が良いと思うぜ?」
「ですが──」
「はいはい、バベルの塔ね。人間の力では限りがあるのは事実だが。だからといって神に丸投げしてる時点で失敗するのさ。」
「───それを予測できたという事は私がやる事も分かってますよね?」
「───ああ、銃を貸せ」
「ありがたいです。」
『パン』
その弾丸はパーソン教授の腹部を貫いた。
「がは」
「───なぜ!?どういう事ですか!?」
「ちゃんと死ぬまで時間のかかる腹部に当ててくれましたか。やはりほとんどの未来の私は失敗するようだ。」
「これは念話──?」
「これでやっと2つ目の裏技にたどり着けます。」
「2つ目の裏技、それはマスターを単一ではなく、日本軍に所属する全員がマスターとする事です。」
「日本軍全員がマスター!?」
「ええ、私が死ぬ事が発動する魔術です。この魔術は魔術刻印や魔術回路を持たないものは私の魔術刻印や魔術回路を強制的に付着させ、持つ者には外部パーツのように付着させる。その後、私の令呪を微粒子レベルへと昇華する事で実現可能です。その代わり、令呪が使えないのがデメリットなんですけどね。」
「そんなのは絶対に不可能だ。自分の魔術回路や魔術刻印の移植なんて赤の他人の心臓を移植するようなもの、必ず拒否反応が起きるはずです。」
「そこは膨大なデータを採取して、どんな状況下でも拒否反応が起きないよう務めてきましたから。私こう見えても研究に関しては天才なんですよ?」
「仮に出来たとしてもその行いは自分達が積み上げた魔術刻印を売り払ったという事と同じ。あなたはあなたの両親や先祖を裏切ったのと同じだ───!」
「勝手に産んで勝手に期待して勝手に失望した連中になんて知りません。私にとっては貴方達研究メンバーこそ、家族だ。数年ですが楽しかったですよ。花宮さん。」
「あと移植による影響はほぼありませんよ。良くて夢で平行世界の自分を見るくらいです。」
「あぁ、そろそろ時間のようだ。」
「パーソン教授!」
「家族に看取られて死ぬならこんな幸せな事は無い。聖杯戦争頑張って下さいね。」
「・・・はい」
「終わったか?お涙頂戴の三文芝居は?」
「貴方とは気が合わなそうだ。」
「ああ、合わないだろうな。俺は化け物だ。化け物と人が分かりあえるなんて一生かけてねぇよ。」
「・・・そうですか。では貴方の見てきた事を話して下さい。」
「ああ、俺の記憶とこの世界の記憶が似たものなら」
「俺が真っ先に潰さないといけないのはライダーとランサーだ。」
私はキャスターが小さく呟いた言葉を生涯忘れる事はないだろう。
「・・・俺はアンタと聖杯戦争に挑みたかったよ。」
この言葉が真である限り、私達はキャスターと共に聖杯を目指だろう。
例え、私が死んだとしても───
こうしてキャスターの聖杯戦争は始まった。