遊戯王GX~もう一人の融合使い~   作:風森斗真

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というわけで序章
しばらく決闘(デュエル)は行いませんがご了承を


始まりの出会い

――ここは、どこだ?

 

 気づいた時に最初に思ったことは、それだった。

 ゆっくりと体を起こしながら、少年は自分の身に起こったことを一つずつ思い出していった。

 友達と近所の公園で遊んでいたら、突然、地面が揺れて、モーメントから光があふれて、その光に飲み込まれて。

 そこまで思い出すと、特徴的なしゃべり方をする一人の男の声が響いてきた。

 

「Oh! 目を覚ましたネ? Boy!」

 

 銀色の長髪で顔の左半分を隠している、赤いスーツをまとった紳士が、SPと思われる黒スーツの人物を三名ほど引き連れて近づいてきた。

 その紳士を見た瞬間、少年は驚愕で目を丸くした。

 

「ぺ、ペガサス・J・クロフォード??!!」

 

 その人物は、デュエルモンスターズを開発した、まさに生みの親ともいうべき人物。

 インダストリアル(I)イリュージョン(I)社会長、ペガサス・J・クロフォードその人であった。

 だが、少年の脳裏にあったのは、「そんなことはありえない」ということだった。

 

 

「な、なんであなたがここに……い、いや、そもそもなぜ(・・)生きている(・・・・・)んですか??!!」

「What's?! YouはMeがすでに死んだものと思っていたのデスカ?!」

「だ、だって今は……」

 

 そう、ありえない。ありえてはいけないのだ。少なくとも、少年にとって、ペガサス会長は、すでに死んでいるはずの人間なのだ。

 しかしその、ありえない、が現実であることを、少年は思い知らされることとなる。

 

「……そ、んな……ばか、な……」

 

 壁にかけられている、カレンダーの日付が視界に入ってきたその瞬間、少年は息をのんだ。そこに記されていた西暦は、自分が生まれるよりもずっと以前のもの。百年以上、昔のものだったのだから。

 それがどういうことか、少年はすぐに理解できなかった。

 いや、そういうことだ、ということはわかっているのだが、心がそれを受け入れようとしていない。

 それを認めてしまったら、自分は、もう二度と帰ることが出来ない、ということも認めなければならないのだから。

 

------------

 

「……つまり、Youは未来の世界から来た、というのデスカ?」

「そうとしか考えられないんです」

 

 混乱する頭をどうにか落ち着かせた少年は、ペガサスに自分が覚えていることの全てを打ち明けた。

 当然、あまりに非科学的かつ非現実的なことにペガサスは困惑を隠せなかったが、否定することもできなかった。

 彼自身もまた、デュエルモンスターズに関わることで、様々な不可思議な現象を目の当たりにし、また自分自身がそお不可思議な現象を引き起こしたこともあったためだ。

 

「……Alright……ひとまず、Youの言葉を信じマース」

「……ずいぶんあっさりなんですね……」

「Me自身も、数々の不可思議な現象を目の当たりにしていマース。頭ごなしに否定することはできまセーン」

 

 どうやら、ペガサス会長自身もかなり特異な経験をしてきたらしい。

 いや、そもそもデュエルモンスターズのカードには、何か特別な力が宿るという噂があるほどだ。

 生みの親であるペガサス会長が、その不思議な力にまつわる現象に遭遇しなかったというほうがおかしい。

 いずれにせよ。

 

「Youが優先的に解決しなければならないことが三つありマース」

 

 そう。

 ペガサス会長にこの話を信じてもらうことができたというだけでは済まされない問題がいくつもある。

 

「一つ目は、YouがYouのいた時代へ帰る手段を模索することデース。デスガ、これはさすがに時間がかかりマース」

「タイムマシンがあれば簡単なんでしょうけど、現代科学でそれは無理難題、というものですしね」

「Yes! そして二つ目はYouの衣食住の環境デース」

 

 過去に飛ばされた、ということは当然、住んでいた家は存在しないし、戸籍もむろんない。

 生きていくために必要な最低限必要となるものを、早速、どうにかしなければならない状態になっている。

 そして。

 

「三つ目に、Youがこの世界でどのように衣食住を支える資金を得るかデース」

 

 一応、少年はこれまで親の庇護下で暮らしてきた。

 お小遣い程度ならばもらったことはあっても、仕事をして賃金を得るという経験はしたことがないし、したくとも、少年の年齢がそれを許さない。

 三つ目の条件をどうにかしなければ、二つ目の条件をクリアする目途も立てることは不可能。

 

――あ、これもう詰みんだんじゃ……

 

 少年は自分が置かれた状況の厳しさに絶望すら覚えた。

 だが、自分をこの時代に捨てた神がいれば、救いの手を差し伸べてきたのは拾う神も存在する。

 それが。

 

「デスガ、二つ目と三つ目の条件なら、Meに協力してくれることで保証することができマース!」

「協力?」

「Yes! Youが持っている未来の知識、それを我がI2社に還元してほしいのデース!!」

 

 その見返りとして、衣食住を保証し、ある程度の資金も援助する。

 それがペガサスからの提案だった。

 むろん、何か別のことをさせられるのではないかと警戒はしたのだが、現在、自分が置かれている状況は選択権を行使することを許してはくれない。

 

「わかりました。ですが」

「もちろん、この時代でタイムパラドクスが起きないよう、細心の注意は払いマース!」

 

 少年の生きる時代とペガサスが生きている時代は、少なく見ても数世紀ほど離れているため、ルールやカードプール、システム、戦術など様々な面で違いが存在している。

 それらをI2社と、同社が提携する企業が独占すれば、世界を牛耳ることなど容易なことだ。

 だが、その技術や知識を独占し、際限なくこの世界に広めた場合、少年の存在が消えてしまう可能性がある。

 それだけならば、一人の未来の人間が消えるというだけで済むかもしれない。

 だが、この世界には人知を超えたものが存在している。

 古代エジプトに隠された宝物『千年アイテム』、世界各地に眠る神話。極めつけは、『ドーマ』と呼ばれる組織が起こした超常事件。

 ペガサスはそれらが起こした事件を身をもって体験しているため、もしかしたらタイムパラドクスが発生した場合に発動されるという『世界の修正力』というものも存在するのではないか、と考えている。

 そうなっては、自分たちもどうなるかわからない。

 少年から与えられた知識は慎重に扱うことを約束したことは、当然のことだ。

 

「ところで……そろそろ、Youの名前をMeに教えてくだサーイ。今からYouはこのペガサス・J・クロフォードのビジネスパートナー。いつまでも名前を知らず、Youと呼ぶのは失礼デース!」

 

 ペガサスの言葉に少年は確かに自分が今まで名乗っていないことを思い出した。

 

「失礼しました。俺――私は、遊人。近藤遊人(こんどうゆうと)です。よろしくお願いします、ペガサス・J・クロフォード会長」

「なるほど。では、遊人ボーイ。こちらこそ、よろしくお願いシマース」

 

 少年――近藤遊人が名乗ると、ペガサスは右手を差し出してくる。

 遊人も自分の右手を差し出し、ペガサスと握手を交わした。

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