デュエルアカデミアが鎮座している離島に到着した遊人は、大地とともに所属することとなるラーイエロー寮へとむかっていた。
寮に到着して早々、遊人は目を丸くする。
「でけぇ……なんかもう、三ツ星の高級ホテルって感じだな」
「あぁ。それだけ生徒の生活環境に力を入れているということなんだろうか」
隣にいた大地が遊人の言葉に同意する。
目の前にある建物はおそらくはペントハウスなのだろうが、リゾートホテルと言われてもそん色ない外観をしており、学生寮と呼ぶにはあまりに豪華すぎるものだ。
逆に言えば、それだけ学生の島での生活環境に気を使っているということなのだろう。
なにせここは本土からかなり離れた場所に浮かぶ島。
完全な無人島ではないものの、決闘と勉強以外にやることがない環境が経験が少ない学生の精神を簡単にむしばみ、決闘者として巣立つことができなくなることを避けるための、海馬社長の計らいではないだろうか、と大地は予測するが。
――あの社長がそんなケアを考えるかなぁ……
遊人はむしろその真逆で、あえて精神がむしばまれる環境に置かれることで決闘者としての本能と土壇場で踏ん張る力を身に着けさせることを考えていたのではないか、と予測していた。
直接会ったことがある上に、仕事上、幾度となく会話をしてきたため、海馬社長の性格はある程度、理解している。
あの性格の社長が、学生たちの精神面のケアを考えることがまったく想像できないのだ。
むしろ、社長を『兄さま』と呼び慕うモクバ副社長の発案と言われたほうがまだ納得できるとすら思っていた。
――ま、どうでもいいか
だが、遊人はあまり気に留めることはしないことにした。
誰が目の前の設備を作ったにしても、自分がやるべきことはデュエルアカデミア在校生たちのやる気を起爆することであることに変わりはない。
「え~、それではラーイエロー寮のオリエンテーリングを始めます。私はラーイエローの寮担当となります……」
どこか覇気のない担当教師からの説明を聞き、遊人と大地はそれぞれの部屋へと移動し、荷解きをした。
荷解きが終わったタイミングで、遊人の部屋のドアを誰かが叩く。
来客の予定がなかったはずであるだけでなく、部屋を訪ねてくれるほど親しくしている友人がいるわけでもない。
一体誰が来たのだろうか。
そう思いながら部屋のドアを開けると、大地がいた。
「どうした、三沢」
「いやなに。ちょうど荷下ろしも終わったところだし、校内を見て回ろうと思ったんだが、
遊人もどうだ?」
「そうだな。変に迷子になるようなことは避けたいし、同行させてもらおうかな」
どうやら、大地は遊人を校内探検に誘いに来たようだ。
遊人もこの後は校内を色々見て回るつもりでいたため、同行することを決め、準備に入った。
数分後、遊人と大地は通信機にもなっている学生手帳に表示された地図を頼りに、寮から離れた場所にある校舎へと向かっていた。
寮から少し離れた場所にある、と地図は示していたため、歩けばどれくらいかかるのか試すつもりで向かっていたのだが。
「……遠いな」
「あぁ。少し遠いな。もうニ十分ほどはかかっているか」
「けどレッド寮よりはましなんだよな? さっき地図で確認したが、海岸のあたりだろ? ここより余計に時間かかるじゃねぇか」
「そうだな……せめて、何か交通手段のようなものがほしいところだ」
そんな会話をしながら歩く二人の額には、軽く汗が浮かんでいる。
カリキュラムの中には体育の授業はあるにはあるが、週に一度か二度ほど。
体力の成長面を考えての距離なのかもしれないが、それにしてはいささか長い。
――自転車とかキックボードを配備してくれるよう、社長に頼んでみるかな
歩きながらそんなことを考えているうちに、二人は本校舎に到着した。
本校舎の中には最新鋭の設備が整っており、春夏秋冬問わず、快適な環境の中で過ごすことができるようになっている。
理数系の分野にかなり明るいのか、大地はその設備を見て目を輝かせていた。
あちらこちらを見て回るうち、広い
「広いな」
「あぁ。プロリーグで使用されてもおかしくない広さだな」
「ふむ……あ、てことはもしかして、あれはテレビ中継とかのカメラを設置する場所だったりするんじゃないか?」
競技場の周囲を歩きながらそんな感想を漏らしていると。
「翔! 早速、決闘しようぜ!」
「え?! さすがにやめとこうよ、アニキ……」
聞いた覚えのある声がアリーナに響いてくる。
声がした方へ視線を向けると、そこには船の甲板で出会った十代が決闘盤を構えた状態で翔に迫っていた。
どうやら、決闘を申し込んだらしいが、表情を見るに翔の方はあまり乗り気ではないらしい。
「あいつらも校内探検かな?」
「そうかもしれないな。誘ってみるか?」
「そうだな。ほかにも回ってない場所があるし、旅は道連れともいうしな」
「いや、旅なのか? これは」
遊人の言い回しに、大地は苦笑を浮かべながら返し、十代たちのほうへと向かっていく。
すると、今度は十代たちが立っている場所とか反対側の方向から、自分たちと同い年くらいの少年の声が響いてくる。
遊人と大地は思わず、声がした方へと視線を向けた。