「どうしたの?話し聞こうか?」から始まる異世界召喚物語   作:白白明け

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オリジナル小説に挑戦してみたくてを書かせて頂きました。
感想など、頂けると嬉しいです。

皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m





第一話

 

 

「誰が言ったか召喚勇者。与えられしは異能の神器。争い無き世に解き放たれし場違いを、恥じること無く笑ってやろうッ!」

 

これは、そんな事を恥ずかしげもなく叫べる男の冒険譚。

 

 

 

 

 

 

 

 

「近いうち、俺は禁断症状を発症してしぬだろう・・・。ああ、此の世界で死んだなら・・・俺の魂は元の世界に帰れるのだろうか」

 

町一番の食堂という看板を掲げる『猫の額亭』のカウンターテーブルに座り、真っ昼間から不吉な事を呟いている男がいた。

男の名は四条獅子丸。異世界からこの世界に召喚された勇者の一人。

 

四条の通っていた高校。平金(ひらがな)高校3年B組の面々が異世界転移に巻き込まれたのは約一年前の事だった。

 

突然の異世界。

与えられた神器(チート)

そして明かされた衝撃の事実(魔王は死んだ)

 

クラスは大いに荒れた。

四条は王様をぶん殴った。

 

そして、一年の月日が流れていた。

 

 

首都から遠い地方の街の食堂で、四条は今日も項垂れていた。

『猫の額亭』の店主は迷惑そうな表情を浮かべながらも、この店の常連客である四条にまさか「独り言が不吉だから出て行ってくれ」と言うわけにもいかず、困り顔で四条の連れが来店してくるのを待っている。

 

「・・・ああ、音が聞こえる。ジャラジャラ、ツモツモ、ポン、チー」

 

『猫の額亭』の店主に取っての救世主である女性が来店したのは、四条が禁断症状一歩手前で発狂しかける寸前だった。

 

「…リーチ。…イッパツッ!…ロンッ‼」

 

「店で奇声を発するなッ!迷惑だろうッ!」

 

「ぎゃふんっ」

 

かくして四条は討たれ、『猫の額亭』には平和が訪れた。

―――HAPPY END。

 

「終わらせるなッ!馬鹿ものッ!」

 

更なる暴力(ツッコミ)により再起動を余儀なくされた四条が渋々に顔を上げると、其処にはいかにも冒険者という格好をした銀髪で紫色の瞳をした女性が腰に手を当てて立っていた。

 

「・・・チェンジで」

 

「なあ!?」

 

身長(タッパ)が大きすぎる。同年代なのに、男の俺より高身長って・・・煽りかな?だから、チェンジで」

 

「あ、相変わらず失礼すぎる。私だって、好きでこんなに大きくなった訳ではないのに・・・」

 

四条の言動でワナワナと振るえる女性の背には炎が見えた。周囲の人々が危険を察して距離を取る中、只一人、四条は女性を焚き付ける。

 

「あと、男に免疫がなさ過ぎる所為で俺みたいな奴に甘く囁かれた程度で直ぐに(ねんご)ろに成るような子はチョットなぁ」

 

四条の爆弾発言に周囲の人々が驚きで四条と冒険者の顔を交互に見る。

 

「・・・マジかよ」

「あの子がなぁ」

「俺の方が先に好きだったのに・・・」

 

女性の顔が羞恥で真っ赤に染まる。

 

「この、馬鹿ああアアアア‼」

 

この日、町一番の食堂である『猫の額亭』は物理的に爆発四散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

四条獅子丸という悪漢を打ち倒し、『猫の額亭』に平和を齎した女傑の名前は火風(カフゥ)と言った。

並の男を越える身長に冒険者家業で鍛え上げた肉体(からだ)を持ち、竜種の魔物にも臆さない心を持つ彼女だが、恋に恋する年頃の乙女でもあった。

職業柄、同年代の異性からはよそよそしくされ、身近な異性はむくつけき中年男性(おっさん)たちだけの状況に溜息を吐いてばかりの日々を送っていた彼女に転機が訪れたのは、半年ほど前の事だった。

 

王国の首都に勇者達が現れたという噂が流れた。

 

そんな眉唾な噂を信じて居たわけでは無いが、勇者達が自分と同年代の人間だと聞けば年頃の乙女としては興味が沸いた。

元々、火風は刺激を求めて冒険者になった。

更なる刺激を求めて首都に行くのも良いかもしれないと考えていた頃、勇者は首都(うえ)から地方(した)に飛ばされてきた。

 

「こんにちは。勇者です。国王をぶん殴ったら、地方に飛ばされました。どうぞよろしく」

 

この街の冒険者ギルドの上役から、冒険者達に紹介された勇者は荒事に向いているとは思えない雰囲気とは裏腹に、片方だけ見える目はギラギラと血走っていた。

何かの薬物(ヤク)中毒()かと周りが噂する中、火風は勇者に興味を持った。

しかし、年頃の乙女として同年代の異性に気軽に話しかけることは出来なかった。

冒険者仲間の中年男性(おっさん)達になら、軽口も叩けるのにとハンカチを噛む日々を送っていると、そんな自分の様子を不思議に思ったのだろう。

ある日に向こうから話しかけてきた。

 

「どうしたの?話し聞こうか?」

 

何か悩みが有るのなら、話を聞こうかと言ってくれた優しい勇者に、真逆、悩みのタネは貴方ですと言える訳もなく、火風は動揺し(テンパり)、ありもしない悩み事をでっち上げることにした。

そして、気がつくと宿屋で勇者と二人で朝を迎えていた。

 

寝具(ベッド)の上、昨日初めて真面に会話をした異性の腕枕で目を覚ました火風はダラダラと冷や汗を流しながら、視線を上げる。

其処には先に目を覚ましていた勇者の顔があった。

目が合うと勇者は悪戯が成功した少年のような顔で言った。

 

「昨晩はお楽しみでしたね」

 

火風は物理的に顔から火が噴いた。

それが火風と四条獅子丸の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ほどデリカシーの無い奴に、今までであったことがない!こ、公衆の面前であ、あんなことを言うなんて・・・常識と言うものがないのかッ!」

 

「寝起きで毎回、人の顔を焼く人に常識を語られてもなあ」

 

「うるさい!バカ!」

 

理由有る暴力が四条を襲う。それを「理不尽だ・・・」と嘆く四条に対して、拳を振るわせながら更なる制裁(ゲンコツ)を食らわせてやろうかと考えた火風だったが、残念ながらその機会を逸してしまった。

 

目的地に到着した。

 

『猫の額亭』を爆破し、店主に平謝りをした後、四条と火風は冒険者組合へとやって来ていた。

立て付けの悪い扉を開ければ、中ではむくつけき中年男性(おっさん)達が昼間から酒盛りをしている。

彼らが赤ら顔でしてくる挨拶に笑顔で軽く会釈を返しながら歩く四条とは対照的に、火風は室内に立ちこめる酒臭さへの嫌悪感を隠そうともしていない顰めっ面で、挨拶を無視して進んでいく。

 

「組合長からの呼び出しだ」

 

最近では四条と火風以外が近づくことがない受付には、顔色の悪い受付嬢が座っていた。

手短に要件だけを伝えた火風に対して、受付嬢は張りの無い沈んだ声で返事をする。

 

「・・・組合長室へお進み、ください・・・」

 

「わかった」

 

この冒険者組合唯一の受付嬢である彼女の顔色が悪いのはいつものことなので、火風はさっさと組合長室に向かう。

しかし、四条は受付嬢に、いつものように声をかけた。

 

「元気ないね。どしたの?俺で良ければ話、聞くよ?」

 

「・・・えっと、実は・・・」

 

「そんな暇は無いッ!」

 

「イテテ⁉引っ張るなよ。ごめん。また後でねー」

 

「・・・いってらっしゃい・・・」

 

四条は火風に腕を引っ張られ、受付嬢に小さく手を振られながら、組合長室がある二階への階段を上る。

 

「組合長。入りますよ」

 

火風が扉を叩いた後に返事を待たずに入室する。

四条もそれに続いた。

組合長室に居たのは骨と皮だけで出来ているのではないかと思わせる痩身痩躯の男だった。痩せすぎていて年寄りにも青年にも見える男は、眼鏡の下の光の無い黒目で四条を捕らえると口角を僅かに歪めた。

 

「火風さん。勇者さま。お忙しいところをご足労頂きありがとうございます」

 

丁寧な言葉を並べながらも、欠片の親しみも感じさせない組合長は椅子から立ち上がると、二人の側へと歩み寄ってくる。立ち上がると背の高さに驚く。

四条より背の高い火風より頭二つ分は高い視線から二人を見下ろす組合長は、背骨を少し丸める独自の姿勢で二人に相対しながら、早速本題に入る。

 

「実はお二人にお願いしたい依頼がございまして・・・これなのですが、受けては頂けませんか?」

 

組合長が差し出してきた依頼書を火風が受け取り、内容を確認する。

 

「『護衛任務』か・・・、依頼人は誰だ?書いてないぞ」

 

危険な道中の安全を保証するために、冒険者を護衛とすることは珍しい事では無い。

この街では冒険者組合への依頼自体が珍しい事ではあるのだが、それを除けば『護衛任務』は一般的(ポピュラー)な依頼だ。

だから、特に疑問を持つこと無く依頼を受けようとした火風だったが、依頼書に依頼人の名前が記載されていないという不備を指摘したところで、組合長の笑みから不穏な雰囲気を感じ取った。

 

「・・・名前も明かせない者をどこかに運ばせるのか?冒険者組合は、いつから怪しい運び屋になった?」

 

剣呑な雰囲気で睨み付けてくる火風に対して、組合長は首を横に振りつつ、依頼書に依頼人が記載されていない理由を語る。

その際、視線は火風では無く四条の方を向いていた。

情に訴えかけるなら、火風より四条の方が効果的であることを彼は知っている。

 

「いえいえ、滅相も無い。この街で唯一、現役で活動をなさってくれているお二人に怪しい依頼など頼む筈がありません。そういう()()()は、一階の穀潰しの方々にお願いするのが筋というものですから」

 

丁寧な言葉遣いはそのままに、自分の役に立たない者たちを貶す組合長のことが、四条は心底、苦手だった。

組織の上に立つ者として、損得勘定を人間関係に置いて重視する在り方が大切なのはわかる。

しかし、むくつけき中年男性(おっさん)達が気の良い連中である事を知っている四条としては頷くことの出来ない感性だ。

 

そして、組合長は四条に嫌われていることに気がついている。

なんなら組合長も四条のことが嫌いだ。

何故なら、彼は愛娘の側に集る蠅の一人だからだ。

この冒険者組合で唯一の受付嬢は、組合長の一人娘だ。

常に顔色の悪い愛娘が、彼のことを話す時だけは僅かに明るくなる。

それに内心では青筋を立てている組合長は、しかし、四条の優秀さを買ってもいた。

損得勘定を人間関係において重視する組織人としての自分の在り方が、四条との関係を断つことを許さない。

 

だから、こうして絶対に失敗できない依頼については常に四条と火風の二人組(コンビ)を重宝してきた。

 

「依頼書に依頼人の名前が書いて居ない理由は、依頼を受けてくれると確約するまで依頼人を明かすことが出来ないからです。誓って言いますが、この依頼は“人助け”です。白と黒に別けるのなら、真っ白と言えるでしょう」

 

「・・・四条。どうする?」

 

判断は任せると言ってきた火風に対して、四条は腕を組んで悩む。

組合長のことは苦手だが、つまらない嘘を吐くような人物では無い事は知っている。

彼がこの依頼を“人助け”と言い切るのなら、そうなのだろうと思える位には信用している。

 

「これ以上、受付嬢さんの顔色が悪くなっても困ります。だから、お受けしますよ」

 

「ありがとうございます」

 

組合長は曲げている背骨を更に丸めて頭を下げた後、依頼の説明をはじめる。

 

「さて、この依頼の依頼主なのですが、実は・・・魔族です」

 

「ああ、魔族か」

 

組合長が依頼人を明かせなかった理由を聞き、火風は納得し頷いた。

 

この国では魔族は差別されている。

この国と隣国二つを含めた三国(さんごく)協定(きょうてい)(ほう)では魔族の人権は保障されているが、この国では嘗《かつ》て(くだ)した敗戦国の人間だという意識が根深く残っている。

三国協定法が制定されてから産まれた火風達の様な若い世代にその意識は薄いが、それでも知識としてはそういう時代があったと言うことを知っては居るし、若い世代の中には選民意識を親から植え付けられて育った者たちもいる。

 

「穀潰しの方々には、絶対にお願いすることが出来ない依頼です。力不足ではありますし、何より依頼人を知った途端に依頼を反故にしかねない。そういう連中なのですよ」

 

この街には魔族が住んではいない。だから、四条は魔族が差別されている場面を見たことが無い。

しかし、地方とは閉鎖的である事を四条は知識と知っている。異世界人とはいえ種族としては人間である自分に対しては気の良い連中である彼らが、絶対に他種族を差別はしないと言い切ることは出来なかった。

 

「冒険者組合は達成が難しいと判断した依頼を断る事は出来ますが、魔族である事を理由に依頼を断ることは出来ません。目的地は首都の方角にある隣街です。たったそれだけの距離の移動です。達成が難しいなどとは、流石に言えません」

 

組合長は再び背骨を丸めて深く頭を下げた

 

「どうかよろしくお願いいたします。お二人しか、頼れる方が居ないのです」

 





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