「どうしたの?話し聞こうか?」から始まる異世界召喚物語   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m




第十三話

 

 

 

火風とアーエーの監獄への護送は逮捕の翌日、正午に行われた。

裁判を行う事なく監獄送りが決定した背景には、王国の上層部に存在する反魔族派の勢力による政治的な介入が存在していた。

『破魔の剣』という組織名を語る彼らが、アーエー。

本名、アーエー・シューハマーが首都に向かっているという情報を得たのは偶然だった。

 

()()()()から齎された情報。

その事実確認が取れて直ぐに『破魔の剣』は動き出した。初めに宿屋刺客を送り殺害を試みた。

それが失敗に終われば、次はその事件の罪をアーエーに押しつける事で監獄送りにし、監獄で殺害する計画を立てていた。

 

『アーエー・シューハマーが首都に来ることは絶対に阻止しなければならない』

 

それを絶対の条件として動く『破魔の剣』には恐れている事態(こと)がある。

アーエーが首都にやって来て、()()()に会ってしまった時、最悪の事態に陥ると考える彼らにとって奇跡に等しい幸運は万秋の存在だった。

 

万秋は『破魔の剣』に所属こそしていないが、王国の上層部の間で、その魔族嫌いは有名だった。

そして、何よりもアーエーとは個人的な因縁が存在している。アーエーを殺す機会が訪れれば、必ず剣を抜くだろうというのが『破魔の剣』の考えであり、それは的中した。

 

万秋という奇跡。

しかし、『破魔の剣』にとって不運だったのは、万秋がアーエーと(まみ)えた時、問答無用で素っ首を叩き落すのではなく、騎士団上層部の意向に従い監獄送りを遵守したこと。

アーエーを殺す機会が伸びてしまった。

 

そして、それは四条にとっての幸運だった。

彼は仲間を救う機会を得た。

 

 

 

 

 

 

 

 

監獄に向かう街道を火風とアーエーを乗せた護送馬車が進んでいる。

それを守るのは万秋の率いる警備隊と小紫耀の率いる部隊。総勢百名。

それは普段の監獄への護送では考えられない規模の警備体制だった。

 

「万秋隊長殿!よもやこれ程の警備兵を寄越してくれようとは!あんたもこの任務の重要性を理解しているようで何よりですぞ!」

 

小紫耀は騎士団の上層部からの命令で動いている。だからこそ、絶対に失敗が出来ない。

その任務に万秋が普段の十倍以上の人員を割いてくれた事にご機嫌な様子の小紫耀は、任務の成功を疑う事なく笑っている。

万秋はそんな風に油断している小紫耀に向けて片眉を上げる。

 

「油断なさらぬことですな。飛ぶ鳥の献立を立てることはお主の勝手だが、儂の足だけは引っ張ってくれるなよ」

「ぐっ・・・は、はは!万秋隊長殿は真面目が過ぎますなあ‼」

 

万秋の物言いにプライドが傷つけられる小紫耀だが、彼の機嫌を損ねる訳にもいかないので文句が言えない。

しかし、心の中では万秋に対する復讐を企てていた。

 

(この化物め。この任務が成功すれば、私は騎士団本部へ取り立てられるのだぞ!そうなれば地方騎士団の一隊長など、どうにでも出来る権力が手に入る!この私に舐めた口を聞いた事、必ず後悔させてやる‼)

 

万秋はそんな小紫耀の心の内を見抜きながらも、くだらないと吐き捨てて相手にはしない。

 

(何処までも小物よのぉ。此奴の父親には見所があったが、それを欠片も受け継いでおらぬとは憐れみすら覚えるわい)

 

万秋は小紫耀から視線を外し、隊列の前へと馬を走らせる。

 

「あ、ど、何処へ行かれる!万秋隊長殿には、私の護衛を頼んであった筈―――

 

小紫耀が何か後ろで喚いていたが、万秋は聞く気は無かったので無視した。

小紫耀を置き去りにして隊列の前までやって来た万秋は先頭で指揮を執っていた亞呂恵の馬の横に馬を並ばせる。

 

「亞呂恵。問題はないな?」

 

「・・・つーんなの」

 

亞呂恵は万秋を無視した。

子供のように唇を尖らせて、あからさまに明後日の方向を向く亞呂恵に対して万秋は深い溜息を吐いた。

 

「なんじゃ。まだ怒っているのか?これは上層部からの命令なのだから、仕方の無いことだと説明したじゃろう」

 

「上層部さんからの命令に従うだけの隊長さんなんて嫌いなの。私が好きなのは理不尽な命令には剣で立ち向かうカッコイイ隊長さんなの。今の隊長さんは嫌いなのー」

 

「相変わらずお主は機嫌が悪いと可愛げがないのぅ」

 

「ふーんだ。今の隊長さんには可愛いと思って貰わなくてもいいのー」

 

火風とアーエーを監獄に送ることについて、亞呂恵は未だに反対だった。

事件の真犯人は別にいると信じていた。

 

「不満があるのなら留守番をしておれば良かったではないか」

 

「私の知らない所で二人が酷い目にあるかも知れないの!そんなのは許さないの!それと私が隊長さんの命令に従うのは監獄に送るまでなの!監獄に着いたら、私が二人の弁護人になって絶対に無罪を勝ち取ってやるの!今に見てろなのー‼」

 

亞呂恵は両腕を振り回して怒りを表す。彼女は必ず火風とアーエーの二人を救ってみせると意気込んでいた。

万秋はそれに眉を潜めながらも、内心では亞呂恵の我が儘の()()は叶えても良いと考えていた。万秋が()()()()()に憎いのは、アーエーだけだ。そんなアーエーの仲間である火風も()()()()()()と思う位には嫌いだが、憎いということは無い。

亞呂恵が火風を助けたいというのなら、力を貸すことに躊躇いはない。

 

(じゃが、あの魔族の娘(アーエー・シューハマー)だけは絶対に救わん。故に今は何も言わぬ方が良いな)

 

そう判断して万秋は亞呂恵に告げる。

 

「お主の気持ちはわかった。じゃが、引き受けた以上は仕事。油断や手抜きは許されないぞ。今一度問うが、問題はないな?」

 

万秋の普段とは違う冷たい言葉に亞呂恵は身体を強張らせるとゆっくりと頷いた。

 

「も、問題は無いの」

「それなら良い」

「・・・」

「・・・」

 

万秋と亞呂恵の間にあまりない沈黙が訪れる。

亞呂恵は内心で普段はない居心地の悪さに目をぐるぐるさせていた。

 

(うー、隊長さんがいつもとは違って怖いのー。アーエーさん、一体、隊長さんと何があったのー)

 

万秋とアーエーの間に何があったのか。亞呂恵がずっと聞こうか迷っていたことを、遂に尋ねようとした時、一団が向かう街道の先の空に暗雲が立ちこめているのが見えた。

 

「あ、雨雲なの」

(たわ)け。よく聞け」

「聞く?・・・な、なんか、変な音がするの。お、お尻がムズムズするの。あ、あれって、もしかして‼」

 

空にあるのは雨雲では無かった。雲と見紛う程に空を覆う具足虫の大群。

それに気が付いた兵士達が浮き足立つ。亞呂恵は思わずお尻の穴を手で守っていた。

 

「た、隊長‼どうされますか‼小紫耀連隊長は、一時退避を提案させていますが!」

 

小紫耀の元から馬を走らせてきた兵士に対して万秋は檄を飛ばす。

 

「ゴキブリを見た小娘でもあるまいに!浮き足立つな!みっともないのぉッ!」

 

万秋の大声に兵士たちは冷静さを取り戻す。万秋は続けて命令を下す。

 

「このまま進めぃ‼案ずるな!儂の剣が折れぬ限り、お主ら敗北は無い‼故、恐怖の前に前を見よ!敵は一人じゃぞ‼たった一人の敵を前に逃げたなら、騎士の名が腐ると知れぃ‼」

 

具足虫の大群に近づくにつれて、その大群の下にいる者の姿が見えてくる。

万秋のいうとおり、一団の進行を阻む人間(もの)(ただ)、一人。

 

四条獅子丸が立っていた。

 

万秋は四条の不揃いな前髪を見て嗤う。

 

「さっぱりしたではないか、小童」

 

「ええ、お陰で色々と見えるようになりましたよ。万秋さん」

 

「生きていたとは驚きじゃのぉ。それで、お主は何故、儂の前に立つ。よもやあの時の冗談を本気にしたか?お主が儂に勝てる訳が無かろうに」

 

「ハハッ、これだから老害は嫌いなんです。頭の中が古くさくて、若者を認めようとしない。過去を美化しすぎて、昔は良かったが口癖なんてつまらない」

 

「儂に勝てると?」

 

「俺は勝ちに来た」

 

万秋は笑い。

四条は笑わなかった。

 

一対百。

 

四条が今日ほど、与えられた神器が『天害蠱軍』で良かったと思った日はない。

怪虫の軍団を率いる能力(チカラ)だからこそ、一対百でも戦える。

 

「具足虫ッ!『人和(れんほー)』!一斉(ドラ)掃射(ドラ)ァアア‼」

 

開戦の号砲は具足虫の突撃と共に告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一団に向けての具足虫の一斉掃射。初手から『人和』という切り札を切った四条には手加減が一切なかった。手加減をすれば直ぐに自分が負ける事がわかっていた。

四条が今まで騎士団を相手に戦った事は無い。彼らは山賊や盗賊のような破落戸(ならずもの)や魔物とは違い、戦闘訓練を積んだ者たち。戦う為に存在している者たちだ。

具足虫の攻撃を捌ける戦闘能力がある。

加えて、その者たちを率いるのは化け物だ。

 

開戦と共に放った切り札の一つは、馬で駆けてくる万秋の剣によってその半数が切り落とされた。

 

「お主の虫ケラは、相変わらずの烏合じゃのぉ‼」

 

雲と見紛う程の大群の半数を切り落とした万秋は笑う。

四条は明らかに剣の間合いを遙かに超えている斬撃の間合いに舌打ちをしつつ、万秋に右の掌を向ける。

 

「半数が貴方を超えたと考えればヨシッ!」

 

初めから具足虫たちの大半には万秋以外の兵士()たちを相手にして貰うつもりだった。

万秋と戦う以上、外野の邪魔があれば直ぐさまに自分の敗北が決定することはわかっていた。

流石の騎士団とはいえ、あれだけの数の具足虫を直ぐに制圧できる筈もなく、その間は万秋との戦いに集中できると四条は考えていた。

 

「ふん、流石に多面的な戦いを考えるくらいの頭はあったか!」

 

万秋もまた後ろは部下たちに任せる事に決めた。

 

「部下を守らなくていいんですか?」

「儂の部下は虫ケラにやられる程、柔ではないわい。小紫耀の部下がどうだかは知らんが、それはどうでも良い!」

「冷たい人だ!」

 

駆けてくる万秋の馬。まずはその足を止めなければならない。具足虫が切り落とされる以上、四条が頼るのは別の怪虫だ。

駆ける万秋の馬の足下の地面が盛り上がる。地中から姿を現したのは鬼百足。鬼百足が馬の足に絡みつき、馬は転び、万秋は落馬した。

落馬した万秋は受け身をとり立ち上がると、倒れている愛馬を見て舌打ちをする。

 

「馬は常に四本足で立ってなければ死ぬ気高い生き物だというのに、乱暴なおろし方をしおって!馬の予後不良を知らんのか!」

 

目の前の敵を斬る理由が増えたと怒りを露わにする万秋は、お返しとばかりに地を這い向かってくる鬼百足たちを断ち切り殺す。

四条は舌打ちを返した。

 

「彼らを虫ケラと呼んで殺す貴方に動物愛護を説かれても響きませんよ」

 

「害虫を殺して何が悪いのかのぉ」

 

「俺にとっては大切な仲間だ」

 

「ふん、ならば仲間を死地に送るお主は悪魔か?ああ、いや、違ったか。お主自身もあの魔族の娘(アーエー・シューハマー)の仲間。害虫と同類の糞虫よ」

 

「本当に、魔族への差別が凄まじいな。これだから老害は嫌なんだ。貴方だって宿屋で自爆テロをした奴らの同類じゃないか」

 

互いに嫌悪を口にしながら、にらみ合う二人。

万秋は嘲笑(わら)い。

四条は笑わない。

 

「粋がるのはよいが、此所まで全てが前と同じよ。具足虫()は落す。鬼百足(百足)は潰す。して、お主にはこれ以上に何が出来る?儂に勝つのではなかったのかのぉ」

 

「勝ちますよ。勝たなきゃならない。その為に、強くなったんだ」

 

四条の右目。『天害蠱軍』が赤く輝く。すると地面に居た鬼百足たちが四条の身体に巻き付いていく。身体に巻き付いた鬼百足の数は六匹。それぞれの鬼百足は顎から直刀の刃を出し、それを万秋へと向ける。四条もまた地面に居る二匹の鬼百足の顎から直刀の柄を引き抜き、右手で握る。

四条が手に持つ一本の直刀。身体に巻き付く六匹の鬼百足の顎からでる刃が六本。合計七本。

 

「『百鬼装甲(ひゃっきそうこう)』、“七本刃(ななほんば)”」

 

それは一見すれば身体から六本の蠢く鋭利な触手を生やした奇妙な姿。

右目に赤く輝く昆虫の複眼も加味すれば人外と評していい醜悪さだった。

 

以前から四条は鬼百足を身体に巻き付ける事はあったが、それは鬼百足の固い外殻を用いた防御の為だった。それを攻撃に転ずる姿。鬼百足の姿形が百足という不快害虫であることも相まって、その姿の禍々しさは一級品だ。

 

それも見ても万秋は尚も嘲笑(わら)っていた。

 

「カカッ、魔族に与する国賊めが。ようやく()()()姿になったではないか。そうであろう。『天害蠱軍』という虫ケラを操る能力。なればこそ、その担い手が人の形の範疇に収まっていては、その能力(チカラ)を十全に扱える筈もなし」

 

その姿を嘲笑(わら)いながらも、万秋は四条の事を心の底で賞賛していた。

 

「守りたい者の為に、人の形を捨てたか。それで良い。人である事を止めて初めて、勇者としてのスタートラインよ‼」

 

万秋の纏う雰囲気が変わる。四条は今までの怒気すら、彼にとっては(なぎ)だったと知る。

 

「さあッ、行くぞォオオオ‼小童ァアア‼」

 

万秋が踏み出した瞬間、地面が砕けた。それ程の踏み込み。振るわれる横薙ぎは火花を散らしていた。剣を振るう速度が速すぎて、空気中の塵が刃との摩擦で発火しているのだ。

その横薙ぎを四条の右目は捕らえることが出来る。『天害蠱軍』の形。昆虫の複眼は伊達では無く、複数の目によって直接脳に送られる数多の映像により、今の四条は太陽を見ながら獲物を追うことの出来る蜻蛉と同等の動体視力を有している。

万秋の剣を四条は七本の刀で防ぐ。力の拮抗は一瞬、直ぐに四条が圧されて後方に僅かに飛んだ。

 

「軽いのぉ!ちゃんと飯を食べとるのかぁ‼」

 

後退の隙に差し込まれる連続突き。頭、喉、みぞうちの急所三カ所を素早く突く三段突きを具足虫が間に入り、命を落しながらに防ぐ。

体勢を立て直した四条が振るう直刀と共に身体に巻き付き蠢く六匹の鬼百足の顎から飛び出る六本の刃が万秋を襲う。

加えて地面に隠れていた鬼百足が万秋の両足を拘束し、十八匹の具足虫が万秋に向かって突撃する。

 

人和(れんほー)』と『地和(ちーほー)』の合わせ技。

二種必殺(ダブロン)二同刻(りゃんどーこー)』。加えることの“七本刃(ななほんば)”。

 

剣一本では到底、対処しきれない物量を切り捨てるのが万秋という化け物だ。

 

「秘剣『剣銃(ガンソード)』“六連(リボルバー)”」

 

鳴り響く六発の銃声。音速の壁を超えた六連撃。銃声のする剣。

四条の物量は全て捌かれた。次いで万秋が振るう剣の軌道は、四条の首を刎ねる。

 

仕舞(しま)いじゃよ」

 

万秋は勝負の終わりを確信した。

四条はこの時を待っていた。

 

万秋の知らない初見殺し。前の戦いでは見せていなかった最後の必殺技(役満)

四条と万秋の足下に影が降りる。思わず頭上を見上げた万秋が見たのは、白い巨体と純白の翅を持つ三眼(さんがん)の天使。

 

四条と万秋。二人を巻き込みながら、大鳴虫の『天和(てんほー)』が炸裂した。

 

 

 

〈キャアアアアアアアアアア〉

 

 

 

空気を振動させる大絶叫。即座に耳を塞ぎ聴力を守った万秋とは対照的に、四条は攻める事を選択する。不意を打たれた万秋とは違い、覚悟が出来ていた分、四条にはその選択肢があった。

自らの攻撃である『天和』により鼓膜は破れ、聴覚は一時的に失われる。

それでも覚悟を持って振るわれた二刀。

 

「俺も捨てたぞ、万秋」

 

万秋はその軌道を目で追い、口元は僅かに弧を描く。

 

「みごと」

 

万秋の身体から十字の鮮血が噴出した。

 

その時、声がした。

 

「隊長さん!」

 

万秋は倒れそうになる身体で片足を踏み出し、身体が倒れるのを防ぐ。

四条に負けられない理由があるように、万秋にもまた負けられない理由がある。

それはアーエーを憎む過去ではなく、亞呂恵を想う未来だった。

 

「ッ⁈大鳴虫‼もう一度だ!『天和‼」

 

倒れない万秋を前に四条は駄目押しの一撃を大鳴虫に命じる。今度は自身は攻撃範囲外に逃れての、正真正銘最大音量での『天和』。

人体の水分を振動させて壊す空気の振動。

死の天使の鎮魂歌を前に万秋は剣を天に振り上げ、断ち切った。

 

「…音を、斬ったのか?」

 

四条は絶技を前に絶句する。大鳴虫は身体を真っ二つに切り裂かれ地面に落ちる。

大鳴虫の死体が地面に衝突し、土埃が舞う。

 

「化け物め」

 

土埃を切り払う剣鬼を前に、そう吐き捨てる四条に対して、万秋は鼻を鳴らす。

 

「お主も其処に片足を突っ込んだ癖に何を言うか。儂が化け物なら、お主は怪物よ。よもや儂の五分の一も生きていない若造が、儂に膝を地に着かせかけるとはのぉ」

 

「そのまま倒れてしまえば良かったのに」

 

四条は顔をしかめ、万秋を立ち直らせた亞呂恵を見る。

彼女に対する敵意はないが、思わず睨んでしまった。

 

「こ、怖い顔をしないでほしいの」

 

「止せ、小童。殺すぞ」

 

万秋が亞呂恵を庇う様に剣を向けてくる。

四条はそれを見ながら、溜息を吐いた。

 

「貴方にも守りたい人がいる。彼女がそうなのですか?」

 

「お主には関係なかろう」

 

「ありますよ。彼女は顔見知りです。そんな彼女を守りたいと思っている貴方と戦うのは、正直に言ってやりづらい。どうですか、万秋さん。話し合いませんか?」

 

四条はそう言いながら、直刀の切っ先を降ろした。

 

「俺の話を聞いてください」

 

四条がそういった瞬間、万秋の一閃が四条の前髪をぱっつん前髪に変える。眼の前で落ちていく髪に呆気に取られる四条に対して万秋は嘲笑(わら)う。

 

「坊っちゃん刈りがお似合いじゃぞ、小童。誰があの魔族の仲間などの話など聞くか。寝言は寝て言え。国賊めが」

 

「…ああ、そうですか。本当に貴方は、黙聴(クソ)だな」

 

互いに譲らず。戦いは激化の一途を辿る。

 

 

 

 

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