「どうしたの?話し聞こうか?」から始まる異世界召喚物語   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m




第三話

 

目的の街に着いた後、四条たちは二手に分かれた。

アーエーと火風はこの街の冒険者組合へと向かい、四条は依頼が首都への長旅へと変わったので、それに備えて色々と物資の購入を任されて市場へと赴いた。

 

自分達の街と同じあまり活気があるとは言えない市場の中を歩きながら、四条は必要な物資をそろえて行く。

火風がいる限り火の心配は要らないので、それを除く長旅の必需品を揃えて行く四条だったが、一つだけ目当てのモノを見つけることが出来なかった。

 

「ないのか・・・、長い棒・・・。旅といえば長い棒。長い棒と言えば旅の必需品なのに・・・」

 

「ないですねえ。旦那、杖なら有りますよ?」

 

四条の要望に答えようと商品である杖を取り出した露店の店主に対して、四条は腕を組みながら唸る。

 

「うーん、そういうしっかりとしたヤツじゃなくて、森に落ちている様な長い木の棒ない?」

 

「ないですねえ。薪ならともかく、木の棒なんて他の店でも扱ってないですよ。森で拾ってきた方が早いのでは?」

 

「それはそうなのだけど・・・、森に落ちているヤツは虫食いとかだったら、大変なことになるから」

 

「旦那は虫が苦手なんですかい?」

 

「苦手というか、喧嘩になる」

 

「ははあ、なるほど、お連れの方が苦手なんですね」

 

具足虫(あいつ)ら、他の虫に嫉妬するからなあ」

 

「虫に嫉妬するんですかいっ⁉」

 

「最悪、殺されるかも知れない」

 

「そんなことで⁉」

 

四条の神器『天害蠱軍』は、具足虫だけではなく他の種類の怪虫も操る事が出来るのだが、他の怪虫を使うと具足虫の機嫌が悪くなるので、普段は具足虫ばかりを使っていた。

その結果、具足虫(彼ら)は自分達こそが四条の相棒だと虫の脳(キノコ体)で自覚するに至り、『天害蠱軍』で操れる他の虫を使うと嫉妬して頭を噛んでくるという悪循環。

同胞と呼ぶべき他の怪虫たちでもそうなのだから、只の虫を四条が愛でているのを具足虫達が見た時、襲いかかってくるかも知れないと四条は考えている。

だから、店売りされている清潔な木の棒が欲しかったと残念がっていた四条に声が掛かる。

 

「四条、買い物は終わったか?」

「アーたちの用事は済んだのですー」

 

冒険者組合での用事を終えた二人が合流する。

二人が合流した事で長い木の棒を探すことを諦めた四条は露店の店主に礼を言って、二人の方へと歩いて行った。

露店の店主は火風とアーエーを見ながら、呟いた。

 

「あのご婦人たちが虫に嫉妬するのか・・・、いかれているのか。美人なのにもったいねぇなあ」

 

露店の店主の勘違いは雑踏に紛れて消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街での用事を終えた頃には日が暮れはじめていたので、今日はこの街の宿屋に泊まることになった。

幸い、アーエーは魔族の中でも人間に近い容姿であり、頭巾で額の角を隠せば街を歩く事が出来るので宿屋にも何の問題も無く宿泊する事が出来た。

 

「宿代節約のために三人一緒の部屋で良いよね!」

「アーは構いませんよー」

「男女別だ、バカ」

 

火風の理不尽な決定により一人部屋になった四条はふて腐れながら、机の上に具足虫を積み上げる遊びをしていた。

流石に街中に人の頭部ほどもある怪虫の大群を入れる訳にはいかないので、大群の大半は街の側の森の中で身を潜めている。

四条が街の中に連れてきた具足虫は部屋にいる五匹だけだった。

大群の中から選ばれた五匹の具足虫は、どこか誇らしげにしながら、四条にされるがまま机の上に積み上げられていく。

そして、最上段。五匹目を四条が慎重な手つきで四匹目の上に積み上げて、遂に文化遺産として残すべき具足虫五重塔が完成したかと思われた、その瞬間、部屋の扉が乱暴に開けられた。

 

「アアッ⁉」

 

具足虫五重塔はその衝撃で無残にも崩れ落ちる。

床に落ちた具足虫たちは悲しげにキィキィと鳴いていた。その愛虫(あいちゅう)たちの鳴き声を聞いて、義憤に駆られる四条は部屋に押し入ってきた男たちを睨み付けながら叫んだ。

 

「一寸の虫にも五分の魂。それなのに、どうしてこんな非道ができるのかッ‼」

 

そう言いながら床に転がっていた具足虫の一匹を襲撃者の一人に投擲した。

投擲された具足虫が自ら加速し、襲撃者の腹部に体当たりをぶちかますと、襲撃者は吹き飛び廊下の壁に激突し気絶した。

これで襲撃者は残り三人。虫に心があると訴えながら、躊躇なく怪虫を投げつけてくるという行動にでる四条。

そんな彼にビビリながらも襲撃者たちは四条へと襲いかかる。

 

襲撃者の一人が叫ぶ。

 

「三人に勝てる訳ないだろう!」

 

しかし、四条の周囲で停止飛行(ホバリング)をする具足虫たちは数百匹の中の選ばれしモノ(エリート)

 

その自覚を持って襲撃者たちを瞬く間に蹂躙した。

 

「さて、君たちには二つの選択肢がある。俺の質問に素直に答えるか、拷問を受けた末に答えるかだ」

 

襲いかかってきた襲撃者たちを瞬く間に撃退した四条は、ドヤ顔を披露しながら、身柄を拘束し床に座らせている襲撃者を見下ろしていた。

四条の周りでは三匹の具足虫が停止飛行(ホバリング)しながら、羽音を部屋に響かせている。

その異様な雰囲気に呑まれかけながらも、襲撃者たちは気丈に振る舞い声を荒げる。

 

「無駄だッ!俺たちは脅しには屈しないッ!殺すのならば、殺すが良いッ!」

「そうだッ!命など惜しくは無い!大義だ!」

「魔族に与する裏切り者の言葉など聞かぬぞ!」

「俺たちの結束を舐めるなよ!」

 

大抵の人間は具足虫を見れば顔を青くして怯えるのだが、彼らはそんな様子を欠片も見せない。

覚悟の決まった様子に少しだけ感心し、四条は腕を組みながら考える。

“魔族”というキーワードが出た以上、この襲撃にはアーエーの存在が絡んでいる事は明白だ。

人妻にも節操なく声をかける四条への怨恨の線は消えた。

それに少し安堵しながら、同時に暗い感情が四条の心に宿る。

 

「君たちは彼女の名前を知っていますか?」

 

「は?」

「し、知るもんか!」

「魔族の名など、耳にするのも汚らわしい!」

「俺たちはきれい好きなんだよ!」

 

「名前を知らない相手を、君たちは“魔族”であるという理由だけで襲うのですか。野蛮だ。まるで獣じゃあ、ないか。()()()()()()()()()()()()()

 

四条の口から出た言葉に襲撃者たちは顔を赤くして憤慨した。

 

「真っ当な人間である俺たちを侮辱するのか!」

 

「女の子に寄って集って襲いかかる奴らが、真面な人間な訳がないだろう」

 

「魔族が入り込んだ社会を浄化するために戦うのだ!世界をより良くする為に戦えと“救世主”も仰っている!我々の行動の全ては“大義”だ!魔族が存在する所為で人間の雇用が奪われている!首都の貧困街を見たことはあるか!何故人間がッ、奴隷である魔族よりッ、貧しい暮らしを強いられなければならないんだあ‼」

 

唾を飛ばし社会の不条理を訴える襲撃者の一人に対し、四条は舌打ちをしながら、その頭を踏みつけた。

頭を踏みつけられた男は屈辱に震える声で言う。

 

「き、貴様・・・何をする!」

 

「同じ人間に踏みつけられれば満足ですか?魔族だ何だと言ってはいるけど、君みたいな奴は鬱憤を晴らすのに立場の弱い相手を探しているだけだ。魔族を言い訳に使うなよ」

 

「め、恵まれた者がッ、貴様は何もわかってはいない!奪われる痛みを知らぬのだろうが!」

 

「その痛みを知るなら、他人から何かを奪うなよ」

 

五月蠅い口を踏みつけて気絶させ、四条は他の三人に視線を向ける。

襲撃の理由が魔族であるアーエーへの理不尽な敵意であることは明確になった。

 

「さて、じゃあ、話の続きをしようか。君たちに素直に話す気がないのなら、口を割らせるしかない。その場合、俺は手段を選ばない」

 

四条は停止飛行(ホバリング)していた具足虫一匹を掴み取ると襲撃者たちに向ける。

 

「尻の穴に卵を産み付けられた経験はある?結構、痛いらしいよ」

 

襲撃者の眼前に突きつけた具足虫の前脚がカサカサと動く。

(ガク)からはキィキィという鳴き声が漏れていた。生きている人体に虫の卵を産み付けるという非道な脅し。

拷問に対する訓練も受けていた襲撃者達だが、そんな倫理に反する拷問を受けた事は無い。

四条だってそんな拷問をした事がない。全ては口から出任せだったが、効果は覿面(てきめん)のようで襲撃者達の心が折れたのが顔色で分かった。

 

後は誰が最初に口を割るかの問題だと、四条が気を緩めた瞬間、気絶していた男が目を覚まして、血走った目で叫びながら、()()()()()()()()()魔法具を起動させた。

 

「“救世主は、偉大なりッ‼”」

 

他の者たちが止める暇も無く男が魔法具の起動呪文を唱えた瞬間、その肉体は爆弾と化し、狐と犬の鳴き声が混ざった音と共に爆発した。

 

「爆発オチなんて、サイテー‼」

 

襲撃者が自爆する瞬間、四条は叫びと共に具足虫たちと部屋の窓から外に飛び出した。

二階から飛び降りる結果となった四条は地面を転がりながら爆発の衝撃を和らげつつ、外の建物の壁にぶち当たると蛙が潰れた様な声を出した。

 

「ぐぇぇっ、クソ・・・これだから“大義”とか口にする奴は苦手だ。追い詰められて自爆とか、テロリストじゃないか」

 

悪態を吐きながら宿屋を見る。

建物は崩壊し燃えていた。擦過傷と軽度の火傷により身体に痛みが奔るが、それを気にしていられる状況では無いことは明らかだった。

四条は痛む身体を押して立ち上がると、具足虫たちに命令する。

 

「宿には俺たち以外にも客がいた。店主のおばちゃんもいる。具足虫、直ぐに助けに行くよ」

 

神器により産み出された怪虫とはいえ虫である具足虫(彼ら)に炎と熱は天敵だ。鉄の強度を誇る外殻も可燃性。外気温が上がりすぎれば生命維持に支障をきたし活動は停止する。

しかし、それでも具足虫(彼ら)は四条の命令に従い続ける。それは怪虫操作が神器『天害蠱軍』の能力であったからだが、今はそれだけでは無い。

虫にもキノコ体()がある。生殖失敗(失恋)すれば、生殖()に臆病になる心がある。だから、具足虫(彼ら)は四条に従い続ける。

 

―――“大好きだから”。

 

そんな思いを羽音に乗せて飛び立とうとした具足虫(彼ら)()()()姿()()()()()が打ち落とした。

既に爆発の衝撃と爆炎により外殻が焼けてひび割れていた具足虫たちにとって、それは致命傷だった。

三匹の具足虫の亡骸が地面に落ちる。

地面で動かなくなった具足虫を見て、呆然とする四条に声がかけられる。

 

「宿屋に不審者がいるって通報を受けて来たの。魔物使いさん、貴方が宿屋爆破の犯人さんなの?」

 

この街を守る警備兵を率いながら、剣を手に立つ女騎士が其処には居た。

派手なピンク色の髪に艶のある唇。

エロカワ系ギャル騎士に対して、四条は怪訝な顔をしながら言う。

 

「チェンジで」

 

「あの失礼な奴を逮捕するのー!」

 

四条の身柄は宿屋爆破犯として拘束されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

四条が逮捕送検(ドナドナ)されていく様子を建物の陰から隠れて見ていたアーエーが、同じく身を隠す火風に訪ねる。

 

「四条が逮捕されましたー。助けに行かないのですかー?」

「今、出て行ったところで私達も捕まるだけだからな。四条には悪いが、今は状況を見定めさせて貰おう」

「わかりましたー。・・・お前は主人が居なくなって寂しいですねー。少しの我慢なのですよー」

 

火風の冷静な判断に頷くアーエーの頭の上には一匹の具足虫が乗っかっていた。

この具足虫は四条が「襲撃あり。ご安全に!」というメッセージを持たせて彼女達の部屋へ送っていた一匹だった。

四条は襲撃者達を撃退した直後、五匹いた具足虫の内の三匹のみを手元に残し、残りの二匹に別々の命令を与えていた。

 

「しかしー、火風はともかく四条も意外と冷静な判断が出来る奴なのですねー。こうして連絡手段を私達に残してくれましたー」

「言っただろう。あいつは意外と頼りになる」

 

それなりに大きい胸を張る火風を、ぺったん()のアーエーはジト目で見ながら、その惚気に砂糖を吐きたくなった。

 

「ん?渋い顔をしているが、どうかしたか?」

「なんでもないのですよー。それより人が増えてきましたー。移動した方がいいのではー?」

「そうだな。着いてきてくれ」

「はいー」

 

火風とアーエーの二人は人混みに紛れてその場から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

四条が街に連れてきていた五匹の内の三匹は名誉の戦死を遂げた。一匹は脳内乙女系女戦士とぺったん娘魔族に挟まれて(むし)(せい)(人生の意)を謳歌している。

 

では、残りの一匹は?

答えは―――最悪だ(ヤバか)った。

 

命令を受けて上空から宿屋を監視してその具足虫は、敬愛する御主人様が攫われて行く様子を見て、慌てて街を飛び出し、数百の同胞が潜む森へとやって来て危機を皆に伝えた。

 

〈た、たいへんだー⁉ごしゅじんさまが、さらわれたー‼〉

〈な、なんだってー⁉〉×数百匹。

 

森を縄張りにしていた獣や魔物たちが、森から逃げ出す程の羽音が森に響いた。

 

〈たすけにいくぞー‼〉

〈おー‼〉×数百匹。

 

召喚勇者たちに与えられた神器の中には【神】の名を冠するモノが三つと【天】の名を含むものが四つある。

その他の神器の能力と比べ、それら七つの能力は一戦を画す。

王族にのみ伝わる文献曰く、【神】の名を冠するモノは世界を制する(すべ)となり、【天】の名を含むものは一国を落す力を持つという。

 

〈ごしゅじんさまをいじめるやつがいたら、けつにたまごをうみつけろー‼〉

〈うみつけろー‼〉×数百匹。

 

神器『天害蠱軍』。

神話の時代に天神に対抗する為、地神が産み出したと言われる(そら)(ひかり)すら飽食する怪虫たちを操る神器。

それを持つ四条は自身のあずかり知らぬ所で街を滅ぼしそうになっていた。

 

 

 

 

 





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