「どうしたの?話し聞こうか?」から始まる異世界召喚物語   作:白白明け

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第八話

 

“人形家”と呼ばれた男がいた。彼は6歳~12歳までの少女の死体を墓場から盗みだし、それを材料に人形を作る事を生きがいとしていた。ずっと娘が欲しいと思っていた人形家は、娘を作るために仕方なく好きでも無い女と結婚した。そうして産ませた子供が男児であった事を皮切りに、彼は人形作りに傾倒し始めた。

彼の作る人形は美しい。特殊な技術と魔法を用いる事でほぼ生前の姿を保っている。

血の気のない青白い肌。丹念に手入れをした艶のある髪。生気なく瞳孔が開いた眼。

そんな美しい娘達を彼は性的に消費することはしない。

娘達を美しく着飾り、身体の中に耳鳴琴(じめいきん)(オルゴール)を埋め込んで触れれば歌い出す様に改造して、一緒に合唱を楽しむのだ。

 

好きでも無い女を捨てて、物言わぬ娘達との生活を楽しんでいた彼に転機が訪れたのは半年ほど前のことだった。

 

彼を訪ねて勇者がやってきた。

 

『へえ、面白い事してんじゃん。イイねえ、やっぱ人生、楽しまなきゃ生きてる意味ねぇもんなあ。オレがもっとオマエの人生を楽しくしてやるよ。その人形、動くようにしてやろうか?』

 

七つの枝刃を持つ七支刀(しちしとう)を持つ勇者と出会い、彼の娘達(にんぎょう)は変わった。ぎこちなく笑うようになり、手足を動かせるようになった。

娘達と抱き合い、彼は産まれて初めてこの世界に産まれて来て良かったと涙した。

血の繋がり等という些細なもので分け隔てられていた。あの世とこの世の再開。娘達を変えた勇者。それは彼の世界を変えたに等しい偉業。

“人形家”-我楽(がらく)はその日、彼にとっての救世主に出会ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昆虫に鼻はない。その代わりとなる主な器官が触覚であり、その匂いを感じる力は人よりずっと優れている。身近なところで言うのなら(ハエ)等は数十キロ離れた匂いも感じ取る事が出来ると言われており、『天害蠱軍』の怪虫たちもその例に漏れない。

 

具足虫。

鳴虫。

鬼百足。

 

『天害蠱軍』が使役する三種の内、最も攻防に優れた具足虫を展開しながら、四条と雷汞は死体の匂いを追う。

まず辿り付いたのは墓場だった。

 

「旦那。とりあえず墓を見て周りやしょう」

 

墓場を調べ始めた二人は直ぐに異変に気がついた。死者に祈りを捧げる日である万霊節(ばんれいせつ)は、まだ先だと言うのに墓に捧げられた花飾りが多すぎる。

よく調べれば花飾りが捧げられている墓の全てに掘り返された跡があった。

 

「人形家の仕業か?」

 

「いや、見たところ墓の主は老若男女が入り交じってやがる。奴が狙う死体は女のガキだけの筈です。別の誰かの仕業かも知れやせん」

 

「もしくは心境の変化があったか。同性や年増にも興味を持ったとか」

 

「だとしたら節操のない奴でさぁ」

 

吐き捨てる雷汞。

四条は周囲を見回しながらに言う。

 

「とりあえず掘り返して死体があるかを確認しよう」

 

「わかりやした。墓場の管理所から、道具をかっぱらってきやす」

 

雷汞の取って来たシャベルで墓穴を掘り返す。

埋められていた棺桶の中が空だった。

 

「人形家かどうかわからねぇが、この街に墓荒らしが居ることは間違いないみてぇですね」

 

「ああ。具足虫にこの棺桶に染みついている死臭を追わせる。誰であれ、それで犯人までたどり着ける」

 

「流石は旦那。警備隊に入隊すりゃ、即日隊長確実でさあ」

 

掘り返した墓穴を埋め直し、二人は犯人が持ち去ったと思われる遺体の匂いを追う。

辿り付いたのは街外れにある(はい)教会(きょうかい)だった。

国教の対象である女神像の首は折れ、地面に顔が転がり苔むしている。

窓のステンドグラスは全て割られていて、扉は半壊し役目を果たしていない。

長年に渡り人の手が加わっていないことは一目瞭然だった。

 

「墓荒らしが潜むには、おあつらえ向きじゃねぇか。・・・旦那、どうしやす?正面から乗り込んでやりやしょうか?」

 

「・・・壁も朽ちて穴がある。どこからだって逃げられる。逃げられたら面倒だ」

 

「旦那の虫に空から見張らせてりゃいいじゃねぇですか」

 

「それでもいいけど、乗り込んで罠があったら不味い」

 

「なら、どうするんでさぁ。警備隊に通報でもしやすか?」

 

「俺たちも一緒に捕まることを除けば、良い案だな」

 

「冗談ですって」

 

おどけた態度に見える雷汞だが、努めて冷静で居るために軽口を叩いて居ることは四条にも分かった。死の香りと言うものがある。人体が腐る事で香る死臭とは違う。冒涜された死が醸し出す死の雰囲気(オーラ)。空気が重く、息が詰まりそうになる。

二人には死の香り(それ)が廃教会の全体を覆っているのが見える気がしていた。

それ程までに暗い色。

 

「旦那。どうしやす?」

 

委ねる雷汞に四条は断言する。

 

「初手から全力で潰す」

 

『天害蠱軍』が熱を帯びる。その熱は眼底から脳髄に伝わり脳を熱する。僅かに赤く染まる視界の中で頭に血が昇る。熱の痛みで冷静さを取り戻す。その繰り返しで精神(こころ)が平常心を取り戻す頃に具足虫の軍勢が到着する。

その数、数百匹。

空間の空気を振動させるほどの羽音を鳴らし、空中で制止飛行(ホバリング)をする具足虫の軍勢を見て、雷汞は改めて己の隣に居る男の破壊力(ちから)(おのの)いた。

 

(人を見る目には自信があったが、此所までとは思わなかったぜ。この人を“旦那”と呼んだ事に間違えはねぇ。勇者(奴ら)と戦うのには、この人の力が必要だ!)

 

「具足虫、『人和(れんほー)』ッ、“一斉掃射(ドラドラ)”ッ』‼」

 

廃教会を取り囲む具足虫が次々と廃教会に突っ込んでいく。

具足虫の攻撃方法は単純明快な只の体当たり。それが石壁を砕く威力を持つ。その体当たりの中でも、最大出力を発揮する為の合図が『人和』のかけ声。

MAX300キロでの体当たりは、具足虫の体長を加味し、射撃と言うより砲撃だった。みるみるうちに廃教会は破壊されていく。

陣形を組んでいた具足虫の内、半数ほどを打ち切った頃には廃教会は瓦礫の山と化していた。

 

四条が具足虫を止める。体当たりを(おこな)った具足虫たちが瓦礫の山に降り、周囲を見渡す。

彼らが身体に付いた砂埃を落す為に翅を震わせた時、瓦礫の山が下から揺れた。

 

瓦礫の隙間から伸びる数多の()()に十数匹の具足虫が捕らえられる。

逃げようと藻掻く彼らの外殻を溶かす溶解液を分泌しながら、触手の主は冒涜的な姿をした怪物として現れた。

一見すると十メートル程の大きさがあるボールの様な球体。よく見れば地面に接している面に数十本の腕と足が生えている。球体の上部から生えた数多の触手の正体が編み込まれた髪の毛だと気づければ、ナニが怪物の材料となったかに気がつける。

更に怪物の後に地面から現れる動く死体が二体。

 

「なあ、雷汞。()()が人形か?」

 

「いや、違え。俺の知っている人形家は、只の変態野郎の筈ですぜ。死体を怪物に変える事なんか、出来なかった」

 

「そうだよな。形はどうであれ、動く時点で人形の域を超えている。屍術師(ネクロマンサー)。いや、“怪物家”か」

 

死体で作られた巨大な粘液状の魔物、ネクロスライムが一体。

人体(パーツ)を足されて作られた2メートルを超える死体の魔物、カスタムゾンビが二体。

 

三体の魔物を従えながら、廃教会の地下から這い出してきた“怪物家”-我楽は癖のある赤毛を砂埃塗れにしながら、血走った目で叫ぶ。

 

「此所には僕の家族もいるのにッ‼貴様らァ、頭がおかしいのかアア‼」

 

地下室で暮らしていなければ娘達共々死んでいた事実に怒り狂う我楽に対して、四条は露骨な舌打ちを鳴らす。

 

「頭がおかしい奴に常識を疑われたぞ。雷汞、なんだか俺は無性に腹が立っている」

 

「同感でさあ。どの口がほざいてやがんだ、糞野郎。俺は信仰心が高い方じゃねぇが、死体の(もてあそ)びが怒りを買う行為だってことくらい分かるぜ。材料にした奴らの家族に、テメエはどう詫びる気なんだ?ああ?」

 

「玩んだ?何を言っている。僕は彼らに新たな命を与えただけだ。彼らが望んだのだ!僕と美しい娘達を守る騎士になりたいとね‼。その証拠に、彼らは貴様らを絶対に許さない‼」

 

我楽の声に反応し、三体の魔物が動き出す。

四条は蠢きながら近づいてくるネクロスライムとカスタムゾンビを見て、雷汞に指示を出した。

 

「雷汞。ゾンビを一体、任せていいか?」

 

「冗談きついですぜ。二体くらい余裕でさあ。旦那はあのデカブツに集中してくだせえ」

 

「・・・大丈夫か?」

 

「俺は役に立つって言いやしたぜ?奴らを墓穴に戻すのなんざ、訳ねぇですよ」

 

シャベルを担ぎながら笑うのを見て、四条は雷汞を信じることにした。

 

「僕と家族の幸せを奪うんじゃあ、ない‼許さないぞ!」

「俺は君を許さない」

「俺は旦那の敵を許さねえ!」

 

こうして戦いは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪物家-我楽(がらく)にとって四条の襲撃は予想されたものであった。彼にとっての救世主が事前に教えてくれていた自身の幸福を脅かす存在。

 

他の勇者たち。

 

『面白ぇ事にケチを付ける連中がいる。現れる確率が高いのは、愛羽クンと四条クンと九頭らへんだ。その中で愛羽クンが来たら速攻で逃げな。九頭は連れている連中次第だ。勝てるかどうか、自分で考えろよ。四条クンなら()()()だ』

 

神器『天害蠱軍』で怪虫を操る勇者-四条獅子丸。

彼を前に我楽は嗤う。自分の幸運を誇る様に声を張り上げる。

 

「召喚勇者ッ、二十五人中の十三位!四条獅子丸!下から数えた方が早い実力の貴様にッ、僕のネクロスライムが斃せるのか!」

 

我楽の声に反応して、ネクロスライムが蠢き触手を四条へと伸ばす。それを阻む具足虫たちは、ネクロスライムの触手に触れられた瞬間に身体を解かされて地面に落ちていく。

具足虫の外殻を構成するキチン質がどれ程の強度を誇っていても、ネクロスライムの溶解液で溶かされてしまうのなら意味はない。地面に落ちた具足虫たちは這いずり逃げようと足掻くが、次々にネクロスライムに捕食されていく。

 

それを見て、我楽は勝ち誇るように笑う。

 

「“外れ勇者”とは良く言ったものだな!“あの御方”の神器(ちから)とは比べ物にならない程に雑魚じゃあ、ないか!同じ“魔物使い”として、恥ずかしいぞ!」

 

「一緒にするな!グロエロ趣味の集大成!俺の具足虫たちの方が君のう○こ大福の百倍は可愛い‼眼が腐っているのか!」

 

「僕たち家族の騎士を馬鹿にするんじゃあ、ない!排泄物呼ばわりするなんて、君には死者を敬う気持ちがないのか‼」

 

「ブーメラン刺さっているぞ!」

 

「意味のわからないことを言うんじゃあ、ない!」

 

「う○こ臭いから、喋るんじゃあ、ない!」

 

「真似するんじゃあ、ない‼」

 

四条が我楽を罵倒し注意を引く間、具足虫は隙を伺い攻撃を行うが、我楽本人を直接狙う攻撃もネクロスライムに阻まれ失敗に終わり、具足虫はネクロスライムのおやつになる。

確実に具足虫の数が減っていく状況。四条は機会をうかがっている。好機(チャンス)が来なければ死にかねない状況だが、焦りはない。視界の端でカスタムゾンビと戦う雷汞は二対一だというのに終始押している。助けなくても雷汞がやられる事はないだろう。

守るべき命が自分だけと言う状況は、四条にとっては戦いやすい環境だ。

この場に火風()()アーエー(子供)も居ない事に感謝しながら、()()()()()()()()()

 

「救世主は偉大だ!常に僕らを導き正解を教えてくださる!愛羽明人とは戦うな!九頭草太郎はよく見ろ!四条獅子丸は、僕の敵じゃあ、ない‼」

 

愛羽明人。九頭草太郎。両者とも自分と関わりの深いクラスメイト(勇者)

二人と自分を仮想敵として我楽に教えた存在がいる。十中八九、同じクラスメイト(勇者)だろう。そして、そのクラスメイトが雷汞の村を襲った勇者と考えて間違いない。

だから、()()()()()()()()()()()()

 

結局、やることはいつもと変わらない。

 

「戦いの最中なのに饒舌だな。どうしたの?俺で良ければ話を聞くよ‼」

 

「その余裕ッ、何時まで続くか見せて貰いましょう!」

 

ネクロスライムが身体を震わせ溶解液を周囲に飛ばす。具足虫の数が更に減った。

具足虫を壁にして逃げ続けている四条だが、言うまでも無く具足虫の数が減れば減るほど壁は薄く小さくなっていく。飛んでくる溶解液を防ぎ続ける事が出来るのも後数分だろうと思われた所で、四条はようやく反撃に出る。

 

「具足虫ッ、『人和(れんほー)』“一点掃射(リーチ)”‼」

 

四条の構えに合せて直線隊列を組んだ具足虫達が、ネクロスライムの一点を狙って突っ込んで行く。ネクロスライムの身体に触れた具足虫たちは次々に溶けていくが、その死が後に続く攻撃への布石となる。

スライム系統の魔物には必ず弱点となる“核”が存在する。ネクロスライムの動きを観察し、その核の大凡の場所を予想して行われた『人和』(最大出力)による“一点掃射”(狙い撃ち)は、数十匹の具足虫の命を引き換えに見事に核の()()を貫いてみせた。

核を貫いた瞬間、「ヨシッ!」とポーズを決めた四条だったが、核を壊してもネクロスライムは健在。

 

「どうして・・・」

 

「アハハッ、ネクロスライムは死体を使い作られるスライム!一体の死体で作られたネクロスライムの核は他のスライムと同じく一つだが、複数体で作られたモノは違う!使った死体と同じ数だけ心臓()があるのさ‼生えている手足の数を数えてみろ!あと何個の核を壊せばいいか分かるぞ!アハハッ、その前に貴様の虫共は全滅だろうけどねえ‼」

 

「どうやって強力な魔物を作れる様になった?チカラを与えられたのか?救世主とやらに!」

 

「そうだ!救世主は偉大だ!生きづらい僕らを救いッ、世界を明るく照らしてくださる!つまらない人生!何も与えられなかった!力をッ、僕らに!生きる事は楽しいと教えてくださったのさ!」

 

「誰なんだッ、その救世主って言うのは‼」

 

「救世主の(おん)()を貴様みたいな恵まれた奴が知る必要はない‼」

 

ネクロスライムの数多の触手が四条に襲いかかる。

一点掃射(リーチ)”で具足虫を失ったことで、具足虫の数が足りていない。

具足虫たちの壁を越えて三本の触手が四条に迫った。

具足虫の固い外装を容易く溶かす触手が触れれば、四条の肉体は溶けたゼリーのように崩れ落ちるだろう。

“死”が迫る中、四条は()()怪虫を呼ぶ。

 

鬼百足(おにむかで)ッ!」

 

名前を呼ばれた瞬間、地中から這い出てきた鬼百足は直ぐに四条の身体に巻き付くと、口から刀の(つか)を吐いた。四条はそれを引き抜く。鬼百足の体内から引き抜かれたのは刀身に反りのない()()

直刀の一閃がネクロスライムの触手を断ち切る。

しかし、危機はまだ去っていない。

 

「これ、高かったのに!」

 

(うら)(ごと)を言う四条の手にある直刀は刀身が半ばで溶けていた。

溶けた直刀を捨てて、四条は我楽を睨む。

 

「話は聞かせて貰った。つまり君は救世主に恩を返す為に戦って居るわけだ」

 

「ええ、その通りです!全ては偉大なる救世主の為にッ‼これこそが新たなる信仰!」

 

「娘はどうしたのさ」

 

「・・・はい?」

 

「ネクロフィリアに傾向するほどにロリコンだったんだろう。ロリコンのうえにネクロフィリアでも僕は構わないと思うけど、その大切な娘達と偉大とかいう救世主。どっちが大事なのさ」

 

「ふざけているのですかねえ!救世主()(家族)を比べられる筈がない!」

 

「即答できない時点で君の信仰は“間違っている”」

 

“人の話をよく聞きなさい”と言われて育った。

だから、四条は誰の話であろうとまずは聞いてみる。それは牢屋にいる柄の悪い男でも、変態趣味の変態でも、味方でも敵でも違いは無い。

話を聞いてから、自分の考えを口にする。

 

「人は自分の一番大切なモノのために神に祈る。だから、神は常に二番手だ。そうあるべきだ。怪物家。いや、()()。いったい、誰が君の一番を揺るがした?」

 

「ッ⁉どうして、私の名を?・・・・・・・・・まさかッ!」

 

我楽が気づいた時にはもう遅い。廃教会の地下にある死体安置所。我楽が娘達と暮らす家から、十数匹の鬼百足が這い出してくる。

這い出してきた鬼百足たちは、それぞれが我楽の娘たちに巻き付き引きずっている。

 

「がらくおとーさん。いたい」「がらくおとーさん。たすけて」「がらくおとーさん。くるしい」「がらくおとーさん。どうして」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」

 

「がらくおとーさん。たすけて」

 

「嗚呼アアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ‼」

 

巨大な百足に襲われる娘達を前に、我楽は我を忘れて娘達の元へと駆けだした。

ネクロスライムの傍らから離れた我楽に、待っていましたと言わんばかりの勢いで具足虫たちが襲い掛かる。

 

「この、害虫が!やめろ!僕の家族から離れろ!やめろ!やめろ、やめてくれ!娘達には手を出すな‼」

 

具足虫に襲われる我楽は転び床に倒れる。鬼百足により苦しめられている娘達に向けて懸命に手を伸ばすが届かない。絶望する我楽の元に四条がゆっくりとやってくる。

 

「やめろ!やめさせてくれ!娘達には手を出さないでくれ!」

 

懇願する我楽。これではどちらが悪者か分からない。

溜息を吐いている四条の元に雷汞が駆け寄ってくる。

 

「この野郎を捕らえたのと同時に魔物共が動きを止めやした。やっぱり旦那はすげぇや」

 

「話を聞いて、我楽の弱点がわかった。後は鬼百足を向かわせるだけの簡単な仕事だった」

 

ハイタッチを交わす二人。お互いの健闘を称え合った後、雷汞は我楽を気絶させて担ぎ上げ、四条は動く死体の娘達を鬼百足で縛り上げて連行する。

聞きたいことと、聞かなければならないことが山ほどあったが、動きを止めたとはいえネクロスライムの側で悠長に尋問などしてはいられないので場所を変える。

 

その場面のみを目撃された事が後に問題となる。

 

 

 

 

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