「どうしたの?話し聞こうか?」から始まる異世界召喚物語   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m




第九話

 

 

廃教会から少し離れた林の中。

縛り上げられた我楽と死体の娘達(ネクロガールズ)が転がっている。

彼らを縛り上げるのは縄ではなく、2メートルほどの体長と人の腕ほどの太さほどの胴体を持つ巨大な百足、鬼百足。

鬼百足たちには人一人を簡単に絞め殺せる力がある。赤黒い顎は岩盤を噛み砕く。

圧倒的に醜悪な姿をした怪虫を前に死体の娘達(ネクロガールズ)が「どうしてなの」と泣く。

 

「いたい」「くるしい」「こわい」「やめて」「ゆるして」「ごめんなさい」「こわいの」「いたいのはいやよ」「おうちにかえして」「ゆるしてください」「どうしてこんなことをするの」

 

「たすけて」

 

口々に許しを請う死体の娘達(ネクロガールズ)を前に、雷汞の顔は分かりやすく歪んでいる。

彼にとって子供とは守るべき存在(モノ)子供(ガキ)に手を出す奴は屑と断ずる彼にとって、死体で作られた人形とはいえ生前の美しさを保つ死体の娘達(ネクロガールズ)に怯えられて命乞いをされることには心が痛む。

 

「いじめないで」

 

その言葉にたじろぐ雷汞の肩を叩こうとした四条だが、身長差でそれが出来ない。

四条は舌打ちをして、雷汞の背中を思いっきり平手打ちした後、死体の娘達(ネクロガールズ)を見下ろしながらに言う。

 

「雷汞、しっかりしろ。それらしく見えているだけで、彼女たちは死体だ」

 

「わかってまさぁ。けどよ、旦那。こうも生き生きとした姿を見せられちゃ、ただの死体だとは思えやせんぜ。真逆とは思うが、我楽の魔法は死体に心を与えてるんじゃねぇですかい?」

 

「心があったとしても、俺たちのやるべき事は何も変わらない。見逃せば遺体を盗まれた遺族は、明日も空っぽの墓に手を合せることになる。その悲劇が増え続ける。考えろ。身体を弄ばれた年頃の子が、生き返ったとして、自分の身体を弄んだ相手を心の底から父親だなんて言うと思うか?変態に言わされているだけだ」

 

「考えて見りゃ、その通りでした。流石は旦那だ。ぐぅの音も出ねぇや」

 

雷汞は冷静さを取り戻しながら、死体の娘達(ネクロガールズ)に猿ぐつわをしていく。

死体の娘達から言葉以外の抵抗らしい抵抗はなかった。ネクロスライムやカスタムゾンビとは違い、死体の娘達(ネクロガールズ)には外見以上の戦闘力はないらしい。

 

我楽は死体の娘達を本物の娘として作り、本当の娘として愛している。

 

そう確信した四条は気絶する我楽を揺り起こす。

目を覚ました我楽は縛り上げられた娘達を見て激高し、かけられた冷徹な言葉で顔を青くした。

 

「俺の質問に答えてくれ。答えない場合、あまり見せたくないものを見せる事になるよ」

 

「む、娘達に何をする気だっ!」

 

「娘が虫に犯されるのを見たくないだろ―――痛いッ⁉雷汞ッ、どうしていきなり俺の頭を殴る⁉」

 

「あ、す、すまねぇ。旦那があまりにも悪人顔で最低なことを言うから手が出ちまった」

 

「我楽への脅しに決まっているだろ!女の子の遺体にそんな真似ができるか‼」

 

「そうだよなあ!流石は旦那!俺の目に狂いはねぇぜ!」

 

「殴った事をうやむやにするなよ‼」

 

尋問を台無しにされた四条は雷汞に文句を言った後、我楽に向き直る。

先ほどまでの緊迫した空気は途切れてしまったが、それでも我楽の顔から不安の色は消えていない。

娘に酷いことをされる可能性があると言うだけで、父親は怒りと恐怖を抱える。

 

「君は本気で・・・いや、なんでもない。我楽、俺も酷いことは出来る限りしたくない。だけど、せざるを得ない状況になればしなきゃならない」

 

「・・・何が聞きたい」

 

「誰が君にチカラを与えた。救世主とは、誰だ?」

 

「・・・・・・・・・言えない。僕は彼を裏切れない」

 

「娘に何をされても?」

 

「その時は貴様らを必ず殺してやるッ‼」

 

犬歯を剥き出しにして叫ぶ我楽に四条は溜息を吐き、雷汞の失態を視線で責める。

脅しは本当にやるかも知れないと思わせるからこそ、意味がある。

しかし、四条にはそこまでのことが出来ないと露見してしまった。

雷汞は何度も頭を下げていた。

 

「じゃあ、別の質問。一昨日、宿屋を爆破したのは君?」

 

「何の話だ。ここ最近、僕はずっと娘達と家にいた」

 

「本当に君じゃないのか?」

 

「言いがかりは止してくれ。僕は無闇矢鱈に人を傷つけない。いきなり家を破壊してくる連中は別だけどね」

 

「・・・旦那。少なくとも前のこいつは殺しはやってねぇ。嘘じゃねぇかも知れねぇ」

 

「なら、全く別の事件で俺たちは狙われたのか?はは、面倒くさい事この上ないよ」

 

四条は頭を掻き、雷汞を見る。

四条が聞ける範囲のことは聞いた。

死体の娘達(ネクロガールズ)を使った脅迫を行わないなら、これ以上の事を我楽から聞くことは出来ないだろう。

 

しかし、雷汞はしゃがみ込み、我楽へ視線を合わせて問いかけた。

 

「俺の村は勇者に襲われた。女子供も皆殺しだ。俺は復讐のため、その勇者を探してる。奴らは鉄製の人形を持ってやがった。人形家、てめえ何か知らねぇか?」

 

「・・・鉄人形なんて専門外だよ。勇者のことが知りたいなら、同じ勇者に聞けばいいだろう。四条、()()()。貴様が親しげにしている男も、勇者の一人じゃないか」

 

その言葉に雷汞は驚き四条を見る。

四条はその視線から逃げるように顔を逸らした。

 

「旦那、こいつが言ってやがる事は、本当ですかい?」

 

「言ってなかったかな?」

 

「・・・聞いてねぇですよ。俺、旦那は魔族だと思ってやしたが、なるほど、その右目は神器ですかい」

 

「おいおい、何だよ知らなかったのか!四条獅子丸、それがそいつの本名さ!召喚勇者、序列第十三位!二十五人中の十三番目!下から数えた方が早い“外れ勇者”だけどなぁ!」

 

「ちょいと黙れや」

 

雷汞が我楽を蹴る。

 

「ぐえッ⁉」

 

静かになった我楽を一瞥した後、雷汞は四条に向き直る。

村を襲った勇者とは別だと頭では分かっていても、簡単に割り切れる問題ではない。

それを察した四条が口を開きかけた時、四条の懐にいた白く可愛らしい掌サイズの怪虫、鳴虫が()()()

 

鳴虫が鳴いている。それはつまり火風に危機が迫っていると言うことだ。

 

四条は血相を変えて林の外へと走り出す。

 

「ま、待ってくれ旦那!どうしたんでさあ!」

 

「俺の仲間がピンチだ!悪いが、我楽は任せたよ!」

 

「だ、旦那の仲間の危機?お、俺も行きますぜ!」

 

「大丈夫!・・・黙っていたこと、悪かった!言い出せなかった!ごめん!」

 

謝りながら走り去っていく四条を雷汞は追いかけることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鳴虫が鳴く少し前のこと。

具足虫たちの軍勢を何とか森に帰す事に成功した火風とアーエーの二人は、亞呂恵に連れられて地方騎士団の隊舎にやってきていた。

あまり現場に出ない隊長に代り、この街の騎士団を纏めて警備隊も率いる副隊長の亞呂恵は、隊舎の至る所を私物化していて、二人を連れてやって来た部屋も仕事場とは思えない程に亞呂恵の私物で溢れていた。

経費で買った衣装箪笥の中から私服を取り出した亞呂恵は言う。

 

「取りあえず火風さんはその如何にも冒険者ですっていう革鎧をやめて欲しいの。アーエーさんは頭巾を脱ぐの」

 

そう言って服を手渡してくる亞呂恵に火風は首を傾げ、アーエーは首を横に振る。

 

「何故だ?」

 

「この頭巾には拘りがあるのですー」

 

「外なら兎も角、街中で革鎧と頭巾の被りっぱなしは目立つの。火風さんはせめて革鎧の上からこの羽織(はおり)を着て、アーエーさんは拘り云々(うんぬん)を抜かすなら、もうちょっとオシャレな頭巾にするの」

 

今後の捜査を考えれば出来る限り目立たない服装にした方が良いという亞呂恵の正論を受けて火風は素直に服を受け取ることにしたが、アーエーはそうはいかない。

 

「個人の趣味をとやかく言うなですー」

 

「親切で言ってあげているの!」

 

なかなか頭巾を脱ごうとしないアーエーに亞呂恵がイライラし始めた所で火風が仲裁に入る。

 

「すまない。彼女には頭巾を脱げない理由があるんだ」

 

「それはなんなの!」

 

(いきどう)る亞呂恵に火風が正直に伝えるか迷った所で、アーエーは溜息を吐きながら頭巾を脱いだ。

 

「あまり火風を困らせるなですー。これが頭巾を脱げない理由ですよー」

 

アーエーの額に生える一本角を見て亞呂恵は目を丸くする。

そして、恐縮そうに謝罪の言葉を口にした。

 

「ごめんなさいなの。アーエーさんは魔族さんだったの。それは街中で頭巾を脱げない正当な理由なの」

 

「分かってくれればいいのですー。しかし、意外ですねー。騎士団に所属するお前からすればー、魔族であるアーは目の敵なのにー、しっかりと謝れるのですねー」

 

無表情ながら小馬鹿にした様子を隠そうともしないアーエーの言葉だったが、彼女は即座に亞呂恵から反撃を食らうことになる。

 

「アーエーさんは頭の中が古いの」

 

「ふ、古いー⁉あ、アーを年寄り扱いする気ですかー‼」

 

「確かに昔の騎士団は魔族さんへの差別意識が高かったの」

 

魔族との戦争で最前線に立ち続けたのは王国軍と騎士団。

その両方に多大な犠牲者を出したのだから、魔族への差別意識は高かった。

 

「でも戦争は80年も前に終わったの。上層部さんは親御さんから戦争の話を聞かされて育った世代だから、まだ時代錯誤さん達もいるけど、三国協定法が結ばれた以上!むしろ騎士団は差別を取り締まる立場なの!」

 

胸を張りドヤ顔をする亞呂恵に火風は拍手を送る。

 

「貴女は素晴らしい素晴らしい騎士だ」

 

アーエーはポカンと呆けた顔をした後、しみじみと呟いた。

 

「時代は変わったのですねー」

 

「当然なの!むしろ、若者の間では魔国の文化が流行中なの!私も服とか小物とかには、興味津々なのー!だから、これを機にアーエーさんと仲良くなれたら正直、嬉しいの!」

 

「・・・一応、考えておいてやるのですー」

 

仲良くなる女の子(ヒロイン)たち。

四条の友人の一人であるクラスメイト、九頭草太郎が見たら『楽園(エデン)は此所にあったのですな‼』と断言する光景が繰り広げられていた。

 

そんな中、四条獅子丸(主人公)は身長190センチを越える人相の悪い(にい)ちゃんと墓場で穴掘りをしているのだが、そんな事はどうでもいい。

 

無表情ヒロインが頬を少し赤らめさせるという王道イベントを主人公抜きで行った後、亞呂恵は洒落た帽子をプレゼントしていた。

 

「じゃあ、これをあげるの!アーエーさんにきっと似合うの!」

 

完璧なる主人公ムーブを無自覚にやってのけるギャル系騎士。

『もう主人公交代でいいですぞ!』と空想上の(イマジナリー)九頭草太郎が叫ぶ。

 

そして、彼女達は主人公抜きで動き始める。

 

「じゃあ、隊長に見つかる前に捜査を開始するの!」

 

「そう言えば亞呂恵。何故、副隊長である貴女が部隊を指揮しているのだ?普通、隊長の仕事だろう」

 

「それには海よりも浅く山よりも低い理由があるの」

 

「浅く低いのですかー?」

 

「ぶっちゃけ、隊長は私以上のサボり魔なの。ほとんど出勤もしてこないでフラフラしているの。性格も私を副隊長に任命している事からお察しなの」

 

「自覚はあるのですねー」

 

「私の座右の銘は『堂々とサボる』なの!」

 

「それは胸を張ることではないな。しかし、そんな態度で良く騎士団をクビにならないものだな。地方騎士団とはいえ、規律は厳しいものだと聞いているが」

 

騎士団という組織は二つに別けられる。

 

首都にある騎士団本部。

地方にある地方騎士団。

 

権力的には騎士団本部が絶対的に上であり、本部の騎士と地方の騎士では実力にも明確な差があると言われている。

それ故に騎士団本部の規律の厳しさは有名であるのだが、だからといって地方騎士団が緩い訳でもなく、騎士である以上は王法と規律を重んじることが重要だとされていた。

 

そんな中で部下に仕事を押しつけてサボっている様な者が何故、地方騎士団の隊長を務められるのかという疑問に対して、亞呂恵は自慢げに答えた。

 

「それは隊長が滅茶苦茶に強いからなの!噂では先の大戦でも活躍したから、上層部も文句が言えないらしいの!」

 

「先の大戦って、魔族との戦争は80年以上前の話しだろう・・・。その隊長は何歳だ?」

 

「あははー、まあ、その噂は流石に嘘だと思うのー。隊長は年齢不詳だけど、お爺ちゃんではないの。でも、滅茶苦茶に強くて上層部から一目置かれていることは本当なの!」

 

自分の事のように自慢げに語る亞呂恵の様子を見て、火風は温かい気持ちになった。

 

「亞呂恵はその人を信頼しているのだな」

 

対してアーエーは()()()()()()を思い浮かべて、顔を顰めていた

 

「その人の名前はなんというのですかー?」

 

万秋(ばんしゅう)!それが亞呂恵たちの隊長の名前なの!」

 

「・・・おおー、それは確かにー、“王国最強の剣士”かもしれませんねー」

 

そんな事を話していた三人の元に、警備兵が慌てた様子でやって来た。

警備兵は亞呂恵の前で立ち止まると敬礼も忘れて来客があったことを伝える。

 

「ほ、報告!あ、亞呂恵副長!連隊長がお見えです!」

 

「え、えええええ⁉あ、あの中年太りさんが何のようなの⁉」

 

「わ、わかりません!直ぐに亞呂恵副長と()()()を連れて来いとの事です!」

 

「ど、どうして、火風さんとアーエーさんの事を知っているの‼」

 

「わ、わかりません‼とにかく直ぐに連れて来いと・・・、ど、どうしましょう?」

 

報告を受けて亞呂恵は考える。

数ある地方騎士団を束ねる連隊長は三人いる。その中で亞呂恵たちの部隊を束ねている連隊長は、一言で言えば親の七光りでその立場に就いた人物だ。

能力は可もなく不可もなし。上からの指示に従うだけの指示待ち人間。

そんな人物が突然、現場にやってきた。

 

(()()()()()()。二人を連れて行ったら、危ないかもしれないの!)

 

それくらいのことは亞呂恵にも分かる。

 

(どうして、隊長がいないの!いつも連隊長が来る予定の日は隊長が出勤してくれているのに!)

 

どうしようかと視線()彷徨わせて(グルグルで)考える亞呂恵に助け舟を出したのは火風だった。

 

「亞呂恵。我々の心配はせずともいい。此所にいる事がバレているなら、同行しなければ貴女の立場が危うくなる」

 

「で、でも・・・」

 

「大丈夫ですー。アーたちには後ろ暗い事は何もありませんからー」

 

二人にそう言われては亞呂恵も頷くしかなく、二人を連れて連隊長の元へ向かう事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴賓室で三人を待っていたのは地方騎士団の連隊長の名は小紫耀(こしょう)

小紫耀は綺麗な名前に似合わない醜く太った身体をソファーに沈めながら亞呂恵を待っていた。その周りには彼が連れてきた兵士たちが控えている。

小紫耀は亞呂恵が来ると直ぐさまに声を荒げて罵倒した。

 

「遅いぞ!」

 

「ご、ごめんなさいなの」

 

顎に付いた余分な肉を揺らしながら飛んでくる大きな声に亞呂恵が萎縮する。

それを見て満足げな顔をした小紫耀は亞呂恵の後ろにいる火風とアーエーの二人を見て、鼻を鳴らす。

 

「ふん、だが仕事はこなせるようだな。お前はもういい。後ろの犯罪者を置いて出て行け。おい、貴様らは速やかにこいつらを牢屋に連行しろ」

 

小紫耀の命令に亞呂恵は慌てた様子で言う。

 

「ま、待って欲しいの。この二人は容疑者さんじゃないの。事件捜査の協力者さんなの。いくら連隊長さんの命令でも引き渡しになんて応じられないの」

 

「ふん、貴様は自分が外で捜査ごっこをして居る間に、何があったのか何も知らぬのだな」

 

「ど、どういうことなの?」

 

「どうもこうもあるか‼」

 

小紫耀は机を強く叩きながら立ち上がり、火風とアーエーを指さしながらに言った。

 

「その二人の仲間である四条獅子丸とか言う勇者が他の犯罪者を連れて脱獄したのだ!警備に当たっていた兵を惨殺してな‼」

 

「え、ええ⁉そ、そんな筈、な、ないの!四条さんは容疑を否認していたの。それに、(愛羽様の親友は)そんなことをする人じゃないとおもうの!」

 

「だが、事実だ‼私が()()()()に、此所を訪れていたお陰で事態を収束に導くことができた‼未だに外部には漏れていないが、これは騎士団の重大な失態だ‼責任問題だぞ‼どう責任をとるつもりだ‼」

 

唾をまき散らす小紫耀は、亞呂恵をあえて萎縮させる態度を取っていた。

アーエーはゴミを見る目で小紫耀を見ながら、亞呂恵を庇うように口を挟む。

 

「責任を取るのは責任者の仕事ですー。この場で一番の責任者はお前ではー?」

 

「お、お前だと⁉貴様、調べは付いているのだぞ!魔族の分際で騎士団の問題に口を挟むなあ‼」

 

小紫耀はアーエーにグラスを投げた。

火風はそれをはたき落とし、小紫耀を睨む。

 

「亞呂恵を見ていると忘れてしまうが、どうやら素晴らしくない騎士もいるようだな」

 

その眼光に思わずたじろいだ小紫耀は、直ぐに顔を真っ赤にさせて叫んだ。

 

「おい!こいつらを捕らえろ‼放火と大量殺人‼そして騎士団の看板に泥を塗った極悪犯だ‼」

 

小紫耀が連れてきた兵士たちが火風とアーエーを取り囲む。

亞呂恵はそれを止めようとしたが連隊長である小紫耀に逆らうことが出来ず、二人は捕らえられてしまった。

 

「小紫耀連隊長さん、離して欲しいの!この人たちは犯人さんじゃないの!真犯人さんは別にいるの!」

 

「私が間違っているというのか?ふん、所詮は顔と身体だけで副隊長になった女だ。空っぽの頭だな。おい!こいつは犯罪者と繋がっていた騎士団の裏切り者だ!同じ牢屋に入れておけ!」

 

「そ、そんなの、酷いの!」

 

「ほう?捕まるのは嫌か?なら、その顔と身体で俺に媚びてみたらどうだ?馴れているのだろう?」

 

贅肉まみれの顔を醜く歪ませる小紫耀への嫌悪感で顔を青くしながら、亞呂恵は希望に縋るように自分が信頼する隊長の名前を口にした。

 

「た、隊長さん。万秋隊長を呼んで欲しいの!隊長なら、この人たちは無実だってきっと分かってくれるはずなの!」

 

それを聞いた小紫耀はヒキガエルの鳴き声のような笑い声を上げる。

嗜虐に塗れた笑みは嫌悪感を感じさせた。

 

小紫耀の趣味は若い頃には相手にされなかった亞呂恵のような派手な女性に対して立場を用いて嗜虐こと。子供じみた思考で行われる悪趣味は、趣味故に手を抜かれる事がない。

小紫耀は亞呂恵の頬を叩いた。

 

「い、いたい、の!」

 

「ゲッゲッゲ、貴様の頼みの綱の隊長なら、俺の命令で脱獄した奴らを捕らえに行ったさ!いくら奴でも連隊長である俺の命令には逆らえないのだ!」

 

「そんな・・・嘘なの!隊長は、こんな横暴は絶対に許さないの!」

 

「嘘じゃないさ。現に可愛がっている貴様にこんなことをしても助けに来ないじゃないか!」

 

そう言って小紫耀は亞呂恵の髪を掴んで引っ張る。

痛みで涙目になる亞呂恵に興奮しながら、小紫耀は下卑た声で耳打ちをする。

 

「なんなら・・・俺が直々に貴様の尋問を担当してやろう。この空っぽの頭でも、誰に媚びを売ればいいのか、それで分かるようになるだろう。副隊長室には、無駄に豪華な寝具があると聞いているぞ?そこでいつも奴にどういう風に媚びを売っているのか・・・見せてもらおうか」

 

亞呂恵の顔が最悪な事態を想像して蒼白になる。

小紫耀の言葉を聞いた火風が部屋を爆破しかけ、アーエーの体内に黒い魔力が渦巻いた時、()()()()()()()()()()が声を上げた。

 

「小紫耀連隊長!容疑者を連行する準備が整いました!命令に従い、速やかに連行いたします!」

 

明らかに亞呂恵を助ける為の行動だったが、命令したのは自分だったので小紫耀は舌打ちをしながら亞呂恵の髪から手を離す。

 

「だったら、さっさとこの犯罪者たちを連れていけ!」

 

「はい。・・・亞呂恵副長、お二人も、申し訳ありません」

 

警備兵たちに連行され、三人は牢屋へと向かう事になった。

 

亞呂恵たちを無事に捕らえた小紫耀は部下たちを下がらせ、一人貴賓室で葉巻を吸いながら嗤う。

服の下には鉄の人形の首飾りが隠されていた。

 

 

そして、牢屋で火風の鳴虫が鳴いた。

 

 

 

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