周りから歓声が引っ切り無しにあがっているのが分かる。
その数の多さを感じると共に、自身が来るところまで来たという事が否が応でも理解出来てしまった。
私は一度、気持ちを落ち着けようと目を閉じる。こうするだけで、今までの自身が歩んで来た旅路が思い出となって溢れてくるようだ。
始まりは、私がポケモンスクールに通うことになる前日にまで遡る。
子供の少ない片田舎にあった小さなポケモンスクール。今となっては、学校側で初心者用のポケモンを渡す事が多い中。そのポケモンスクールでは、昔ながらの方法でパートナーとなるポケモンを渡していた。
それは学校の先生が捕まえてきたポケモンをランダムに渡すと言うもの。大抵は、近場に生息しているポケモンのどれかになる。
しかし、この方式には渡されたポケモンを受け取らないという選択肢が存在しているのだ。
それは既にポケモンを所持している場合。
理由としては何でもいい。親が所持しているポケモンの子供を譲り受けただの、怪我をしていた野生ポケモンを治療してそのまま懐かれただの。
とにかく、既に1匹以上のポケモンを所持している場合、複数体の育成は難易度が高いと言うことで、受け取りを拒否する事ができる。
私は、このパターンだった。
ただ、別に劇的な出会いをした訳ではない。
我が家の庭に迷い込んできた野生のポケモンに、たまたまその時に持っていたオヤツを分け与えたら懐かれた。それだけ。
そして、その様子を見ていた父親に、ゲットするか? と聞かれて、本ポケモンに聞いたらアッサリ了承。当時の私の頭の上は、その子の定位置となっていた。
スクールではバトルで負けたことは無かったが、その子はパートナーと言うより友達という感覚が近く。また、私自身も極端な性格だった為に、バトルそのモノをあまりしなかった。
なので、無敗であるにも関わらず、スクールでの成績は中の下ぐらいであった。
それに不満は無かったし、10歳になって旅に出たら、その子が進化して今の様に頭に乗せられなくなると思い。育てること自体に消極的だった。
そんなこんなで、のほほんと過ごしていると、10歳の誕生日を迎える前の、最後の大型連休に父親から旅行を提案された。
名目としては、私が旅に出た時に、普段と違う環境に耐えられるか? という見極めをする為である。
旅に出てから、不慮の事故にあって命を落とすことは当然ある。旅に出た子供が帰って来るまで、その不安を親はずっと抱えるのだ。
つまり、その旅行は、私が旅に出ても問題ないか確かめる為の試験である。まぁ、当時の私はそんなことを気にせずに、家族旅行だと無邪気に喜んで居たが。
さて、ここからが重要である。
この旅行が、私の人生の分岐点だったのは間違いない。
私たちが向かった旅行先は、南国の島々であるアローラ地方である。
そこで出会ったのが、今の私の2匹目のパーティメンバーである。
出会ったというより、私の頭に乗っていた子に興味を持ったのか近づいて来たのを、また餌付けしただけなのだが。
そして、私もその子に興味を持った。
なぜかと言うと、その子は私のパートナーと同じ種族でありながら、アローラの気候に適応したリージョンフォームという、別の進化をしたポケモンだったからである。
私は父親に頼んでボールを分けてもらい、母親に頼んで育成する許可をもらって、仲良くなったその子をゲットした。
そして、その日にホテルのベッドの上で仲良くじゃれ合っている2匹を見ているうちに、ある考えが私の中に浮かんだのである。
ーーーあれ? もしかしたら、他にも姿の違うこの子たちも居るのかな?
その考えが浮かんだことで、私の極端な性格にエンジンが掛かったのである。
公式のルールで、一度に持てるポケモンは6匹までだ。
そんな中で開かれた大会に、全て同じ種族のリージョンフォームで出場して優勝できたら、どれほど嬉しいだろうか?
私はパートナーのこの子が大好きだ。
そして、この子と同じ種族のリージョンフォームの子ならば、間違いなく好きになれるだろう。
実際に、この日にあったばかりの子に、殆ど心を許してしまっている。
ならば、私のやるべき事は、この子たちとはまた違うリージョンフォームの子を探して、ゲットすることではないだろうか?
そうだ、間違いなくそうである!
そして私の極端な性格へ、完全にスイッチが入ってしまった。
きっと、9歳の子供がしてはいけない壮絶な笑み浮かべていたのだろう。何故なら、眼の前でじゃれていた2匹が、涙目になりながら、私を見て震えていたのだから。
だが、そんな様子など気にせずに、私は2匹にある言葉を告げた。
ーーー私たちでこの世界のテッペン、取りにいかない?
そんな私の様子に、両親と2匹は恐怖のあまり気絶したのである。失礼ではないだろうか?
そこから私は、他のリージョンフォームを見つけて育てる為に全力になった。
残り少ないスクールの在学中に、バトルをしまくった。すると、すぐに同級生は相手にならなくなり、次は先生に相手をお願いした。
だが小さなポケモンスクールの先生は少し力不足であり、先生の本気のメンバーを2匹でボコボコにしてしまった。
このままバトルだけをしていても仕方ないので、他のリージョンフォームの子について調べようとしたが。他地方のポケモンの情報って、名のある博士とかでないと入手できないと知って、落ち込んだ。
だが、完全にスイッチが入っていた私は、その程度ではまったく止まらなかった。
10歳になると同時に、小規模や中規模の大会に参加して優勝をもぎ取り、その賞金で様々な地方を飛び回った。
有名な地方は当然として、過疎っているマイナー地方どころか、人がまず居ないとされている地方にまで飛び回った。
たぶん、私の旅路をスマホに収めていたら、1つの長編映画になったのではないだろうか?
普通に何度も死にかけたが、パートナーたちと一緒に1匹も欠けることなく、私は念願のリージョンフォーム6体によるフルパーティを作る事ができたのである。
そして私は今。
自身が生まれ育った地方に戻り、その地方大会に優勝して、四天王を破り、チャレンジャーとして、チャンピオンに王手を掛けている状態である。
外から聞こえてくる歓声に、私は控室で周りから『邪悪』と言われた笑みを浮かべる。
旅をしている間はいろいろあった。
特に、特定のポケモンのリージョンフォームでパーティを作っていると知った途端『ポケモンをコレクションみたいに!』と切れてきたヤカラは腹が立って仕方なかった。
好きなポケモンでパーティを組んで何が悪い?
私はこの子たちが好きで、一緒に頂点へ登る為にやってきただけだ。
その結果、私たちは今、此処に居る!
私は閉じていた目を開いて、相棒たちが入っているボールを取り出して眺める。
きっと、私がこの子たちと出会ったのは運命だ。
3匹目以降は探して見つけたが、そうやって出会った事すら運命に違いない。
それをこれから証明する。
コレが!
この子たちが、私の最高のパーティメンバーだ!
私はアナウンスで呼ばれると、信頼する仲間たちと共に会場へ歩き出した。
その日、ある地方に新たなチャンピオンが誕生した。
だが、その人物はチャンピオンとは呼ばれず、試合を見ていた人は皆、口を揃えてこう呼んだ。
『サンドパンマスター』と!
え? ダサいって?
いい度胸だ、潰してやる。
チャンピオンとしての憧れよりも、そのブチギレた笑顔の方が多く人の記憶に残ったのだった。
ちなみに作者は、サンドもサンドパンも好きですが、居るかどうかも分からないリージョンフォームを探そうと思うほどではないです。
ただ、好きなポケモンのリージョンフォーム違いで、6体パーティを組みたいとは少し思っています。
オリジナルポケモンを妄想した人は多いと思っていますが、皆さんはこういうパーティは組みたいと思いますか?