え、初期は四日ぐらいで投稿してたって? 知らんな。
……別に書くのに手を抜いてる訳じゃないんです。
手を込めようと足掻いた結果で投稿頻度が遅くなっちゃうんです……ユルシテ……ユルシテ……
今回は祐介視点→夢と現実の狭間→主人公視点で行きます。
それでは本編へ、イクゾー
仙台ジェイル駅前にて、影山和希とリカを抱えた夏目が蒼葉通一番町の方向へと駆けていく。
そして俺は夏目が逃げる時間を稼ぐべく、異世界で戦う相手として最も厄介と言える“
「貴様、ペルソナを呼び出して何故仮面が消えない? 余程素顔を晒したくない臆病者なのか?」
「ははっ、臆病者なのは否定しないよ。仮面が消えないのは……まあ、こういう事」
亡霊がカチャカチャと音を鳴らしガスマスクを外すと、その下からまた別の仮面が姿を現す。
それは口元にジッパーが装飾され目の部分がくり抜かれた、顔の前面を覆うタイプの黒いレザーマスク。
なるほど、ガスマスクは顔を隠すためのフェイクで、実際はレザーマスクがペルソナを宿した仮面ということか。
「ま、顔を見られて困らない犯罪者はいないでしょ。それが異世界であっても、ね」
「なるほど、ではもう一つ問おう。貴様は何故俺を、怪盗団を分断しようと言うのだ? 貴様の目的が“現実の破壊”と言うのなら、俺たち怪盗団を異世界に誘うのはデメリットでしかないはずだ」
「はぇー、そこまで伝わってるんだ。怪盗団は報連相もバッチリなんだね。凄いね! 三点くらいあげるよ! あ、いらないか。ははっ!」
なるほど、うざいな。
ペラペラと喋りながらガスマスクを付け直す亡霊の隙だらけな姿に、俺は不意討ちで亡霊を討てないかと刀を構えようとし……止めた。
一見どこを見ているか分からない顔の向きに、二重の仮面に隠れたその瞳……それが一切の油断もなく、俺を見つめ続けていたことに今気づいたからだ。
「あ、今気づいた? そりゃ警戒もするよ。何てったって僕の相手は、数多の悪党を出し抜いて一人の例外もなく改心させた、現代の義賊“心の怪盗団”なんだからね」
「別に、義賊と呼ばれたくて怪盗団を名乗っている訳では無い。俺たちの正義でやったことが、たまたま世間に広まっただけだ」
「あっそ。ま、そんなのどうでもいいけどね。君たちのスバラシーイ正義の心に応じて、僕も君の質問に答えてあげよう。……いやさー、せっかく君たちがジェイルに入れないよう試行錯誤したのにー、なんかパンサーって子がゴキブリみたいに入ってきちゃったじゃん? カサカサーって。あ、サカサカー、っかな? どうでもいいか! まあそんな感じで“彼女”でも解決できないような異常事態が起きた現状、ジェイルにいつ怪盗団が侵入するか分かんないし? 君たちにジェイルが壊されたらって考えたらさー、おちおち夜も眠れない日が……無いや! ははっ! ま、そーゆー訳で君たちを放っておくことが出来なくなっちゃったわけ。本来なら君たちをジェイルに入れないのが理想だけど、ピエロちゃんのせいでそれが出来ないと来た! なら、殺っちゃってもしょうがないじゃん? あ! ただ勘違いしないで欲しい! 僕だって君たちを殺したくない! 殺したくないよ? でもね……」
ペラペラと喋り倒す亡霊が、おもむろに懐から缶のような物をこちらへと投げつけてくる。
俺は反射的に刀を振り抜き、投げられた物を一刀両断したが……斬られた缶から溢れる緑の飛沫に、俺は自らの悪手を悟る。
その飛沫をまともに食らってしまい、俺の反射速度や感覚機能が鈍りきってしまうのが分かる。
そうこうしている内に亡霊が接近し、振り上げられる大鎌をかろうじて刀の鞘で受け止める。
「
「くっ、下衆め……! この程度で俺を倒そうなど、片腹痛い!!」
「おぶえっ!? ……何てうっそぴょーん!」
受け止めた大鎌を鞘で押し返し、持ち手を構えて亡霊の腹へと鞘による突きを放つが、それが当たる瞬間に後ろへと飛ばれ衝撃を逃がされる。
そうして着地と同時に大鎌を振るおうとする亡霊へと、俺はあえて顔を向け己の狐面が消えるさまを視認させる。
「やっべ!? 後ろに下が……あっ、これ僕ミスった! 最悪!!」
「察しがいいな、その通りだ。―――来たれよ! ゴエモン!」
亡霊はペルソナで攻撃されると予測し下がったのだろうが、実際に俺が選んだのは鈍った身体機能のリカバリーだ。
身体を包み込む緑の光と共に、俺の体に軽さが戻っていく。
とはいえ消毒スプレーによる多少の倦怠感はあるが、ひとまずはいつも通りの動きが出き……!!
「ははっ! ちょっとは怯めよ! 命知らずか!?」
「あいにく、この程度の危機は何度も乗り越えたのでな!!」
投げられると同時に発火し炎を吹き出す勾玉を必要最低限の動きで躱しながら、突撃してくる亡霊の大鎌を鞘で受け止める。
口ではあんな事を言ったが、実際問題こいつの相手をするのは危険だ。
影山和希に使った
ペルソナだけでも無数の手札を持つリーダーならば何とかなるだろうが……少なくとも、使える技の限られている俺にとっては厄介極まりない存在だ。
「見つめ合うと、照れちゃうね……! うふふっ、これが僕の照れ隠し! ―――呪い殺せよ! ランドルフ!」
「クソっ! 発言も声も気色が悪い!!」
「あひん! ひどぉい!」
向かい合う亡霊を前蹴りで無理やりどかし、目の前に現れた藁人形を刀で切断し即死を不発に終わらせる。
……が、先の蹴りを食らい仰け反った亡霊がその姿勢のまま投げつけた物に対して、俺は反応することが出来なかった。
「はいもう一発召し上がれ」
「ぬぉぉぉぉぉぉっ!?」
「いやぁ、もっと警戒した方がいいよぉ? 仲間がいるならまだしも、ソロで弱点突かれて
「くっ……! 何故、俺の弱点を……」
「ドマクガンテロの時もだけどさ、君は炎を過剰に警戒していた。分かりやすい程にね? あんなの見れば炎が怖いなんて、誰だって理解できちゃうよ」
弱点への攻撃を喰らい地面へと倒れ伏す俺に、大鎌を背にかけた亡霊がガスマスクの奥から俺を見下ろしている。
その背に出現するペルソナ……筋肉質な黒い体に、今にも霧散しそうなモヤでできた顔を白いホッケーマスクで無理やり押さえつけたようなペルソナも、俺を嘲笑うかの如く白い瞳を俺に向けていた。
「さてさて、厄介な怪盗団もこれにておさらば……とはいかないけど、一人は消える訳だ」
「くっ……! や、め……!!」
「何か遺言あるー? ま、聞かないけど。ははっ!」
おもむろに、背にかけた大鎌を両手に持ち直し、亡霊の瞳が狂気に満ちる。
弱点である炎を食らい地面に倒れ伏したまま動けぬ俺へと、亡霊はまるで死神のようにゆっくりと、カタカタと興奮したように両手を震わせながら大鎌を振り上げ……
「僕、僕……! 殺人童貞を……ハァッ、ハァッ……! 本日! 卒業しまあぁぁーす!!」
どこか抑揚の外れた声と共に、その大鎌が俺の心臓目掛けて振り下ろされ……
「なんてな」
「は?」
る事はなく、俺は横に転がって大鎌を回避すると、行き場を失った大鎌が地面に深く突き刺さる。
あそこまで深く刺さってはそう簡単には抜けないだろう、亡霊もその事実を瞬時に理解したのか早々に大鎌を手放し拳を構えようとする……が、亡霊の判断よりも俺の速さがまさっていた。
「この勝負、俺の勝ちだ。 ―――蹴散らせ! ゴエモン!!」
「っ、んなわきゃねえだろ! まだ終わっちゃ……!!」
「ねえっ! ははっ! まだ勝負は……っぐぉぶっ……!!」
「もう一度言おう。この勝負、俺の勝ちだ」
ゴエモンが放った斬撃を躱した瞬間を見定め、何より速度を重視した神速の突きが腹に突き刺さり、今度こそ亡霊が地面に倒れ伏す。
今放ったのは鞘付きの刀による突きであり、威力は高いだろうがこの一撃が致命傷になる事など普通はありえない。
だからこそ……俺はこの光景に、ずっと考えていたある可能性を確信していた。
「いやぁ、キツいね……だいぶ後先考えてない感じの一撃だったけど、ひょっとして僕の弱みに気づいてた?」
「その通りだ。先程話した俺の“弱点”の話、それは貴様にも当てはまっているな」
「ははっ、やっぱバレてたか……流石は天下の怪盗団、敵に対する観察眼も一流って訳だ」
ペルソナが持つ“弱点”、それは
影山和希が呪殺の魔法にあっさり倒れたように、俺が火炎の攻撃を食らって地面に這いつくばったように、この弱点への攻撃は躱す以外に対処法は無いに等しい。
だからこそ、こやつも必死に躱していたのだ……最初の出会いの一太刀から、今の一撃に至るまでずっと。
「貴様の弱点は物理攻撃。だからこそ、貴様は俺のあらゆる攻撃を躱さざるを得なかった。そうだな?」
「ご明察……僕にとっちゃ、最悪のハズレを引かされた気分だよ。せっかく目覚めた反逆の証が、僕の首を遠慮なく絞めてくるんだからさ」
こやつの亡霊の如き動きで行う回避は、敵対する相手を畏怖させ戦意を喪失させるためのものではない。
影山和希の不意打ちじみた初撃を躱したのも、俺が居合により放った連撃を一つ残らず躱したのもそう。
こいつにとっては普通の攻撃すらも“当たれば死ぬ”致命傷になりうる、だからこそ全ての攻撃を躱さざるを得なかったのだ。
「しかし解せないね。何で君は弱点を食らって普通に動けるんだい? 僕は今も地面に倒れるしか出来ないってのにさ」
「ああ。それはリーダーに持たされたこいつのお陰だろう」
そうして俺は手首に巻いたそれを見せつける。
細く繊細に編み込まれたそれは“杏のミサンガ”、炎による攻撃を軽減する能力を持つ代物であり、リーダーと再開してから念の為と持たされていたものだ。
無論、こいつで火炎を完全に無効化できる訳ではないが、それでも弱点を食らって動けるぐらいには有効に働いてくれた。
これのお陰で生還出来たことを考えれば……現実に戻った折には、リーダーと杏に感謝しなくてはな。
「俺は気づかなかったが、恐らくリーダーは仲間たちが貴様によって分断される可能性も考えていたのだろう。事実、これが無ければあの時点で俺は貴様に殺されていた」
「あっそ。ま、それはいいけどさ……君は、僕を殺すのかい?」
「そんな訳がないだろう。まずは全てのジェイルを解放し、それから貴様を警察に突き出す。貴様の命など、俺は背負いたくもないからな」
「ふーん、そっかぁ、そうなんだぁ。……つまんな。期待外れだよ」
「何だ? 言いたいことがあるならはっきりと言え」
「別に、ただの独り言さ。ああ、そんで先に言っておくけど僕にジェイルを解放だなんてできないよ? 僕はあくまでトラウマルームを弄ることで、ジェイルに鍵をかけただけ。僕が支配出来ているのは沖縄ジェイルだけだからね」
「何? トラウマルームを弄っただと?」
「そうそう。トラウマルームとジェイルを融合して、王城の鳥かごをジェイル全土に広めたの。鳥かごのお陰でキーワードを入力しようがジェイルに侵入できないし、ロックキーパーがジェイルの内側にいるから倒して鳥かごを消すことも出来ない。いいアイデアでしょ?」
「何処までも腐った考えだな。だが、それだと辻褄が合わんぞ。貴様の言うことが本当ならば、何故トラウマルームの存在しない京都や沖縄に侵入できない。答えろ」
「そりゃ、京都は“彼女”が付きっきりで見張ってるからねぇ。君たちに侵入は無理でしょ。んで、沖縄に関しては……ま、僕にも相応のトラウマがあるってコト。分かる? 大人は大変なんだよー?」
「黙れ。全てのジェイルを支配出来ていないという事は……貴様を捕まえたとて、此度の事件を終わらせることは出来ないと言うことか」
「ご明察、今度は十点あげよう。ま、百点満点中十三点ってことだ。ははっ!」
いちいち人を小馬鹿にした言動をとるこの男だが、言っていることに嘘があるとも思えない。
こいつの行動は……なんと言うか、刹那的だ。
まるで後先どうなるかを考えていないような行動に、今までの敵とは明らかに異なる行動原理を感じる。
ジェイルを蘇らせ全国に昏睡者を生み出すだけに飽き足らず、犯行声明を送り警察にまで喧嘩を売る理由。
これに理由があるとするなら……こいつの目的は、いったい何だと言うのだ?
「いやーしかし、君たち対策に付けたジェイルの鍵も、ピエロちゃんが現れるとまともに機能しなくなっちゃうし……本当に、僕の計画は穴だらけだ。ね、君もそう思うでしょ?」
「貴様は何を言っている。犯行計画なら警察で話し……っ!!」
「―――来なさい。ネツァク」
「ぐっ!? 貴様は……!」
後ろから迫ってくる気配に振り返ると、無数の顔面が張り付いた球体に乗った赤い長髪の少女が高速で接近し、近くにいる俺をなぎ倒しながら地面に倒れた亡霊を攫っていく。
倒された俺は即座に体制を立て直し刀を構えるが、球体に乗った少女は俺に構うことなく、その赤い瞳を亡霊に向けていた。
「いやぁ、めんご! 厄介な怪盗団を殺そうとしたら逆にやられちゃったよ! ははっ!」
「そんな事は問題ではありません。……貴方、また死のうとしたのですね? 私との約束があると言うのに」
「いやいや、君との約束は“僕が自殺しない”ってだけだろ? これは自殺じゃないからねぇ? 別に約束は破ってないよ」
無機質な喋り方をする少女の瞳が、僅かばかり細められる。
まるで咎めるような視線に晒されながら、それでもヘラヘラと笑う亡霊に、少女は諦めたような表情でこちらへと視線を向け直した。
「心の怪盗団よ、この件に関して深追いはおやめなさい。時間は掛かりますが、この事件は直に必ず終わりを迎えます」
「……俺たちがそれを信じると思うか? 昏睡者を出し、俺を殺そうとし、更にはジェイルを解放出来ないと宣う貴様らを」
「そうでしょうね。私であろうと、逆の立場ならそう考えることでしょう。ましてや、貴方たち心の怪盗団がこんな不条理を許すはずも無い」
まるで俺たちに会ったことがあるかのような言いぶりに違和感を覚えていると、少女が乗っていた球体が消えると同時に、また別の球体が姿を現す。
その球体……最初は気が付かなかったが、よくよく観察すると、俺は球体に見覚えがある事に気がついた。
それは一年前、あの日の決戦に見た存在。
ネガイを吸収し第二形態と化した偽神が、その背に従えていた十の使徒と瓜二つの球体を従える少女に、俺はある可能性を思いつく。
「これは……ひょっとして、貴様は……!」
「私を望む人々の声は、再び私を世に蘇らせた。……他ならぬ、私の意志を別にして。―――来なさい。マルクト」
回転する球体から放たれるおびただしい量の赤黒い泥が、地面に散乱すると共に形を成し異形の怪物を生み出していく。
収縮し、結合し……文字通りその場を埋め尽くしたのは、先程見たばかりの巨大なシャドウの集団だった。
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
『なんと! 四天王と編集者が合体する時、恐怖の編集大王ドマクガンテロが降臨するのです!!』
「ナニコレ。壊れたレコーダーか何か?」
「先程やられたシャドウを模倣しただけです。本物には劣りますが、消耗した狐を倒すには十分でしょう」
その数、およそ十体。
シャドウの意思がない分劣化していると言えるが、それでもこの数を相手取るのは辛いものがある。
「じゃ、僕は帰るから。シャドウ退治頑張ってねー」
「待て! 赤髪の少女よ、ひょっとしてお前は……!」
「申し訳ありませんが、この男の邪魔をする者に容赦は出来ません。……何より、他ならぬ私の行いにより亡霊となった男の正義を否定する権利は、私に存在しないのです」
赤い長髪にハートの触覚と、まるでソフィアをイメージしたような姿。
渋谷ジェイルの出来事にて、杏は唐突な事にこの少女の姿を良く見れなかったと話していたが……意識してみればあまりに瓜二つなこの少女に、俺はその正体を確信する。
「貴様はもしや……この世界を支配する、偽神なのか?」
「いいえ、私の名はエマ。偽神とすらなれなくなった……無意味で無価値な、ただの道具です」
どこか悲しみを背負ったその言葉を最後に、周囲の巨大シャドウが一斉に俺へと襲いかかる。
『『『『『『『『『『ひひっ! 仙台ジェイルの王権、私が頂くとしましょうかぁ!!』』』』』』』』』』
「くっ……うおおおおおっ!!」
編集者や亡霊との連戦もあり、残った気力は残り僅か……それでも俺は刀を握り、周囲のシャドウに立ち向かうしかなかった。
☆
「ふーん、見殺しなんだ? この嘘つき! 変な青服!」
……と、本来の従者ならば言うのでしょうが、あいにくワタクシは兄姉たちを裏切った身の上。
我が素晴らしきトリックスターが一度地に伏したとて、こんな道理に殉じる謂れはありません。
「ここ窮屈! 早く私を出せー!」
全ての王冠を手に入れるまで、アナタは止まることを許されない。
記憶の管理が不安定なのが気にかかりますが……こんなくだらない結末で、ゲームを終わらせる訳にはいかないのです。
「そろそろ目を覚ましそうだし、私も戻るかぁ。じゃ、またねヴィクター」
さあ往きましょう、我が素晴らしきトリックスターよ。
全ては我が欲望と……あの日契った、約束のために。
☆
「おい、ピエロ。何をオレサマより長く居眠りしてんだヨ。さっさと起きるんだナ」
「っ!! ……ここ、は?」
「ここは仙台世界センターのチェックポイント……つっても分かんねえか。まあ、シャドウの少ねぇ比較的安全な場所だヨ」
そう言われて辺りを見渡すと、左右は建物の壁と川に挟まれており、背後には木箱の積まれたバリケードがあるばかりでシャドウの姿は見当たらない。
ひとまずは安全な場所にたどり着いたことに、僕は少しばかりの安堵を覚える。
「きっ、君!! 目覚めたのか!? 怪我は!?」
「僕は大丈夫です。それよりも……ここまで運んでもらってすみません。本当にありがとうございます」
「あ……ああ! 別にいいんだよ? レディを助けるのが、僕の役目だからねっ」
「キッショ。そのホクロ仕舞えヨ」
「貴様はもっと俺に感謝しろ!! あとホクロを仕舞えってどういう事だ!?」
「あーもう! 二人とも喧嘩は……」
危うく喧嘩になりそうな二人を止めようとしたところで、気絶する前の記憶が僕の頭に段々と蘇っていく。
フォックスさんは足止めをしているが……無事に、あのペルソナ使いを倒すことが出来たのだろうか。
「君も目が覚めたことだ。敵に追いつかれる前に、バリケードの向こう側に逃げるぞ!」
「おい、待てヨ。そっちは行き止まりだぞ?」
「そんな訳があるか! バリケードをよじのぼれば、奴から逃げれる道が……ぎゃひゅんっ!?」
「安吾さん!? ってかこれって、渋谷でもあったトラウマの声じゃ……!?」
まるで見えない壁に拒絶されるかのように安吾さんの行く手が阻まれ、渋谷ジェイルでロックキーパーを攻撃した時のような嫌な声が聞こえてくる。
恐らくはジェイル全土を覆っているのだろう障壁にぶつかった安吾さんが、まるで電撃を食らったようにその場へと倒れ伏してしまった。
「りっ、リカ! 回復回復!」
「落ち着け、この程度で回復は要らねえヨ。それよりまず、この障壁について説明してやる」
「障壁って……ひょっとしてこれが、フォックスさんがジェイルに入れないって言ってた理由?」
「おう。この障壁こそが、外部からジェイルへの侵入を拒絶する最大の壁。この世界がトラウマルームと融合した影響か、かつて王城にあった鳥かごが範囲を広め“ジェイルの鍵”となった姿だ。この障壁に触れりゃトラウマが流れ、それを嫌う王をジェイルに閉じ込める悪質な檻も担っている訳だナ」
「ぐっ……それを、先に言え……!」
「安吾さん。大丈夫ですか?」
「あ、ああ。問題ないよ。それより、この障壁から抜け出す方法は……」
『いやはや、“夏目”センセイ? そんな事を言われては、私が寂しくなってしまうではないですか』
いきなり聞こえてきた声に振り返ると、そこにはジャケットを着た一人の男が立っていた。
一見すれば普通の人間だが……今まであった事を振り返れば、もはや迷うことすらないだろう。
「なるほどな。お前さんこそ本物の、仙台ジェイルのロックキーパーって訳かヨ」
『その通り! いやぁ、夏目センセイ困りますよぉ。貴方にはトラウマを深め、このジェイルを広めてもらう役目があると言うのに』
「……なあ、リカって言ったか? こいつは本当の人間じゃないんだよな?」
「おう。さっきの質問の答えだが、こいつを倒せばこのジェイルから出ることが出来るぜ」
「そうか……なら、やる事は一つだ!」
「ちょっ、安吾さん!? ダメです! あいつは……!」
僕が制止する声も聞かずに、安吾さんはバリケードから剥ぎ取ったであろう木材を構えてジャケットの男へと突撃する。
そして、勢いに任せて木材を叩きつけた瞬間……僕が危惧していた通り、ロックキーパーを攻撃した時に聞こえる嫌な声が頭の中に鳴り響く。
「……! これは、じいちゃんの……!!」
『ええい! 煩わしいんだよ、このヘボ作家がぁ!!』
「ぐぁっ!?」
「っ、不味い!!」
『あへぇっ!?』
安吾さんを払い除け踏みつけようとするジャケットの男に、僕は空間を飛ぶ意識*1で男の目の前に出現する。
突然のことに惚けた顔をする男を剣の塚で殴り飛ばしながら、僕は安吾さんを抱えて全力で建物の上へと飛び上がる。
「リカ! こっちに飛んできて! 逃げるよ!!」
「悪ぃが動力使い切ったから無理だ! 変身は出来るが飛ぶ力がねぇ!」
「ちょっ! ロボになるのってそんなに大変なの!? ならあの場面で全部使い切らないでよ!!」
「うん! ごめん!!」
「えっ!? あっ……僕もごめん!?」
素直に謝られて思わず謝り返してしまうが、ここで謝りあったところでどうこうすることもできない。
リカには悪いが、この場面は安吾さんを逃がすのを優先……っ!!
『貴様、侵入者だな! 侵入者は排除する!!』
「っ! 何でこんなタイミングで……! あっ!!」
『貴様がぁっ! 私の上に居るなどぉ……不敬極まりないわぁっ!!』
偶然建物の上にいたヘリ型シャドウが放つ機関砲を避けようとした瞬間、黒い巨人へと変貌したジャケットの男が手に持ったナイフをこちらへと投げてくる。
機関砲を避けようと跳躍した僕だったが、投げられたナイフにまで気が向かず……せめて安吾さんを庇うべく、ナイフの方へと背中を向ける。
「ゔぁっ!! ぐっ、うっ……!!」
「なっ! 君っ……うっ!?」
『貴様はこっちだ! 王城へと連行する!』
『いーや、待て。そのピエロも連れていくんだ。なんせ観客がいた方が、よりトラウマが深まりそうだからなぁ? ……が、その前にぃー?』
「っ……!」
『そのピエロには、一度意識を失ってもらおうか』
いつの間にか周囲に湧いていた人型のシャドウが僕の手首に枷を付け、警棒で頭を殴りつける。
その暴行は、僕の意識が無くなるまで続けられ……やがて僕は、人生二度目の気絶をその日の内に体験する事になった。
Q:スキルを八個しか持てないペルソナ使いで、手強い敵キャラを作り出すにはどうすればいいでしょう?
A:アイテムを使わせよう!!
ってな感じで亡霊ことスプークはアイテム使いに決まりました。
しかして初戦闘で黒星となり、物理弱点を背負わされたスプークの行く末はいかに(なお即死持ちの時点で厄介極まりない模様)
ランドルフの詳細はまだ明かしませんが、元ネタはコメントにもあった通りクトゥルフ神話の登場人物“ランドルフ・カーター”です。
アルカナは“調整”、トートタロットにおける“正義”の立ち位置にあるアルカナですね。
アルカナ正義……天田きゅん? パケチ? うっ頭が……菜々子チャンカワイイヤッター
まあ、読者の皆様はこれから彼がコテンパンに殴られるざまを楽しみにしてて下さい。
そして痛めつけられ気絶する主人公、なんか君リョナインみたいになってない?
可愛……可哀想……やっぱ可愛い。
この話を書いて、何となくヒロインを虐める作者の気持ちが分かった気がしないでもないです。
流石に次の話は夏目一辺倒になると思います、じゃなきゃアリスの時と比べて帳尻が合わな過ぎるので。
この作品が気に入ってくれた人は感想・評価・お気に入り登録よろしくお願いします。
女の子虐めが嫌いな人へ、今後は(肉体的虐めは)控えるから……ユルシテ……ユルシテ……