ペルソナって知ってる?   作:からかさ(仮)

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 (六話で終わる訳)ねえじゃーん!! 無理だった、そりゃそうか。
 前に書いたフォックスvsスプークが効いてますねぇ……でも書きたかったんだもん……

 今回はずっと夏目安吾視点です。
 前書きさっくりと、本編どうぞ。


偽りの王は竜の背部に寄生する。

 大人一人をゆうに越す長さの鋭い槍を片手で引きずりながら、俺は自らの姿を確認する。

 無駄な装飾のない簡素な西洋服に、その上から俺の腕や胸周りを覆う赤茶色の軽鎧と膝丈程の長さをしたブーツ。

 そして首には深紅のマフラーがたなびき、さながらおとぎ話の軽装の騎士のような衣装をしていた。

 

「俺に似合うかは甚だ疑問だが……まあ、かっこいいのは確かか」

 

 そうして周囲を見回すが、九体いたドマクガンテロは残り二体にまで数を減らし、その生き残りも無傷ではなく四肢のいずれかが欠損している状態だ。

 そして彼女はその二体をいたぶるように、指や薄皮を削り取るように動き回りながらケラケラと笑っている。

 ドマクガンテロも何とか反撃を狙ってはいるが……彼女の異常なまでの機動力と速さに加わり、瞬間移動やすり抜けを使われては誰もその動きに着いていけない。

 僅かなチャンスを狙った反撃すらもスカされ、逆に体のどこかしらを削ぎ取られるか斬り飛ばされる結果に終わっていた。

 

『ああっ!? 貴様ぁ、何で勝手にトラウマを克服するんだ!! これじゃ俺の力が……ひぎぃっ!?』

 

 黒い巨人となった編集長の男がナイフを投げようと腕を振り上げたその瞬間、振り上げた腕が細切れになり肉片とナイフが地に落ちる。

 そして下手人たる少女は肉片の雨の中で、鼻歌を歌いながら二刀に残る血をふるい落とすと……仮面の奥にある瞳が動き、その視線が俺を射抜いた。

 

「っ!! ―――来い! ギルトン!」

 

― マハラクカジャ! ―

 

 ほとんど直感的にペルソナを呼び出すと共に、俺の全身を紫の光が包み込む。

 更に槍の持ち手についたトリガーを押すと、一瞬にして巨大な槍の刃が稼働し、俺の全身を覆える長方形の盾へと変形する。

 

「ぐっ!? ……うおおっ!」

「きゃっ!」

 

 途端に少女が振るう剣が盾を揺らす衝撃が伝わり、俺は僅かに怯みながらもそれを気合いで押し返す。

 盾が攻撃を受けた箇所から推測するに、少女の剣が狙っていたのはまず間違いなく俺の首だろう。

 この間恐らく一秒未満、対応を間違えれば俺の首もシャドウのように飛んでいた事実に冷や汗が垂れる。

 

「やだ、嫌だよ、失いたくない。愛して。愛して? 愛してよ!」

「君っ! いや、影山さん! いったいどうしたと言うんだ!? 正気を取り戻してくれ!!」

「悲しい? そんなのいらないよ。自分の事は、殺さなきゃ!」

『『王権を! 編集王の座を寄越せぇぇぇ!!』』

 

 攻撃を止めその場で棒立ちになる少女に、生き残った二体のドマクガンテロが同時に襲いかかる。

 俺は敵から少女を守るべく動き出そうとするが、それよりも早く少女は行動を終えていた。

 

『あ?』

『ぎっ、あばっ、ばばばばば』

 

 片方の敵の首がぬるりと滑り落ち、もう片方の敵の四肢が切断されて宙を舞う。

 そうして胴体のみとなり倒れ伏す敵の背に少女が立ち、両手に持った剣を突き刺した。

 

「でもね? 僕から家族を奪うなら……絶対、ぜったい、許さない」

『ぎっ、あ、ばばっ……』

「お前の腹は何色だ? 割って覗いて、確かめようか!」

『ぎぃっ!! あば! ばばばばばばばば!!』

 

 少女がより深く剣を突き刺し、ぐちゃぐちゃと黒い泥を撒き散らしながら倒れ伏す胴体を解体する。

 まるで無垢な子供が虫の手足を引きちぎるかのように、何処までも純粋で混じりけのない残虐性と狂気。

 それに身を任せた少女は、まさしく悪鬼の如き強さで全てを蹂躙していた。

 

「あはっ! あきゃはっ! きゃひゃっひゃあはは!!」

『ひっ……! このっ、この化け物がぁ!!』

「っ! させるかっ!」

 

 黒い巨人が少女に向かって投げたナイフを、俺が間に入って盾で受け止める。

 少女の正気を取り戻そうにも、こいつの邪魔があっては話にならない。

 だが幸いにも、少女はシャドウに夢中になりこちらに気を向ける様子はない。

 だとしたら俺がやる事は二つ……目の前の黒い巨人を一人で倒し、その後に少女の暴走を止めることだ。

 

『クソッ! こんな所で立ち止まってたまるか……トラウマを克服し現実を侵食できないなら、せめてお前を殺して俺様が王になってやるよぉ!!』

「お前が、俺をか? はっ! 笑わせるなよ。少なくとも、今のお前相手に負けるとは思えないがなあ?」

『黙れ! 舐めた口をききやがって! 虚飾塗れの三流作家が!!』

「そうだな。確かに俺は自分の魂も忘れ、虚飾に走った三流作家だ……が、今は違う。今の俺には、再び取り戻した想いがある」

 

 そうして俺は盾を構え、目の前の敵を睨みつける。

 四本もあった敵の腕は残り二本まで減っており、更には少女との戦闘により全身がズタボロに傷ついている状態。

 少女の相手をする為にも、こんな相手に手間取る訳にはいかない。

 そのつもりで俺は一歩、二歩と歩き出し………その歩みを疾走へと変えながら、黒い巨人の間近に迫る。

 

『この三流作家が! さっさと死……ぐっ!?』

「お前はそれしか言えないのか? 俺の名すら忘れたようなら……今! この場で刻み込んでやろう!」

 

 振るおうとするナイフを逆に盾で殴りつけて吹き飛ばし、即座に槍へと変形させ薙ぎもう片腕のナイフも弾き飛ばす。

 そうして丸腰になり一歩引こうとする黒い巨人の足へ槍を突き刺し、絶対に逃げられない状況を作り出した俺は、もう一人の俺を呼び出しながら魂に従い叫びを上げる。

 

「ようやく取り戻した俺の誇り! 俺が、俺こそが夏目安吾だ!! ―――斬り刻め! ギルトン!」

 

 俺の背後に現れたのは、夕焼け色の鎖かたびらを身に纏う人型のペルソナ。

 両前腕には薄暗い硬質な手甲を装着し、首には俺と同じような赤いマフラーがたなびいている。

 頭に何重にも巻き付けた布から僅かに覗く口の両端は、常にゆらゆらとした炎を噴き上げ、口元の布に焼け焦げた黒い跡を作り出す。

 そんな俺のペルソナが、片手に携えた小剣を天へと突き上げた次の瞬間……黒い巨人を囲むように無数の小剣が空中に現れ、それが一回転すると同時に一斉に敵へと向かって突き刺さる。

 

(つるぎ)(まい)

 

『ぎああああっ!! 貴様っ! 夏目安吾ォォォ!!』

「ようやく俺の名を覚えたか? まあ、貴様に呼んで欲しいとは思わんがなぁ!」

 

 もはやなりふり構わずと言った様子で黒い巨人が殴りかかってくる。

 それを刃で薙ぎ、塚で叩き、石突で打ち……攻撃の手が緩んだ隙を見ては穂先による渾身の突きを食らわせる。

 敵の足を潰そうと油断はせずに、俺自身の隙はペルソナを以て補いながら、慌てず騒がず攻めを忘れず徹底的に追い詰める。

 

「俺を殺して王になる、だったか? あれだけ好き勝手言ってた癖に、お前自身は随分と弱いな」

『黙れぇっ! 夏目の面汚しがぁ! お前は所詮! 夏目漱吾の孫に過ぎねえんだよぉ!!』

「確かに俺はじいちゃんの孫だ。だが、それの何が悪い? じいちゃんはじいちゃんで、俺は俺。お前の吐き出す陳腐な言葉で、今更俺が揺らぐと思うか?」

『うっ……! クソがああああ!!』

「ふんっ!」

 

 トリガーを引いて即座に槍を盾に変形させ、やぶれかぶれに大振りで殴りかかろうとする巨人の拳を殴り返して使い物にならなする。

 そうして一度盾を引き、殴るように突き出すと同時にトリガーを押し込み変形を行う。

 俺の殴る勢いと変形が行われる勢い、その二つが掛け合わさった強烈な突きが黒い巨人の硬質な胴にぶつかり、貫通はしないまでも深い傷を負わせながら大きく相手を吹き飛ばす。

 

「じいちゃんの事を重荷にはしない。誰になんと言われようが、俺は俺だと胸を張って言ってやるさ」

『むっ、無駄だぁ!! 例えお前が何と言おうと、お前が夏目漱吾の孫であるという事実を捨てれると思うなぁ!!』

「誰がそれを捨てると言った? 俺は重荷にしないと言っただけだ。それに勘違いするなよ? 俺は夏目漱吾の孫だから夏目の名を背負うんじゃない。俺が俺であるために、俺の原点(祖父)に恥じないために! 俺はこの名を背負って突き進む! 夏目の名は重荷なんかじゃないのだと! 俺が俺自身に証明してやる!!」

 

 俺はずっと“夏目”という名に底の知れない重みを感じていた。

 祖父の残した名誉が、誇りが、魂が、その全てが、不甲斐ない俺を責め立てているような気がして……そんな実態のない重さに押し潰されそうな自分がいた。

 だが、そんな重さはまやかしだった。

 夏目漱吾の孫であるという俺の自負が作り出した、祖父が望むはずのない偽りの重み……そんなものを、俺は勝手に背負って重荷にしてしまっていた。

 

「俺が背負うのは魂! 祖父が作品に込めた心のあり方だ! 俺はもう迷わない! 俺が夏目安吾であるために! 俺が夏目漱吾の孫であることを誇るために! 俺はもう二度と虚飾の栄光に追いすがらない!! 今度こそ心に! 魂に恥じない生き方をしてやる!!」

 

 吹き飛んでいく敵を見据えながら、槍をしっかりと構え直す。

 元よりこんな愚物との戦いに時間をかけるつもりはないし、俺を愚弄するべく祖父の言葉を利用するような相手にかける容赦も存在しない。

 心の奥底で燻っていた火種が、ごうごうと燃え上がる激情へと変貌し……それが反逆の意思へと置き換わる瞬間に、俺の視界が数瞬の刻だけ赤紅に染め上がる!

 

―――パキィンッ!

 

「さあ! フィナーレと行こうか!」

 

 仮面を片手で掴んで外すと同時に、俺は変形を終えた槍を天高々と突き上げる。

 そこに目掛けて背後に現れたギルトンが火を吹きかけると共に、俺は敵に向かって炎の軌跡を描きながら無数の突きを繰り返し、敵を空中へと打ち上げる。

 

「これがお前の……結末だぁっ!!」

 

 槍を盾へと変形させ纏う炎を限界まで凝縮させながら、俺は空中へと飛び上がる。

 背後へ追随するギルトンとタイミングを合わせ、互いを足裏で蹴り合い急降下しながら敵に目掛けて盾を振り下ろすと……解き放たれた灼熱の奔流が敵の全身を覆い尽くしながら、地面へと激突する敵の背後に巨大なクレーターが浮かび上がる。

 

『かっ、あっ……』

 

 紅蓮の炎に包まれた敵が、焦土の海に倒れ伏す。

 その背景を省みることなく、俺は仮面をつけ直しながら歩みを進めた。

 

 

 

SHOW'S OVER!

 

 

 

 歩く背中に熱を感じながら、俺は前方へと視線を向ける。

 その気配に気がついたのか、すっかり黒い泥へと変化したシャドウをザクザクと刺し続けていた少女が俺の方へと振り返る。

 

「遊び相手、なくなっちゃった。誰か、僕と遊んでよ……」

 

 すっかりと返り血に塗れた少女がふらふらと立ち上がり、シャドウの残骸を踏みにじりながらこちらへと近づいてくる。

 正直に言えば、俺を取り巻く状況は最悪だ。

 黒い巨人との戦闘を終えた俺の体は、普通では有り得ない程の異常な疲労感に襲われており、激しい戦闘は不可能と言っていい。

 対する少女は最初より動きが鈍くなってはいるが、今の俺と比べれば遥かに余力を残した状態。

 瞬間移動かすり抜けか、はたまた軽い踏み込みだろうが……少女の剣が振るわれた瞬間に、俺の命は容易く失われることだろう。

 

「だが、逃げる訳にはいかないな」

 

 異世界でさ迷っていた俺を救ってくれた少女を、見捨てる選択など存在するはずもない。

 何よりここで逃げてしまえば、俺は今度こそ本当に自分自身を許せなくなってしまう。

 貰った恩も返せないまま、後悔するのは二度とごめんだ。

 少女への恩を返すためにも、見過ごすことなど出来るはずもない。

 

「やだ、いやだよ、やだやだやだやだ……」

「影山さん、遊びの時間は終わりにしよう。こちら側に戻ってくるんだ」

「いやだ! いやだよ! 殺されたくない!! 誰か助けて! 救ってよ!!」

「っ!」

 

 まるで幼い子供のように泣き叫びながら、少女が駆け出し近づいてくる。

 そのスピードは少女が変貌したばかりの頃と比べればかなり衰えており、今の俺でも一発躱すぐらいの余地はあるだろう。

 ……躱す余地は、確かにあった。

 躱したら、少女と話せない気がした。

 

「っ゙!! ……大丈夫だ。俺は、君を見捨てたりしない」

「あ……? あっ、安吾、さ……!」

 

 俺が選んだのは、少女の剣を受け止める道だった。

 振り下ろされる剣の片方を盾で受けながら、もう片方の刀身を直接掴んで勢いを殺すことで、何とか手を切断される事は防げた。

 代わりに手のひらに刃が食い込む激痛が走り、真っ赤な鮮血が刃を流れて滴り落ちるが……俺は何とか歯を食いしばりながら痛みを堪え、真正面から少女の瞳へと視線を向ける。

 

「君の事情は分からない。だが、俺が救われるきっかけをくれたのは間違いなく君の言葉だ。だからこそ約束しよう。君が俺にしてくれたように、俺は絶対に君を見捨てない」

「っ……!!」

「だからこそ、君が君を見捨てるのはダメだ。どうか、自分を見失わないでくれ。本当の自分を取り戻してくれ」

「あっ、あ……」

 

 少女の体に巻きついていた鎖にヒビが入り、赤い王冠が砕け散ると同時に緑の煙と変わり霧散する。

 傍目から見ても分かるほどガッチリと張り付いていたピエロマスクが緩み、カラカラと音を立てながら地に落ちた。

 

「安吾、さ……ごめ、なさ……ぁっ」

「っ! おい! どうし……いや、寝たのか?」

 

 突如として揺らいで気を失う少女に、俺は慌てながらも体を支えて倒れることを防いだ。

 そうして触れた体は驚く程に冷えており、一瞬最悪の展開を想像し慌てるが……僅かに聞こえ始める少女の寝息に、ひとまずは胸を撫で下ろす。

 

「とりあえずは一安心か。しかし……いったい君に、何が起こっていたんだ?」

 

 ピエロマスクが取れた少女の顔には、目から頬まで涙が流れて乾いた跡が見て取れる。

 まだ乾ききっていない所を見るに、あの戦闘中に泣いていたのだろうが……少女の胸から現れ王冠へと変わった赤い宝石に、先程までの異常な言動。

 ペルソナとも異なる異質な変化、少女の身に何が起こっていると言うのだろうか。

 

「ん……わにちゃん、どこ……? ここ?」

「!? ちょっ、待て! 何故絡みつく!! 俺は抱き枕じゃないぞ!? 分かっているのか!?」

 

 何か抱くものを探るような手つきで俺へと腕を伸ばし、そのまま抱き抱えようとする少女を何とか片手で引き止める。

 俺も立派な成人男性、こんな事を大人のレディーからやられてしまえば邪な考えの一つや二つは湧くだろうが、相手が寝ぼけた未成年となれば邪念よりも心配が勝る。

 しかしこの状況は傍から見れば、どう足掻いても俺に弁解の余地はなく……もしこの様な有り様を他人に、それもあの喋るマスコットや狐面の男やらに見られたりしたらと考えると背筋がゾッと……

 

「ピピー! ピーピー! きゃー、おまわりさーん! ここに未成年をお持ち帰りしようとする変態がいまーす! 早く逮捕してー!」

「まっ、違っ! ……いや、貴様は!?」

 

 心臓が止まる思いをしながら慌てて弁解しようとして、どこかで聞いた声に違和感を感じながら振り返る。

 祭壇の左右に位置する巨大な本棚の頂点に座る二人組、その片方は見覚えのない赤髪の少女だが……対角に座るもう一人の人間、その男は紛れもなく狐面と対峙していたガスマスクの亡霊だ。

 

「こちらのロックキーパーも敗れましたか。それに加え、元王がまたしてもペルソナ能力に目覚めるとは予想が……」

「ちょっとちょっとー? 未成年に手を出すのはいただけないね夏目安吾さん。ここが認知の異世界だからって好き勝手やっていい訳じゃないんだよー? って、そりゃ僕もか。ブーメラン放っちゃった! てへぺろ!」

「……とは言え、トラウマの克服により仙台ジェイルの王権を譲渡出来るようになったのもまた事実。ロックキーパーに譲渡を行い、せめてもの足掻きで怪盗団の戦力を削……」

「しかしさぁー、Jが付く学生って謎の魅力があるのかねぇ? ほら、スカートの女子とかつい目で追っちゃうんですって性犯罪者は話したりするじゃん? ああいう輩ってついキ(ピー!)タマ潰して去勢したくなっちゃうよねー。ま、やった事ないけど。ははっ!」

「私の話を睾丸で遮らないでください。お願いしますから、少々お黙りなさい」

「あらあらあらあら自称道具が自我を出してるー。こりゃシンギュラリティって奴? いやぁ、最近のAIの発展は凄いねぇ。あ、AIと言えば少し前にAI獅童正義が小汚ねえネットミームをしゃべくるフェイク動画が話題に……」

「……」

「ごめん、ごめんて。黙るから許して」

 

 どこかすんとした表情でそっぽを向く赤髪の少女に、亡霊がガチめの口調で謝罪する。

 こいつらはいったい何しに来たんだ? 出来れば今すぐ帰って欲しいんだが。

 

「エマ様! ついでにスプーク! もしや私を助けてくれるのですか!?」

「えっ僕ついでなん? 病むわー。もぅマヂ無理……病む……」

「黙れ。……別に、貴方を救いに来た訳ではありません。我々の目的はそちらのピエロマスクです」

「えっ、酷っ……ま、そーゆー訳でピエロちゃんを渡してよ。それとも戦う? ペルソナに覚醒したばっかりで連戦は辛いよー?」

「くっ……!」

 

 いつの間にやら人間の姿に戻ったロックキーパーも加わっており、俺のコンディションも最悪の状態。

 かくなる上は、少女を抱えてステンドグラスから飛び降りるか……そう考えていた矢先の事、祭壇の壁にあるステンドグラスにうっすらと黒い影が映り込む。

 

「さぁーさ! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい! ピエロを守る騎士気取りの、ボコスカショーがはーじまーるおきゅんっ!!

「ん? 何かぶつかったか?」

「レプリカ……いや、この気配は……! っ!」

「リカぁ! 手を離さぬのに苦労したぞ! せめて座席を増やさないか!!」

 

 ステンドグラスを突き破り、飛んできた戦闘機が亡霊へと激突し本棚の下に突き落とす。

 更には戦闘機に張り付いていた狐面の青年が空中で飛び降り、凄まじい怒りを吐き散らしながら赤髪の少女が座る巨大な本棚を三等分に両断する。

 

「うるせえなぁ。しょうがねぇだろ、オレサマは二人乗りなんだヨ」

「ぐっ……! せめて、せめて後部座席があれば……!」

「お前っ、リカか!? それに、お前は狐面の……!」

「狐面じゃない、フォックスと呼べ夏目安吾。しかし……まさかと思ったが、お前もペルソナに目覚めたのか」

「……! ああ! これで俺も戦えるぞ!」

「ふっ、そうか。足は引っ張るなよ? 漆黒の魔王(プリンスオブナイトメア)

「黒歴史を引き合いに出すな!! ……分かっちゃいたが、口の利き方は謝罪会見で乱入した時と変わってないな」

「貴様はこの短時間で随分と変わった。この調子なら、夏目安吾の作品が見れる日も近いか?」

「……ああ、見せてやるさ。ここから無事に帰れたならな」

「一刻も早く起きてください。不可能ならば置いていきます」

「僕物理弱点なんだってぇ!! くっそ! この謎シーサーがぁ!!」

「はぁ…… ―――来なさい。ケセド」

 

― メディラマ ―

 

 赤髪の少女が亡霊の手を引いて助け起こし、背後に現れた球体が緑の光を放って傷を癒す。

 さらに少女が手のひらをかざすと、そこに気味の悪い笑みを浮かべた人面竜の仮面が浮かび上がり……異常なスピードで動き出すと共に、ロックキーパーの顔面にビッタリと張り付いた。

 

『えっ、エマ様!? いったい何を……!?』

「もはやこの場所に用はありません。仙台ジェイルの王権を移行し、オペレーション・オブ・ジ・エンドを実行します」

「ありゃ、もう帰っちゃうの? せっかく闇鍋缶飲んで精神回復したのに」

「多勢に無勢の現状に加え、夏目安吾のトラウマ克服により仙台ジェイルは規模を広げる事が不可能となりました。残念な事ですが、現実の侵食が不可能となったこのジェイルに利用価値はありません」

「あーそりゃそっか、現実を破壊出来ないなら意味ねーや。んじゃま、帰ってカレーでも食べるとしようか」

「……過剰に辛いのはダメですよ。貴方はただでさえ偏食なのですから」

「君は僕のオカンかな? 食事に刺激が足りないんだし、少しぐらいは許してよ。……ま、君たちもそーゆー事で。偽王退治がんばってねー」

「なっ! おい、待て!」

「よせ、夏目安吾。……奴らは手強い、引いてくれるに越したことはない」

「勝手に決めんなヨ! オレサマはまだあの野郎に……ちょっ! 中で暴れんなヨ!? やめて! お願い!!」

「おーい、そろそろ開けて欲しいぞ。今にも爆発寸前だ」

 

 今にも勝手に動き出そうとする戦闘機が急停止し、その中から聞き覚えのない声が聞こえてくる。

 もしやフォックスの、怪盗団の増援か……? そんな俺の考えに答えるかのように、コックピットが開くと二人の女性が戦闘機から降りてくる。

 

「よっ。空の旅はどうだった? フォックス」

「ああ、最悪だったよ……それにしても、俺がジェイルに送られた事に良く気がついたな、ソフィー。もしや双葉と一ノ瀬が共同で作り出した、あの機能が役に立ったのか?」

「ああ、今の私は二人のお陰で怪盗団のスマホを自由に行き来出来るからな。フォックスのスマホからジェイルの臭いを感じて、ダメ元でキーワードを入れたら侵入できたんだ。だけど不思議だ。今まではキーワードを入れても入れなかったのに、何で今回は入れたんだ?」

「それがどうやら、影山和希の影響らしい。パンサーが渋谷ジェイルに入れたのも、恐らくは影山和希が先にジェイルに入っていたからだ」

「なるほど……? よく分からないな。一人の人間がジェイルに影響を与えるなんて、有り得るのか?」

「それは今考えてもしょうがないだろう。それに、考える時間も無いはずだ」

『くそ、くそくそくそ……! せっかく手に入れた新たな居場所を、貴様らなどに奪われてたまるか!!』

 

 気味の悪い仮面を付けられたロックキーパーが両手を掲げると、割れたステンドグラスの外からおびただしい数の赤い宝石が男の全身へと降り注ぐ。

 それが全身を包み込み金色の竜へと作り替えると共に、竜の背から腕のない真っ黒な上半身がぶわっと生えてきて……まるで寄生するかのように竜の背中に根を伸ばし、顔には気味の悪い笑みを浮かべた竜の仮面が鈍く光っている。

 

 

― 仙台ジェイル 偽王 ―

アンゴ・パラサイト

 

 

『俺が! 俺様こそがこの世界の王! 俺様の邪魔をする奴は、骨の髄までしゃぶり尽くしてや……』

「ねえ? 誰が、和希ちゃんをここまで傷つけたの?」

『え?』

 

 今まで黙っていたもう一人の女性が、眠る少女を見るなりおもむろに口を開く。

 実際は少女に大した傷はないのだが……シャドウの返り血や真っ二つに避けたローブもあって、傍目から見れば傷だらけに見えてしまうだろう。

 

「ソフィーちゃん。いきなりで悪いんだけど、回復ってお願いできる?」

「お、おう。大丈夫だ、問題ないぞ。……あんまりやり過ぎるなよ、“ラビット”」

「うん? ああ、心配しなくても巻き込んだりしないよ。……あいつ以外はね?」

「ヒエッ……」

「なっ、何だ何だ……? 尋常じゃない殺気だぞ……?」

「やめとけ。大層お怒りだからナ……こんな事になるなら、ピエロが連れ去られた時の状況伝えるんじゃなかったヨ」

 

 露出の少ないバニー服を最大限ファンシーにしたような衣装を着た女性の背後に、これまたド派手に車を乗りこなすメイド服のペルソナが出現する。

 尋常じゃない殺気と怒りを振りまきながら、ペルソナの周囲にこれまた尋常じゃない数の極彩色の目玉が出現し……化け物へと変貌したロックキーパーの全身を包み、空間が歪んでねじ曲がる程の念動力が襲いかかる。

 

「―――撃ち抜け!! ボニー!!」

 

―コンセントレイト!―

サ イ コ フ ォ ー ス !!

 

『ひっ、ひぎゃあああ!!』

 

 バニー服の女性の怒気に満ちた一撃と共に、他のメンツも我に返ったかのように一斉に武器を構えて戦闘態勢に入る。

 こうして、偽王と呼ばれた元ロックキーパー……力に溺れる寄生虫のような怪物との戦いが幕を開けた。




 ブ チ 切 れ ア リ ス 参 戦 (+ソフィア参戦)

 ↓以下直前の会話

 リカ:シャドウにめちゃくちゃ殴られて、気を失ってから連れ去られました。
 アリス:は?

 リカぁ! そら怒るやろバカ野郎が……!
 因みに下に書いてるのがリカが他三人を連れてきた経緯です。

 主人公が連れ去られてからジェイルを彷徨い、ドマクガンテロの群れから逃げたフォックスと合流→キーワードを入力し侵入して来たソフィアとアリスと合流→状況説明、アリスブチ切れ→持ってきたルブランコーヒーを飲まされ燃料補給、戦闘機へと変身し城へ直行→サ イ コ フ ォ ー ス(イマココ)

 ちなみに主人公は何か抱くものがないと寝れないので、大体はピンクのワニ人形を抱えて寝ますが、それが無い場合は何か抱くものを探し始めます。
 このタイミングでアリス来なくてよかったね、身内で潰し合い起きちゃうよ。


 エマが睾丸やら黙れって言うのはスプークとの生活で受けた悪影響です。
 しかしまあ、人と本当の意味で触れ合わなかったエマが、初めて人と触れ合った事で得た変化であるとも言えます……どっちにしろ悪影響か。
 偽神ガチ恋勢には申し訳ねぇ、エマ様も変わったんだなと思ってこの小説では許してくれ。



 安吾さんの怪盗服は軽装の騎士モチーフで、仮面は竜の仮面です。
 形状としては黒いパンケーキが付けてる方のペストマスクが一番近くて、あれのトンガリ部分が角になった感じですかね。
 ペルソナのスキル詳細はまた後日、多分次の話に書くと思います(得意なのは物理・火炎・補助)。



 毎度毎度読んで頂きありがたいことこの上ないです。
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