ペルソナって知ってる?   作:からかさ(仮)

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 作者です、最近は隔週投稿で頑張ろうと足掻いてたんですが無理でした。
 また重大な真実が明らかになるのに何やってんだ……! まあ一ヶ月待たせるよりマシか……(感覚麻痺)

 新規感想ありがとうございます、毎回新着ある度にウキウキしながら読んでます。
 長いのも短いのもどっちも甲乙つけがたいですが、貰えれば大概嬉しいのでよろしくお願いします。
 あとついでに10000UA突破! おめでとう! ありがとう!

 話の視点は夏目安吾→ヴィクター→喜多川祐介です。
 色々お祝いしたいこと山積みだけど、とりあえずは本編どうぞ。


仙台ジェイルの終幕。

 ステンドグラスの窓に囲まれたドームの中で、金色の鎧に身を包み背から黒い上半身を生やした竜が、白目を剥きながら雄叫びを上げる。

 まるで操られているかのように虚ろな表情、それに対して背に生えた黒い上半身はニヤケ顔の人面竜の仮面を付けており、竜の背でふよふよと不規則に揺れるざまは見ていて非常に気味が悪い。

 そんな黒い上半身と竜の境目に根を張るドス黒い血管は、虫の背から生える寄生植物を連想させるようで見れば見るほど不快さが増していく。

 

「おらっ! 何ふよふよしてふざけてんだ! ハラワタぶちまけろぉっ!!」

『ひっ! ひぃっ! ひいいいいっ!!』

「うおっ、めちゃくちゃキレてんな……」

「ああ、大層キレているな」

「凄くキレてるぞ……」

「スゥー……見られなくて良かった……!!

 

 そんな敵に一切怯まず、目の前で巨大なハンマーを振り回し荒ぶる女性にほんのちょっとだけ恐怖を覚える。

 少女の為にあれだけ怒れるのなら、俺が抱きつかれかけた所を見られたらどうなっていたんだ……!? 考えるのも恐ろしい……!

 

「ん? 何だお前さん、怪我してんのか? 手がヤベェことになってるぞ」

「あ、ああ。これは……あのロックキーパーにやられたんだ。ナイフを手で受け止めてしまってな」

「えぇ……? 大丈夫かヨ? お前の手にある盾は殴る武器じゃねえんだぞ?」

「分かってる。今後は気をつけるさ」

 

 俺の手の傷に目ざとく気づいたリカが声を上げるが、俺はその原因をロックキーパーに擦り付けて少女の暴走を隠すことにした。

 少女と怪盗団の関係性は分からないが、フォックスが少女を亡霊として疑っていた事を考えれば、真実を伝えていい方向に進むとはどうしたって思えない。

 少女も最後には正気を取り戻した様子だったし……彼らに真実を伝えるのは、少女に話を聞いてからでも遅くはないはずだ。

 

「とりあえず、回復だな。―――来い! パンドラ!」

 

― ディアラハン! ―

 

「す、すまない。確か……」

「私はソフィア、人の良き友人だ。ここではソフィーと呼んで欲しい」

「そ、そうか……感謝するよ、ソフィー」

「えっへん。ドヤッ」

 

 白いモコモコとした服の少女がドヤ顔を浮かべる様を横目に見ながら、俺は一瞬で回復した手に衝撃を受けゆっくりと両手を開閉させる。

 両手の感覚はいつもと変わらず、特に動かしづらいという事もない。

 改めてペルソナという力の凄まじさを理解するが……同時に消耗した精神までは回復出来ないようで、体に残った倦怠感はどうしょうもないことを理解した。

 

「では、事前の打ち合わせ通り俺が指揮を執ろう。ソフィーとリカは大至急ラビットの援護を頼む」

「おう、任せろ。……ってか、あいつ“ラビット”なんだナ」

「仮採用のコードネームだ。お前も欲しいか? 謎シーサー」

「え、うん欲しゲフンゲフンッ!! そんなもんは要らないね! つーか謎シーサーって何だ!? オレサマはリ……レプリカ! レープーリーカ! 一言一句間違えず覚えとけ!」

「なるほど、一言一句間違えず覚えた。お前の名前はリ・レプリカ・レープーリーカ、だな?」

「覚えてやったぞみたいな顔やめろヨ!? もう“リカ”でいいヨ! 腹立つからドヤ顔すんナ!!」

「二人とも頼んだぞ。そして夏目安吾……貴様は後方待機。影山和希もいる事だ、念の為俺が護衛につく」

「なっ!! お、俺はまだ戦える!!」

「駄目だ。ペルソナの覚醒には精神を摩耗する。目覚めた瞬間ならば話も違っただろうが、今のお前にペルソナを出す力があるか?」

「ぐっ、だが……!」

 

 不意の戦力外通告に思わず言い返してしまうが、俺自身自分の体に限界が来ているのは自覚している。

 だがそれでも、何もせずには居られない……! 無力な自分を呪うのは、何も出来ないのはもうゴメンだ……!

 

『くっ、くそがぁっ!! 貴様ら、いい加減にしろよぉぉ!!』

「これは不味い……! 全員! 防御体制を取れ!!」

「っ、フォックス! 悪いがその少女を頼む!!」

「なっ、おい!!」

 

 竜の背に生えた上半身が叫ぶと共に、その仮面の口元におぞましい熱量を放つ小さな火炎球が生成される。

 そして、醜悪な竜の仮面がラビットと呼ばれた女性の方に向いた瞬間、俺は全力で駆け出し死ぬ物狂いで盾を構える。

 

「えっ!? あなた、何を……!?」

『闇より暗き獄炎の大火に! 抱かれて今すぐ消え去れぇー!!』

 

R E S I S T(レジスト)/カイザーアギックス!!(最強究極極大焼却魔法)

 

「ぐぅっ!! 何て火力だ……!!」

 

 そうして火炎球が収縮され熱線となり、まるでビームのように放たれ俺の盾を焼き焦がそうと襲いかかる。

 別に闇より暗くないオレンジ色の熱線だし、大火とは言い難い細長いビームだが……どうやら火力だけは本物のようで、尋常じゃない熱量の余波だけで盾を構える腕が火傷しそうになる。

 

「っ、ごめんなさい! 私のせいで……!」

「いや、俺が勝手に庇っただけだ! それより相手に反撃を……」

『おや、知らないのですかぁ……? 魔王は、二回行動する!!』

 

 何とか反撃しようと敵に目を向けたところで、今度は金色の竜が口から巨大な火球を吐き出してくる。

 先程と比べて火力は低いが範囲が広い攻撃、火炎を扱うペルソナ使いの俺なら大したダメージにならないだろうが、後ろにいるラビットと呼ばれた女性を守るにはあの火球は大きすぎる。

 

「まったく、考えもなしに突っ走るな。俺も万全じゃないと言うのに」

「フォックス!? ……っておい!? 前見ろ前! 炎が迫っ……」

「ああ。それならもう斬った」

 

 いつの間にやら俺の前に立っていたフォックスに警告した次の瞬間、飛んでくる火球に無数の剣閃が走り実態が無いはずの炎が微塵切りにされ消えていく。

 これで万全じゃないってマジかよ……!? 思わずそんな考えが頭を過ぎるほど、目の前で行われた事の規格外さに身震いする。

 

「……いや待て! あの少女はどうした!?」

「まず落ち着け。影山和希はあっちだ」

「えっ! 和希ちゃ、影山さっ……あれ!?」

 

 いつの間にか目覚めた少女が、先程まで俺たちが居た場所に立ってこちらへと手を振っていた。

 真っ二つに裂けたローブは完全に脱ぎ捨てたようで、全身を覆う黒いアンダースーツにベルトとショートブーツになっており、何と言うかかなり際どい。

 恐らくは白いローブで体格が誤魔化されていたからか、今の姿とのギャップが激しくより女性的な印象を強めているように感じる。

 

「にしても危うい……せめてマフラーでも渡すか? いや、あれでマフラーは逆効果か……」

「モ、モデル理想のスタイルだ……! 私の新作着てくれないかな……?」

「なるほど、確かにいい曲線美だ。是非とも絵に収めたい」

「……へえ? 分かるんだ」

「ほう? お前こそ、いい審美眼を持っているな」

「変なとこで通じ合うのは止めなさい。影山さんに失礼だろ」

 

 未成年の少女を前にして、各々異なる意味で危ない視線を向ける二人に苦言を呈す。

 だが少女はそんな俺たちに見向きもせず、一目散に竜がいる方向へと突き進んでいく。

 

「なっ、おい! 危な……」

『くそっ! まだ私の行動は終わっちゃいないぞぉ!!』

「いや大人しく終わっとけヨ。―――嬲り潰せよ! ワルキューレ!」

「私も追撃するぞ! ―――照らせ! パンドラ!」

 

 金色の竜が再び火炎球を作り出そうとしたところで、二人のペルソナ使いによる攻撃が放たれる。

 帯電する球体が浮かぶ中で降り注ぐ雷撃に加え、光り輝く蝶が舞う中で大地から解き放たれる螺旋状の光の柱。

 

ジオダインR E S I S T(レジスト) !!コウガオン

 

『ふんっ! 効かねえなぁ!!』

 

 が、異なる属性の二つの攻撃は金色の鎧に阻まれてしまう。

 よほどあの鎧に自信があるのか、竜は自慢げな姿で謎のポーズを決めながら二人へ爪を振りおろそうとする。

 

「っ! なら、これはどう? ―――おいで! ニジュウメンソウ!」

 

 そんな爪を少女の双剣がやや押され気味ながらも受け止めつつ、ピエロの仮面が消えると共に背後へペルソナが姿を現す。

 白いスーツに目玉が生えたシルクハットの、異形を思わせる人型の怪人……だが、その姿は最初に見た時と少しばかり異なっていた。

 白いスーツを全開にして青白い肌を露出させており、その肌には古代エジプトのようなタトゥーが施されているのが見て取れる。

 しかし、あれは本当に二十面相なのか? 俺も子供の頃に二十面相の小説は読んだが、二十面相の根源にエジプトが関係するなんて事は無かったはずだが……

 

『はっはぁ! 何度試そうが貴様らの攻撃など効か……んえっ!?』

 

― ランダマイザ! ―

 

「何っ!? ランダマイザだと!?」

 

 黒い真球がぶつかって三色の暗い光がまとわりつくと、竜の力が目に見えて弱り出し、押されていたはずの少女の双剣が爪を押し返しつつ銃撃を放つ。

 突然の事に狼狽する竜の動きは先程と比べて明らかに鈍っており、更には弾丸を受けた鎧に僅かながらもひびが入った。

 軽く見て分かる異常なまでの弱体化、それに危機感を覚えたのか何とか後ろへ下がろうとする竜に、少女は小さな笑みを浮かべた。

 

「効かない? それじゃ、試してみよっか。―――嘲笑え! ニジュウメンソウ!」

 

 再び少女の背後に白スーツの怪人が現れ、まるで奇人のような動きで両手のひらの間に乱回転する風の渦を作り上げる。

 そして、風の渦を軽く押し出すように竜の眼前で解き放った瞬間……万物一切を塵に返すほどの暴風が吹き荒れ、竜の体を守る黄金の鎧を勢いのままに引き剥がしていく。

 

R E S I S T

(ばん) (ぶつ) () (てん)

 

『うぉっ! うおおっ!! うおおおおっ!?』

「鎧が剥がれたぞ! これならいける!」

「うわっ、鎧の下がきめぇナ……全身血管塗れかヨ」

 

 纏う金色の鎧が剥がれて現れたのは、貧相な体つきをした竜の皮膚一面に黒い血管が侵食した世にもおぞましい姿だった。

 全身を覆う黒い血管は、その全てが背に生えた黒い上半身の根元に集約しており……寄生された竜の顔が俺に似ていることも相まって、見ていて吐き気がするようだ。

 

「……ねえ。夏目安吾さん、だっけ? 辛いなら無理しないでね。あいつなら私たちだけでも何とかするから」

 

 そんな俺を見かねたのか、ラビットという女性から労るように声をかけられる。

 その様子はどこか俺にシンパシーを感じているようであり、声色からして本心で俺を心配しているようだった。

 

「……ご忠告は感謝する。だが、俺は逃げる訳にはいかない。あれは俺が向き合うべき因縁、俺がケジメをつけるべき相手だ。身勝手なのは重々承知だが、俺だけ戦わないなんて事は出来ないししたくない」

「そっか、そうだよね。あれから逃げるなんて、出来ないよね」

「? それはどういう……」

「ねえ、フォックスさんはどう思う?」

「……本来なら、許可はしたくないんだがな。夏目安吾、貴様の武器を見せてみろ。それで判断する」

「武器……それなら、これがあるが……」

「これはっ……! 面白い。これなら、遠距離でも問題ないな……!」

 

 俺が取り出した銃を見たフォックスは、口にこそ出さないが明らかにワクワクした様子で目を輝かせていた。

 実際、それは俺も同じで少しばかり心が浮き足立っており……後ろにいるラビットだけが、よく分からないものを見る目で俺たちに視線を向けていた。

 

「コホン……総員、作戦変更! 影山和希が目覚めた今、俺、夏目安吾、影山和希も戦闘に参加する! 俺と影山和希は直接戦闘! 夏目安吾は火炎弱点であるラビットの護衛と援護射撃を頼む!」

「ああ! 分かった!」

「……了解ですフォックスさん! 僕、好きに動いてもいいですか?」

「構わん! 好きに動いてくれ! リカとソフィーは俺たちの援護を! ラビットは魔法による攻撃に集中してくれ!」

「りょ、了解! ……本当に、和希ちゃんだよね……?

「オーケー! 全力で援護する!」

「問題ねえナ。……さて、そろそろ風も止むところだぜ」

『ンゴおぉぉぉぉ!! 殺す! 殺す!! 殺してやるぅあ!!』

 

 全身の鎧を失った竜が怒号を発すると、黒い血管に侵食された両翼を全開に広げて空中へと飛び上がり、全身を守るように球体状のバリアを展開する。

 そして上半身の竜仮面が燃える灼熱の球体を、下半身の竜本体が凍てつく冷気のエネルギーを溜め込み始め……それに危機感を覚えた面々がペルソナを呼び出し竜の撃墜を試みるが、その全てが周囲のバリアにより弾かれていく。

 

万物流転

ジオダイン B L O C H(ブロック) ! ! コウガオン

ブフダイン  サイダイン

 

「これダメです! 攻撃が通じません!」

「銃撃も効果なし! あのバリアー凄く強いよ!?」

「オレサマの砲弾も弾かれた! こりゃ、手持ちの手段じゃ打つ手なしか……?」

「いや、まだだ! 夏目! 早く準備を!!」

「せっ、急かすな!! こいつ、思った以上に準備が……!!」

「っ! もう来るぞ! 全員、防御だ!!」

『炎と氷のマリアージュ! お前ら全員、ゴミになれぇぇぇー!!』

 

 盾の形状を手動で銃座に変形させ地面に設置し、いざ銃を構えようとしたところで敵の攻撃準備が完了してしまう。

 敵が灼熱と冷気の球体を天井に放ち、相反する二つのエネルギーが交わったその瞬間……全てを破壊する純粋なエネルギーが生まれ、バリアに守られた竜以外の全てに絶望の光が降り注ぐ。

 

― 最強究極極大消滅魔法 ―

メ ド ロ ダ イ ン !!

 

 俺とラビットはかろうじて銃座の後ろに隠れる事でダメージを軽減し、少女は体を透過させる事で攻撃を受け流し、フォックスは襲いかかる光を滅多切りにする事で致命傷は避けれたようだ。

 だが、ソフィーとリカはそうもいかず……光が降り止む頃にはドーム内にあったあらゆる物が消滅し、二人は完全に意識を失い地面に倒れ伏していた。

 

「ぐっ……! ソフィー! お前が持ってきたこいつを、今使わせてもらう!」

「リカちゃん! 今起こすから! ―――おいで! ボニー!」

『そんなん許すかよぉ!! 全員、死にさらせぇ!!』

「させないよ? ってことで、おじゃましまーす」

『は!? お前どこから入っぎょえっ!!』

 

 竜がバリアを張ったままこちらを押し潰そうと迫ってきたところに、少女が瞬間移動でバリアの中に侵入し一方的に斬撃を行う。

 中途半端に広いバリアがあだになったようで、球状のバリアを足場にしながら縦横無尽の動きを見せる少女に竜は対応すらままならない。

 そうこうしている間にフォックスが小さな錠剤をソフィーに飲ませ、ラビットが呼び出したペルソナがリカの意識を呼び覚ます。

 

復命錠

味方一体の戦闘不能をHP最大で回復。

 

― サマリカーム! ―

 

「うー……すまないフォックス、助かったぞ」

「悪ぃ、あんなヤベェ技があるとは……ってお前さん!! その銃は!!」

「遅れてすまんが準備完了だ! 影山さん! そこから離れてくれ!」

「はーい」

 

 少女が再び瞬間移動を使い地上に戻ってきたところで、俺は銃座に構えた槍のように長い銃身を竜の方向へ向ける。

 盾から変形させた銃座は俺の全身を覆い隠し、あらゆる攻撃から俺の身を守ってくれるだろう。

 俺が扱う銃の弾は一発しかないのが難点だが……狙うべき的は凄まじいデカブツ、外すことはまずないはずだ。

 

「ねえリカちゃん、夏目さんの銃でバリアを壊せるの? あんなに攻撃しても壊れなかったのに」

「そんなお前さんに聞かせてやろう! 時は第一次世界大戦! 独ソ戦時に生み出された、正真正銘の化け物銃! 数多の欠陥を抱えながらも後世で重宝されたそれは、後に対物ライフルというカテゴリを築き上げるに至った!! 個人が持てる最高火力! ロマン溢れる夢の銃!!」

「あ、うん……」

「いくぞ……! ファイアッ! ぅぐぉっ……!!」

 

 確実に当たる位置へと照準を定め、意を決して引き金を絞る。

 その瞬間、肩が外れるような反動を残しながら轟速の銃弾が爆音と共に竜へと放たれ……いとも容易くバリアを貫通して竜の背に生える上半身に向かい、そいつが付ける人面竜の仮面に命中して致命的なヒビを入れた。

 

『は? ぎゃあああっ!! 何でっ!? 何で無敵のバリアが銃なんかにぃっ!?』

「あったりめーだろバカ! こいつは通称対戦車ライフル! 第一次世界大戦中の戦車をぶっ壊すために作られた、撃つ人間の負担なんか何も考えてない最高のロマン銃だぞ!! バリアなんかで防げるもんかヨ! ちゃんと履修しとけバカ!!」

「銃としてどこまでもシンプルなフォルム……! 威力の事しか考えていない圧倒的な無骨さ! 美の欠片もないはずなのに、何故か絵に収めたくなる……! 嗚呼! 何と素晴らしい銃だ!!」

「そっか」

「そうなの?」

「そうなのか」

 

 残念ながら男のロマンは女性陣には理解し難いようで、なんか似た言葉が三回繰り返されるだけで終わった。

 とはいえこいつの威力は今見た通りで、バリアが粉々に砕けた竜が無様に地面へと落ちていく。

 少女がバリアの中で暴れた傷が深いのか下半身の竜が動き出す様子もなく、寄生主を失った上半身は必死になって揺らめくことしか出来ていない。

 

『ひぃぃっ!! こっちを見るな! 近寄るなぁぁぁ!!』

「諦めナ。鎧も竜も、もはやお前さんを守るもんは何一つ存在しねえヨ」

「大人しく、引導を渡すんだな。―――来たれよ! ゴエモン!」

 

ブフダイン(W E A K !)

 

『かっ、体が凍っ……やめっ……!』

「辞める訳ないでしょ? ……これが! あなたが傷つけた和希ちゃんの分っ!!」

『ごぱぁっ!! かっ、仮面がっ! 仮面がぁっ!!』

 

 凍りついた黒い上半身に向かって、ラビットが跳躍すると同時に加速するハンマーでひび割れた竜の仮面をぶん殴る。

 もはやそれが限界だったのか仮面が完全に砕け散り、顕になった素顔の口から赤い煙が漏れ始める。

 

「……哀れなもんだな。お前、最後に言い残す言葉はあるか?」

『くそっ! これが最後なもんか!! この三流作家が! 殺す! 全員ぶっ殺す!! 私が! 我が! 俺様が! この世界の王なんだぉぉ!!』

「そうか。それが、お前の最後の言葉なんだな?」

あっ……や、やっぱ止め……!』

「……! てめぇ! 一回チャンスをやってなお、最後の言葉すら自分で汚すか!! 俺が三流作家ならお前は王として三流以下だ! 貰った力に胡座をかいて! 王の土俵にすら立ててねぇ大バカ野郎だ!!」

 

 愚かだった自分を思い出させるこいつの行動に、改めて怒りの炎が噴出する。

 過去の自分に決別すべく、今の自分に刻み込むべく、俺は心のおもむくままに怒りを言語化して外へと吐き出す。

 

「二度と俺は俺を曲げない! この魂に嘘はつかない!! お前も啖呵を切ったなら……! 今更それを曲げるんじゃねえ!! ―――斬り刻め!! ギルトン!!」

 

 ギリギリの精神を無理やり奮い立たせ、呼び出したペルソナが厳かに小剣を胸の前に構える。

 それはまるで死刑宣告のように、無数の小剣が規律を成して敵の周囲に並び出し……瞬時に上昇し一回転すると、静寂を斬り裂くように一切の容赦なく敵の全身へと突き刺さった。

 

― ダウンテクニック ―

剣 の 舞(C R I T I C A L !)

 

『ンッ……ンゴオオオオオ!!』

「完全に崩れたぞ! さあ、宴の時間だ!!」

 

 その場に最も近くにいた四人で、竜の周囲を囲い込む。

 俺が、少女が、ラビットが、フォックスが、誰が示し合わせる事もなく一斉に敵へと飛びかかる。

 

ブチィッ!!

 

 竜の血が景色を染めゆく中で、四つの黒い影が真紅を背景に舞っていく。

 刺突、斬撃、殴打、連閃、ありとあらゆる攻撃が竜へ引導を渡すべく終わりなき連撃として続いていく。

 

「これが、貴様の結末だ」

『お……おぶげええぇぇぇ!!』

 

 やがて誰が言い出すこともなく、四人の影が地に落ちる。

 その中で俺は槍の返り血を振り落としながら、少しばかりズレた仮面を片手で覆って位置を直した。

 

 

 

Really a masterpiece(実に傑作だな)

 

 

 

『ああぁぁ!! やめろ戻れぇ!! 私のネガイが、俺様の力が……!!』

「よしよし、ネガイも牢獄塔に向かったナ。これでこのジェイルももうすぐ消えんだろ」

 

 黒い上半身が吐き出した赤い宝石が割れたステンドグラスから出ていき、三つの巨大な塔へと向かっていく。

 そして巨大な竜の姿が失われると共に、その中からパンツ一丁の編集長が吐き出されて地面を転がり倒れ込んだ。

 

「うわ、キツ……」

「なるほど。中年の男がパンツだけで仰向けになり、脚を大きく開いた姿というのは見苦しいものがあるな」

「状況を的確に言葉で表現するなヨ。余計キッショくなるだろ」

『ぐぎ……! まだ、まだだ……私は、俺様は、この世界の王になるんだ……!』

「何故だ? お前はロックキーパーなのに、何で王になろうとする」

『うるさいうるさい! 俺様は王だ! 王なんだ! この世界を支配するんだぁ!!』

 

 地面の上で大の字になって足掻こうとする男にソフィーが問いを投げる。

 しかし男はじたばたと子供のように暴れるばかりで、答えるつもりはまったくないようだ。

 

「本当にどこまでも情けない。……そんなこいつが、俺のトラウマの象徴なんだな」

『黙れ黙れ黙れぇ!  三流作家! 夏目の孫! ゴミ同然の駄作書きが! 祖父に恥ずかしいと思わないのかぁ!!』

「ああそうだ。お前のようなトラウマを、俺はずっと抱えて生きてきた。でも、抱えるだけじゃ駄目だったんだ。俺の中にある虚飾を受け入れ、その上で正しく進む糧とする。そんな生き方を選ぶために……俺は、お前を受け入れる」

『ふっ、ふざけるなよ!! どうせそれも虚飾なんだろ!? どんなに虚勢を張ったところで、お前が祖父を超えることは……!!』

「何度言えば分かるんだ? 俺は俺で、祖父は祖父。超える必要がどこにある?」

『なっ、あっ……!』

「ハリボテの自分はもう辞めた。今度こそ、俺は俺自身を信じる。己の心と今一度向き合い、本当に書きたい物語を創り上げてやる」

『でっ……出来るもんか!! 己の醜さ! 汚さ! その全てに向き合う覚悟がお前なんかにあるもんか!!』

 

 目の前の男が俺に言い返そうと必死の形相で言葉を吐き出す。

 だが、俺の心はとっくの昔に覚悟を決めていた。

 

「認めてやるさ。トラウマも醜さも、その全部が今の俺を創ってくれたんだから」

『あっ……あっ……!』

 

 惚けた顔で呻くことしか出来なくなった男に踵を返し、俺は他の面々の方へと向かっていく。

 しかし、無理にペルソナを使ったせいか体の倦怠感が深刻だ。

 少女に怪盗団と色々話したい事はあるが、まずはゆっくりと療養を……

 

「ん? 影山さん、どうしたんだ?」

「……いえ、すみません。どうしてもやりたい事があるんです」

 

 静かに歩き出す少女に声をかけるが、俺を一瞥もせずに男の前で立ち止まる。

 そして……腰から剣を抜き取ると同時に、パンッと乾いた銃撃音が鳴り響いた。

 

『えっ……えっ?』

「あれ? 死なないんだ。じゃあ……えいっ」

『ひいぎゃあああああーーー!!』

「っ!? おい、影山和希! いったい何をやっている!?」

 

 少女が男の首に両手の刃を掛けると、挟み込むように切断して男の生首が飛び上がる。

 首と胴体が分離された男はぐらっと地面に倒れた後に、そのまま黒い泥へと変化し消えていった。

 

「やだなあ、ロックキーパーにとどめを刺しただけですよ。そんなに怖い顔で見ないでください」

「それはっ……!? いや確かに、それは正しいかもしれんが……!」

「……違う。和希ちゃんは、こんな事はしない!」

 

 毅然と叫ぶラビットの声に、俺も少女に感じていた違和感を確信する。

 思い返せば今の行動だけじゃない、少女のペルソナに変化があったのもそうだし、戦闘中の言動が少しおかしくなっていたのもそうだ。

 一つ一つは小さな事だが、それが重なれば大きな異変となる。

 暴走を終えた時の言葉から、正気を取り戻したとばかり思っていたが……ひょっとして、今の少女は正気じゃないのか?

 ……いや、それとも今の少女は……()()()()()()()()なのか?

 

「あなたは誰!? 正体を見せなさい!」

「えー? 酷いですよアリスさん。渋谷であんなに助けたのに、何でそんな酷いこと言うんですか?」

「嘘つかないで! 和希ちゃんは容赦なく首は落とすけど、戦う力もない相手にそんな事はしない! ましてや、例え相手がシャドウだとしても! あなたみたいに楽しそうに首を斬ったりしない!!」

「……」

 

 ラビットに異変を指摘された少女が、より一層に笑みを深める。

 まるで堪えきれないとばかりに弧を描く口元は、目元を覆うピエロマスクも相まって……少女が扱うペルソナのような、不気味で怪しい印象を抱かせる。

 

「なーんか違和感あったんだよナ。戦闘中、お前さんが放つ気配……ピエロも最初はそうだったけどヨ。今のお前さん、随分とオレサマたちを警戒してるじゃねえか。あのピエロは途中からオレサマへの警戒心ゆるゆるになったのに、今のお前さんからは油断を欠片も感じねえ」

「……」

「オレサマを騙すには、ちょーっとばかし警戒し過ぎだナ。お陰であいつとの違いがよく分かったぜ? ……あいつはな、オレサマに必要な協力者候補だ。さあ、話せヨ! お前さんが誰なのか!!」

「……あーあ、誤魔化せてると思ったのになぁ」

 

 緊迫した空気の中、少女がおもむろに仮面を剥ぎ取り背後へペルソナを出現させる。

 開かれたスーツの全面から見える青白い肌に、古代エジプトをイメージしたようなタトゥー。

 明らかに二十面相と関係ないそれも、相手が二十面相じゃないと言うなら納得できる。

 暴走の時とはまた違う、明確な理性のある敵意……それがこちらへと向けられたその時、少女のペルソナに異変が起きる。

 

「変装の時間はもう終わり。―――おいで。ハトシェプスト」

 

 少女が指を鳴らした次の瞬間、ニジュウメンソウが白いスーツを空中へと放り投げ、黒い装束と金色の装飾に身を包んだ姿があらわになる。

 そして顔を隠すようにシルクハットを眼前にずらすと、帽子に隠れていた濡鴉色の長髪が広がり落ち……シルクハットが白い炎へと変化し、無数の目を持つエジプトのホルスを模した仮面へと形を変える。

 

「こいつ……! 二つの力を使い分けているのか!?」

「いいや、違うぞ! 匂いで分かる! 今もさっきも元は同じ、ただ姿が変わっただけだ!」

「そうだよ? この子は本来私の力。そしてもっと言うならば、この姿すら仮初のもの。全力のこの子は凄く気持ち悪くなっちゃうから、出来ればやりたくないんだけど……もし君たちが邪魔するならさ、私の本気を見せてあげるよ!!」

「「「「「っ!!」」」」」

 

 ホルスの仮面を僅かにずらして見える瞳は、誰もが本能的に萎縮してしまうような恐怖と混沌に満ちていた。

 無貌の怪人二十面相でもない、古代エジプトの偉大なる女王(ファラオ)ハトシェプストでもない、どす黒い闇を感じさせる鮮血のように赤い瞳。

 

「さあ、私と遊ぼうか!! ―――嘲笑え!! ブ……っ!?」

 

 恐怖と混沌を放つペルソナがホルスの仮面を取ろうとした刹那、少女が顔を歪ませながら頭を抑え出す。

 その瞳はもはや俺たちを見ておらず、内側にある何かに抵抗しているかのようだ。

 

「あんだけ精神使っといて……もう目覚めるってどういう事……!? これっ、これじゃ抑え込まれる……! ああもう!! ―――おいで! ハトシェプスト!」

 

― スリープソング! ―

 

「ぐっ!? 何だ、この歌、は……」

 

 眠い……絶対に寝るべき状況じゃないはずなのに、襲い来る睡魔に抗えない……

 そうこうしている間にも、少女はステンドグラスを突き破り、城から落下し逃げていくのに……

 

「く、そ……眠る訳に、ぐぅ……」

「あぁー……も少し寝か、すやぁー……」

「リカちゃん! フォックスさんも! 和希ちゃんが逃げちゃうよ!!」

「まずい、もうすぐ崩れるぞ! ラビット! このハリセンを使うんだ!!」

 

 駄目だ……これ以上、睡魔に抗えない……

 少女の暴走も、人が変わったような変貌も……何の真実も分かってないのに、意識が思考を許さない……

 

「和希ちゃん……! 何で……あなたは、本当に死んじゃったの……!?

 

 ラビットが何か喋っているが、意識が朦朧としてよく聞こえない……

 そんな思考を最後にして……俺は瞼を閉じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 ……これが、仙台ジェイルの終幕となります。

 

 ハリセンで引っぱたかれ叩き起された王と怪盗団は、主なき従者の変身する飛行機機により何とかジェイルを脱出しました。

 

 ロックキーパーを殺して王冠も無事に得たことですし、これにて我が素晴らしきトリックスターが真なる王になる時がまた一歩近づ……

 

 

「あら。一人語りなんて、随分寂しそうね。ヴィクター」

「……まったく、我が姉弟はこれだからいけない。ワタクシの素晴らしいモノローグを遮らないでいただきたい」

 

 愚姉(ラヴェンツァ)に追われ泣く泣く最初の部屋を捨ててから苦心して作り上げた二つ目の青い部屋に、またもや見知った顔がワタクシを追って入り込んで来ます。

 その正体は、力を司る者の長姉マーガレットお姉様。

 我々姉弟の中でも最強と言えるベルベットルームの住人であり、ワタクシ含めた下の姉弟に力の扱い方を教えた師でもある、力を司る者の中でも最強に近い存在でしょう。

 

「ベルベットルームに戻りなさい、ヴィクター。今ならお説教で済ませてあげるわよ」

「それは出来ませんね、マーガレットお姉様。申し訳ないのですが、貴方より先の約束があるのです」

 

 しかし、そんな親愛なる姉上であろうとワタクシのゲームを邪魔するなら容赦は出来ません。

 例え相手が同じ釜の飯を食した大切な姉弟であっても、ワタクシに命を授けた偉大なる主であっても、ワタクシには譲れない自分の存在意義がある。

 ワタクシ自身が思考し見つけた、欲望という名の“答え”を果たすべく、ワタクシは姉弟と刺し合う覚悟でこのゲームを始めたのですから。

 

「……何を言っても聞かなそうね。まったく、その頑固さは誰に似たのかしら?」

「ワタクシが愚かなのは承知の上です。しかし、似たような事はエリザベスお姉様もやっているはずでは? 大いなる封印の礎となった魂を救うべく、あの人はベルベットルームを出ていった。……ワタクシも、ワタクシのトリックスターを救うためにこの手段を選んだだけ。邪魔をするなら、例えお姉様であろうと容赦はしません」

「そう、もはや言葉は不要ね。それなら、私も遠慮はしない……揉んであげるわ。昔みたいにね」

「ヒュッ……」

 

 幼き頃の特訓にて、死にかけるまで泣かされボコボコにされた記憶を思い出し、ほんの少しだけ体が萎縮する。

 この人の力は圧倒的だ、今のワタクシが勝てる可能性は限りなく低いと言っていい。

 ……が、それでも己を曲げることなどできはしない。

 ワタクシには、幼き頃の少女に気づかされた“自分”というものがあるのだから。

 

「まったく、どこまでも愚かな愚弟ね。この際、姉として一言言わせてもらうわ。……いい加減、初恋を引っ張るのはやめなさい! 男として見苦しいわよ!! ―――来なさい! オベロン!」

「はっ……はぁー!? 初恋なんかじゃねーですし! オ、ワタクシは恩人を助けたいだけですし!! アンタこそ! いい歳してイケメンはびらせて恥ずかしくね……あっ、違っ、怒らせるつもりじゃ……! ―――助けて! ウォフ・マナフ!!」

 

 明らかにブチ切れ憤怒の形相でペルソナへと指示を出す姉に、オレも必死で全書のページをめくって自分が持つ最強のペルソナを呼び出す。

 こんなつもりじゃなかったのに、ちゃんとシリアスに戦うはずだったのに……せっかく理想のキャラも頑張って作ったのに、マガ姉のせいで全部台無しだ……!

 

 

 

 

!!

 

 

 

 

 

「っ……!! 殺す! 殺すからな!? ワタクシはもう、昔の弱いワタクシではないんだ!! 姉だろうが、容赦はしない!!」

 

 ぶつかり合う本気と本気の一撃に、幼い頃の辛いながらも楽しかった日々を思い出す。

 ……でも、そんな日々はもう二度と訪れない。

 

「ヴィクター! 貴方を倒したら、引っ張ってでもベルベットルームに連れて帰るわよ! 私も少しは口添えするから、主様に土下座する準備でもしておきなさい!!」

「……! づっ、ぁぁっ……!」

 

 久々の姉が姉のままだった事実に、心が小さな悲鳴を上げる。

 だが、それでも、オレには進む事しか許されない。

 

「ぁっ、ぁぁぁあ……!! 誰が謝るかよバカ! バァーカ!! ―――来い! メルギゼデクぅ!!」

 

 だって、オレがその道を選んでしまったんだから。

 

 

 

 

 

 

「むっ……何とか現実に帰れたか」

 

 異世界の出口をくぐり目が覚めると、俺は夏目安吾が入院する病院の前に一人で立っていた。

 辺りはすっかりと日が暮れており、異世界に連れ込まれてから相応の時間が経ったことがうかがえる。

 

「夏目やソフィアに、柊アリスも戻れたのだろうか……まずは夏目の確認、を……」

 

 そうしてふと手に持ったスマホに、おびただしい数の不在通知が残っているのに気が付いた俺は、まず仲間たちに詫びを入れようとSNSの画面を開く。

 俺が異世界にいるという情報はソフィアが事前に伝えていたようだが、それにしても俺が亡霊からの電話を警戒していなかったのは事実。

 まず真っ先に詫びを入れ、その後に集まり情報を共有しようとメッセージを送ろうと考えたところで……俺は、仲間から送られてきた“確定した”という文字に目を滑らせる。

 

「っ……“EMMA神聖教団 事件 被害者”……もうニュースになっているのか! という事は、既にテレビでも……!!」

 

 スマホに映る検索結果に、俺は仲間へのメッセージすら後回しにして夏目のいる病室を目指して走り出す。

 あいつの病室は完全個室、それもテレビ等設備を完備した俺の部屋より広い部屋だ。

 昏睡から目覚めてそんな部屋にいるなら、奴がまず真っ先にやるだろう事は……!

 

「夏目っ!! お前っ、テレビは……!」

『……繰り返します。十日前に起こったEMMA神聖教団による生贄殺人及び集団昏睡事件について、本日被害者の詳細が明らかとなりました』

 

 乱暴に病室の扉を開けたところで、ベッドから上半身を起こして虚無のような表情でテレビに見入る夏目安吾が目に入る。

 そして、テレビの画面に映るのは……つい先程まで、異世界で見ていた人間の姿。

 

『亡くなったのは東京都渋谷区に住む、高校一年生の影山和希さん。警察が現場に駆けつけると、影山さんは全身を刺され、遺体を複数箇所切断された状態で発見され……』

 

 テレビに映るは、まぎれもない影山和希の顔写真。

 恐らく、ついに遺族が遺体確認に同意したのだろう……テレビの中の彼女は高校の制服に身を包み、僅かにはにかんだ写真の表情がより一層物悲しさを助長している。

 

「……なあ。お前、フォックスなんだよな?」

「っ……ああ、そうだ」

 

 その視線が初めて俺の方に向けられるが、夏目は未だに現状を理解しきれていないようだった。

 対して俺は、ほとんど知っていた……それを喋らなかったのは、ただ事実が確定していなかったというだけの話。

 ……なんて、今更自分に言い訳を重ねたところで何にもならないか。

 本当は薄々分かっていた、分かった上で黙っていた。

 あの少女が、もう死んでいたという事実を。

 

「何で、あの子が写ってるんだ?」

「っ、それは……」

 

 俺の目を正面から見据えて問いかける夏目に、一瞬目を逸らしそうになるも何とか向き直る。

 例えどんなに酷な真実だとしても、これは俺が伝えなくてはならない事だ。

 

「今から約十日前……EMMA神聖教団という新興宗教による生贄殺人事件か起きた。その日を境に、お前を含めた無数の人々が突如として意識を失う“昏睡事件”が発生した。その原因はジェイルの復活、そしてその復活に関わっているであろう事件が、この生贄殺人事件だ」

「そんな事は聞いてない。何故、あの少女が画面に映っているんだ」

「っ……」

 

 少しばかり視線を落とし、荒れた呼吸を整える。

 そうして、再び夏目に視線を向けると……俺は、その覆しようのない真実を口にした。

 

「影山和希は、ジェイルに現れた亡霊……既に殺された、死人だからだ」




 タグに曇らせを追加しました。
 これからは遠慮なく全方位曇らせてやるからな? 覚悟しろよ?(暗黒微笑)

 ちなみに主人公が死人である可能性はアリスさんも知らされてました(ルブランでのやり取りの後)。
 アンゴ・パラサイト戦で“本当に和希ちゃんだよね”と言ったのもその為です(本当に中身が入れ替わってるとはこの時点では思ってなかった)

 幼女の乗っ取りは主人公が暴走により精神を削りきり、精神を回復する為の休眠状態に陥った結果です。
 主人公の意識が無くなったために幼女が乗っ取りという蛮行に出ましたが、あくまで精神の主導権は主人公にある為、主人公が目覚めれば幼女はすぐさま追いやられてしまいます。
 ということで意識を取り戻されきる前に幼女は城から外に逃げました、次回からは普通に主人公人格で始まるのでご安心を。



 以下、新ペルソナ情報。

ギルトン
アルカナ:剛毅
耐性/火炎
弱点/氷結
スキル
1 剣の舞
2 マハラギダイン
3 マハタルカジャ
4 マハラクカジャ
5 マハスクカジャ
6 ダウンテクニック
7 火炎ブースタ
8 火炎ハイブースタ

 スキルのイメージはドラクエの勇者。
 物理によるクリティカル狙い、魔法によるWブースタ全体攻撃、各種補助によるバフ性能とザコ・ボス戦共に中々優秀。
 今回はペルソナを出せない都合上他の補助スキルはお披露目出来ず、フルにスキルを活かして戦うのはもう少し後のことになります。

 夏目安吾が扱う対物ライフルについて。
 装弾数は一発限りの変わりに威力はWブースタ至高の魔弾を軽く越え、更には敵の銃撃耐性を無効化するインチキ弾を発射する。
 オマケに銃を構えている間は銃座の盾による防御があるため、正面からの攻撃を無効化するというヤバヤバ性能を誇る。
 まあ対物(アンチマテリアル)ライフルだし……現実でもこれぐらいの盛られ方はしてるヤベェ銃だから、ヨシッ!(現場猫)



ハトシェプスト
アルカナ:道化師
耐性/疾風
弱点/核熱
スキル
1 万物流転
2 マハガルダイン
3 メギドラオン
4 スリープソング
5 ランダマイザ
6 疾風ブースタ
7 疾風ハイブースタ
8 睡眠率UP

 主人公を乗っ取った幼女が使う新たなるペルソナ。
 モチーフは古代エジプトの女ファラオ“ハトシェプスト”、女性が王になる事は極めて稀だった時代に女王となり、最もエジプトを繁栄させたとされる人物。
 ちなみにハトシェプストの意味は“最も高貴なる女性”である。



 これにて賽は投げられました、曇らせの連鎖はもう止まりません。
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