それとは別に申し訳ないんですが、感想返しは気が向いたらになると思います。
何故かと言いますと感想に答えるために中途半端な構想を話した挙句、途中で路線変更しちゃった時に返答相手に嘘ついたみたいになるのがメチャクチャ嫌なんですよね。
感想全部返してる作者さんは構想がしっかり決まってる人か、物凄くリカバリー力が高い人だと思っててどっちも尊敬してます。
自分にそんなパワーはないんだ……許してくれ……
そんな訳で、ここから先は復活した渋谷ジェイルに視点を移して主人公が登場します。
コロコロ視点が変わる物語になると思いますが、何卒読んでもらえると幸いです。
それでは本編、どうぞ。
異世界は唐突にやってくる。
色とりどりのネオンが空を照らす夜の渋谷に、騒がしい警報音が響き渡る。
その騒ぎの中心に立つのは、白いローブを身にまとった怪しいピエロマスクの人影……つまり、僕だ。
『もういい……! シャドウたち! あいつを殺しなさい!!』
そんな僕を取り囲むのは、警備員のような格好に白く無表情な仮面をつけた人外の群れ。
人外たちが仮面を外すと真っ黒な泥が足元に広がり、そこから更なる化け物たちが湧き上がるように姿を現す。
『絶対に逃がすな! 殺せ!!』
「……ふふっ」
無数の化け物が一斉に襲いかかろうとする姿に、僕は思わず笑みがこぼれた。
全身を覆う全能感に身を任せながら、僕はピエロマスクに手をかけ―――
「
マスクが青い炎と共に消え去り、己の
僕の背後の人影から放たれる眩い光が、化け物たちの目を眩ませてその狙いを鈍らせる。
『ぐっ! 奴はどこだっ!?』
「あははっ! ここだよっ!!」
超人的な身体能力をフルに使い、電柱へと飛び上がった僕は、さらにそこから跳躍する。
そうして地上を見下ろせば、化け物どもがアリのように密集しているのがよく分かり、これまた小さな笑みがこぼれる。
「さあ、僕と遊ぼうよ。―――
重力に従い落ちていく僕の背後から、辺り一面を切り裂くほどの強烈な疾風が放たれる。
目が眩んでまともに状況も理解できない化け物たちに、この攻撃はさぞかし良く効くことだろう。
『うっ、うわあああ!!』
辺り一面を覆い尽くす化け物が次々と消滅し、ほんの数体にまで数を減らす。
その悲鳴を聞き流しながら、僕は着地寸前に両手の双剣を逆手に構えると、落下のスピードを乗せて落下地点にいた化け物を思い切り突き刺した。
そうして落下の衝撃を殺しながら、狙いを定めて剣の持ち手に備えられた引き金を引くと、双剣の柄にある銃口から二つの銃弾がそれぞれ別方向のシャドウを撃ち抜く。
『ぎゃあっ!』
『なっ、銃げぐあっ!!』
銃弾に驚いた隙を見計らい、神速の動きで敵二体を斬り裂く。
これで残るは、あのセーラー服の女だけだ。
「クソっ! 使えないシャドウどもが!!」
「さあ、遊びの時間は終わりだよ」
無数の化け物を吹き飛ばす圧倒的な力を、僕がどうやって手に入れたのか。
それは、ほんの少し前に遡る。
☆
僕の名前は影山和希、どこにでもいる普通の高校生。
一般家庭で生まれ育ち、受験勉強に苦心しながらも何とか合格し、つい先日入学したばかりのピカピカの一年生。
「ここどこ!? なにこれ! 誰もいないんだけどぉ!?」
そんな僕は気づいた時には、いつの間にか道路の真ん中に倒れ込んでいた。
周囲を見渡せばビルにはサイケデリックな装飾が施され、ビルの隙間にはクマの人形がタップダンスを踊っているという、明らかに頭がおかしくなりそうな光景。
そんな現実離れした異様な世界に、僕は一人で立ちすくんでいた。
「ここって渋谷……? ワンチャン、凄いお金持ちが貸切パーティーでもしてるのかな……」
現実的に有り得ない事を思わず口走りながら、自分がこの場所に倒れていた理由を考える。
そもそも、倒れる前は何をしていたのか……しばらく考え込んだ後、僕はあの事を思い出す。
「そうだ! 僕、拉致されたんだ!!」
いつも通り帰り道を歩いていた時のこと、道の向こうから急にやってきたワゴン車に僕は拉致された。
車に載せられて何かを口に当てられた事までは覚えているんだが、そうして意識を無くした後は……何だ? 何かがあったはずなのに、拉致された後の記憶を思い出せない。
あの後、何があったのか……いやそれより、まずは誰かしら人を見つけなきゃ。
渋谷ともなれば絶対に人は居るはずだし、まずは歩き回って人を見つけつつ、ここが渋谷のどこら辺なのかを聞いておきたい。
「おーい! 誰か居ませんかー! ほんとに居ないの!? ここ渋谷じゃないのー!?」
『ん……おい、何だあいつは!?』
そうして声が聞こえた方に顔を向けると、そこには警備員のような姿に、何故か白い無表情の仮面をつけた男がこちらを指さしている姿が見えた。
変な格好の警備員に、妙な街並みをした渋谷……もしや本当に、金持ちが貸し切りパーティーでもしているのか?
なんて下らないことを考えていると、どこに隠れていたのかいつの間に無数の警備員が現れ……警棒を振り上げながら、僕へ向かって走り寄ってくるではないか。
『侵入者だ! 捕まえろ!』
「ええ!? 僕、勝手に連れてこられたんですけど!?」
僕は侵入者と思われているらしく、白い仮面の警備員が警棒を振り上げ追いかけてくる。
拉致されて気づけばここにいたことを説明しようにも、こんなに殺気だった様子で追いかけられては何も出来ずに逃げるしかない。
「そうだ、電話……っ、何で電波もないの!? 渋谷はいつから治外法権になったのぉ!?」
知り合いに電話しようにも電波が繋がらず、位置情報を確認しても圏外としか表示されない。
仮にも渋谷でこんなことが有り得るのか? いや、寧ろこの場所は……本当に、渋谷なのか?
「まさか、異世界? いやいや、そんなラノベみたいなこと……」
『侵入者め! 大人しくネガイをよこせぉあぁあ!!』
『ヒーホー!』
『オレサマ、オマエ、マルカジリ!』
「何で分裂するのぉ!? シンプルに化け物じゃん!!」
警備員が泥のように溶けて地面に広がると共に、黒い泥の中から無数の化け物が現れ僕を追いかけてくる。
逃げて逃げて逃げ続けて、どれぐらいの時間が経っただろうか。
まるで疲れを知らないように走り続けられる自分の足に、どことなく違和感を覚えながら……それでも無我夢中で走り続けたところに。
『さあ、追い詰めたぞ! 諦めて“ネガイ”を差し出せ!』
「行き止まり……! どこか、逃げ場は……!」
「君! こっちに来て!」
鉄骨が積み重なった壁に追い詰められた僕だったが、声のする上の方向に顔を向けると、鉄骨のちょっと上から身を乗り出すように僕へと手を伸ばす女の人の姿があった。
「掴んで! ここから逃げるよ!」
「お、お願いしますっ!」
「んっ……えいっ!」
女の人に引っ張られながら、鉄骨を蹴る勢いで何とか上へと這い上がる。
『あいつはまさか……! 捕まえろ! 絶対に逃が……うわぁっ!!』
「こっちだよ! 急いで!!」
「は、はい!」
ちょうど左右に纏めてあった鉄骨の縄を解いて蹴り飛ばし、登ってこようとする化け物たちを足止めする。
女の人に先導され脇目も振らずに走り続け……ようやく化け物の追跡を振り切ったところで、僕らは大きく息を吐いた。
「はぁ……はぁ……ここまで、来れば……大丈夫……! はぁ……」
「だっ、大丈夫ですか? ……って、何か見たことあるような……」
荒い呼吸をする女の人を心配すると同時に、その見た目にどことなく既視感を覚える。
ボブぐらいの黒髪と黒縁メガネ……いや、メガネにしてはレンズが薄いし、恐らく伊達メガネなのだろうか。
そんな事を考えている間にも、女の人はようやく呼吸が落ち着いたようで、姿勢を直してこちらへと顔を向けてくる。
「あ……ひょっとして、
「! 知ってるの? ……いや、そうだよね。そりゃ知ってるか」
顔をまじまじと見ることで、ようやく気がつくことができた。
元ファッションモデル兼ファッションデザイナー、柊アリス。
かつて彼女が起こしたスキャンダルは、渋谷に住む人間ならほぼ全員が知っていることだろう。
ファンに借金を負わせて破滅させた、既婚者の男を奪い取った、マネージャーに暴力を振るった等……真偽不明のものも含め、黒い噂の飛び交う人物だ。
「ねえ。ひょっとして君も、気づいたらいたの?」
「っ、そうだ……! ここってどこなんですか!? 何で渋谷がこんな事になってるんですか!?」
「あ……ごめんね、私も分からないんだ。さっきも君を見つけたのも偶然で、分かるのはあの化け物がいることだけで……本当にごめんなさい」
「あ、いや……僕もすみません、いきなり質問攻めにしちゃって」
本当に申し訳なさそうな様子で謝るアリスさんに、僕は思わずたじろいでしまう。
少なくともこの様子に、連日ニュースで聞いたような悪人らしさは欠片もない。
この人、言うほど悪い人じゃないのか……? そう思いながらふと、僕は気になったことを口にする。
「ところで、その服装ってどうしたんですか? テレビで観てた時は、もっとこう、派手な感じだったと思うんですけど」
「あ……いや、うん。スキャンダル起こしちゃったし、あんまり目立つと大変なんだ」
「あ、そっか……すみません、変なこと聞いて」
「いやいや、全然大丈夫! それよりもここから逃げ出す方法を……」
『きゃははっ! アリスちゃん、また男子に色目使ってるの〜?』
「っ!? いや誰!? 男子!? そもそも色目とか言ってる場合!?」
「この声ってまさか……! っ!? なっ、何で!? 何であなたがここに居るの!?」
声が聞こえてきた方を振り返ると、そこには黒髪長髪でセーラー服を着た、いかにも性格の悪そうな顔をした女の子が立っていた。
その後ろには無数の化け物を引き連れており、僕らを助けに来てくれた人じゃないのだと嫌でも分かる。
「本当に、何で……!? その姿、学生の頃と何も変わってない……!?」
『キモっ、話しかけないでくれる? 色目ばっかりの根暗女がさぁ』
「っ! ちっ、違っ……私は……!」
『さっ、根暗女はほっといてー……そこの男の子はちょっと可愛いし、奴隷になるなら生かしてあげるよ♡』
「いや、そっちの方が色目使ってんじゃん……そ、それより質問があります。ここはいったい、何なんですか?」
『ここ? ここは“渋谷ジェイル”。いや、“トラウマルーム”とも言えるかな』
……ジェイル? トラウマルーム? この女の子がいったい何を言っているのか、僕にはさっぱり分からない。
それでも今できるのは、少しでも会話を長引かせて時間を稼ぐことだけ。
稼いだ時間で助けが来ることを信じて、まずは会話を続けなければ。
「ジェイルって……ここは渋谷じゃないの?」
『きゃはっ、違うよぉー! ここは“認知世界”。人々の認知により作られた、現実とは違う異世界なんだよ?』
「人々の認知で作られた世界……つまりここは、渋谷っぽい異世界ってことですか?」
『そうそう! そこの根暗女と違って、君は理解力も凄いんだね! ますます好きになっちゃうよー!』
「うわキツっ……でも、ここは渋谷にしてはおかしいです。目玉にクマに怪物に……まるで、子供が考えたおとぎ話の世界みたいじゃないですか」
『ぶっ、きゃはははっ! だってよアリスちゃん! 恥ずかし〜!』
「っ……!!」
セーラー服の女の子がゲラゲラと笑い出し、対照的にアリスさんの顔色がどんどん悪くなる。
困惑する僕を他所に、ひとしきり笑い終えたセーラー服の女の子は……人を馬鹿にする視線をアリスさんに向け、愉悦の表情で声を上げる。
『この世界はねぇ、柊アリスの“渋谷への歪んだ認知”によって作られた世界! そして私は、この女のトラウマの象徴なの!』
「歪んだ、認知……? つまり、貴方も人間じゃない?」
『そう! そして本来ならこの女のトラウマは秀仁学園だけで終わっていたし、私がトラウマルームから出ることはなかった。……でも! この一年でアリスちゃんが受け続けた誹謗中傷は、いつしかトラウマの領域を渋谷全体にまで広げ、その結果渋谷ジェイルと融合した! だから私はここにいるの!』
誹謗中傷……確かにスキャンダルを起こしたあの日以降、柊アリスの黒い噂は爆発的に広がって言った。
酷い話だとアリスさんの経営していたアパレルショップには、毎日のように罵詈雑言の落書きが書かれたようで、そりゃあ地味で目立たない格好にもなるだろうと納得してしまう。
『ここはジェイルであり、トラウマルーム! かつてネガイを捧げた者は無条件でネガイを奪われ、心に刻まれたトラウマは外部からの干渉を全て無力化する! ……時間稼ぎのつもりなんだろうけど、この場所に助けは絶対に来ないよ』
「っ! やっぱバレて……!!」
『そして私がその女を探していたのは、刻まれたトラウマをより深めるため。そうすればこのジェイルは……他の誰にも干渉されない、完全無欠の牢獄になる!』
「いや……そんなの、絶対に嫌だ……また、あんな惨めな思いなんて……!」
『ほら、アリスちゃんおいでよ〜。また昔みたいにイジメてあげる……一生ねぇ!!』
「ひっ! 嫌ぁっ!!」
「! やめっ、ぐあっ!!」
女の合図と共に一斉に飛びかかってくる化け物たちからアリスさんを庇うが、あっという間に組み伏せられ仮面の警備員に地面へ押し倒される。
抵抗しようにも圧倒的な力に為す術もなくねじ伏せられ……為す術もなく?
なんだ、このデジャブ感? なんだ、この記憶……?
「あ……あっ、あっ……!」
どこからともなく記憶が溢れてくる。
これは……あ。
嫌がる姿をニコニコ顔で、衣服を全部剥ぎ取られました。
笑顔で眼球をほじくられ、鼻と耳を削ぎ落とされました。
お腹の中身を全部出して、綺麗に並べられました。
その間、ずっと生きていました。
「あっ……ああああああっ!!」
自分のものとは思えない記憶が本流する。
覚えてるのに覚えがない、誰のものかも分からない。
そんな風に刻み込まれた恐怖が、痛みが、絶望が、全ての感情が怒りに反転する。
「は? 何が……」
「……許さない」
怒りが具現化するように自分の体から突風が吹き荒れ、僕を組み伏せていた化け物がふきとばされる。
……まるで八つ当たりのような、自分のものとは思えない強烈な激情。
同時に強烈な頭痛が襲いかかるが、そんな痛みすらも内から溢れる激情が全て塗りつぶし支配する。
頭の中に声が響く。
自分の声にそっくりなのに、どこか他人のような声。
「違う、まだ変えられる……少なくとも、今を変えることができる」
「僕は、許さない……人の運命をねじ曲げる奴を、逆にねじ伏せる力が欲しい……!」
瞬間、顔に異物感を覚える。
それは、僕を縛っていた仮面……その事を直感的に理解した僕は、仮面に手をかけ癒着した皮膚ごと引き剥がす。
ぶちぶちと破れる皮膚の感触に、飛び散る流血が炎に変わる。
ぶち撒かれた青い炎は全身を燃え広がるように包み込み、やがて一つの衣装へと変化する。
足まで伸びた白いローブに、両手に携えられた片刃の剣。
そして背後に現れる、他人のようでもう一人の自分。
「嘘……何これ……!」
僕の背後に出現したのは、青いラインの走る白スーツを着た、白いシルクハットを目深にかぶった人型の怪人。
僅かに見える口元は頬を裂き三日月に歪んでおり、目元を覆い隠すシルクハットには無数の目玉がぎょろぎょろと蠢いている。
『何それ……! もういい! 二人とも殺しちゃって!!』
「アリスさん、もう大丈夫です。少しここで待っててもらえますか?」
「えっ……? わっ、へっ!?」
『なっ!? いつの間に上に!!』
風のような早さでアリスさんを抱き抱え、ビルを駆け登り避難させる。
いつの間にかピエロマスクへと変化したペルソナを再び顔につけ直し、ふわりとビルを飛び降り化け物たちへと対峙する。
『もういい……! シャドウたち! あいつを殺しなさい!!』
『絶対に逃がすな! 殺せ!!』
「……ふふっ」
もう、僕は力を持たない弱者じゃない。
誰かが運命を弄ぼうとするのなら、それに対抗するだけの力を手に入れた。
「
運命を弄ぼうとする敵を蹂躙する。
さあ、遊びの時間の始まりだ。
陰キャやってるアリスさんは絶対可愛い(偏見)
それは置いといて、以下主人公のペルソナ設定。
ニジュウメンソウ
アルカナ:道化師
・疾風属性の攻撃を得意とするペルソナ。昔の小説ではヤーノシークだったが、長年小説をサボっている内にP5Xの主人公ペルソナに大抜擢されちゃって急遽変更した。アルカナは道化師であり、某キャベツと同じ。
感想返しは上記の通り難しいですが、感想貰った時はGoodマーク押すことにしてます。
気に入ってくれた方は、評価・感想・お気に入り登録をよろしくお願いします。