ペルソナって知ってる?   作:からかさ(仮)

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 お待たせ! 待った? マジごめん。
 前置きは添えるだけ、ってことでどうぞ。


トラウマが這い寄る地獄の世界で。【編集中】

「ねえ、リカちゃん。さっき出てきたアレは何なの? 影山さんも同じようなのを出てたんだけど」

「……」

「僕も教えて欲しいな、リカちゃん。それに、手伝うなら色々と教えてもらわないと。ねえリカちゃん?」

「ああクソ! せめて“リカ”だ! ちゃん付けは止めろ!!」

 

 無表情の人々が敷き詰められた監獄の前、シーサーのような姿をした二足歩行の謎生物。

 リカちゃん改めリカが叫び散らす中で、僕はここからどうするかを考えていた。

 あのセーラー服の女から逃げることは出来たものの、常識の通用しない異世界の中で、僕とアリスさんは依然として追われる身。

 ここからどう行動するにせよ、まずは情報が欲しいところだ。

 

「はぁ……教えろったって、お前さんらは何を知らねぇんだヨ」

「全部。だからリカが知ってること、全部教えてよ」

「ずいぶんとまぁ、欲張りさんなお願いだが……“ペルソナ使い”が手を貸してくれるってんだ。教えてやるのも悪くねぇ」

「……」

 

 ニヤリと笑うリカの横顔を、いつでも斬れるよう油断せず身構える。

 マスコットのような姿とはいえ、出会って数分程度の人外じみた異様な存在。

 決して信頼は出来ないが、この世界の知識を持つとなればある意味で好都合な存在だ。

 力を貸すことを担保として、リカから情報を聞き出しつつ、黒い巨人を倒しこの世界から脱出する。

 きっと難しい事だろうが、今の僕なら出来るはずだ。

 

「じゃあリカちゃん。聞きたいんだけど、さっき言ってた“ペルソナ使い”って何なの?」

「あのナ。お前さん、話聞いてた? リカだよリカ? ノットリカちゃん、おっけー?」

「うん。でも、リカちゃんの方が可愛いし」

「お前さんさぁ……いや、いいや。疲れるだけか」

 

 空気を読まないアリスさんの発言に呆れたのか、リカが軽いため息を吐いた。

 マスコットみたいな見た目の癖して、あまりにおっさん臭いその動作に、ついつい僕も毒気を抜かれ剣を持つ手が緩んでしまう。

 

「さて、ペルソナ使いについてだったナ。……人は誰しも、心に仮面を被っている。その心の仮面を自覚し、この異世界で自ら引き剥がす。それにより目覚める力が、お前の持つ“ペルソナ能力”。そして、そいつを操る連中は“ペルソナ使い”と呼ばれている」

「ペルソナ能力……僕の、これが?」

 

 自分の顔についたピエロマスクに手をかけ、取り外す。

 最初に引き剥がした時とは違い、僕の仮面は簡単に顔から離れて怪人……否、“ペルソナ”へと姿を変えた。

 

「うおっ、お前のペルソナちょっと怖ぇナ。都市伝説の怪人じゃねえか」

「むっ……いいじゃん、別にそんなの。って言うか、リカは仮面も無いのにどうやってペルソナを出してるのさ」

「へっ、オレサマは人間じゃねえからナ。仮面なんか必要ねえんだヨ」

「人間じゃないのは見た目で分かるよ。だったら、リカはあの化け物と何が違うのさ」

「へっ、オレサマを“シャドウ”なんかと一緒にすんなヨ。オレサマはトクベツだ、シャドウなんかとは違う」

「シャドウ……ねえリカちゃん。あの化け物はシャドウって言うの? 私たちに教えてくれない?」

 

 僕とリカの会話に割って入るように、アリスさんがとぼけた口調で問いを投げる。

 一瞬なんだコイツと言った表情でアリスさんを見つめるリカだったが、ヤレヤレと首を振りながらシャドウについての説明を始める。

 

「シャドウってのは、心の海を漂う残留思念。そいつらが在り方を曲げられた結果、この世界の防衛機構に変えられちまった哀れなバケモンだ。倒しても心の海に戻るだけ、正真正銘の雑兵だヨ」

「そうなんだ……じゃあ、この檻に閉じ込められている人たちは? 正直、普通の人間とは思えないんだけど」

「おっ、勘がいいナ。ここに居るのは認知世界の住人、現実の人間が心の奥底に潜める“もう一人の自分”だ。化け物共とは本質が違うが、これもまた一種のシャドウだナ」

「もう一人の自分……それってつまり、ペルソナと似たようなものってこと?」

「似てるも何も、ペルソナの元だヨ。ま、そうは言ってもペルソナに目覚める人間なんてほとんどいねえ。ペルソナにでも変化しなけりゃ、基本は認知世界でのほほんと存在してるだけの対して害もない連中だ。……が、強い欲望を持つ人間のシャドウは話が違う。奴らは欲望を力に変え、自ら怪物に変化する」

「欲望……」

「そうだ。その中でも特に強烈な欲望を持つシャドウは、稀に認知の世界に自分専用の居場所を生み出す。ここ“渋谷ジェイル”は一年前、そんな欲望にまみれたシャドウが作り出した異世界だ。……なあ? お前さんも、覚えがあるだろ?」

「っ……!」

 

 淡々としたリカの問いかけに、アリスさんがぎゅっと顔を強ばらせる。

 その様子にいたたまれなくなった僕は、アリスさんの前に出てリカの言葉を遮ろうとした。

 ……が、無言で裾を掴まれてしまい、僕はアリスさんとリカの間でただただ棒立ちにならざるを得なかった。

 

「覚悟はあるみてぇだからハッキリ言うぜ。この異世界“渋谷ジェイル”は、お前さんのシャドウが作り出した世界。お前さんの傲慢なネガイが生んだ、人々のネガイを奪う異世界だヨ」

「……そっ、か。やっぱり、そうだったんだ」

 

 一切容赦のないリカの宣告を、パッと見は落ち着いた様子で受け止めるアリスさん。

 その手が震えていることを袖から感じ取り、僕は同情の念を抱かずには居られなかった。

 そりゃあそうだろう、自分の醜い欲望が具現化した世界なんて、誰だって見たくないものだ。

 ましてや過去を後悔しているなら、尚更この光景は最悪なものとして映っていることだろう。

 

「私、何となく分かってた。この世界は、バカだった頃の私が想像してた渋谷だって。EMMAを使って人を弄んでた、最低だった私が見てた渋谷だって。そっか、やっぱりそうだったんだね」

「っ、アリスさんは、なんでそんな事をしたんですか?」

「……あのね。私、学校でいじめられてたの。影山さんもさっき聞いたでしょ? 私のトラウマ。頭にこびりついて消えない、どうしようもなく酷い言葉」

「……」

「それでもね、そんな過去を振り切るために頑張ってデザインを勉強したの。惨めな自分を変えるために、“人の光になる”って夢を叶えるために、一生懸命努力した。努力して努力して努力して、ようやく夢のスタートラインに立った時……また、あの女が現れた。私の過去を吹聴して、惨めな豚だって言いふらした」

「そう、なんですか」

「そんな時、私は人を洗脳する力を得た。去年EMMAって流行ったでしょ? 私のトモダチキーワードを入力した人は、何故かみーんな私のことを好きになった。その力を使って、私はあの女から全てを奪った。男も、友達も、何もかも」

「……」

 

 過去を話すアリスさんの目は、どこか虚ろで澱んでいた。

 努力して手に入れようとした物を、再び奪ってバカにしようとするクズに復讐する気持ち。

 決して理解しちゃいけない感情……それでも納得し、同情してしまう程に、アリスさんの言葉は痛々しさと悲痛さを纏っていた。

 

「それでも、私は許せなかった。私を影で笑ってた連中も、見て見ぬふりしてた連中も、私は全てに復讐しようとした。……でも、そんなことを続けるうちに、私の目的は変わってしまった。人に復讐する為じゃなく、自分の快楽の為にEMMAを使うようになっていた」

「……それは、ダメです。それをやったら、アリスさんを虐める人間と何も変わらなくなっちゃいます」

「そうだね。自分の為にEMMAを使う私は、いつの間にか私を虐めてた人間と何も変わらないクズに成り果てていた。それに気づくきっかけはあの日。心の怪盗団から予告状が送られた次の日。今まで麻痺してた私の心は、急に良心の呵責に耐えられなくなった」

「いわゆる“改心”だナ。きっと死ぬ物狂いでお前さんのシャドウを説得したんだろ。心の怪盗団に感謝しとけヨ」

 

 心の怪盗団……一昨年に彗星の如く現れ消えたと思ったら、去年の夏に復活しまた消息を絶ってしまった神出鬼没の現代の義賊。

 そんな現代の義賊が復活した夏、最初に選ばれたターゲットこそが柊アリスその人な訳だが。

 

「ちょっと待ってよ。その言い方だと、まるで心の怪盗団も異世界に入れるみたいじゃないか」

「入れるぞ。なんなら改心の手段そのものだ。毎回めちゃくちゃ頑張って説得してるんだろうナ。知らんけど」

「そうなの!? ってか、心を盗む方法って説得なの!? めちゃくちゃ原始的じゃん!!」

「そうだよ。ま、そんな説得もターゲットに良心が残ってなきゃ成立しない訳だけどナ」

「マジかぁ……改心、説得してやってたんだぁ……」

 

 謎に包まれた怪盗団の改心手段……それがまさか異世界で、しかも説得という形で行われていたとは思わなかった。

 とはいえ良心が無ければ改心出来ないと言うことは、きっとアリスさんは根っからの悪人ではないんだろう。

 それでもやった事はやった事、被害者から責められればアリスさんはそれを受け入れるしかないだろう。

 ……そう、あくまで、被(・)害(・)者(・)が(・)責めるなら。

 

「ねぇリカちゃん、影山さん。怪盗団もこの世界に入れるってことはさ、ひょっとしたら頑張れば怪盗団が助けに来てくれるんじゃないかな?」

「それは無理だナ。このジェイルは全てを拒絶し、外部からの侵入を決して許さない牢獄だ。……そうなったのも一重に、お前さんのトラウマが強まったせいでナ」

「っ!? 私の、トラウマ……?」

「確かに。あの女も、トラウマが強まればこの世界がより強固な牢獄になるって言ってた」

「あの女? そいつはひょっとして、“ゲートキーパー”のことか?」

「ゲートキーパー? それはよく分かんないけど……影山さんが言ってる人ね、何でか学生の頃に私を虐めてた女にそっくりなの。今の姿じゃなく、学生時代の姿なんだけどね」

「なるほどな。なら間違いなくそいつはゲートキーパーだ。お前さんのトラウマの象徴であり、お前さんのトラウマを抉る為のこの世界の番人だヨ」

「っ、そんな、嫌だよ……あの頃の記憶を掘り返されるなんて、絶対イヤ……!」

「そうかヨ。なら、ぶっ飛ばしに行くぞ」

「「は?」」

 

 リカの唐突な言葉に、アリスさんと同じタイミングで素っ頓狂な声が飛び出した。

 そんな僕らの反応を気にも止めず、呑気にぽてぽてと歩き出すリカについイラッときた僕は、思わずその首根っこを子猫のように摘んで釣り上げた。

 

「お゙ぇっ!? いきなり何だヨ! 人形みたいに扱うんじゃねえヨ!?」

「いや、いきなり過ぎるでしょ。手を貸して欲しいならちゃんと説明してくれる?」

「説明なんていらねぇだろ! ゲートキーパーをぶっ倒してこのジェイルからおさらばすんだヨ!」

「僕も一回戦ったけど、あいつを攻撃するとトラウマが流されるんだ! アリスさんを連れていく訳にはいかないでしょ!?」

「知らねぇヨ! んなの我慢すればいいだろ!!」

「っ……! 僕はお前に協力するのは、お前が僕に協力するって言ったからだ! 説明もまともにやってくれないなら、僕が力を貸す道理はない!」

「あぁん!? 何だテメェ!? 上等だヨ!! お前さんの力なんかいらねぇ! オレサマ一人でゲートキーパーを潰してきてやる!!」

「ちょっ、リカちゃん!? 影山さんも冷静に話を……っ!!」

『きゃははははっ! やぁっと見つけたぁぁぁぁ!!』

「「「!!」」」

 

 突如として割り込んでくる聞き覚えのある声に、僕は釣り上げたリカを手放し戦闘態勢に入る。

 そうして声の方に振り返ると、案の定そこに居たのは女子高生の姿をした女が黒い巨人に変化した姿だった。

 

『まさか牢獄塔にいるなんてね! 捕まえる手間が省けちゃった!!』

「おうおう、わざわざ向こうから獲物がやってくるなんてなぁ。こっちもありがたい限りだぜ!」

「っ、ダメだ! 手を出すな! まだアリスさんが離れてない!!」

「はぁ!? んな事言ってる場合かヨ!? 戦う気もないならすっこんでろ!!」

「っ、二人ともっ! お願いだから喧嘩は……きゃあっ!?」

「なっ!? アリスさんっ!!」

『ようやく捕まえたぞ! 城に連行する!!』

 

 背後に避難させていたアリスさんの悲鳴に振り返ると、ヘリの姿をしたシャドウに連れ去られる姿が目に映った。

 焦った僕はヘリに銃口を向け、その引き金を引こうとしたところで……すぐ脇から飛んでくる斧に気づけず、意識外からの一撃をまともに食らってしまった。

 

「ゔあっ!! がっ、あっ……!!」

『きゃはははっ! よそ見するからだよ、ばぁーかっ!!』

「おい、何やってんだヨ! しゃーねぇ……!

 ―――来(こ)い! ワルキューレ!」

 

― ディアラハン ―

 

 現れた十二の少女が陣を組むと同時に、ハートのような優しい光が僕を包み込み傷を癒していく。

 壁にもたれかかりながらも、何とか起き上がるとそこに居たのは……数えるのも億劫なほど、牢獄塔の入口を埋め尽くす大量のシャドウだった。

 

「クッソ! 手が、足らねぇ! 物量に、潰されぐっ!?」

「はぁっ! どうだ!」

 

 鉤爪を振るってシャドウを蹴散らしていたリカだったが、背後から警棒による不意打ちを受けて僅かに体制が揺らいでしまう。

 そんな隙を見逃すはずもなく、怪物(シャドウ)共が一斉に襲いかかりリカの小さな身体が埋もれてしまう。

 

『残念だけど、あなたたちの相手をしてる暇はないの! 今からたぁーっぷり、あの惨めな豚にトラウマを見せなきゃいけないからね! きゃははははははっ!!』

「待て……! お前は、何でトラウマを……!」

 

 黒い巨人の姿からセーラー服の姿へと戻る女に、僕は問いを投げかける。

 すると女は、ただでさえ性格の悪そうな顔を更に歪ませながら答えた。

 

『そんなの簡単! 私が存在し続けるため! だってあの女がトラウマを克服すれば、私の存在が消えちゃうもの! そんなの絶対に許さない! 豚は豚らしく、一生怯えて生きてりゃいいんだよ!!』

「っ……! ふざっけんなぁ!! そんなの、僕が絶対に……!!」

『きゃははっ! そんなザマで何言ってるのかしら! あんたはそこで無様に這いつくばって死になさい!! じゃ、皆! 後は頼んだわよー♡』

「待て……クソッ、クソッ……!!」

 

 一瞬で泥のようになり消え去るセーラー女を追いかけようとするが、斧により受けた衝撃が残っているのか、足が痺れて上手く歩けない。

 そんな状況の中、無数のシャドウがゆっくりと迫り来る絶望の光景に……震える膝を抱えながら、僕は自分の愚かさを後悔した。

 ペルソナに目覚めた際の全能感に身を任せ、傲慢にも一人で突っ走ろうとした結果、アリスさんは容易く連れ去られてしまった。

 何が“僕は強い”だ、何が“今の僕なら出来るはず”だ。

 そんなもの、思い上がりも甚だしい。

 

「アリスさんが連れ去られたのは、全部僕のせいじゃないか……!」

 

 目覚めた力にあぐらをかき、最悪の結果を招いてしまった。

 つまらない意地を優先したせいで、アリスさんが攫われてしまった。

 

『おい、動かないぞ!』

『チャンスだ! あのピエロを殺……』

「んなぁー……ウザってぇんだヨ!!

 ―――嬲(なぶ)り潰(つぶ)せよ! ワルキューレ!」

 

― マハジオダイン!!(W E A K !) ―

 

 瞬間、僕の目の前に迫ってきたシャドウたちが落雷に撃ち抜かれ焼け焦げる。

 そうして倒れたシャドウの向こう側には、十二の少女を背後に引き連れ、焼け焦げたシャドウの上に立つリカの姿があった。

 

「大層な口を聞いた割には、随分と情けねえ姿だナ。それであのゲートキーパーを潰せんのかヨ」

「っ……! 僕は、一人でやれるつもりだった。一人でも、何とかなると思ってた。でも……現実はこのザマだ。足すらまともに動かせない」

「情けねぇナ。それでもペルソナ使いかヨ」

 

「その癖くだらない意地を張って、自分の力を過信した。……本当に、ごめんなさい」

 

 己の愚かさを後悔しながら、心の底から謝罪する。

 僕はこの場で倒されてもいいから、せめてアリスさんは助けて欲しい。

 そんな思いを込めながら僕が謝罪する姿を見て、リカは一つため息を吐きながら口を開いた。

 

「ふふん……まぁ、オレサマも意地になって悪かっ、にょわー!? 何だテメェら! 登ってくんじゃねーヨッ!?」

「下がダメなら上からだ! 行くぞ! 蹂躙しろ!」

 

「助けてっ! 不味いっ! 誰か助けてーっ!!」

「えぇ……? それは流石にダサくない……!?」

 

「オレサマも意地になって悪かったヨ。だから改めて契約だ。オレサマの目的は“全てのジェイルをぶっ潰す”こと。お前さんが手伝うかは後でいいから、今回はオレサマの力を貸してやる。今後は力に溺れるナ。……間違っても、力に振り回されるバカになるなヨ」

「っ、いいの……?」

「ああ、分かったなら行くぞ。足は動くのか?」

「……うん。本当に、ありがとう!」

 

 泣きそうになる目を擦りながら、改めてシャドウの方へ向き直る。

 そうして顔の仮面を外し、ピエロマスクと向き合いながら……それを空へと放り上げ、もう一人の自分を呼び出す。

 

「ふぅ……!

 ―――来(こ)い! ニジュウメンソウ!!」

 

 ぶわりと静かな突風が吹き荒れ、僕の背後に白スーツの怪人が現れる。

 それは僕の心とリンクするように、優雅な動きで足を振り上げ……踵から飛び出した鋭い刃で目の前の空間を一閃する。

 

― ブレイブザッパー!! ―

 

「よっし、じゃあ行くぜ! 変っ身!!」

 

 全てを一閃する斬撃が地を駆け、僕の目の前に道が生まれる。

 同時に近くに来ていたリカが戦車へと変身し、僕は跳躍してその上へと飛び乗った。

 

『クソっ! 逃がすもの……ぐあっ!!』

「リカ! 城ってあのデカいの!? 登るの大変じゃない!?」

「ああ、時間がかかり過ぎるナ。登るのはナシだ」

 

 周囲のシャドウへと銃弾を浴びせながら、僕はリカへと問いかける。

 アリスさんが連れ去られたのは、ここからでも見えるほど巨大な705と書かれた建物のことだろう。

 空まで届くほど高いその建物を登るのは、あまりに時間がかかり過ぎる。

 なら、どうすればいいのか……

 

「だからよぉ、飛ぶぞ!」

「えっ? ……ひゃあっ!?」

 

 戦車だったリカが一瞬煙に包まれた次の瞬間、まるで戦闘機のような形状へと姿を変える。

 そうして道を走りながら、徐々に高度を上げていき……遂には、ビルを見下ろせるほどの高さにまで飛行した。

 

「最初から思ってたけど! 何で乗り物になれるのぉ!?」

「認知の応用だ! 面倒だから説明はしねぇ!」

 

 そうこうする間にもどんどんと高度は上がっていき、城のてっぺんが見えてくる。

 城の上空に浮かぶ巨大な赤い宝石と、てっぺんにそびえ立つポールのようなもの、そして……

 

「っ……ありえない! 何でここまでこれるのよ!?」

「悪ぃなぁ! オレサマに常識は通用しねえんだわ!」

「影山さん!? 何でっ……!」

「ごめんなさいアリスさん! 今度こそ、僕たちがこの女を倒します!!」

 

 城の屋上に立つアリスさんとセーラー服の女を見ながら、僕は戦闘機から飛び降り着地する。

 今度こそ、二人でこの女を倒すために。




 ダンジョンギミック全無視兵器、リカちゃん。
 あまりの無法具合にギミック考えたシャドウが泣いちゃいそうですね(小並感)。

 じわじわとお気に入りが増えていくの、ウレシイ……ウレシイ……!
 評価・感想・お気に入りよろしくお願いします(定期)、それでは次回もお楽しみに。
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