ペルソナって知ってる?   作:からかさ(仮)

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 思ったより書くのに時間かかっちゃった……まじメンゴ。

 今回は現実世界(高巻杏)視点→渋谷ジェイル(影山和希)視点でいきます。
 そういう事で、本編どうぞ。


柊アリスは夢を見る。

 怪盗団のメンバーと別れてから、しばらく歩いた私はアリスの入院する病院にたどり着いた。

 病院の場所は善吉に教えてもらっていたが、実際に訪れたのは初めてで少しばかり緊張する。

 アリスの身内ですらない私がお見舞いはできるのか分からないが、まずは話を聞こうと病院の受付に向かい……そこに立つ看護婦さんと必死な様子で話をする、背広を着た若い男を見つけた。

 

「お願いです影山さん。捜査のために、お宅の息子さんが拉致された日の状況を……」

「あの子は息子じゃありません! 迷惑ですから帰って下さい!」

「あっ……では、生贄にされた娘さんの……」

「止めて!! 二度とその事は話さないで!!」

 

 何を話しているのかはよく聞こえないが、明確な拒絶をあらわす看護婦さんに、背広の男は慌てたように頭を下げて去っていく。

 そうして無言で受付に戻っていく看護婦さんに……正直かなり気まずいが、アリスの病室を知るためには話しかけなければならない。

 

「あの、すみません。柊アリスのお見舞いに来たんですが」

「あ……お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありません。柊アリス様の病室は302号室となります」

「え? あ、ありがとうございます……」

 

 割と身構えて話しかけたものの、すんなりと話が通り私はアリスと面会できることになった。

 教えてもらった通りにエレベーターに乗り、長い通路を歩いていき、302と書かれた病室の中に入る。

 カーテンに仕切られた数人の昏睡者がいる病室を進み、最も奥の仕切りにたどり着くと、私はゆっくりとカーテンを開けて中を覗いた。

 

「……一年ぶりかな、アリス。まさか、こんな形で会うことになるなんてね」

 

 病院によくある患者服を着せられた柊アリスが、眠っているとしか思えない姿で静かに横になっている。

 一年ぶりの再開だが、見た目の変化はほとんどなく、せいぜい髪色が黒に変わった程度。

 しかし、この一年を通して……アリスを渦巻く周囲の状況は、目まぐるしいほどに変化した。

 

「色々、大変だったよね。守ってあげられなくて、ごめんね」

 

 一年前のスキャンダルによりモデル業界を追放されたアリス、彼女に残された道は個人のデザイナーとして細々と活動することだけだった。

 しかし、実力はあるがスキャンダルを起こした彼女を使おうとする企業はほとんどなく、アリスのブランドは瞬く間に衰退し表舞台から姿を消した。

 そんな彼女に残ったのは被害者の恨みと、罪の意識による後悔だけ……そんな苦しい状況でも、アリスは自分の罪を償おうと、必死になって努力していた。

 多額の損害賠償を何とか支払い、被害者が返品した商品の返金にも全て対応し、彼女は自分にできる最大限の償いをした。

 そして被害者の一部は彼女を許し、残った一部の人たちも許しはせずとも彼女の謝罪を受け入れた。

 ……なのに、彼女を責める声は消えなかった。

 

「被害も受けてないのに、何で外野が騒ぎ続けるのよ……何でそんな奴らの声に、あんたが苦しまなきゃいけないのよ……!」

 

 今アリスを責めているのは、何の被害も受けていない赤の他人だけだ。

 事情も何も知らない人々に責められ、EMMAに魅了されるより前に努力して手に入れた地位も失い、挙句……異世界の中に閉じ込められ、現実で目を覚ますことすら出来ずにいる。

 これが彼女の罰と言うなら、あまりに罰が重すぎる。

 

「私、決めた。絶対に異世界に入る方法を見つけて、あんたのことを助けるから。だから、その時は今度こそ……あんたと、友達になってやるんだから」

 

 私はこの一年で、大学生活とモデルの両立に気を取られ、アリスを見ることが出来ずにいた。

 そうして姿を消したことにすら気づけなかった時の後悔を、行方すら分からくなってしまった時の無力感を、再び味わうのは二度と御免だ。

 

「絶対に諦めさせないから! あんたの夢を、自分自身の光を……絶対、忘れさせないから……!」

 

 改めて決意を固めた私は、思わずベッドに転がるアリスの手を握る。

 そうして何分か時間が経過し……ふと、私はある可能性を思いついた。

 

「……昏睡者に触れたまま、キーワードを入れたらどうなるんだろう」

 

 ダメで元々という気持ちで、スマホを取り出しキーワードを入力する。

 そうしてしばらく待ってみたが……やはりジェイルに入ることは出来ず、私は静かにため息を―――

 

『キーワードが入力されました。ナビゲーションを開始します』

「……嘘、マジ?」

 

 瞬間、私のスマホから電子音声が鳴り響き、周りの景色が赤と黒に歪んでいく。

 真っ昼間の渋谷が夜に変わり、無数のネオンが周囲を照らす中で、前方のシャドウが私に気づき警報を上げる。

 

『クソっ、なぜこんな時に侵入者が!? 少しは空気を読んだらどうだ!!』

「それはこっちのセリフだっての……!

 ―――踊れ! カルメン!」

 

 再び姿を現した異世界にため息を漏らしながら、私はもう一人の私の名を叫ぶ。

 それは、茨を振り回しながらシャドウを一瞥すると……地面から灼熱の火柱が上がり、一瞬でシャドウを焦がして燃やし尽くす。

 

― アギダイン! ―

 

「悪いけど……あんたたちに付き合ってる暇、ないから!」

 

 約一年ぶりのペルソナ能力を試し終え、私は警報を聞きつけやって来たシャドウの群れに向き直る。

 どれだけ敵が多くとも、この程度でやられる程ヤワな経験はしていない。

 そんな自負と共に、私は鞭を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 城の屋上にそびえる巨大なポールの根元に、アリスさんが鎖で縛り付けられている。

 心の底から湧き上がる怒りを理性で押さえつけ、僕は無表情のままでポールの前に立つセーラー女へと目を向けた。

 

「さあ、アリスさんを返してもらうよ」

『はぁ? ばっかじゃないの!? この豚に消えないトラウマを刻み込んでやるんだから、あんたに返すわけないじゃん!!』

「はっ、鼻の穴広げてブーブー言うなヨ。お前さんの方が豚みてえだぞ」

 

 セーラー服の女へと剣を向ける僕に続いて、戦闘機から二足歩行の姿に戻ったリカが隣に着地する。

 二対一の有利な状況、しかし向こうにはアリスさんがいる。

 最善策は僕たちの片方が戦う間に、もう片方がアリスさんを助けることだが……そんな事は、きっと向こうも重々承知のことだろう。

 

『この……! 来なさいシャドウ共! あいつら全員、皆殺しよ!!』

『はっ! 殺せ! 生きて帰すな!!』

「上等だゼ! 逆に全員ぶっ潰してやるヨ!!」

 

 セーラー女の足元から黒い泥のようなものが広がり、そこから警備員の姿をしたシャドウが湧き上がるように出現する。

 数の利は一瞬で消え去り、強行突破は間違いなく不可能、ならやる事は一つしかない。

 

「リカ! 頼んだ!」

「おう! 任せナ! ―――()い! ワルキューレ!」

 

― マハジオダイン!! ―

 

 リカのペルソナが方陣を組み、無数の落雷が周囲のシャドウへと降り注ぐ。

 強烈な落雷にいくらかのシャドウが消滅し、生き残った奴らも()()してまともに動けない状態。

 

「遊びは無しだ。―――(あざむ)け! ニジュウメンソウ!!

 

 その隙を見逃さずに呼び出したペルソナが、踵の刃を振り乱し四方八方を斬り裂いていく。

 その斬撃は、感電して身を守ることの出来ないシャドウへ更なるダメージを与え……ニジュウメンソウの卓越した技巧が、乱れ咲く斬撃の一つ一つを必殺と言えるほどに押し上げる。

 

超 絶 技 巧

空 間 殺 法(T E C H N I C A L !)

 

 閃光の如き斬撃が周囲のシャドウを殲滅し、僕を中心にシャドウがいない空間が生まれ、そこにリカが飛び込んでくる。

 そこで僕は回転しながら真上へと跳躍し、銃弾を乱射すると同時に……リカの装備する鉤爪がチェーンのように伸び上がり、爪による斬撃と僕が放つ銃撃がさらに広範囲のシャドウを殲滅する。

 

「エクステンド・クロー。こいつが、オレサマの得物だヨ」

「凄いね! 何て意味なの?」

「……伸びる爪だヨ! 悪ぃかちくしょう!」

「えっ、いやっ、なんかごめん!」

 

 話しながらも体は止めずに、次々とシャドウの胴体を斬り裂き、頭を狙って撃ち抜いていく。

 警棒を振り上げる警備員シャドウの攻撃を半身で躱しながら袈裟斬りに、ドローンシャドウの銃弾を刃で斬り落としつつ銃撃を放って撃ち落とし、あえて作った隙を見せつけ襲ってきたシャドウを逆に刈り取る。

 決して油断はせずに戦って、隙を支配し敵を操り、確実にシャドウの数を減らしていく。

 

『用意したシャドウが壊滅……!? こうなったら……!』

「残り四体! 下手すりゃオレサマ要らねーナ! クソが!」

「そんな事ないよ! まだあの女を……」

『動くな! この女がどうなってもいいの!?』

「!!」

 

 セーラー女に視線を向けたその瞬間、飛び込んできた光景に思わず手を止める。

 そこには、ポールの周囲を浮遊する二体のドローン型シャドウが、その銃口をアリスさんに向ける姿があった。

 

『絶対に動くなよ! 動いたら……この女、殺すから』

「っ、リカ……!」

「今は動くナ。……機を見誤るなよ、分かったナ」

『さあ、大人しくするんだな!』

 

 動きを止めて抵抗しない意志を示すと、残っていた警備員のシャドウが僕たちを押さえつける。

 その姿を見て、セーラー女がこれ以上ないほど嫌な笑みを浮かべながらポールへ近づき……アリスさんの顔面を一切の容赦なく殴りつけた。

 

「っ!! この……!!」

「耐えろ。お前さんの行動で、誰が死ぬかをよく考えろヨ」

「っ、クソっ……!!」

 

 僕の行動を危険視したのか、警備員シャドウが僕を押さえつける力がより強くなる。

 せめてもの抵抗でアリスさんをいたぶる女を睨みつけるが、そんな事で状況が変わるはずもなく。

 

『全くさあっ! 根暗で惨めでゴミみたいな豚がっ! ここまで面倒になるだなんてっ! 思っても見なかったよっ!!』

「ゔぁっ、やめっ……!」

『やめねーよカス!! お前には……地獄を見てもらうんだからなぁ!!』

 

 セーラー女が最悪な笑みを浮かべながら、アリスさんの胸に手を当てる。

 すると再びあの嫌な声が、アリスさんを超えて僕の頭にも入り込んでくる。

 

柊アリス? ああ、あの有名人気取りだった奴? まだ店なんてやってんだ。

たまたま見かけたんですけどー、必死こいてダッサイ服作ってました! やっぱりセンスが終わってるんですねー!

あのクソアバズレが! どうせモデルも枕でやったんだろ? 業界追放されていい気味だよ!!

 

「ひっ……! あぁぁぁぁあっ!!」

『きゃはははははは! もっとだ! もっとトラウマを思い出せ!!』

 

 最初の戦いで聞かされたトラウマも酷かったが、今回の声はそれ以上の悪意が込められている。

 嫉妬、羨望、妬み……心の内側でドロドロと煮えたぎる聞くに絶えないほどの悪意、それが全てアリスさんの元に向けられている。

 

人の光になるんだってよ! 洗脳しといてよく言うぜ!

店に落書きしてやった! これぞ世直しってか? ぎゃははは!!

ニュースでやってたから悪人に決まってる! 俺たちの裁きで報いを受けろ!

 

「何が裁きだ……! こんなの、ただ正義に酔ってるだけだろ……!!」

 

 頭に響いてくる声の持ち主は、アリスさんが犯した罪の被害者ですらない赤の他人だ。

 悪人と呼ばれる人間がなぜ罪を犯したのか、そんな事情も知らずに一方的に裁こうとする“無責任な大衆の正義”。

 そして、アリスさんは自分が悪人だという自覚があるから、そんな状況を受け入れ……最悪の悪循環が完成している。

 無責任な正義と悪人故の罰を受け入れる気持ちが合わさり、際限無しに罪の意識とトラウマだけが膨らみ続ける、終わりのない悪循環だ。

 

「私が悪いんだ……! 私が、皆を裏切ったから……!!」

『そうだよ。お前は救われちゃいけないの。永遠に……この世界で罰を受けなさい』

「ふざけるな! アリスさんを放せ……!!」

『きゃはっ! 強がっちゃってー! そんな君に、朗報だよー! ……この女を置いていくなら、君のことは外に出してあげる』

「……は?」

 

 その提案に、一瞬頭が真っ白になる。

 アリスさんを置いていけば、僕は……元の世界に、戻れるのか?

 

「おい、ピエロ! まともに聞くナ! あんなの嘘に決まってんだろ!!」

『嘘じゃないよ。今の私は気分がいいからね! 君って可愛いしー、殺すのも勿体ないもん!』

「そんなの、聞くわけ……!」

「影山さん、もういいよ。私を差し出して、リカちゃんと逃げて」

「っ、アリスさん!? 何言ってるんですか!!」

 

 全てを投げ出すような言葉に思わず叫んでしまうが、それでもアリスさんの表情はピクリとも変わらない。

 そこには、かつて悪人だったとは思えないほど悲しげな表情をした人間が、全てを諦めてそこに立っていた。

 

「アリスさん……! それで、いいんですか?」

「うん。……もう、疲れちゃった。私が居なくなれば、きっと家族への嫌がらせも無くなると思うし。もういいかなって」

「っ……!!」

 

 その言葉に、改めてアリスさんが受けた所業のおぞましさを痛感する。

 悪人の家族というだけで、無責任な正義はその矛先を他人に向ける。

 それはもはや正義ですらない、普段晴らせないストレスや鬱憤を晴らすための、ただ身勝手なだけの悪質行為だ。

 

「影山さんにも、家族がいるでしょ? 私なんかのために、家族を悲しませちゃダメだよ」

「僕の、家族……」

 

 頭に電流が流れるかのように、幼い僕を引き取ってくれた里親と、僕を慕ってくれる義妹の顔が浮かび上がる。

 中卒で就職しようと思っていた僕を諭してくれた義父、僕が高校に通うお金を稼ぐために看護婦としての仕事量を増やしてくれた義母、そして……

 

「あ……れ?」

 

 また、デジャブのような感じがする。

 確かあの時も、こんな風に義妹(いもうと)を思い……

 

助けて! お……ちゃん、あ……

諦めろ。おま……の……は、EMMAさ……の生贄……

EMMA様……復か……

キーワードが入力されました。ジェイルの再構築を

こ れ 以 上 は 駄 目

 

「っ!! ゔっ、ゔぁあああっ!!」

『は? 何……はぁ!?』

 

 強烈な思考が脳を満たすと同時に、瞬時に情報がシャットダウンされ、今見えたはずの記憶が全て脳から奪い去られる。

 混乱、困惑、一瞬で満ちて消えた記憶に脳がぐちゃぐちゃになり……あの女を目に捉えた瞬間、それは起こった。

 

「えっ? あっ……」

『何でいきなり目の前……あぎっ!?』

 

 体が一瞬で移動する感覚と共に、目の前にはセーラー女の姿があった。

 有り得ない状況に脳が混乱する中でも、僕の体はやるべき事を理解し反射的に動いており……ドローン型のシャドウとセーラー女の首を斬り落とし、アリスさんを縛る鎖を切断する。

 

『っ、このクソピエロがぁぁぁぁ!! 今度こそ八つ裂きにぃっ!?』

「よくやったピエロ! 認知の応用かは知らねえが、いい加減こいつぶっ潰すぞ!!」

 

 再び黒い巨人へ変身するセーラー女に、どこからともなく飛んできたチェーンが巻き付く。

 見ればいつの間にか警備員シャドウを倒していたリカが、鉤爪を伸ばして黒い巨人を拘束していた。

 

「影山、さん……」

「アリスさんは待っていてください。直ぐにあいつを倒しますから」

「っ、何で……!? 何で、私を助けようとするの……!?」

「……アリスさん、あなたは確かに罪を犯しました。紛れもない、悪人です」

「なら……!」

「“人の光になる”。それが、あなたの夢なんですよね」

「えっ?」

 

 僕はあえて返事を聞かず、黒い巨人に向かって引き金を引いた。

 そして僕は、先程の瞬間移動を今度は意識して行い……瞬時に移動した僕の斬撃と銃撃が同時に命中し、攻撃した時に聞こえてくる(トラウマ)が再び響き渡る。

 

人を洗脳するなんて許せない! あんな店、とっとと潰しなさい!

一刻も早く死んで詫びろ! お前にやられた人々もそれを望んでるんだ!

被害者の怒りを代弁してやる! 逃げるんじゃねえよ、ハンザイシャが!

 

 アリスさんが両手で耳を抑えるが、再び瞬間移動した僕がその手を耳から離させる。

 驚愕と困惑の入り交じった顔をするアリスさんに、僕は大声で問いかける。

 

「アリスさん! 今の気持ちを叫んでください!」

「えっ!? 何で、そんな事……」

「いいから! 今の気持ちは!!」

 

 今のアリスさんに必要なことは、自分の気持ちを理解することだ。

 罪悪感に塗りつぶされた、心の底にある本音を吐き出すように、僕は今一度問いかける。

 

「罪の意識とかどうでもいい! 今の本音を教えてください!!」

「っ、私は……嫌だよ! もう、こんな悪口なんて聞きたくない! 毎日毎日、うんざりだよ!!」

「そうです! それでいいんです!!」

 

 罰を受け入れる気持ちは立派だが、それにつけ込む悪意を許してはいけない。

 多少荒療治になってしまったが、ようやく聞こえたアリスさんの本音に答えるべく、僕は全力で声を上げる。

 

「あなたは凄い人です! これだけのトラウマを負って、これだけの人間に苦しめられて! 自分の罪を後悔して、過剰な罰を受け入れて! ……それでも、夢を忘れなかった!!」

「……!」

「その努力は否定されていいものじゃない! 少なくともあなたは! 無責任な正義の輩に傷つけられていい人じゃない!!」

『黙れぇっ!! その豚は、永遠にこの世界で苦しむんだよぉっ!!』

 

 チェーンを振りほどこうと足掻く黒い巨人を尻目に、だんだんとアリスさんの表情が変わっていくのが見て取れる。

 それを見た僕は、最後のひと押しとばかりに、次の言葉を吐き出した。

 

「どれだけ闇が広がっても! どれだけ暗い世界を迷っても! あなたが努力を続ける限り、あなたを見る人は必ずいる! あなたを照らす光は必ずある! ―――そして、そんな努力するアリスさんを! 僕は絶対に見捨てない!!」

『うるさい!! さっさと死ねえぇぇぇぇ!!』

「っ、あぶねぇっ! 避けろっ!!」

 

 黒い巨人がついにチェーンを振りほどき、僕に向かって斧を振り下ろす。

 まさに、僕の頭へと斧が振り下ろされるその瞬間……いつの間にか横に立っていたアリスさんが、その刃を素手で受け止めていた。

 

『んなっ!? はぁっ!?』

「マジかヨ……」

「……??」

 

 信じられない光景に困惑する僕らを尻目に、アリスさんが斧をへし折ってこちらに振り向く。

 すっかりと何かを決意したようなその表情に、僕も改めてアリスさんに向き直る。

 

「私ね、自分が怖いの。また復讐を言い訳に、快楽のために人を傷つけるようにならないかって。……影山さんは、そんな時でも私を見捨てないの?」

「その時は、僕が間違ってるって教えます! だから、遠慮なんてしなくていいんです!」

 

 その言葉に、意表をつかれたような表情が浮かび、再びアリスさんの口が動く。

 

「……私は怒っていいの? 私を傷つける赤の他人を、許さなくても大丈夫なの?」

「はい! 特に、目の前のこいつは絶対許さないで大丈夫です!」

「そっか……うん、分かった! 私は、こいつを許さない!!」

 

 眩しいぐらいの笑顔を僕に向けた後に、その口元が狐に歪む。

 まるで光が灯るように、アリスさんの瞳が金色に輝き、体からぶわりと風が吹き始める。

 

「マジかヨ……こりゃ、本当に……!」

『クソっ! 豚が調子に……ひっ!?』

「さっきは良くも、私のことを殴ってくれたよね」

 

 激情を表すような怒りと笑いの入り交じった顔に、思わず僕も身震いする。

 それは、新たなる目覚めの証。

 

「ねえ……私は今から! 自分のために怒るよっ!!」

 

 黒い巨人すら恐れ慄くほどに、魂を震わすほどの叫びが響く。

 そこには、さっきまでの諦めとは程遠い―――僕と同じ、反逆の意思を持つ人間が立っていた。




 悪人の斧はへし折るもの、古事記にも書かれてる常識ですわ。
 という訳で、あらかたスキル出し終えたのでニジュウメンソウのスペックどうぞ。

ニジュウメンソウ
アルカナ:道化師
耐性/物理・銃撃
弱点/祝福・呪怨
1 ブレイブザッパー
2 空間殺法
3 ガルダイン
4 マハガルダイン
5 闇夜の閃光
6 超絶技巧
7 疾風ブースタ
8 疾風ハイブースタ

固有アクション:軌跡なき遊撃
前方の敵に瞬間移動し、クリティカル率の高い攻撃を行う。
マスターアーツ:無形の追撃
瞬間移動による攻撃後に追撃ができる。

 物理・銃撃耐性は強いが、素の耐久が低すぎて結局トントンな感じのキャラ。ついでに即死耐性もない。
 ただし速はめちゃくちゃ高いので死ぬ気で回避しよう! 出来なかったら死だ! 頑張れ!!

 割と話の進みが早足になってる気はするけど、あんまり長いと何時までも終わらないので、一章だいたい六話ぐらいで終わらせたいと思ってます。
 引き続き、高評価・感想・お気に入り登録よろしくお願いします。
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