その夜
何時もの様に裏手の土手の上でバットを振りに行こうとすると巻物を持った沢村がさっきと同じ様な状態で此方に向かって来た
「どうした 沢村」
「どうしたのじゃないっすよ蒼野先輩」
沢村が手に持った巻物を握りしめ
「あのやろう!!!何が「1年間やり続けたら認めてやる」だ!!1年後には卒業してんじゃねぇか!!」
「そんなに俺が嫌いか!!!」
「あのやろう!!!」
「はぁ 沢村ちょっと付き合えよ」
「ん??」
突然の申し入れに沢村は不思議に思ったが取り敢えず着いて行くことにした
土手に一緒に向かっている最中に沢村に喋り掛けた
「なぁ 沢村エースってどんな存在だと思う?」
「エースっすか?」
「うん エース」
沢村は少し考えると
「分からないです!」
「少し考えろって(笑)」
「えっでも何なんすか 突然」
「エースになりたいんだろ だったら少し考える事が大事」
「成る程。」
沢村は再び考え始めた。
「1番強い投手ですかね」
「おお 良い所付いてるね」
「じゃその投手になるには何が必要?」
「ぱっと思い浮かぶの言ってみ」
「圧倒的なスピード!!!七色に輝く変化球!!」
「糸を通す様な制球力の高さとか」
「それで後は」
「後は 」
「ハッ!!絶体絶命のピンチを救う投手力とか」
「他は」
「他は う〜ん!!! 他は!!!」
沢村が考えていると蒼野が声を掛ける
「沢村 この階段だから気を付けろ じゃ質問を変えよう」
「うっす! 何何ですか 一体」
「夏の大会で背番号を1を背負いました。夏の大会で9回の裏で1-0で勝っていましたがツーアウト満塁の絶体絶命のピンチを迎えました。此処で迎え撃つは今日は当たっている相手チームの不動の4番バッターです。さぁ貴方は何を投げる?」
沢村は笑顔で尚且つ大きな声で答えた
「それはモチロン渾身の球をど真ん中に投げ込むっすよ!!!つうかそれしかねぇしそれで負けてもしょうがない わっはっは!!!!!!」
沢村の自信満々な回答に思わず顔に手を付けるが
蒼野はある方向を指を指す
「お前 あれを見てもそう言えるか?」
と蒼野が言うと指を指している方向を見ると
そこにはこんな夜遅くまでユニフォームに着替えてバットを振っている2.3年生姿があった
沢村はその光景に驚愕した。
「あれは」
「今年の春に選ばれなかった2.3年生。紅白戦に出ていたメンバーだな」
「中学の頃じゃエースで4番を張っていた選手で中には強豪シニアや強豪校の中学出身者や一杯いるぞ。」
「1年の夏に思いを馳せて青道高校にやって来た「青道高校で活躍して甲子園に出てやるぞ」としかし1年の春から此れ迄一度も一軍に入れなかったその人が殆だ。」
「血の滲むような努力をしてもどれだけ頑張っても選ばれない青道高校のような強豪校ではチャンスがある事すら珍しい。」
野球の強豪は全国から中学時代に活躍しスカウトされてその高校にやって来るのだが全国から集まった選手達と厳しい生存競争を勝ち抜いてやっと背番号を貰えるが
それは僅かに20人であり
甲子園に出場すると
さらに二人減って18人と
青道高校の野球部のメンバーは総勢95人と
95分の20人と本当に限られた椅子を目指してお互いに切磋琢磨していくのだが
この間にやった紅白戦で入学当初の1年生の時に参加したのを最後に一度も試合に出れずいる選手は
0では無かった。
だから試合に出れるメンバーはそういったチャンスを与えられ無いメンバーの分も背負って戦う強い覚悟と責任を持って戦う。
それ程迄に背番号を貰うというのは重く
誰よりもそれを数多く背負う背番号1も
それは当然のことであった。
「お前地元は何処だ」
「っつ ああ!!長野です。」
「俺はその隣の新潟や。」
「遠い奴だと関西とか九州もいたな。」
「お前と同じ地元を離れて家の様な強豪校で甲子園に出て活躍する為に来たら人達だ」
「降谷暁もわざわざ北海道から来ているよ。」
「っつ 降谷」
沢村の目下ライバルの降谷も同じ様に地元を離れて青道高校に来ていた
「それでも青道高校の一軍登録メンバー20名それに対して青道高校の1年の部員を合わせると95名。凡そ75名が外される。」
「それでも諦めずに最後の最後まで抗ってんだよ。1軍登録メンバー20名に入る為に」
「それでも結局一度も選ばれずに引退する奴が殆だ。」
「地元じゃ4番でしかもエースだったスーパースターがだぞ。」
「地元を離れて青道高校に送り出してくれた仲間の期待を裏切って。」
「ハッ!!」
(栄ちゃん!!!)
(青道高校に誘われたんでしょ!!! 此れは歴史的快挙だよ)
(でもさ此れあの青道高校は栄ちゃんの力が認めてくれたって事だよね!)
(栄純!!)
(思い上がるな!!!!(えっそこ!!!!))
(あんたに選択し無いでしょ)
(お祖父さんが言ってた東京で出逢った野球に心を揺さぶられたんだろって)
(もし駄目戻ってくればいいじゃねぇかお前が駄目で戻って来たとしても俺達が笑わせわしない)
沢村は青道高校に送り出してくた時の地元の家族や仲間の事を思い出していた。
沢村は再び自身持ってど真ん中に最高のボールを投げ込むと自身持って言えなかった
その仲間の事を裏切ると思うと負けてもしょうがないとは言えなかった
それと同時に今日クリスに言われた事を思い出していた
「投手ってのは出られない選手も含めてすべてを背負ってマウンドに立たなくては行けないんだ」
「野球醍醐味?そんなの唯の自己満足だろ」
「俺達が捕手ただのマトか?」
「お前にだけは俺達の3年間を託したく無い」
沢村にクリスの言っていた事が重く伸し掛かって来た
沢村は自分が恥ずかしいと思った
唯エースになりたい
そう思っているだけで何も知ろうとしなかった
何も理解しようとしなかった
その重みを理解しようとすらしなかった
沢村は自分自身を情けなく思って拳を力強くに握りしめていた
「沢村 クリス先輩の巻物、分かるか意味」
「怪我を防止する体作りのトレーニングっすよね。増子先輩と倉持先輩が言ってたっす。」
「じゃ「もう1つの意味」は分かるか」
「えっ」
「此れは自分で考えろ」
「沢村明日の練習終わりもちょっと付き合えよ」
翌日 春季東京都大会決勝
試合前に会場に向かう為のバスに乗り込む少し前
コンコン
「入れ!!」
「失礼します。 片岡監督」
「どうした 蒼野」
「監督 実は.. 」
青道高校対帝東高校との名門同士の試合は青道高校が強力打線で猛攻を仕掛けるも後一歩足りず
準決勝とは逆に7対8で破れた
その試合で
カキーン!!!
相手投手のスライダーを捉え
ボールは
レフトスタンド
上段に叩き込まれた
打ったバッターは右腕を高々と上に掲げながらダイヤモンドを悠々と回った
『入っっったぁぁぁぁぁ〜〜!!!逆転満塁ホームラァァァ〜〜〜〜ンンンンンン!!!蒼野此れで3打席連続のホ〜〜ム〜〜〜ラ〜〜〜ン!!!
『蒼野蒼一!!!!此れで大会最多12本目のそして大会5本目の満塁ホームラン!!」
『青道の誇る怪童がまたしてもチームを救いました!!』
「蒼野……あいつ」
「すっげぇぇぇー」
「…………(あんぐり)」
青道ベンチは蒼野の余りの凄さに言葉が出なかった。
今日の試合ヒットは打っても最後の最後まで仕留めきれなかった相手の投手陣をたった1人で3打数3安打3本塁打6打点の大活躍!!
その余りの活躍っぷりにベンチは言葉が出なかった。
蒼野の活躍に余り驚いていなかったのは主将の結城と弟の蒼士そして監督の片岡のみであった
結局その試合は投手陣が炎上し逆転されてしまうのだが蒼野はその試合で帝東の次期エースからのフェンスオーバーのタイムリーツーベースヒットそしてチーム全打点含む5打数5安打3本塁打7打点の大活躍であった
しかし本人は全く納得していなかった。
青道の主砲にし主将の結城哲也が5打数1安打4四死球という明らかに蒼野を舐めている様な帝東側の策略に殆ど怒りの任せで打っていた事に対して
自分自身もそして監督の片岡や結城も全く納得していなかった
その事に片岡から試合後叱責させられているのを見て結城を以外の部員は戦慄していた
しかし
それは
蒼野の限界はポテンシャルはまだこんなものでない事を見抜いての事だった
その試合が終わった後のミーティング終わりに監督に頼み込んで蒼野は迎えに来た母親の車に乗って沢村を連れてある場所に向かっていた
「蒼野先輩何処行くんすか俺は練習したいんすけど」
「大丈夫だ。 ちゃんと外出届けだしたよ。」
「いやだから そんなんじゃなくて何処行くんすか」
「国立トレーニングセンター」
「はぁ!!!」
「行けば分かるよ」
と言ってると目的の場所である国立トレーニングセンターに着いた
そこに入ると中で音がしてきた。
沢村を連れて音がしてきた部屋を見てみると
そこには
「えっ!!!」
そこには
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ」
「アセルナ、ツギハコノメニューダ、ユウ」
「…………コクコク」
「ユウ、マズハカラダヲナオシテ」
「ケンコウナカラダヲツクリアゲルコトニセンネンスルンダ」
体格の良い外国人とその外国人主導の元汗だくになりながら懸命に右腕でダンベルを上げリハビリを行っているクリス先輩がいた
その様子に沢村は驚愕していた。
「これって」
「クリス先輩は元々御幸が一度も勝てなかった同じポジションで唯一尊敬していた関東No.1キャッチャーだったんだ。」
滝川・クリス・優
元プロ野球選手で日本で活躍した父親を持つサラブレッドであり父親譲りの体格の良さ、投手陣の力をギリギリまで引き出せるリードと強肩そしてバッティングの良さから関東No.1捕手と呼ばれていた。
「今リハビリを一緒に行っている元プロ野球選手の父を持ち将来が期待されていたんだけどそれがプレッシャーになり怪我を隠しながらプレーしていたんだけど」
「2年の夏の直前に怪我が発覚して全治1年の大怪我を負ったのよ」
するとそこにカッ!カッ!カッ!カッ!とビールで廊下を歩きながら此方に向かって来る者がいた。副部長の高島だ
「高島先生!!」
「全く、蒼野君が今日の試合で片岡監督に今日の試合でホームラン3本を打ちますから練習が終わったら外出許可を下さいって頭を下げるから何か可笑しいと思ったのよ」
「えっ蒼野先輩...!!!」
「もしかして俺の為に!」
沢村が蒼野に視線を向けようとするが
「話し続けるぞ。」
「肩甲下筋断裂及び上腕回内筋断裂」
「青道高校の様な強豪校では事実上の引退勧告。監督にマネージャー転向を頭を下げてお願いされてたのよ」
「それでも諦めなかった。僅かな可能性がある限りプレーヤーとして道を選んだんだの。」
「それに沢村クリス先輩はお前の事を誰よりも認めていたんだよ。」
「えっ!!」
「昨日クリス先輩が帰る時休憩時間が被って少し喋ったんだよ。」
「「馬鹿だが磨けば光る。ダイヤの原石」だって」
「それに」
「その巻物」
「今なら意味が分かるだろ」
「っつ!!」
沢村は拳を強く握りしめ涙を流していた
「言動とかで勘違いされがちだけど」
「クリス先輩は誰よりもパートナーの事を考えているんだ。その人の事を思って練習メニューを考えて作って。自分のわざわざリハビリの時間を削って。」
(クリス先輩は多分もう1つの意味が有るんだろな)
(それは多分沢村の事を考えて)
すると沢村は部屋に入って行った。
「ちょっ 沢村君!!!!」
「何でこんな1年にいいように言われて何で何も言い返さねぇんだ!!」
「くそ」
「これじゃ唯の大バカヤローじゃねぇか!!!!!」
「3年生に積み上げて来たモノに比べたら俺なんてまだまだかも知んねぇっすけど」
すると沢村は勢いよく頭を床下に叩きつけ土下座をするように頭を下げた
「こんなバカな1年と一緒に練習なんて時間の無駄かもしれません」
「けど無理を承知でお願いします。」
栄純は頭を上げると勢いよく床下に叩き付けた反動か額から血を流していた
がクリスの目をはっきりと目を見て答えた
「俺に野球を教えて下さい。」