君の知らない僕らの出逢い   作:唐笠

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お久しぶりの方も、初めての方もこんばんは。
にじふぁんから移転しました唐笠です。

明瑞LOVEの精神で、今回もいきますよ!


雪と出逢いと知らないあの子

 

それは、過去の思い出。

いつまでも色褪せることなく、同時に僕に一抹の後悔を抱かせるもの…

 

もし、あの時の僕にもう少し勇気があれば…

もし、臆病にすらなれないバカだったなら……

 

今の僕はこんなに苦しまずにいられただろう。

どのような答えが出ていようとも、答えを求めることも、聞く勇気もない今よりはマシであろうと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、僕が小学3年生の冬も終わりに近付いたある日の出来事。

 

その日は春がすぐ側に迫っているというのに、雪が降っていた。

 

白く、儚い、それは空から舞い落ちるとすぐに消えてしまう。

だけれど、その消えてしまった雪が冷やした地面には次第に雪が積もっていった。

 

一つ一つ積み重ねるように、雪は着実に積もっていき、いつしか校庭を埋め尽くしてしまったのだ。

 

辺り一面、見渡す限り白銀の世界…

汚れを知らぬような真っ白な雪が全てを埋め尽くす。

 

ここまでの大雪は当時の僕にとって初めてであり、遅らせばせながらの今年の初雪ということで心が浮き立ったのものだ。

 

「みんな、遊びに行こうよ!」

 

今すぐにでもあの雪で遊びたい!

そう考えた僕はクラスメイト全員を誘って校庭へと赴いた。

 

雪合戦、雪だるま作り、かまくら作りと思い付く限りの方法で遊び、存分に雪を満喫する。

しかし、途端にさっきまでなんともなかった身体が肌寒く感じてきたのだ。

 

「ハクシュ!」

 

くしゃみの拍子にでた鼻水が即座に冷えてくる。

それは、肌寒さに拍車をかけるようにして僕を苦しめた。

 

「あっ、アキくんの鼻水凍ってるよ!」

 

「ホントだ!おっかしぃ!」

 

一人の男子の声を合図に、みんなが僕のところに集まってくる。

みんなが口々に何かを言っているが、段々と意識が朦朧としてきた僕はなにがなんだか判らなかった…

 

それに、さっきまで肌寒く感じていたのに今はやけに身体がポカポカと暖かいや……

そこまで考えたところで、僕の身体に冷たい何かに包まれた。

朦朧とする意識を傾けると、どうやらそれは雪であるようだ。

 

でも……なんで…雪が………

まぁ…………きもち……いいか………ら………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

意識が戻った時には、僕はベッドに横たわっていた。

たしか、外で遊んでいたはずなのになんでだろう…?

 

そんな疑問と共に視線をずらせば、未だに外には雪が降っていた。

あくまで憶測だが、日は跨いでいないようである。

 

まぁ、この際、そんなことはどうでもいいので早くあの雪で遊びたい。

もう一度、あの真っ白な雪と戯れたい!

 

幼い僕の頭には、自身の状況を理解しておらず、保健室のベッドから跳ね起きようとした。

 

「あれ…?」

 

しかし、身体が思うように動かないのだ…

それに覚醒したばかりの意識がまた朦朧としてきた……

 

いったい、僕はどうしてしまったのだろう…?

それに、みんなはどこに行っちゃったんだろう……

 

思い通りにならない身体

誰も傍にいない孤独

 

それは、今までの僕が味わったことのない感覚だった。

たぶん、その時の僕はたしかに『恐怖』を感じていたのだろう…

その二つは、手を伸ばせばいつも届く場所にあったからこそ感じる、失うことへの『恐怖』

 

もう、僕は動けないのかもしれない。

そうなれば、みんな僕とは遊んでくれないだろう…

 

出口が見えない気がした…

解決策などないように思えた……

 

気づけば、自然と頬に涙が伝っている。

それは土と雪で汚れた僕の顔に一筋の跡を残す…

 

カタッ

 

そんな絶望の静寂を一つの物音が打ち破った。

そちらに視線を移せば、見知らぬ女の子が部屋の入口でこちらを心配そうに見ているではないか。

 

「大丈夫…?」

 

「……………………………」

 

鈴を鳴らすように澄み渡る綺麗な声。

それは僕を絶望の静寂から救ってくれるように思えた。

 

しかし、なぜだか僕は言葉を返せなかったのだ…

いつもの僕なら空元気でも笑ってみせたであろうに、なにも発することができなかった……

 

のどに言葉がつまり、出ていかないのだ…

もしかしたら、僕は軽い混乱に陥っていたのかもしれない。

何にかと聞かれれば、その答えは8年経った今でもわからない…

だけれども、その時の僕は『普通』ではなかったのだろう……

 

「先生、いないんだね…」

 

先生というのは保健室の先生のことだろう。

健康体そのものだった僕は保健室の先生と面識はないが、この子の言い方からしていないことも多々あるようである。

 

ガチャガチャ

 

僕がそんなことを定まらない意識で考えていると、その子はなにやら湿布や体温計の入った棚を弄り始めた。

そして、ほとんど迷う様子もなく、そこから熱冷まシートにタオル、それと小さな桶を取り出した。

 

ここまで場所を知っているということは、おそらくこの子は保健室の常連なのだろう。

そんなちょっと失礼なことを考えてる間にも、その子は手際よく作業を続けている。

 

「目、瞑っててね」

 

桶にはった水で塗らしたタオルを絞り、その子は汚れた僕の顔を拭いてくれた。

絞りきれていないタオルに残った水が首を伝い、服の中にまで染み込んでくる。

 

いつもなら、ひどく不快なはずなそれは僕にとって言いようもない安堵を与えてくれた。

汚れた僕の顔を濡れたタオルが撫でる度に訪れる安堵。

 

決して上手ではない

むしろ、下手な拭き方とさえ言えるだろう…

 

だけど、そこには確かな温かさがあった。

僕が失いたくないと思ったものがあった気がしたのだ…

 

「ちょっと、待っててね」

 

顔を拭き終わったその子は、そう言うと僕から離れて熱冷まシートを置いた机の方へと向かっていく。

なんとなく名残惜しくなった僕は目でその姿をおった。

 

その子の奥にある窓からは、未だに外には雪が降っているのが見える。

朦朧とする意識はその景色に霞をかけていった…

 

霞がかる雪景色の中に佇む見知らぬ女の子。

その子は僕を救ってくれた…

 

まるでおとぎ話なような情景。

 

たぶん、その子からしてみればなんでもない出来事。

それは僕にとっての大切な『出逢い』だった。

 

「ありが…と……」

 

それだけをやっと言うと、僕の意識は急激に遠のいていった。

まぶたの裏に残る、その子の姿。

そして微かに聞こえる誰かの声…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………き……ん

あ………くん!アキくんってば!」

 

僕を呼ぶ誰かの声。

さっきの子のものとは違うそれは、僕の意識を再び覚醒させていく。

 

「んく………」

 

僕は上半身を起こすと、声のする方へと目を向ける。

そこには、心配そうにこちらを見るみんなと先生がいた。

 

僕はまだ………見捨てられてなかったんだ……

 

そう実感した途端に涙が流れて出してくる。

 

「アキくんどうしたの!?」

 

「もしかして、どこか痛むの?」

 

泣いている僕を心配してくれているのだろう…

だけど、みんなのその優しさが更に僕に涙を流させた……

 

こんなにも優しいみんなに囲まれている。

僕はその幸せを噛み締めるように一人一人の顔を見渡していく。

 

元気に笑う人、いまだに心配そうにしている人…

だけど、そこにあの子はいなかった……

 

「ねぇ、みんな、僕以外に一人いなかった?」

 

「アキくん以外に?」

 

「いなかったと思うけどなぁ…」

 

「私は見てないよ」

 

どうやら、みんながくる前にどこかへ行ってしまったのだろう。

でも、その子はいったいなにをしに保健室に来たのだろう…?

 

「アキくん、その女の子の名前わかる?」

 

「名前……」

 

そう言えば僕はあの子の名前を知らない。

僕を助けてくれたあの子の名前を……

 

記憶を遡っても名前を聞いた覚えがない。

あるのは雪景色の中に佇むあの子の姿だけ……

 

でも、いつかは会ってお礼を言わなくちゃならない。

学年も組みもわからないけど、いつの日か……

 

その日のために、いつまでも『あの子』じゃ失礼な気がするから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユキちゃん……かな」

 

僕は君にそう名付けた




さて、後編はようやく10.5巻に入ります。
ただし、あくまで都合のよい捏造だということをお忘れなく←オイ

では、次回もお付き合いいただけれれば幸いです
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