君の知らない僕らの出逢い   作:唐笠

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遅らせばせながら、更新です。
感想をくださいました、ヲタク大王さん、ありがとうございました!


今へと続く僕らの始まり

あれから数日、僕は外で遊ぶ時や教室を移動する時に『ユキちゃん』がいないか気にかけていた。

しかし、校庭にも教室にも『ユキちゃん』はいないのだ…

 

誰か人に訪ねようものにも、なんと聞いたらいいかわからない…

解っているのは、僕がつけた『ユキちゃん』という名前と虚ろな記憶の中にいるその姿だけ……

 

これでは僕以外の人に探してもらおうにも無理というものだ。

そしてなにより、なぜだか『ユキちゃん』のことを他の人に話すのを恥ずかしく感じた。

 

それは、それまでの僕が感じたことのない感情。

その名前を今の僕は知っている。

きっと、いつまでも消えることなく残り続ける、それは叶わない願い…

だけど、僕にとってはかけがえのない感情だったんだ……

 

まぁ、話は戻して結論からいうと僕はユキちゃんを見つけることができなかった。

そんな僕らが再会したのは四年生に上がるときのクラス変えの時…

 

新しいクラスメイトと早速じゃれあっていたところに息を切らせ、登校してきた生徒。

小柄で華奢な体躯にふわりと伸びる桜色の髪。

そんな子供ながらにも助けてあげたいと思うような容姿の子が息を切らせて登校してきたのだから、みんなの注意は当然ながらそちらへと向いた。

 

知り合いなのか、その子の周りを囲む数人の生徒や、なにやらヒソヒソ話を始める生徒と状況がさっきまでとガラッと変わってしまった。

そんな中、取り残された人物が二人…

唖然として動けないでいる僕と、どうしたらいいのか解らないのかオドオドしているユキちゃんである……

 

なんでここにユキちゃんが…?

同じ学年なら少し探せば見つかったはずなのに……

 

それは当時の僕にはわからない問い。

だが、病気がちだったのが関係してるのかもしれないと7年経った今さらながらその考えに至る。

 

なにもアクションの起こせない僕と動けないでいるユキちゃん。

事態が進展するはずがなかった…

そして、それは先生が教室に入ってくるまで続いてしまい、僕は大事な初手を逃してしまうこととなった……

 

 

 

 

しかし、事態は思わぬ好転をみせることとなる。

なんの悪戯か僕とユキちゃんは隣の席になったのだ。

 

よし、今度こそは!

そう意気込んで話かけようとしたところで――――――

 

「今から学級会を始めます」

 

先生が係りや委員会を決める学級会を開始してしまった…

 

「学級委員長やりたい人いますか?」

 

「はーい」

 

「図書委員やりたい人いますか?」

 

「はーい」

 

トントン拍子といった具合に進んでいく学級会。

僕は去年と同じ体育係でもやろうかと考えていた時、調子よく決まっていた委員会決めが停滞した。

 

「飼育委員をやりたい方はいませんか?」

 

さっきまでと違って中々決まらないのか少し困った様子で尋ねる先生。

飼育委員は放課後や昼休みの時間が制限されるため、やりたいと思う人は少ないのであろう。

 

「飼育委員には姫路瑞希さんがいいと思いまーす」

 

そんな中、突如として上がる声。

僕の隣のユキちゃんがビクッとするのが横目に見えた。

 

余談だが、ユキちゃんの名前が『姫路瑞希』だというのは学級会前の自己紹介の時に知っている。

だけど、僕の中では変わらずに『ユキちゃん』であったのだ…

 

「私も姫路瑞希さんがいいと思います」

 

「ちょうどいいよね、地味な係だしさ」

 

「"地味好き"さんにはピッタリだもんねー」

 

捲し立てるように数人がユキちゃんに飼育委員を押し付けてくる。

最後の人の言葉が気になったが、おそらくは『ひめ"じみずき"』と言ったのを僕が聞き間違えただけだろう。

 

たしかに、飼育委員はほとんどの人がやりたい仕事ではないだろう。

しかし、それが他人に押し付けていいはずがない。

ましてや、複数人でやるなんて苛めにも等しいとさえ言えるだろう。

 

たぶん、このままじゃユキちゃんは推しに負けて飼育委員を引き受けてしまう。

飼育委員自体が悪いのではない。

だけど、僕はそのやり方が気にくわなかった。

 

「イヤなの?」

 

「……………うん」

 

しばし間の空いた返答。

それは、飼育委員を拒否することへの罪悪感からくるものなのであろう…

 

「そっか、イヤならちゃんと言わなきゃなね」

 

そんな心中を紛らわそうと僕はできるだけ明るい笑顔を向ける。

それが僕がユキちゃんに向けた初めての笑顔。

 

それを意識して一つのことに気づく。

そっか…

あの時の僕と今の僕は似ても似つかないんだ……

 

そう、保健室で失うことへの絶望に苛まれていた僕は汚れた顔と相まって、普段の僕と同一人物と思う人はいないだろう。

そう実感できる程に、あの時の僕は深い絶望に囚われていたのだ。

だから、そこから救ってくれたユキちゃんの力になりたかった。

 

「瑞希ちゃんでいいんだよね?」

 

確認などとる必要はない。

だけど、その頃の僕には『ユキちゃん』と呼ぶのが悪いことのように感じられ、その名をグッと胸にしまい込んだ。

 

「先生!

瑞希ちゃんはイヤらしいです!」

 

そして、見事なまでの過ちを犯したのだったが、それはまた別の機会に話そうと思う…

 

 

 

 

 

あれから、僕の思慮のなさが暴走してユキちゃんを大いに困らせるはめとなってしまった。

そして、それは幸か不幸か僕とユキちゃんが飼育委員になるきっかけも与えてくれたのだ。

 

「瑞希ちゃんも抱いてみない?」

 

そんな感じで飼育委員となった初日、僕はユキちゃんにウサギを差し出しながら尋ねる。

フワフワしていて丸まっている姿がとても愛らしいウサギ。

だけど、ユキちゃんはそんなウサギを見ながら固まってしまっている。

 

「あっ、もしかして動物が苦手だったりする?」

 

「えっと……その………」

 

反応を見る限り、少なからずとも動物と慣れ親しんでいないことは容易に想像できた。

問題なのは、その程度の問題である。

 

仮に動物全般が嫌いとなってしまえば、僕はユキちゃんにとんでもなく苦痛な仕事を与えてしまったこととなる…

経緯はどうあれ、僕のせいでユキちゃんが飼育委員をやっていることには変わりないのだから……

 

「(好きになって貰うには、自分が相手を好きになるのが一番…)」

 

そんな中、ユキちゃんが小声でそっと呟いたのが聞こえた。

たぶん、本人も気付かない内に出していたであろう無意識の内の言葉。

 

だからこその紛れない本心であると確信できた。

ユキちゃんはウサギたちと仲良くなりたいのだと…

 

「瑞希ちゃん?」

 

「あっ、な、なんでもないです」

 

「そう?」

 

「そ、それより早く掃除を始めないと」

 

そう言いながらユキちゃんはウサギから目をそらしてしまった。

だけどその時、僅かに見せた名残惜しそうな目。

 

ユキちゃんも歩み寄ろうとしているんだ…

なら、僕が下手に手出しするものではない。

 

だって、優しいユキちゃんならきっとウサギ達も受け入れてくれるはずだから……

 

それを自分の中で確認した僕は、なるべくユキちゃんとウサギが触れ合う機会が多くなるよう、少し離れた場所で作業を始めた。

僕は自分の作業を続けながらも時折、ユキちゃんの方を見ながら様子を確認する。

 

徐々に歩み寄ろうとするユキちゃん。

頑張れ。僕は心の中でそう応援しながら、それを見守る。

そして、徐々に縮まっていった距離はついに0となった。

ユキちゃんがウサギを撫で、ウサギもそれに嬉しそうに反応している。

 

今もなお記憶に残っている雪景色の中でのユキちゃんの姿。

そして、雪のように真っ白なウサギたち。

 

その異なる1つの光景は僕に『雪ウサギ』という言葉を連想させた。

当時の僕は雪ウサギを知らなかったけれども、それが自然と連想できるほどに僕の中で印象的であったのだ。

そして、それは僕の中での『ユキちゃん』をより確固なるものにしていった。




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