吾郎の妹ポジになった転生者 作:とくめいです
冒頭知らん人の場面から始まります。
中盤はハルナ視点で。
注意
犯罪や法律に関して筆者はニワカです。ここ間違ってるということもあると思います。なので大きな心で読んでくださると嬉しいです(*´ω`*)
「それじゃあ、あの少年は熱心なファン……というかストーカー予備軍?」
「本人への聞き取りだとな。東京の高校生らしいけど、匿名のリーク情報でここを突き止めて来たそうだ」
アイドル追っかけてこんな地の果てまでご苦労さまなこった。受験生なのにこんなトコで入院して棒に振るとか、そんなに迄して何がしたかったのやら。
「その……入院患者の星野アイだっけ? 会ったのか?」
「それが妊娠してたって話で。直接は聴けなくて、社長ってのが来ててそっちから聴取はしましたよ」
「秘匿捜査になるのも仕方無しか」
芸能事務所から難癖付けられるのも御免被りたい。そもそも、直接は関係してない。
「その、雨宮医師か。担当医だって話だけど、なんで追い掛けたんだよ。ただの不審者なら通報だけで済むだろうに」
「そちらも事情があったようで。彼の住む家がその先にあったそうです。そこには家族がいたそうです。親戚の少女の世話をしていたそうで」
「それは、放置できんか……」
家族の居る身からすると理解できる。不審者が家の近くを彷徨くとか不安だからな。
「同時に滑落した時に乱闘があったかどうかはともかく、落下後に彼が少年に救命活動をしたのは事実ですね。その病院の看護師も確認してますし」
業務上の過失は問えないか。むしろ救命活動したわけだから、故意に加害をする意思は無かったようにも見える。少年の供述は追い掛けて来たから逃げた、俺は悪くないの一点張りだ。
「少年の押収品も問題ですね」
「ああ、コイツな」
保護袋に入れられた大振りなダガーナイフ。普通の高校生が持つにはなかなかにハードルが高い代物だ。
「入手経路は上がってるのか?」
「少年の供述から、情報提供者から受け取ったとの事です。製品自体はネットでも買える廉価品でした」
東京からの情報では、彼の家のPCからの購入履歴は無かった。情報提供者とのログも取ったのだが、海外経由の捨て垢からのモノらしく辿れなかったらしい。徹底してる。
「少年以外の指紋も取れませんでした」
「その、情報提供者の線はどうだ? 接触してたんだろ? 容姿とか特徴は」
「フードを目深に被っててよくは分からなかったそうです。少年自身も似たような格好だったのでお互い気にしてなかったそうです。ただ、背は少し低かったらしいので同年代かそれ以下の可能性もあります。防犯カメラの映像があればよかったんですが、ここはそういうの少ないですから」
少年犯罪が増えている昨今でも異質な感じだ。高校生とそれ以下の少年が、東京からわざわざアイドルのストーキング。常識からは考えられない。
「ともかく聞き取り調査は続行だ。事は未成年が関わる。聞き取りは慎重に、情報流出は厳にすること」
「「はっ」」
ここで警察勤務を続けてかなり経つが、こんな事件は滅多に起きない。ここは基本、長閑な山間部である。捜査が得意なメンツが揃ってる訳でもない。
「まあ、事故って線で決着だろうな」
椅子に座って煙草に火を点け……ようとしてやめた。ここんとこ吸い過ぎた。少し頭の中で整理してみよう。
雨宮医師が少年を害するつもりなら話は別だったが、本人も落ちて死亡している以上聞き取りも出来ない。不審者だからといって我が身を顧みずにもろとも落ちる選択は、守るべき娘を持つ者はしないだろう。過失と言うには少し難しいとは思う。
少年の側から言えば雨宮医師は余計な真似をした背信者で、死んで当然なのかもしれない。彼の所持していた凶器は何物にも変えられない殺意の証拠でもある。だが、雨宮医師に対しての殺意とは証明できない。
弁護士を間に挟んで示談交渉するという話も出ている。事務所の社長と雨宮医師はかなり懇意な間柄らしく、自分とこのアイドルのストーカーが起こした不祥事で彼を死なせた事に責任を感じる……とか言ってたらしいが、要は少年の口止めだろう。滑落事件がただの事故か、ストーカー予備軍の暴走によって起きた事故か。この辺りを突っついて少年の口を塞ごうって魂胆だ。
その辺はこちらはノータッチだ。
こちらは滑落事故に事件性があるかだけで捜査しているわけで、ストーカー被害とかは考慮しない。被害届けすら出てないしな。
それより、個人的には雨宮医師の遺族の方が気にかかる。別の調書によると、まだ小学生らしい少女は東京に親族が居るらしい。だが引き取りは拒否したそうだ。どこぞの会社の社長らしいが心が狭すぎると思う。
そこへ、戻ってきた巡査が報告をしてきた。
「その、雨宮医師の遺族の方で報告が」
「ん?」
……捨てる神あれば拾う神ありとはこの事か。どうも件のアイドル事務所の社長夫妻が養子縁組を希望しているらしい。
「入院中から懇意にしていたらしく……というかそのアイドル自身も気に入ってたようで」
「なんとも泣かせる話だな。身元はきれいなのか?」
碌でもないアイドル事務所なんて幾らでもある。ところが意外な解答があった。どうも、そのアイドルとやらも元は施設育ちの子だったらしい。
「……そりゃあ、ほっとけ無いわな」
あんなチンピラみたいな格好してる割に、中身はどうやら善人らしい。アイドル事業が慈善事業かと言われると疑問を抱くが、そういう人助けというのもあるかもしれない。まあ、全くの善意じゃないだろうけど。
「少女の方も乗り気でした。会ったことない親族より、会って間もない他人のほうが当てになるとか……やるせないッスね」
「まあこっちは文句付けるスジでも無い。児童相談所の人間が出張るだろうし」
里親として研修を受けて通れば問題なくいくはず。先のアイドルの件もあるし、この社長夫妻なら前例もある。
「相続はどうしたんだ?」
「その子は放棄したそうです。元々自分の物でないのに受け取れない、相続税も払えないとのことで」
「ま、そうなるか」
昔はあの辺りの大地主だった雨宮の家もこれで終いか。病院への誘致からケチがついたのかもしれない。
「警部。どちらへ?」
「少年の方に聴き取りに行く」
「はっ 同行します」
「いや、お前は残ってろ。捜査員三人しか居ないんだし。本部空にしちゃ示しつかんだろ」
田舎の捜査本部なんてこんなもんだ。俺は装備を整え、表に出た。
はらりと、花びらがひとひら、通り過ぎた。白木蓮……そろそろ冬も終わるか。
・・( T_T)\(・-・)・・
「元気でね。向こうが嫌になったらいつでも帰ってきなよ」
優しく抱きしめてくれた瀬能さんがそう言った。なんとも嬉しい話だ。こんな私にそこまで言ってくれるとは。
「大丈夫です。ここにいると先生の事ばかり思い出すので」
「……それもそうね」
私にとっては唯一の保護者だったけど、病院にとっても大事な若手のお医者さんだった。
しばらくは産婦人科も一人で回さなければならないし、あれこれと他科のフォローをしていた彼が居ないとかなりキツイらしい。
「若い看護師や事務員なんかも、アイツの事狙ってたの知ってた?」
「それは、まあ……」
先生は人の心にすんなりと入ってくる人だった。だから、そういう対象に見てしまうのも分かる。
「ハルナちゃんが居たお陰でもあるし、居たせいで声も掛けられなかった。やっぱり人気者だったのよ」
私というコブがついてるから、おいそれとモーションを掛けられなかったということか。
「わたしは、邪魔者でしたか」
そうだろうな。
あんな素敵な人だ。懸想する人も多かったに違いない。さりなちゃんも結婚してとか言ってたし、アイさんだってウチに来てからすごく親密になってたし。
「ぺい」
「あう」
ぼんやりと考えてたら、チョップされた。なんでぇ?
「あの人を魅力的に見えてたのは、間違いなくあなたがいたおかげなの」
「……そういうものですか?」
よく分からない。
「だから自分が邪魔者だなんて思わないで。私も病院のみんなも、そんな事は思ってないから」
腕に力が込められた。まるでそう言い聞かせるように。
「アイドル事務所の社長の養子とか勝ち組じゃない。いっそ、ハルナちゃんもアイドル目指してみたら?」
「……考えてみますね」
そう言って別れたのだけど。
私にそんな資格は無いと思う。
瀬能さんと別れたあと。これから社長夫人のミヤコさんと合流する予定だ。ぼんやりと歩きながら、先日の出来事を思い出す。
「ハル坊。よかったらウチに来ないか?」
身辺の整理をしている最中に、児童相談所の人を伴って斉藤社長がやってきた。
「アイがどうしてもほっとけないって言ってさ」
社長が私を引き取ると決めた最後のひと押しはアイさんだったらしい。
『わたしの責任なんだよ。ここに来たから、せんせは死んじゃった。どうにも出来ないけど、せめてハルちゃんを一人にはしたくないの』
涙ながらに語ったらしい。
どういう経緯で先生が亡くなったのかは知っているようだ。
──アイさんもなんだ。
理解した。
理解してしまった。
あのひとと知り合った人は、みな惹き込まれる。わたしと同じように……焦がれるのだ。
それは火に寄せられる蛾のような。
いや、違うな。
太陽を仰ぐ向日葵のようなものか。
目をそらすことなど、出来はしない。
医者というのは存外大変な仕事で、仕事以外にもやることが沢山ある。実際、家でも研鑽を続ける姿は何度も見てきた。
そんな激務にありながら、彼は患者に心を砕いてきた。さりなちゃん以外にも入院患者のケアを買って出たケースは幾度もあった。アイドルの布教と嘯いてはいたけど、本質はケアマネの一環だ。
彼を知る人はほとんど意気消沈した。それが彼の為してきた証だった。
その残滓の光が、まだ私には残されていた。
アイさんが、斉藤社長が、ミヤコさんが。
その光に魅せられているんだ。
──あのひとに、まだまもられている。
そう思うと、すっと落ち着いた。
まだ守られる子供で
でもそれが嬉しい。
彼の意志を汲んでくれた人がいるのなら、その人の役に立ちたい。
それに。
あの双子ちゃんは、謂わば彼の最後の仕事だ。
きちんと見守らないといけない。
嘆いてばかりもいられないと気付くと、あとは勢い込む形で話を進めた。元より社長夫妻が良い人なのは理解しているし、アイさんだって友だちだ。
それに、私にはノウハウがある。
伊達に病院へ入り浸って居たわけでもない。看護師の方たちに乳幼児の世話も教わって、厚意で実践もさせてもらっていた。知識だってちゃんと蓄えた。
諸々の手続きなどのせいですぐには動けなかったけど。
「じゃあ、行きましょ。ハルナちゃん」
「はい……行ってきます。先生」
とおく、遠くの地からも。
見守って下さい。
◯◯警部
地元の所轄勤務。名前も決めてない(笑)いちおう背景の説明役。
瀬能看護師
他に名前が出ないからこの人が代表みたいになってるけど、たぶんいちばん親しくしてたんじゃないかな。そしておそらく焼かれてた一人()
雨宮ハルナ
雨宮姓のままで居ます。法的にはどうなのかな? まあ、分かりづらくなるからそのままでいきます。前向きに生きる決意を固めた模様。
斉藤壱護
一人居たら二人でも構わんくらいのノリで引き取る覚悟を決めた。ハルナの事を『ハル坊』と呼ぶのはこの人くらいかな。少年との交渉は継続中だが、抑え込めそうなのでホッとしている。
斉藤ミヤコ
最後の一言だけ登場で誰かの説明も無かったからここで解説。保護者いないと長距離移動は難しいからね。
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