吾郎の妹ポジになった転生者 作:とくめいです
大事な場面を書かないとか()
「二人とも、そろそろ離乳食を試しても良い頃合いです」
「離乳食……て、なに?」
「お粥みたいに食べやすく崩してある消化の良い食べ物です。米のお粥以外にもうどんとかパンを煮たり崩して作るものもあります」
「ん、なんか。面倒なんだね」
「私が準備しておきますし、最初はミルクの方がメインです。慣らすのが目的なので」
「なるほどね。さすがだねーハルちゃん♪」
そんな会話をしているのが聞こえた。もうそんな時期か。ルビーも興味津々といった様子で聞いている。分かってるかは分かんないけど。
「ねー、離乳食って美味しいの?」
「大人が食べても美味しくはない。基本薄味だし歯ごたえもない。病院食に似た感じだな」
「うえー、あたしやだー」
二人と離れた所で小声で話してる俺たち。ルビーは病院食に嫌な思い出でもあるらしい。ちょっと悪いことしたかな?
「俺たちはまだ歯も殆ど育ってないし、胃とかも弱い。徐々に慣らしていくためには必要なんだ。我慢して食べなさい」
「むー、そういうことなら納得するけど。でも味は何とかしてほしいな」
「赤ん坊って味覚もまだ成熟してないから何食べても変わらない……とは言うけど、やっぱりそこは気になるよな」
まあ、そこはハルナなら何とかしそうだし。あんまり心配はしていない。
「けどハルちゃん、本当に家事出来たんだね」
「あ、ああ。そうだな」
無難に受け答えてるけど……本当にコイツ、誰なんだ? ハルナのこと知ってて、家事が出来ること知らんとか……誰だ? 病院の連中ならみんな周知の事実だし(俺の弁当はハルナの作)。そもそも厄介オタクとかいなかったし……まさか隠れのオタがいたとか?
さりなちゃん……のわけもないな。あの子はこんな闊達な性格じゃないし。
町の連中まで広げると居そうな気もする。けどその場合『ハルナ』という名前を知らない可能性も高い。入院患者……じいさんばあさんには人気だったからな、あの子。だとすると、とてもじゃないが特定出来ない。
本当に誰だ……聞くのが早いけど、もし病院関係の奴だったりしたら目も当てられない。
すでに俺はハルナに、お風呂も入れられて。
オシメも替えられたっ!
十字架を背負ってしまったんだっ!
そんな尊厳を破壊された所は知られたくない。誰にもっ! 何なら墓にまで持ってく覚悟があるっ!
なので迂闊な事は言えないのだ。
俺が雨宮吾郎だと知られる情報は漏らせない。誰にもっ!(二度目)
まあ、ハルナ自身は……納得してくれそうだけど。やっぱ、男としてはそういうのこだわりたいんだよね。つまらないプライドだけど。
「……インスタントにも離乳食はありますけど、経費節約を考えたら自炊の方が良いかと。私がやればアイさんの手間は減りますから」
「いやー、本当にありがたい。ハルちゃん居なかったら早々に音を上げてたかも」
「育児は本来、最優先にしなければなりません。学校が無ければ、住み込みでお世話できるのですが」
「それはダメだよ、ハルちゃん」
お、アイの目が輝いた。ステージ以外ではあんまり見ないのに。
「私バカだから、勉強とかどうでもいいって思ってたんだけど。そうじゃなかったんだって気付いたんだ」
「……ええとそれはなぜに?」
「お給料の事だよ。勉強してないし高校も行ってない私にはアイドルしか無いのに、お給料はちっとも増えないんだ。二人を育てなきゃいけないのに……勉強してて高校とか大学まで行ってたら、他の選択肢もあったはずなんだ」
確かにその通り。
アイドルの給料は基本的に少ない。グループのメンバーが多ければその分減るし、事務所だってそこから営業利益を出してる。
社長やミヤコの家で暮らすハルナにとっても関わりないわけではない。なので彼女が言い出す言葉は俺にも分かる。
「それは、私が働きますので」
「それはダメ」
おお、間髪入れずに否定するとは。
アイさんやりおるな。
「どうしてですか? 田舎暮らしなので体力は自信あります。新聞配達とかは出来ると知ってます」
いちおう中学生のうちから出来るバイトは新聞配達と牛乳配達が認められている。それも代理店によってはダメらしいけど、その他の業務は色々と制限されるので、だいたいこの二種類しか残らない。週の就労時間などの制限もあるし、時間帯の制限もある。
抜け穴も色々とあるのだけど、それを俺が教えるのも違うと思う。そもそも俺はバイトは反対の立場である。
理由? そんなの決まってる。
よく知らんヤツの所で働かせるなんて許さんからだ。頭の固い親父みたいに見えるけど、実際ハルナは浮き世離れしたところがあるので心配なのだ。
とはいえ、口を挟むわけにはいかないんだよなぁ。
「ハルちゃんには学校はちゃんと出て欲しい。ゴローせんせはそう思ってたはず。なら、私もそうしたい」
「……はい」
そう言われたら首肯せざるを得ない。ハルナはいい子だな。尤も、俺のスタンスは若干違う。
ハルナのやりたい事を優先して構わない。それはハルナが既に国立大学入試レベルを超えた学力を有していると知っているから。その気になれば高校行かんで大検狙う事も出来なくはないと思ってる。
それでも法的に中学生は学業優先になってしまうので、どうしようもないんだけど。
「そんなハルナちゃんにお話があります」
「ミヤコさん」
いつの間にか来ていたミヤコが何枚かのプリント用紙を広げる。こっちからでは見えないな、ぐぎぎ(首を伸ばそうとしてる)
「? ニッコリ動画?」
「動画配信サービス……これは?」
「最近始まった配信サービスなんだけど、これは収益化、つまりお金が入るサービスなの。再生数に応じて回る広告からのアフィリエイトが主な物だけど」
なるほど。その手があったか。
「なんのはなし?」
「働かなくてもお金が入る話だよ」
「なにそれ、私もそれやりたいっ」
ルビーに言ったことは正確ではない。動画を作成する段階で色々と手間もかかるし、そもそも再生数が高くならないと収益化自体出来ない。
ただ、リスクは少ない。何せ時間も自由に使える。少なくとも自分の意志でやってる事だから、個人で起業しているような扱いになるので動画作成の時間は就労とは取られないはず。
「B小町の活動の場は今のところ巡業、つまりライブがメイン。歌番組へのオファーも無いわけじゃないけど、そんなに数は多くはない。世間様の目を向けさせるのは容易じゃないのよ」
「なるほど。動画配信サービスを利用してB小町の宣伝をなさる、と云うことですか」
「へえー、こんなのもあるんだね」
テレビという媒体は限られた
ライブはあくまでファンサービスの場であり、そこにはファンが来てくれる。しかし、逆に言えばファンしか来てはくれない。彼女たちの事を知らない新規のお客さんはライブ会場には来ないだろう。新規開拓の場ではないのだ。
では新規開拓するにはどうすればいいか。街頭でのチラシ配りとか見たことはないか?
「わたしはないな。そもそも出歩かなかったし」
このヒキコモリめ……
それはさておき。
カワイイ女の子から配られたフライヤーの威力はなかなかに高い。それこそやることのない若者には、ちょっと見てみようかと思わせるくらいには。そうして沼にようこそ、とさせるのがこの業界の古くからある手口なのである……まるで如何わしいお店の手口に聴こえるが全く別物なので深く考えてはならない。
「いかがわしいおみせ……あんたそんなトコ行ってたの。キモ」
「ローテンションで言われると思ったよりキツイッ」
「アイにはこっちで色々と宣伝をしてもらうことになるわ。もちろん他のメンバーと一緒にね」
「それはいいけど。ハルちゃんにいい話となんか関係あるの?」
「ふふん。ハルナちゃん、この番組に出てみない?」
「え?」
「MCというか進行役に心当たりが無くてね。私が出てもいいけど、どうせなら若くて可愛い子の方が見栄えいいし」
なるほど。ハルナは見た目すごく絵になるし、頭の回転も早い。MCとしてはいいかもしれない。
「いいじゃん♪ やろうよ、ハルちゃん」
「あ、えと。私なんかで、いいんですか?」
「むしろあなた以外適任がいないから聞いてるの。大丈夫よ、スタジオとか借りられないから事務所の会議室で撮影するし、他のスタッフは殆ど居ないから」
「はあ……でしたら、お引き受けします」
苺プロの新規事業が動き始めた瞬間であった。後にこの業界を席巻する一大ムーブメントの始まりである。
「なんなの、そのプ◯ジェクトXみたいな語り……キモ」
「おまえ、見てたのかよ」
シブいじゃん。やっぱり年上なのかな? この厄介オタク女。あと気軽にキモい言うな。
星野アイ
嫌なことに気付くのが若干早い。たぶん色々考えることが増えたせい(主にハルナ関係で)。助かってる反面申し訳無く感じてるけど、ハルナ本人は動いてる方が楽なので。
雨宮ハルナ
育児手伝っている上に労働まで課そうとする社畜根性は先生譲り。先生、生き様見せ過ぎてバグってるよ(笑)メディアへの露出が決まり、筆者的には嬉しいです。この子、自分からそういう方向行きそうになかったので()
星野アクア
なんだか解説みたいなムーブが楽しかった。というかルビーとの会話、本当に向こうに聞こえてないですか? キモオタ扱いされて若干凹むけどロリコン扱いされてたから実は慣れてた件(草)
星野ルビー
この話のルビー、口悪過ぎないですか? とお叱り受けそうな育ち方してる……重曹入ってない? あとアクアのトモ◯ヲ真似、実は気に入ってた。
斉藤ミヤコ
ウェブ関係に強くなった土壌とも言うべき新たな展開。ただ、ニ◯ニコでこの頃芸能関係がガチで活動してたか筆者は覚えてません。ユ◯チューブでないのは時代背景的に。いずれ転換していくとは思われます。先を見る目のある女性、経営者としての手腕を感じますね。
斉藤壱護
またも出てこない。父親不在のラノベみたいと言ってはいけない(笑)