吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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前回より数日後。さいしょはアクア視点。次はハルナ視点に、最後にまたアクアに戻ります。なんかややこしい……


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「おはようございます」

「おはよーございまーす……なんで?」

「業界の挨拶と言えば何時でもどこでも『おはようございます』だと聞いた覚えがありまして。間違ってましたか?」

「ま、いっか」

 

 入りからグダる展開。普通ならダメだろうけどこれは配信サービスに乗せる動画である。自主制作なのでストップかけるのも続行するのもミヤコ次第。もちろん編集も出来るのだが、今回は生での配信。ぶっつけ本番でやるのは怖すぎなんだが、リアル感を出すためらしい。なるほど。

 

 ここは苺プロの会議室。小型のカメラの前でアイとハルナが座り、それを俺たちは眺めていた。

 

「アイ可愛い〜」

「そうだな」

 

 ルビーはご満悦。ライブ衣装ではないけど外向けにお洒落したアイはさすがアイドルというべきか。トレードマークのウサギのヘアピンが仕事モードだと主張している。その瞳は薄っすらと輝き、自信に満ち溢れていた。

 

「ハルちゃんも可愛い〜」

「そうだな」

 

 ハルナもいつもの野暮ったい格好ではなく、ティーン誌のモデルが着てるような装いだ。髪もハーフアップにしてうっすら化粧もしてる。かなり見違えた、というかアイと並んでも見劣りはしてない。

 ただ、その顔には表情と呼べるものは無い。平常運転のハルナだとは分かるけど、営業としては如何なものかと不安がよぎる。

 

「さて。今回から始まりました当番組『まるごとB小町』、毎週日曜日に更新しますのでこれからもご贔屓にして下さい」

「みんな見てねー♪」

「B小町のことを知りたいあなたは欠かさずチェック。合言葉は『b』ですよ」

「びーっ!」

 

 アイのセリフに続いて画面上のコメントに『b』が埋め尽くされる。日曜日の夕方という時間の割に見てくれている人間は意外と多い。嬉しい限りだ。

 

「今回お送りするのは長期休暇を終えてB小町復帰ライブをやりきったこのお方、アイさんをお呼びしてますー」

「おー、ぱちぱちぱち♪」

 

「あうー」

 

 ルビーも真似して拍手すると二人が顔を綻ばせる。アイは華やかに、ハルナはふんわりと。この絵を取りたいがために同席させたのなら、ミヤコはやはりやり手だ。ハルナの表情の少なさを引き出すために俺たちまで道具にするとは。

 

「見えてるー? ママ頑張るからねー♪」

 

 と、いきなり爆弾発言を落とすアイ。

 いや、マズイだろそれはッ!

 

「アイさん、社長のお子さんにママはよくないですよ? 実はご夫妻の赤ん坊がご観覧しております。ノイズがのってしまうかもしれませんが、その辺りはご容赦下さいませ」

「とってもカワイイの♪ できればお見せしたいけど、コワイ人がダメって言うから今回は勘弁してねっ」

 

 ハルナが顔色変えずにフォローしたおかげであやしい雰囲気にはならずに済んだ模様……本当に怖いな、アイは。別の意味で怖い人が睨んでるけどそれはそれ。

 

 いちおう、外部的には俺たちは社長の子供、ということになっている。なんだけど、よく考えるとその他にアイとハルナが居るわけで……斉藤家、家族多すぎかもしれん。そもそも血縁でもないし、社長そのうち妙な目で見られないかな?

 

「では、とりあえずMVを流していきましょう。先日行われた販促イベントでのミニライブの映像が入手出来たので、それをどどーんと公開しちゃいます」

「ライブDVDとかに特典でしか乗らない予定なんだって。みんな、ちょー貴重だよ♪」

 

 販促イベントとはキャパの狭い会場でやることが多いため、見れる人数はかなり絞られる。こういった映像は特典映像にすることが多い。ミニライブだったため、それだけで製品化するのもキツいのだから仕方がない。

 

 放送が流れる前にルビーが何かを渡してきた。おま、これは…… 俺が見返すとヤツはにやりと笑みをこぼした。

 

『ドルオタ名乗るなら出来るだろ? 付いてこれるか』

 

 そういう言葉が透けて見えた。

 上等じゃねえか……みせてやるぜ。

 

 男の生き様をなぁッ!

 

 

 

 

 

・・(⁠灬⁠º⁠‿⁠º⁠灬⁠)⁠♡⁠(⁠Ӧ⁠v⁠Ӧ⁠。⁠)・・

 

 

 

 

 

 ふー。何とか誤魔化せましたか。いきなりママとか困りますよね。誤魔化す方のことも少しは考慮して頂きたい。

 

 アイさんの手綱を握るのは本当に大変ですね。社長やミヤコさんの苦労が忍ばれます。

 

 そのミヤコさんですが、何やら怖い顔をしています。やはりあの発言はマズかったでしょうか。現役アイドルのママとか燃えるなんてものじゃないでしょうし。

 

 ちろりと、横目でアイさんを眺めると。

 

「はわわ~♡ うちの子きゃわ〜!!」

 

 うお、また失言を。MV中だからミュートしてあって助かった。こんなの焼け野原ですよ……て。

 

「ふわ……かわいい……」

 

 思わず声が出てしまいました。

 

 MVを見ながらせいいっぱいに体を動かしてオタ芸をかます乳児たち。しかも一糸乱れぬ動きにキレの良さもあいまって、まるでダンスのよう。手に持ったサイリウム(いつの間に持ってたのかは謎)を落とさないようにしっかりと持って捧げ、降ろし、振り回す。少し、幻想的にも見えてしまいます。

 

 いつの間にか、アイさんが携帯を取り出してその様子を撮り始めました。あ、いいのかな、それ……いいみたい、なら私も。パカリと開けた携帯のカメラで双子ちゃんの勇姿を撮り始める。

 

 すごい、本当に可愛い。

 語彙力が無くなるほどに可愛過ぎて、ヤバいですね。

 

 

 

「ふう……あ、以上。B小町で、『サインはB』三人バージョンでお送りしました。アイさん、いかがでしたか?」

 

 問いかけると、ほんのり頬を上気させて口元の緩んだアイさんがぽそりとひとこと。

 

「もう……あのコたちアイドルにした方がいいよ。きゃわいすぎる……」

 

 それは激しく同意しますが、今は言ってはならない事です。

 

「アイさんすっかり、()()の、お子さんに骨抜きにされてますね。では、ここからはわたくし、ハルがご案内していきます。事務所の末席に連ねる若輩者ですが、どうぞよろしくお願い致します」

 

 そう仕切り直しますが……ダメですね。双子ちゃんの姿が焼きついて……ちょっと頬が緩んでしまいます。

 

 

 

 

 

・・(*´∀`*)・・

 

 

 

 

 

 番組に寄せられるコメントの多くが、アイの発言に賑わった。当然のようにSNS界隈でもその話題が拡散され、トレンドにも載ってしまった。

 

 しかし、その後公式SNSから発信された動画によって駆逐されてしまった。そう。俺たちのオタ芸動画だ。赤ちゃんコンテンツはバズり易いと言われてはいるが、乳児とは思えない動きとその見た目から反響は凄まじかった。アイの発言が消えてしまう勢いで動画は再生された。

 

「こうでもしないと炎上まっしぐらだろうし、しゃあねえけど……ミヤコ、コッチ来い」

「はい……」

 

 この妙手を打ったのは社長だ。アイたちの撮影した動画を配信して、よりインパクトの強い情報で塗りつぶした。当然、俺たち双子が苺プロ社長の子供だという注釈まで書き入れて、である。

 

 まあ、アイの子どもだとバレるよりははるかにマシだろう。所詮は赤子だ。そのうち風化するはず。

 

 さらにもう一つ。

 

 同時に喜ぶアイとハルナの蕩けるような笑顔も配信された。こちらはミヤコの判断だ。当然のようにこちらもバズり、世間へのお披露目は順調とは言えないけど大きな話題を作り出した。

 

 MVのあとからはハルナの表情も柔らかくなったし、やっぱり緊張してたのかもな。あの子は感情が無いわけじゃない、ただ表現が下手なだけなんだ。

 

 ふむ(にっこり)

 

「アンタ、アイから推し変しようとしてない?」

「し、しやしねえよ。ナニイッテンノ?」

 

 うちの妹、なんかこわい。超能力者かよ。




星野アイ

ニッコリ動画デビューは波乱に満ちていたけど、本人的には面白かったらしい。双子のオタ芸見られてご満悦。その笑顔も晒されてコツを掴んだ模様。

雨宮ハルナ

行動の読めないアイに振り回された。でも双子のオタ芸でニッコリ。同じようにその笑顔を社長に晒された。『これがわたし、ですか?』(うせやろ? 別人だろ)

双子ちゃん

SNSでバズり、ニッコリ動画での再生数に貢献した。ルビーに煽られなかったらやらなかったとアクアは後に語る……本当かなぁ?

斉藤ミヤコ

よく考えたらアイに子ども見せたまま収録したらこうなるのは分かってた。社長が怒るのも無理はない。でも、いい絵は取れたから悪いとは思ってない(笑)

社長

アイの失言を消すためにしたのはよりインパクトのある話題の提供……凄いやり手だと思われるけど苦肉の策だった。笑顔が固いと言われるアイのイメージを払拭できたのは怪我の功名? 社長、お疲れ様です(`・ω・´)ゞ
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