吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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動画配信よりちょっと前に戻ってます。今回は環境が色々と変わったハルナのお話。

追記
県大会→都大会に直しました。ここ東京だって言ってたろ、このおばかっΣ(゚Д゚)


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 都内の中学校に転入しました。手続き自体は社長やミヤコさんがしてくれたので問題ありません。こうして都会の学校に入るなど、少し前には想像も出来ませんでした。

 

 私の保護者である雨宮吾郎が亡くなって、まだ半年くらいしか経っていません。本来なら地元の中学校に進学していた筈。小学校からのほぼ持ち上がりで、おそらくは同じ人達しか居ない学生生活になると思われていました。

 

「いいんじゃね。馬子にも衣装ってヤツ」

「それ、誉めてないわよ」

「えっ? マジ?」

 

 まあ、そうですね……まあ、実際そうだとは思いますけど。私なんてつまらない人間なので。

 

 中学校女子の制服のお披露目に際してのお言葉はそんな感じでした。公立のせいなのか、向こうの物と対して変わらない気がします。東京だからって全部が全部垢抜けたものばかりじゃないんですね。

 

 少し丈の長い袖と、膝と同じ高さのスカート。全体黒目のセーラー服ですが、なんとなく気恥ずかしいものです。見てる人が先生じゃないのが少し寂しいですが、お二人を責めるわけにもいきません。むしろ感謝しかありません。

 

「これからも宜しくお願いします」

 

 深々とお辞儀をすると、社長がゴホンと咳払い。

 

「言っとくけど、慈善事業で引き取ったわけじゃねえぞ?」

「はい。家事手伝いならお任せ下さい。先生の身の回りのお世話をずっとしてきたので大概のことはやれます」

「お、おう……いや、そうじゃなくてだな」

「?」

「ここは芸能事務所で、まだまだ新進気鋭。所属してるのもB小町の七人だけだ。そんなわけでお前にも仕事を振る可能性がある」

「経理ですか。家計簿なら出来ますが専門的な物だと少し時間を頂くかもしれません。でも、やります」

「お、おう……いや、そうじゃなくて」

「?」

 

 日商簿記は年齢に制限は無く、通信制でも資格が取れたと思います。頭の出来は先生からのお墨付き、何なら2級からでもいける気がする……はて。何やら頭を抱えてますね。

 

「そっちはとりあえずミヤコが居るから問題ない。ま、資格取るのは構わんけど。本題は……お前アイドルやってみないか?」

「はあ」

 

 何を言ってるのでしょうか。

 

「あの、社長はご存知ですよね。私があまり感情表現が得意でないことは」

「まあ、そうだな。も少し笑えばいいとは思う。でも、それも個性だ。そういうアイドルも居ないわけじゃない」

 

「……考えさせてもらっても良いでしょうか?」

「無理強いするつもりはねえ。けど、なるべく早く返事はくれ」

「分かりました」

 

 いま思い返すと、この時には既に社長の中にプランは出来ていた気がします。転校に加えて双子ちゃんの育児もあり、先生の件を引きずっているであろう私の事を慮っての猶予期間だと推測するのは容易でした。

 

 

 

 朝、目が覚めるのはだいたい五時。これは今までと変わりません。そこから手短に身支度をして、朝食の準備。お二人は朝は食べないことが多かったらしいのですが、用意してあると食べて行ってくれます。

 

「朝から魚焼くとか面倒じゃね?」

「アタシならやらないわ。片付けも面倒なのよ、あれ」

 

 ロースターに脂が落ちるので毎度拭かないと落ちなくなるんですよ。でも、ふんわりと焼けた小ぶりのアジはなかなかに美味しいです。

 

「アイの事、頼むな。ちゃんと送り出してくれよ」

「はいはい」

 

 朝食が終わると彼らも出勤です。ミヤコさんは同じマンション内のアイさんのお家へ。社長は事務所に行ってからB小町の方たちと営業に向かうそうです。

 

「そんじゃな、ハル坊。行ってくる」

「いってらっしゃいませ、社長」

「……おう」

 

 なんか、そそくさと出ていきましたね。お急ぎだったらしい。さて、私も準備しないと。

 

 文具一式(ステーショナリー)を纏めて鞄に入れる。お弁当を用意しようとしたらお二人共に要らないとのこと。夕食は今日はミヤコさんが執り行うらしい。なるほど、それなら今日は長く向こうに居れますね。

 

「行ってきます」

 

 誰も居ない部屋にそう言って出るのはいつものこと。先生は殆どの場合先に病院に行っていたので。カチリと鍵を掛けて、さて行きましょうか。

 

 

 

 

 基本的に公立校は学区という区切りで分けられていて、徒歩圏内であることが一般的。わたしの居た高千穂ではバスでの通学範囲の子も多かったですが、ここでは異端です。

 学校の側まで来ると通学してくる学生がいっぱい見かけられます。人数多いな、やっぱり。田舎とは違う。

 

 編入生ということですが、入学して間もない時期だったので特にその辺りは問題はないかと。

 

「おはよう、雨宮さん」

「おはようございます」

 

 隣の席の男子に声をかけられたので挨拶します。ふれんどりーな会話をしてくるのは都会の流儀なのでしょうか?

 

「分からない事があったら何でも聞いてよ」

「ありがとうございます。ですが今のところは問題ありません。お気遣い、痛み入ります」

「あ、そ、そう……」

「?」

 

 なんだか顔を逸らされた気がします。まあ、気にしないようにしましょう。ここでは私は部外者。勉学に勤しみ、平穏無事に過ごすことに注力します。

 

 ここでも思うことなのですが。やっぱり授業は面白くないですね。地元の小学校の方が楽しかった気がします。九条さんの顔が浮かびます。

 

 実は彼女とはメールでのやり取りをしています。通話は値段が張りますのでそこはご容赦。この当時はまだメッセージアプリはまだ無かったので致し方ありません。

 

 

 

『学校は如何です? 寂しくはありません?』

 

 彼女の制服姿のメールが届いたので、こちらも自撮りで返信。すると、向こうからは間髪入れずに返信。

 

『やっぱり東京は違いますわね』

 

 そうかなぁ? おんなじに見えるけど。まあ、彼女にはそう見えるらしい。そんなやり取りを思い出していたら先生に指されました。

 

 

「雨宮さん。この問題を解いてみて下さい」

「はい」

 

 反比例、問題ないです。口頭で答えると先生は頷いて黒板で解説を始めました。考え事してるのも良し悪しかな、反省。

 

 

 

「雨宮さん、岸原に気に入られたかも」

「岸原……ああ、あの数学教諭の」

 

 前の席に座る子が、休み時間にそう言ってきました。なんでも姉が三年に居るとかで教師陣の話を聞いてるそうです。曰く、数字に強い子を育てる事に注力してるらしい。教師なら当たり前だと思いますが。そう答えると彼女はまじまじと見てきた。

 

「雨宮さんて、変わってるね?」

「たしかに、普通とは言われないですね」

「あははっ で、この問題なんだけど聞いていい?」

「ああ、こちらはですね……」

 

 クラスメイトとの交流もまずまず、でしょうか。よかった、イジメとか無くて。

 

 

 

「へえ。本当に可愛いじゃん」

 

 とか思ってた自分よ、予測が甘いです。

 放課後、三年生の先輩がクラスに入ってきたかと思うとそんな事を宣い始めました。

 

「オレ、三年の谷山。サッカー部の主将でね」

「はあ」

「一年に可愛い子が転入してきたって聞いたから、こうしてスカウトに来たわけ。どう、うちのマネージャー、やらない?」

「やりません」

 

 さて、帰ろう。買い物をして双子ちゃんのお世話に行かないと。鞄を手に取り立ち去ろうとすると、その手を掴まれました。

 

「おい、待てよ」

 

 おや、ご立腹のようです。

 

「部活動をしている余裕はありません」

「都大会出場のこの俺の誘いを断るとか、分かってないな」

 

 サッカーの都大会がどう素晴らしいのかは分かりません。

 

「離して頂けませんか」

「離して欲しかったらマネージャー引き受けてよ」

 

 ……

 

 会話する気は無いようですね。

 

「では」

「え」

 

 掴まれた腕を少し内寄りに引きます。体勢が崩れたのを戻す反動に乗せて一歩踏み出しつつ外へ向かって腕を払いました。投げるつもりはないのでもう一方の腕は使いません。たたらを踏んだ彼は手を離していました。

 

「失礼します」

 

 頭を下げずに足早に立ち去ることに成功しました。

 

 ……ふう。大丈夫だよね。

 校内暴力とか言われないよね?

 

 そんなことより双子ちゃんだよっ!

 

 

 

 

 

 

 

「あうー♪」

 

 ルビーちゃん、元気ですねぇ。このくらいの子だと体調崩しちゃう事も多いと聞いたのですが、これはアイさんの遺伝かな?

 

「ばぶぅっ」

 

 頭をグリグリしてきて可愛すぎる。よーしよしと撫でてあげるととても喜んでる様子。ルビーちゃんは愛想も良くてとっても可愛い。

 

「はぶ……」

 

 かたやアクア君はというとどちらかと言うとクール系? あんまり可愛がって欲しいとかのおねだりはしないし、やられたらそれなりに喜ぶおとなし目の男の子。

 

『アクアはきっとシャイなんだよ』

 

 と、アイさんは言ってましたけど。どうやらそんな様子です。ちょっとぶっきらぼうな感じにあの人の姿がダブります。

 

「だう……?」

 

 ぽふぽふ。

 

「アクア君に、慰められちゃいました」

 

 あの人に似たような仕草をするアクア君。

 きっと君は、色んな女の子を泣かせるようになるね。

 

 けど、私のような泣き方はさせないで下さい。

 それは悲しいですから。

 

「だう」

 

 落ち込む私に、手でぽんぽんと叩いてくれる。その感じは、あのときと変わらない……

 

 

 

 ──そうでしたか。

 なるほど、理解しました。

 

 

 

「……のびのび育って、くださいね」

 

 それが私の、一番の願い。

 アイさんと。仲良く、末永く。

 社長やミヤコさんとも。

 

 

「わうー」

「ルビーちゃんも、ね」

 

 ルビーちゃんも抱きかかえてソファーに座る。子供の私には赤子とはいえ二人を抱くのは大変。アイさんはよくやってるけど、やっぱり体力あるなぁ。私ももっと鍛えないと。

 

 アクア君にルビーちゃんがちょっかい出して、反撃を受けて私に泣きつく。

 

 そんなありふれた幸せの構図。

 

 ──ああ。

 

 わたしは、いま幸せだよ。

 

 でも、

 

 悲しみが癒えるのは。

 もう少し待ってほしいな。

 




雨宮ハルナ

中学生になっても周りの目とかにあまり関心のないハルナ。相手が顔を背ける理由に思い当たらない所がもどかしい。ちなみにサッカー部主将はクラスのみんなから失笑を買いました(笑)

双子ちゃんとの関わりで少しずつ癒やされるけど、それを望むわけではない。思い出を引きずりたい年頃です。

斉藤壱護

実は娘に『いってらっしゃい』と言われるのが一番の望みだったので、照れてらっしゃいます()

斉藤ミヤコ

産む手間が省けてすこぶる優秀な娘が出来たので、実は大助かり。アイ? あの子は手間かかり過ぎなので(笑)

学校の面々

モブなので気にしないで下さい。この後もおそらく出ません。

星野ルビー

可愛がられる事に使命感を帯びてきた今日このごろ。どうやって可愛さアピールしようか実践中。どれも今はクリティカルしてる。

星野アクア

本人隠そうとしてるけど、行動でバレテーラ(古)そういうツメの甘いところ、先生らしいですね(にっこり)
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