吾郎の妹ポジになった転生者 作:とくめいです
今回は乳児の社交場、公園からアクア視点でお送りします。
よちよちと歩く。公園デビューはとっくに済ませているのでここは既に俺の庭だ。
普段はミヤコにアイかハルナのどっちかが付き添っているのだけど今日は二人ともいる。豪華メンバーと言えるな。
おお、ちびっこい犬がいるぞ。こ、怖くなんてねえからな。
「よーしよーし」
「お前すげえな」
躊躇いもせずに頭撫でに行ったぞ、アイツ。ちっちゃいとはいえ俺ら自身も小さいんだし、人間は犬には勝てないという俗説もある。それなのにコイツときたら。子犬の方も嬉しいのかルビーにされるがまま。
「こんな小さい子怖がるなんて、お兄ちゃん、弱虫だねー」
「そうだねー、アクアは弱虫だー」
ルビーはともかく、実の母の無邪気なディスりが心に刺さる……こういう時は。
「ハルねー」
「ルビーちゃん、他所様の仔に勝手に触ってはいけません。あとアイさんも、アーくんは繊細なだけで弱虫ではありませんよ」
「「はぁい」」
「いや、誰が年長者なのよ……」
ミヤコよ。それは言うてはならない。アイは深く考えないし、ルビーはまだ子供……なのかな、中身。本人は大人の女性とか言ってたけど、行動はまんま幼児なんだよなぁ。
撫でられていた子犬の飼い主にハルナが謝罪しに行くと、向こうは全然気にしてなかったようだ。優しい世界だなぁ。
「ママぁ、よしよししてー」
「はーい、いいよ~。よしよーし♪」
ベンチに座るアイにルビーおねだり。いや、大人の女性どこ行ったよ。あと表では「アイねー」か「お姉ちゃん」だと言われたよね?
秋口に入る頃には、俺たちは喋れるという事をバラした。ルビーとはなるべく難しい言葉は使わない、という協定を結んでいる。でもコイツ、ちょいちょいバグってる感じのこと言うんだよな。
「ごくらくじょうどぉ〜♪」
ほら。そんな言葉知ってる乳児いねえから。
「そんな難しい言葉、よく知ってるね〜」
ほら。さすがのアイだって疑問に思うでしょ。
「うちの子、天才だな」
そんなこと、無かったか。アイも平常運転で何より。
「アーくん、こっちですよ」
「うん」
俺はというとハルナに向かって歩く練習。少しでも成長を早めるために筋力を付けておく必要がある。御大層な事ではないけど、これも赤子の修練。よちよち歩くことで筋力とバランスを養うのだ。
「はい。よく出来ました」
成功したらしゃがんで軽くハグしてくる。倒れても近寄って立ち上がらせてハグしてくれる。どっちでも同じだけど、より達成感を高めるためにミスはしないようにする。
「もっといけるよ」
「では、あちらまで戻る事にしましょう」
ベンチの側に戻ってしゃがむハルナ。彼女の私服は基本的にカジュアル寄りなんだけど、最近は年頃らしいガーリーな物も多くなった。
原因はアイだ。
アイドル事務所に籍を置く身となった以上、外見には気を遣えということらしい。それは構わないのだけど……
「はーい、アーくんこっちですよ」
その、膝丈とはいえスカートでその姿勢はどうかな、と。妹みたいな存在なので気にもしない……とはいかない。視線を足元に向けて歩くことに集中。ちゃんと歩けてはいるけど、どうも少しズレたらしい。ハルナがこっちに寄ってくれてゴールイン。
「ちゃんと私を見てください、アーくん」
「う、うん」
「見てないと方向が分かりません。下ばかり見てると方向が分からなくなっちゃいますよ」
「わかった」
言ってることは正しいんだけど、なんか納得いかない。でも刺さるということはどこかにあるんだろうな。
「あっ、あの」
そこに声がかけられた。俺等ではなくてベンチに座るアイに対してだ。
「アイさんですよね、B小町の。私、ファンなんです」
「あー、そうなんだ。ありがとね♪ ミヤコママ、ルビーをお願い」
「ええ」
隣に座るミヤコにルビーを手渡すと少女の方に向き直るアイ。少女は、たぶん8〜9歳くらいだろうか。栗色の髪と
「復帰おめでとうございます! おからだ、もう平気なんですか?」
「うん、全然もんだいなし。元気いっぱいだよ」
「よかったぁ〜。 これからも応援します」
ちなみにアイは帽子を被っただけで変装などはしていない。なので知ってる人にならバレる可能性はあるのだ。
「ネットで見た双子ちゃんも可愛い〜♪」
「見てくれたんだ、ありがとぉ〜♪」
お、アイが嬉しそうな顔をした。自分のファンと言われたことより喜んだのか?
「ママ、よしよししてぇ?」
「は、はーい。よしよし」
「えへへー♪」
ルビーは自分の話題が出たと目敏く察知して可愛さアピールをしだした。ちなみに、ミヤコによしよしねだる事はあんまりない。なので、ミヤコの方もやり方がぎこちない。まあ、傍目から見たら気にはならないだろう。
「あっちは、たしかハルちゃんですよね」
「うん、よく覚えてるね〜」
ハルという名前は、まだ公式HPにも載せてないらしい。あの動画を見た人間しか知らない情報だ。つまりこの子はガチ勢と言える。
ハルナが俺の手を取ってその子に向かって手を振らせた。自分よりも双子ちゃんとしてのファンサというところか。
「キャー♪ かわいいなぁ。うちにも弟二人いるんだけど、こんなに愛らしくなくて」
「そうなんだ。でも、かわいいんでしょ?」
「それは、そうですけど」
家族を憎んでる様子は見えない。きっと幸せな家庭の子供に違いない。こんな妙ちくりんな双子じゃなくていいじゃないか。
「どうも、ありがとうございましたー♪」
「じゃあねー」
手を振って立ち去る少女。その手にはアイの直筆のサインが書かれた連絡帳。あれ、後に凄いプレミアになるかもな。あの子が大事にしてくれることを切に願う。
余談だけどハルナもサインさせられた、アイに。サインなんか決めてもいないのでただの署名になっていたのは笑うしかない。
「いいね。わたし、きょうだいって居ないから。羨ましいな」
ぽろりと呟くアイ。
一人っ子だと聞いていたし、家庭環境は推して知るべし。普通の家庭というのは、彼女にとって羨望なのだろう。
「なに言ってるの」
と言うミヤコにアイは不思議そうに見る。
「あなたはもううちの子で、ルビーもアクアも兄妹でしょ?」
「!」
……まあ、そうだよな。詳しくは知らないけど彼女が仕事が出来ているのも後見人として壱護が保護してるからだ。俺たち双子もその未成年の子供だから同時に後見人の庇護下に入るわけで。それはつまり全員兄妹ってことだ。
「……えっ? でもアクアとルビーは私の子だよ」
「まあね。でも外向きにはそう言わなきゃならないし、そう考えるほうが自然よ?」
「むぅ……でも、いつの間にか出来てたんだ」
くふふ、と声を殺して笑うアイ。それは、いつも大人びた印象を与える笑顔ではなくて。年相応の少女のように見えた。
「ちなみに。ハルナとも兄妹だからね」
「そうだった。ハルちゃん、お姉ちゃんって呼んでみて♪」
「ええっ?」
いきなり振られたハルナが珍しく驚いていた。少し考え、意を決して。
「アイ、お姉ちゃん」
「っは〜っ! キタコレッ」
「ひぅ?」
抱きつくアイに戸惑うハルナ。ちなみにミヤコは既に携帯を構えていた。いつの間にっ?!
「単純に姉妹物も良いけど、百合姉妹とかも美味しそうね。なかなかに捗るわ」
「これからずっと、お姉ちゃんって呼んでね♪」
「そ、そんな」
アイの方は止まるつもりは無いらしい。止まるんじゃねえぞ……なんか流行りそうな言葉だな、コレ。いつの間に来たルビーがひとこと呟く。
「ハルちゃんも嬉しそうだね」
「……そうだな」
そのルビーも、嬉しさを隠そうとはしてなかった。その顔はいつもの子供のようでなく、まるで姉のように見守る微笑みだった。やれば出来るじゃん、大人の女性。
それにしても、俺では出来なかった事をやすやすクリアするとか。さすが最強無敵のアイドル様だ。ハルナにとっては、この環境の方が良かったようにみえる。
吾郎では出来なかったと。
そう思うと切なくは感じるけど、それも仕方ない。
一抹の感傷を振り払い、俺は歩く。
今はこの道を行くのみだ。
星野アクア
歩けるようになって嬉しくてたまらない様子。基本的に自分でなんとかする気質なので。因みに子犬はチワワ辺りな感じと思って下さい。
星野ルビー
末っ子らしく要領良く生きてる感じ。本人すごく楽しんでるだろうな。髪もちょっと長くなってきて、外見でアクアとの違いが分かるようになってきた。
星野アイ
双子との時間を作るために調整してるけど、割合で言うと二割くらいしか参加できてない。
いつの間にか妹や弟が出来てた事に目がウロコ。たぶん、一番嬉しかったんだと思う。
雨宮ハルナ
公園に連れていくのは基本ミヤコと一緒。まだ子供なので乳児の引率は目立つから。
アーくん呼びを先に取ってしまった。重曹ちゃん、許して(許さん)
少しずつ女の子らしさが身に付き始めた。やっぱ男手で育てるとこういう所が手が回らないと、先生は思い知った。でも、まだガードが甘い。先生は訝しんだ。
斉藤ミヤコ
ここのミヤコは本当にママ。売り方も模索し続ける姿勢との温度差が激しいな(笑)
謎の少女(草)
アイのファンで、弟二人いて……誰だろ(すっとぼけ)
出落ちにも程があるけど、ここで出したかった。