吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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前回より数日後、という感じです。

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あんまり気にしないとはいっても、この大エゴサ時代では無視できないのですよ(笑)


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 双子ちゃんが一歳を過ぎた辺りから、私もアイドルとしての活動を始めてました。レッスンが殆どですけど。双子ちゃんに手間がかかる事も少なくなったため、ミヤコさんだけでも手が回るようになったからです。

 

 もっとも、その一番の原因は双子ちゃん自身にあります。

 

「ミヤコさんを困らせてはいけませんよ」

「「はぁい、ハルねー」」

 

 聞き分けが良いというレベルでは説明がつかないもの分かりの良さ。他の幼児なら泣き喚いて手が付けられない事も多いのに、諭せば泣きやんでくれたりします。周りから見たら天才なんてものじゃないと思います。

 

 事実、ミヤコさんが私にそう聞いてきた時がありました。

 

「あの、ハルナちゃん。あの子達だけど、なんかおかしくない? とても一歳児には見えないんだけど」

「私も四歳の頃には敬語が喋れましたし、普通では?」

「あ……うん、そ、そうね」

 

 私という実例がいる以上、そういう事もあるとご納得頂けたようです。けど、私とて一歳の頃はたぶん普通だった筈。あの子達が異常なのは確かです。

 

 あの子達は特別なのです。ある意味、私を超えた存在と言えます。けど、それを説明して理解させるのは違うと思うのです。

 

 感じ取って欲しい、彼らの数奇な運命を。

 そこにこそ、意味があると想えるのです。

 

 

 

 

 

 

 それはさておき。

 私自身の身の振り方に関しては、いちおうアイドルとして活動をする方向になりました。ただしB小町としてではなく。

 

 ホワイトボードに書かれた文字を社長が指を差します。

 

「「星空の月(Starry the moon)?」」

「アイとのデュオユニット。今んとこハルナがダンス合わせられるのアイしかいないからな」

 

 社長が机を叩きながら説明する。これが台パンというやつでしょうか?

 

「私はB小町卒業?」

「いや、アイは在籍のままだ。あくまでハルナと組む時だけの仮ユニットとして扱う」

 

 私をB小町に入れることは不可能だと結論が出た、と。力及ばず、無念です。しゅん。

 

「ああ、勘違いすんなよ。ハル坊。お前がダメとかじゃねえ」

 

 そうなんですか? 顔を上げると社長のほうが頭を下げました。

 

「俺が悪かったんだ。すまねえ」

 

 ?

 何を謝っているのか、よく分かりません。

 

「何とか出来るとは思ってたんだがな。メンバーの感情を制御しきれなかったのは俺の責任だ」

 

 監督責任ということですか? でも、それなら私の方が責められる筈です。メンバーの方々に合わせられないのは、他ならぬ私のせいなのですから。

 

「それもあるんだが、デビューを急ぐ理由もあるんだ。実はな」

 

 語られたのは芸能界ではよくある話。所謂、バーターというやつです。

 

「大手広告代理店からのオファーでな。B小町に広告出演が来たんだよ。コスメブランドの新商品だ」

「それは、大チャンスじゃないですか」

 

 物にもよりますが、一般的には広告などの出演は大きな仕事と言えます。今回の場合、若年層女子への訴求力は高いと考えられます。つまりB小町を売るには最適と言えるでしょう。

 

「だがな。交換条件を提示された」

「……うちの事務所ってお金あったっけ?」

「貧乏所帯と聞いておりますが」

「今回はウチからのオファーじゃねえからな。コッチが金をもらう立ち場だよ」

 

 なるほど。確かにそうですね。

 社長がこちらを見て静かに語ります。

 

「代理店のプロデューサーが言うには、『ハル』の早期メディア露出、まあ平たく言うとデビューか。そいつを望んでる別のクライアントが居るそうだ」

「「別の、クライアント?」」

 

 私とアイさんの声が重なります。

 アイさんも気付きましたか。この話のおかしな所に。

 

「ハルちゃん、クライアントって、なに?」

 

 ガタンッ カクッ

 社長と私の力が抜けた瞬間でした。

 

「クライアント(client)、顧客とか依頼人を指す英語ですね。業界としては個人ではなく法人なども対象として呼ばれるかと」

「ふーん。つまりハルちゃんのデビューを望んでる人がいて、その人が広告代理店に……あれ? うちに直接言えばよくない?」

 

 そうです。

 芸能事務所たる苺プロにオファーすべき案件だと思います。まあ、一番おかしいのは動画で知られただけの私を早くデビューさせろ、ということなのですが。

 

「ハルちゃん、モテモテ?」

「んなわけないだろ。ハルナがいかに可愛くたって、大仕事との天秤にするには釣り合わねえ」

 

 社長の言う通り、私がデビューした所で知名度もないド新人です。大仕事とは対価が合いません。……あと、可愛くはないです。

 

「そのプロデューサーにツッコんでみたけど、クライアントの情報は明かせない、とか抜かしやがる。傭兵かよ」

「先方は名前を知られたくない御仁、ということですか」

「ああ。キナ臭いから断ろうかとも考えたけど、ここでB小町の広告出演は旨すぎる」

 

 アイさんはこの間のドラマの後に、映画のオファーがありました。

 同じ監督さんかららしいですが、この前後で大きく目立てる広告の仕事はどうしても欲しい所でしょう。シナジーも狙えます。B小町としての知名度もぐんと上がるはずです。

 

「それに断るとなると、系列グループから睨まれる可能性がある。仕事の幅がどれだけ小さくなるかは見当もつかない。ちなみに探偵とか雇って詮索したことが発覚したら賠償請求される契約だ。向こうのクライアントとやらはどうしても隠れてたいらしい。姑息な話だ」

 

 断ればデメリットが生じるのは自明の理。ここは無理にでも乗るところなのでしょう。

 

「てなわけだ。無理を承知で頼む。ハル坊、アイと組んでやってくれるか?」

 

 そう言って、社長は(こうべ)を垂れました。恩義を返すのに否はありません。私は社長の手を取り答えます。

 

「社長のご恩に応えとうございます。不束者ですが、何なりと申し付け下さい」

「いや、時代がかってんな。お前、ほんとに中学生か?」

 

 おっと、いけない。つい出てしまった。こんな言葉は普段使わないのに、なんでだろ?

 

「ハルちゃんがいいなら私もいいよ。わたし、センパイだから」

「よろしくお願いします。先輩」

「いや。アイお姉ちゃんと、呼んで」

「……アイお姉ちゃん先輩」

 

 いや、この言葉はおかしい。

 

「うん。任されちゃうよ♪」

 

 あ、いいんですね。さすがアイさん。細かいことには拘らない器量の広いお方です。

 

 ゴホン。

 社長が咳払いをして会話を再開させます。

 

「曲は、アイのソロ用のを用意してたんだが、そいつを使うことにする。構わないな?」

「それはもちろん♪ ていうかそんなの発注してたんだ」

「まずはお前からソロでの売出しをかけるつもりだった。全員いっぺんには予算が足りねえし、作曲家とかも足りない」

「でも、いつかは用意するつもりでしょ?」

「……まあな」

 

 B小町の皆さんが聞いたら喜ぶでしょう。社長はちゃんと考えておられたのです。

 

「お、おい? なんで泣いてる?」

「……グス。いえ、感涙してしまって」

 

 アイさんがハンカチをくれたので涙を拭きました。社長もオロオロしながら謝ってきました。

 

「あー……なんか、すまねぇな」

「いえ、最近、涙脆くて。私の方こそ、すみません」

 

 別に謝ることではないのです。ただ単に、私が感動してしまっただけの話。けど、本当に涙もろくなりましたね。先生の所に居た時は、滅多に泣かなかったはずなのに。

 

「B小町はもっと大きくなる。アイのワンマングループじゃねえと知らしめるいい機会だ。今回の仕事をゲット出来れば知名度はグンと伸びる。ハル坊には荷が重いかもしれんが、アイが側にいる。心配はいらない、俺の育てた最強のアイドルだ」

「……はいっ」

 

 社長の熱を帯びた激励に、そう答えました。

 むん、と気合も入ります。

 

「アイもだ。先輩としてきっちりサポートしてやれ」

「そりゃあもちろん。お姉ちゃん、頑張るからね♪」

「はい、宜しくお願いします」

 

 アイさんの輝くような笑顔。つられて笑みを浮かべてしまうのは、仕方のない事です。

 

 

 

 

 

 新規事業の立ち上げを宣言したわけですが、すぐに忙しくなるわけではありませんでした。何故なら、アイさんとアーくんの出演する映画の収録もあるからです。

 

 私はというと中学校もあるので午前中はだいたい授業があり、午後からはレッスン、それが終わったらアイさんのお宅へ行ってご飯の用意やその他の雑務。社長宅へ帰るのは午後九時くらいになります。なかなかに過密スケジュールな気もしますが、アイさんのお宅へ伺う足を止めるわけにはいきません。

 

「ハルちゃん、無理にこっちに来なくても平気だよ?」

「大丈夫です、私が来たいだけなので」

 

 その日は夕ご飯の支度に少し遅れてしまいました。でも、アイさんが全て執り行った後でした。

 

「いやー、ちょっと火加減間違っちゃって」

「許容範囲ですよ。焦げてる所を取り除いてあげれば丁度いい量になります。お野菜の煮方も良いです。人参は意外と硬さが残りやすいのですが、これなら幼児でも問題無く食べられる筈です」

 

 この歳の幼児は歯も揃ってないですし、胃もまだ成長してません。離乳食から卒業してもまだ固いものとか消化の悪いものは食べられないのです。

 

「ハルちゃんのメモ、助かってるよ。これでわたしも名人シェフである♪」

「それはようございました」

 

 調理のコツや献立の例などを毎度纏めて記述してきた「ハルのーと」が、役に立ちました。既に一冊と半分まで埋めてあります。

 

「ママぁ、ごはん。ごはん♪」

「そうだねー、早く食べよ」

「では、私は朝食と昼食の仕込みをしてますので」

 

 お野菜の皮むきやカットなどの下処理は当然として、お魚の処理やお肉の加工も必要です。大きな塊だと喉に詰めてしまう事もあり得ますから、適度な大きさにしてあげないといけません。味付けなどはあまりしてませんが、これは調理の際に付けるので問題ありません。ノートにもその事は記載してますし、今回のこの食事にもきちんと味はしてあります。少々濃いかと思いますが、この双子ちゃんには合うかと思います。

 

「アイさんも段々上手くなってますね」

 

 寂寞たる思いがしますけど、本来は私はただのお手伝い。アイさんこそがママなのです。その成長を喜びこそすれ、寂しいと感じるのは些か筋が違います。

 

「ハルねー」

「え?」

 

 気付けば、アクア君が台所に居ました。もうお食事は終わったのでしょう。

 

「おしごと、たいへんでしょ? ちょっと休んでいきなよ」

 

 そう言って手を伸ばして腕を引こうとします。ちょっと足りないのはご愛嬌ですね。

 

「そうですね。一休みさせてもらいましょうか」

 

 社長宅に戻るのが少し遅れてしまいますが、一報入れれば問題ないでしょう。向こうの食事はいちおう朝のうちに仕込んであり、電子レンジで加熱するだけになってますし。

 

「今日ね、かんとくから電話があって。三日後に撮影だって」

「そうなんだ。アーくんも映画俳優の仲間入りだ」

「そ、そんなじゃねーよ。ただの端役だし」

 

 照れてそっぽを向くアクア君。愛らしいな。その仕草も、よく見れば似てる、かも。

 

「ハルねーも、デビューきまったんだって?」

「アイさん、もうバラしちゃったの?」

 

 いちおう社外秘なんだけど。まあ、家族だし言っちゃうかな?

 

 ……わたしも、家族、か。

 

「応援してね、アーくん」

「もちろんっ! ちゃんと推すからね」

 

 頼もしいファンが出来てしまいました。これは頑張らないと。むん。




雨宮ハルナ

アイとのデュオユニットが決まり、本格的な活動が見えてきた。今までの環境と少しずつ変わっていく事に不安を覚えるも、推してくれる存在が出来て嬉しくもあり。

星野アイ

B小町卒業かと思ったら並行で別ユニットとか普通は嫌がりそうだけど全然そんな事無かった。「ハルちゃんとならなんか面白くなりそうっ!」

斉藤壱護

キナ臭い仕事だけど事務所とアイドルたちの躍進のために引き受けた。B小町全員へのフォローはアイの子どもたちが生まれる頃から考えていたと思われる。「アイの為に辛い思いもさせたしな」
もっと早く気付けと言いたい人は多いハズ(笑)

斉藤ミヤコ

双子ちゃんのおかしさに気付くも、既におかしい奴がいたせいで「それもそうか」と納得してしまう。いや、そうはならんやろ(草)

星野ルビー

「ママぁ、ごはん。ごはん♪」しか言ってない。ルビーにしてはおとなしかった。ハルナのデビューを聞いてがっつり応援モードに入る予定。
「ハルちゃんデビュー、スゴい、いいな♪ 私も大きくなったらデビューするんだっ(覚悟完了)」

星野アクア

不安を覚えてるであろうハルナを気遣い声をかけにいく天然人誑し。こうやって人を篭絡していくんですネ、分かります(風評被害)



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