吾郎の妹ポジになった転生者 作:とくめいです
独自設定なので原作との乖離はあるかもしれません。愛称、名前なんかもオリキャラです。
追記
ご指摘を受けたので修正しました。
「はあー、だるぅ」
今日のレッスンはあんまり気乗りがしない。そりゃ当たり前だよ、あの子とレッスンとか。
「雨宮ハルナと申します。みーりゃん様との個別での合わせは初めてでございますね。よろしくお願いします」
丁寧な、むしろ慇懃無礼とも言える挨拶が癇に障る。
「わたしの名前は
「申し訳ありません。私などが馴れ馴れしく呼ぶのは不躾でした。見附さん、とお呼びしてよろしいですか?」
いちいち丁寧過ぎるし、普通なら怒るトコでしょ。こっちが煽ってるのを知ってるくせに涼しい顔して受け流す……私より年下のくせにやたらと大人びてる。面白くない。
「好きにすればいいわ。言っとくけど、私はここでは一番新参だけど先輩なのは間違いないのだから。そこのトコ、よっく理解しときなさい」
「はい、肝に銘じます」
すましちゃって。気に入らないっ
私がやるのは先輩であるアイさんの代役だ。今日は映画の収録なのでスケジュール的に仕方なく引き受ける事になった。内心、嫌だったけど。
ハル、こと雨宮ハルナのことを一言で言えば、「鼻持ちならないかわいい娘」である。表情はあまり変わらず、バカ丁寧な口調。ダンスは上手いのに合わせるのがすごく下手。歌声も音階をぴったり合わせすぎて、調和させる気がないように感じる。ようするに独り善がりなのだ。
社長のテコ入れだか知らないけど、アイドルなんてチームで動けなきゃ意味無いんだから。そんなに一人でやりたきゃソロでデビューすればいいじゃんっ! なんでユニットとかグループとかに拘るのよ?
ともかく、憂鬱な気持ちであろうとも仕事は
「一通りやったけど、通しでいける? 見附さん」
「はい、やれます」
「雨宮も?」
「問題ありません」
講師の先生が音楽を鳴らすCDプレイヤーのスイッチを押す。まだ歌詞の載ってない曲が流れる。曲自体は悪くないけど、明るい曲調にコイツのキャラは合ってない気がする。
「雨宮、見附の動きをちゃんと見ろ」
「はいっ」
コイツのダンスは悪い意味でリズム通り。敢えてリズムから外れた動きなんかも要求されるアイドルのダンスとは相性は良くない。だからズレてくる。
「はい、そこまで。ちょっと休憩にしよう」
「はいっ」
「はい」
B小町の楽曲で何回か合わせた事があったけど、その時よりは多少マシになっている、気がする。
「あの、みーりゃんさん」
「見附だって、言ったでしょ」
「あ、はい。見附さん。宜しかったら……」
それは昼食のお誘いだった。表に買いに行くのも面倒だったし、せっかく用意したと言われたら断るのもなんだか狭量な気もするし受けることにした。なんだけど……
「あのさ」
「少なかったですか?」
「多過ぎよっ!」
休憩室のテーブルに広げられたタッパーの数々。ゆうに四人前はあろうかと思える。しかも種類も豊富だ。小さなおむすびが詰まってたり、唐揚げやパスタの入ってるもの。サラダもコールスローやポテトサラダとかあって、サンドイッチに至ってはなんか手作りっぽい。はみ出さんばかりのタマゴサンドやハムとチーズ、タラモサラダなんかもある。
「美味しそうだね、僕もご相伴させてもらっていい?」
「どうぞ、どうぞ」
ちゃっかり講師の人まで来た。まあ、どう見ても女の子二人じゃ消せそうにないし。
「家事くらいしか誇れるものがないので。口に合うかは分かりませんが、どうぞ」
「……頂きます」
箸で摘んだ小さなおむすび。切った海苔を一つ一つ乗せて巻いた手間のかかる事をよくもまあ。
「、おいし♪」
「それは、ようございました。おかずもどうぞ」
「う、うん」
サンドイッチのタマゴは少し辛味があるマスタード入りだけど、疲れた身体に食欲を刺激してくれる。サラダもパサついてなくて新鮮な感じ。唐揚げは冷めてるけど味がしっかり入ってるし、パスタも塩だけにしては香ばしい。
「ごちそうさん。いやあ、食った」
「ごちそうさま」
「お粗末様です」
気が付けば、殆どが空になっていた。まあ、半分近くは講師の人が食べてたけど。筋肉に消えたとでも言うべきかしら?
「お茶をどうぞ」
携帯用のポットから注いだお茶を手渡してくれた。ほんの少しお茶っ葉が残る所を見ると、急須から淹れた物だと分かる。家ではお母さんすら面倒だと言うのに。
「……あったかい」
ほんのりと暖かいお茶を飲む。田舎のおばあちゃんが淹れてくれたお茶を思い出した。
「壱護さんとこの炊事もしてるんだろ? よくもまあこれだけ用意したもんだ」
「双子ちゃんの手間もかからなくなりましたし」
「そういやそっちも手伝ってるんだっけ? 若くてもそのうち倒れるぞ?」
「きちんと休めてますので、ご心配なく」
そう言って僅かに頬を綻ばせる雨宮……なるほど。たしかにちょっとかわいいかも。
「ねえ。立ち入った話、聞いてもいい?」
「? 答えられる範囲でなら、何なりと」
それから彼女がデビューするきっかけを聞かされた。もともと宮崎で育った彼女は、孤児だったらしい。その保護者だった先生が海外へ赴任するという事で知り合いの社長が引き取り、養子となったそうだ。
「あれ? じゃあ今の苗字って斉藤?」
「雨宮で呼ばれ慣れてるので、そちらのほうが座りが良いのです。ですので雨宮ハルナとして覚えて頂ければ」
「ふぅん……」
さらっと聞いてしまったけど。
なんだか居心地が悪くなってしまった。
コレ、簡単に話していい内容じゃないよね? 両親を亡くしてる段階でもうキツイんだけど。
「……ま、家庭の問題も色々あるか」
講師の先生が呟く。深入り出来る話じゃない。私もそれ以上は聞く気も起きなくなった。
でも、一つ気になる話が出てた。
「社長の、双子ちゃんて。あれ? 『まるごとB小町』でやってたあの?」
「はい。ご存知のあの子たちですね。ご出産の時からのご縁でして」
「マジで?」
どうも、その保護者だったお医者さんていうのは産婦人科医だったらしい。海外とか言ってたけどNPOとかそんな感じなの?
「それじゃあ今でも双子ちゃんとは」
「ほぼ毎日お会いしてますね」
「うらやましーッ!」
天使みたいなあの双子を間近で拝めるとかスンゴイ羨ましい。あの社長の遺伝子とか有り得ないとも思うけど、奥さんのミヤコさんの遺伝ならワンチャンあるかも。あの人も綺麗だしなぁ。
「私の一存では難しいですが、社長やミヤコさん経由でお会いする形は取れると思いますけど」
「よろしく、お願いしますっ!」
ビシッと頭を下げてお願いしてみた。くすり、と笑い声がしたので顔を上げると。
「う、承りました。くす」
はにかむような笑顔。
……うわぁ、少しずるくないかな。
日頃の無表情からそれは……落差がすごくて、可愛く見えてしまう。
その後のレッスンでは、かなり動きが改善してた。ちゃんとこっちを見て、合わせられるようにもなったし。逆にこっちが引っ張られる事もあったけど、それはたぶん私の驕りだったのだろう。
先輩だから合わせなさい。
そうではなかったのだ。
お互い歩み寄ることが大事なんだと、今更のように気付いたのだった。
「なに? 絆されたの?」
「そういうわけじゃないけど。でも、先入観はやめたほうがいいって話」
「どーだか。今回のだって結局アイとセット売りだし。私らはどーでもいいんでしょ?」
「……むう」
B小町の中では私は一番の新参。だから意見が通らないのは分かるけど……この人たち、拗らせすぎてない? そりゃあ社長のやりように文句がないわけでもないけど。
「で、でも。今回の仕事は広告とのバーターだって話だし。そっちはB小町メインだって」
「どうせアイがメインで私らはおまけよ」
「そーだよねー」
「……」
あらためて感じた。このグループはかなりヤバい。疑心暗鬼と固定観念で頭が凝り固まってるよ。なんとかしないと空中分解とかも有り得る。
今まではアイという抜けた存在がいたから、それにさえ目を瞑ればまだ回っていた。アイだからしょうがない。アイならなんとかする。そんな空気が同調圧力になっていたんだ。
でも、雨宮ハルナというもう一つの存在によってバランスは崩された。後発に抜かれた先輩たちの心情は理解できるけど、それはたぶん間違いだと思う。
「どうしたもんかな……」
携帯の待受の、二人の赤ん坊と雨宮。なんとかしたいのも山々だけど、私にはどうにも出来そうにない。それが、もどかしかった。
見附綾子
愛称みーりゃん。B小町の中では一番後から入った。そのせいか、古参メンバーよりは柔軟にハルナを受け入れられた様子。パンダの髪飾りを受け継いでいる。わりと普通の家で育ったため感性も普通。アイに対しての感情は憧れの方が勝っている。なのでハルナを特別扱いする運営に腹を立てたけど、理由を知ると納得してしまう、わりといい子。
講師の筋肉のひと。
デュオユニットのために契約された新任トレーナー。言ってしまうと短期契約だけど、それなりに面白い素材なため損得抜きで参加してる。食事はバランス重視型。
ハルナの過去は聞いてるけど、ここでツッコむような野暮はしない大人です。
雨宮ハルナ
語った話は辻褄を合わせるために社長夫妻と共有してる。雨宮医師の不在は今後、海外への赴任という方向で調整していくことになる。
みーりゃんとのレッスンに昼食のお誘いという奸計(笑)を用いた。なんとえげつない戦略。これは海のリハクにも見通せなんだw
結局、相互理解が必要なわけですね。
その他のメンバー
ちょっと凝り固まってる感じですが、人格優先の苺プロは基本的にいい子ばかりのはず。なんとかなればいいけど。