吾郎の妹ポジになった転生者 作:とくめいです
注意。
センシティブな表現がありますっ!
そういうのが苦手な方は戻ったほうがいいと思います。まあ、大したことはないですが(笑)
追記
言葉の誤用があったので修正しました。
暗澹→忸怩
アイの出演のバーターとして俺は映画の端役として出ることになった。今日はその撮影の日である。
運転するミヤコは仕方ないとしても何故かルビーとハルナも同行していた。いや、たしかにルビーはまだ放置していい年齢じゃないから仕方ないけど、ハルナは何故にいるのか。
「アーくんを気に入ったという監督が気になったためです」
と言っていたけど。明らかに抱っこする腕の力が強い。取って食われるとか思ってないかな? ちなみにミヤコに抱っこされたルビーはガチ寝してる。よだれ拭けよ。
「本日はうちのアクアがお世話になります」
「いやいや、例の件、話は通ってるんだよな?」
「いちおう……」
歯切れの悪いミヤコ。わずか一歳の乳児を役者として契約をしたことが良心の呵責となっている、らしい。たしかに子役ったって普通はもっと年嵩になってからするもんだろうし。どっちかというと赤ちゃんモデルという方が正しいだろう。
「事務所に入ってない子供使うと怒られるからな」
ふむ。『子役なんて適当でいいんだよ』ぐらい言いそうだったけど、この人意外とまともな人だ。人は見かけ(顔)によらない。
「ときに、見ない子がいるけど?」
「うちの子です。現場の空気を見せてあげたくて。ご迷惑とは思いますが」
「そりゃ別に構わんけど」
そう言って彼が俺を抱っこするハルナに目を向ける。彼女は軽く会釈してから名乗った。
「苺プロ所属、ハルと申します。双子ちゃんのお世話に来ました」
「……見た感じ、中学生くらいか? 赤ん坊の世話とか出来んの?」
監督が少し興味を惹かれた様子だ。ミヤコが言葉を繋ぐ。
「私の手の足りない時をフォローしてくれてます。家庭的な子でして」
「炊事、洗濯、お掃除などは得意です」
「へえ。時代かなぁ。俺等の餓鬼の頃なんて、同級生にそんな奴居なかったわ」
時代性の話ではない気がする。そんな環境の子が側に居なかっただけの話だ。
いつ如何なる時にも、家庭的に良好でない子供がいる。姉妹、兄弟が世話するなんて、何処にも有り得る事なのだ。要するにこの人はそういう環境で育っていないという事なのだろう。
「ま、いいわ。大人しそうだし撮影の邪魔にはならんだろ」
「重々承知しております」
物静かに首肯するハルナ。監督は俺に目を向けてから現場の方を向いて腕を広げた。それから映画のキャスティングに関して話し始めた。話の流れから低予算だって分かったけど、お世辞のつもりで超大物とか答えたらウキウキとしながらノッてきた。何このおっちゃん、おもしれぇ(笑)
「とりあえず、子供らは奥の控室行ってて貰える? ミヤコさんはこちらへ。少々話したいことがあるんで」
「分かりました。ハルナちゃん、ルビーお願い出来る?」
「はい」
俺を降ろして代わりにルビーを抱きかかえるハルナ。むにゃむにゃとハルナの胸に顔を押し付けてご満悦な我が妹……いや、よだれ拭けよ。ハルナの服についただろ。
「そっちの奥な。他に何人かいるから」
「畏まりました。アーくん、いきましょう」
「うん」
撮影の現場は某県の山奥。木々が生い茂っているけど、高千穂とは雰囲気が若干異なる。空気の差かな? 広めの山小屋であるその建物は、平時はまさしく山小屋として使っているのだろう。撮影のために間借りしてるという方が正しい。映画のスタッフさんが右往左往してる廊下を歩いて一番奥の扉に『演者控室』と荒々しく書かれた貼り紙があった。
中に入ると、子供が一人いた。黙々と本を読んでる。役者、かな? にしては小さいな。ひょっとして俺の相方になる子かもしれない。
「ハルねー」
「うん」
促すとハルナは彼女の前まで歩いていき声をかけた。
「役者の方ですね。はじめまして」
「ん、ああ。よろしく」
素っ気ない態度で目線を本に戻す幼女。見た目は可愛らしい。まだ二歳くらいなのに渡された本を読み解くとはなかなかに畏れ入る。まあ、字はひらがなに直されてるけどそれでも凄い。この時点で本が読めるというだけで、
「有馬かな。そっちは?」
目線を戻さずに声だけかけてきた。あくまで自分のスタンスを曲げないつもりらしい。それだけ集中してるということか。
「こちら、アクアと申します。苺プロ所属の子役でございます。まだ未経験の新参者ではございますが、よろしくお願いします」
「ん。分かった」
会話が出来てねえな、コイツ。俺は相手にするのはムダだと思った。ハルナのスカートを引いて離れた場所にあるパイプ椅子を指差す。
「はい。では、また後ほど」
会釈をして有馬の前から移動する。無愛想な対応を受けてハルナが意気消沈してるかと思いきや、彼女はいつも通りの無表情だ。周りから見ると怒ってるようにも見えかねないけど、これはハルナにとって平常運転の証。
広げてあるパイプ椅子に丁寧にルビーを降ろすと、もう一つの椅子を広げて今度は俺を抱えて座らせる。
このくらいの歳だと普通に椅子に腰掛けるのも怖いのだが、有馬の方は自前の三脚椅子を持ち込んでいた。なるほど、その手があった。
寝てるルビーをもう一度抱きかかえ、椅子へと腰掛けるハルナ。寝てると落ちるからな。何度か家でも寝コケて落ちそうになった場面があった。
「んあ、?」
「お目覚めですか、ルビーちゃん」
「……ハルちゃん? ママはぁ?」
「今日は来てないですよ。撮影日が違うそうです」
「むぅー、ママの胸でオギャりたいのに」
そう言ってハルナの胸に顔を埋めるルビー。おい、お前寝てないのにそれはライン超えだろ。
「ルビーちゃん?」
「ハルちゃんのおっぱいがもー少しあったら良かったのに」
「ごめんね、小さくて」
「小さくてもいいよ。ハルちゃん優しーから♪」
軽くディスられてるのにハルナは柔らかく微笑んで受け流す。俺等を相手にする時だけ、この表情をするハルナ。相変わらず落差がひどい。
「ハルちゃん、胸を大きくしたい?」
「そうですね。アイさんくらいは欲しい、かな?」
「それじゃあ、協力してあげる♪」
「? ルビーちゃ、ちょ、あっ」
……コイツ。やるに事欠いてハルナの胸を揉み始めやがったっ!
「ほら、ここをこうして……」
「痛っ、つ、つまんじゃだめ、」
「で、周りからこう……」
「あ、あ、」
……いや、バカ。ナニしてんだよ。ナニしてんのか? そうじゃなくて。押し殺すようなハルナの嬌声は初めて聞いたもので……背徳感が凄まじい。思わずそのまま凝視してたら隣から怒鳴り声がした。
「ナニ乳繰りあっとんじゃっ、ボケーッ!」
「ぴっ」
幼児があげる怒号じゃねえなぁ。見ればおかっぱ頭の幼女が肩で息をしながらこちらを睨みつけている。
「ここはプロの現場なのよっ! いちゃついてんならさっさと家に帰りなさいっ」
マトモな事を言う子供だ。たしかにその通り。これはルビーが悪い。
「ごめんなさい、妹が羽目外しちゃって」
「あら、兄の方はまともそう。さっきはごめんね。私は有馬かな。今日の共演者よ」
そう挨拶してきたのでこちらも返す。
「苺プロ所属、アクアです。今日は宜しくお願いします」
「……へえ。ま、まあいいわ。よろしくね、アクア」
ファーストコンタクトは最悪だったけど、少し持ち直した感じだ。
「あ、重曹を舐める天才子役」
「十秒で泣ける天才子役っ!」
ルビーの言葉にまたも言葉を荒げる有馬かな。うちの妹はナチュラルに人を苛つかせる天才だな。
ふーっ、と息をついてからこちらを向いて有馬は話しかけてきた。
「あなた、コネの子でしょ? 本読みの段階じゃ貴方もアイドルの子も出番なかったのに。監督のゴリ推しだってママも言ってた。そういうのいけないんだからね。まあ、マネージャーの女の子と妹が乳繰り合うような事務所なら、そういう事も平気でやりそうよねっ」
捨て台詞をかまして移動しようと扉の前まで動く有馬。たぶんルビーとはウマが合わないのだろう。それは納得。でも、こちらも同じだ。
コネでゴリ押しなのは確かだから否定はできない。けど、いけないというのは少し違う気がする。
「どこがいけないのかな?」
「は?」
「いや、キミ言ったよね。いけないって。確かにゴリ押しで入ってきたけど、そのために誰かを降板させたり大幅に変更したりはしてない。あくまで追加でねじ込んだだけ」
少なくとも、今回の撮影の部分では、だけど。
「今回は低予算の映画でキャストの任用権は監督にあるって本人が言っていた。なら、その権利を行使しているだけだ。何も悪いことなんてしてない。それに僕らも監督に取り入るような真似もしてない。監督からのオファーなんだから」
続けざまに言葉で殴りつける。まさに正論パンチである。
「そ、それは……」
流石に天才子役でも、こう言われたらなかなか返しづらいよな。このあたり人生経験が物を言うわけで。
「ぺい」
ぽす。
何かが俺の頭に乗っかってきた。べつに痛くも何ともないけど、振り返るとハルナがチョップをしていた……何故に?
「え、ハルねーぇ?」
「アーくん、いけませんよ。レディには紳士であれ。言葉で撫で切るような事はしてはいけません」
ハルナが視線で促してくる。有馬の方を見ると、うっすらと涙を浮かべているのが分かった。
──俺はなんてことをしたんだ。
まだ幼稚園にも入ってなさそうな子供相手に大人がムキになって正論噛ますとか。大人気無さすぎる。
「有馬かなさん。弟がご迷惑をおかけしました。姉である私が謝罪致します。申し訳ありませんでした」
「あ、あなたにあやまられても……」
「年若い者が間違いを犯したならそれは指導した年長者の責任です。私は姉という立場ですし」
ハルナに頭を下げさせたということが、オレの心に
この時、俺は間違いなく子供だった。ムキになって反論するとか年齢が遥かに上の大人のやる所業じゃない。
「ルビーちゃんもいけませんよ。私と遊びたいなら帰ってからです。ここはお兄ちゃんのお仕事の場。いい子で待っていないと迷惑になります。ルビーちゃんはいい子ですよね?」
「……うん。ごめんなさい、私が騒いじゃったせいで」
ルビーが素直に謝った。基本的に子供だけど、だからこそ彼女は言われた通りに謝ることも出来る。
なら。
「僕も言い過ぎたよ。ごめんなさい、有馬かな。許してくれるかな?」
既に溜飲は下がっていたし、撮影に変な状態で臨まれてもそれは本意じゃない。頭を下げるくらいなんてこともないのだ。
「……わ、わたしもごめん……」
消え入るような声で、彼女も謝った。子供は素直でいいな。頭ひとつ下げるのも、体面を考えるのが大人である。出来ればそうならないよう、肝に銘じておこう。
「みなさん謝りあいましたね。それではこれで手打ちです。有馬さんはお菓子は好きですか?」
「え、ええ」
「実はドライフルーツのケーキを持ってきてまして。よければ有馬さんも頂きませんか? 美味しい紅茶もありますよ」
「え?」
まさかいきなりお茶会にお呼ばれされるとは思わなかったらしい。
「ハルねーのケーキは絶品だよ」
「こーちゃもね♪」
「……うん」
・・・・
ミヤコや有馬の母が控室に来たとき、彼女たちはあっけに取られていた。
「おいしいっ これどこのケーキなの?」
「お手製です。生クリームは市販のものですが」
「言ったろ。絶品だって」
「もぐもぐ……」
「ルビー、なんか喋れよ」
満面の笑みを浮かべている子どもたち。小さなテーブルは段ボールの上に板を載せて作ってて、大きなスカーフをテーブルクロスにして。紙コップの器に、紙の皿、プラスチックのフォークという間に合わせ感は強い。だが、和やかなお茶会と言えた。
よく見ればフルーツケーキに入っているドライフルーツも細かく刻まれている。食べる者に配慮した細かい心配りに気付いたものは果たしていただろうか? たっぷりの生クリームとフルーツケーキは見るからに甘そうで、大人の目からすると些か手を伸ばしづらかろう。
「どうぞ」
「え、ええ。ありがとう」
神経質そうな有馬の母親もすっかり毒気が消えてしまっていた。それだけ驚いたのだろう。自然に笑う我が子と、それをなした少女に。
「よ、と」
素早く携帯を取り出した監督が動画を取り始めたのは、誰も気付かなかった。ミヤコも有馬の母も、ハルナに招かれて席についていたのだから。
ADが呼びに来るまで、ひとときの談笑が控室を満たしたのだった。
星野アクア
よそ行きの服に身を包んで少しだけ大きくなったアクア。ルビーの行動に振り回されるし、少々大人げない面も見えてます。ハルナに頭を下げさせた事に罪悪感を覚えて謝るとか一歳児の考えることじゃないよね。味覚とかは子供に戻ってるので甘いものは嫌いじゃない。
雨宮ハルナ
まさかルビーとイチャコラするとは思わなかった(笑) いいぞ、もっとやれ草
監督が気になったと言うわりに接触はしていないのは何故か。たぶん悪意のある人ではないって感じたのかもしれないけど、真相は不明。
差し入れに手作りのものを持ってくるのは本来はマナー違反です。今回は規模も小さいし監督も鷹揚なので注意もされてませんが、皆さんは気をつけましょう。
星野ルビー
自由過ぎると評判のルビーちゃん。俺たちがやれないことをやってのけるその奔放さは、ちょっと度が過ぎてました(笑) おぎゃばぶランドと叫んでたほうがマシだったかも。
斉藤ミヤコ
実際赤ちゃんモデルとかの場合、契約とかどうなんですかね? 業界人でもないし分からないから想像なんですが、心中は複雑なんじゃないかなと思いました。
有馬かな
本作初登場の重曹ちゃん。煽ってレスバに負けて涙目とか可愛いかよ(笑) あとお菓子につられてる所も可愛い。演技としての天才ではなく、本当の意味での天才だと思います。乳繰り合うとか二歳児の言う言葉じゃない(真顔)
監督
五反田泰志という名前では今のところ呼ばれてない。なのでそのまま監督。とりあえず顔に似合わずフランクで面白いおじさん。仕事ぶりは真面目だし、色々と周りの事も見てる。個人でのスタジオなのだろうけど、まさか実家の一部屋とかこの時は思わなかっただろうねw