吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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いよいよハルナが始動します……え、まだ?(笑)


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「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ。いい仕事が出来そうで楽しみです」

 

 向こうで社長とディレクターらしき人が談笑しているのをスタジオの端っこから見ている俺たち。

 

 いつもの会議室を飛び出して、やってきたけど、当然のようにミヤコも同行している。お陰で彼女が俺たちに睨みを効かせやすくなってる……やりづれえな。

 

「すごいねー、キラキラしてる」

「こんなトコ入ったこと無いからな」

「分かってるとは思うけど、あんまりぺらぺら喋らないのよ。普通の一歳児って意味の分かる言葉喋るのも稀だって言うのに……」

 

 まあ、個人差はあるよ。一般的に二、三歳くらいからちゃんと喋れるとは言うけど、五歳になっても喋れない子とかもいるし。それだって俺たちレベルの会話が出来るのは有馬かなくらいだろう。それだけ珍しい存在なわけだ。悪目立ちはしたくないだろうね。ただでさえこの容姿のせいで目立ってるし。

 

「わー、かわいい。お子さんですか?」

「はい。うちの子達で、アクアとルビーといいます」

「ばぶー♪」

「うわ、可愛すぎるー。あの、写真とかはダメですか?」

「ごめんなさい、ダメなのよ」

「うわー、残念」

 

 スタッフ、たぶんADとかディレクターとかの反応を見る限り、すごい威力だというのが分かる。まあ、撮影NGな理由も俺が子役として事務所にいるせいもある。

 

「うちの方で赤ちゃん関係の仕事ありますけど、オファーとか出せます?」

 

 と聞いてくるのは広告代理店のP(プロデューサー)だ。例の件とは違う人らしい。その人は社長と会話してる。

 

「ここではちょっと。社長が来てますのでそちらに伺ってもらったほうが早いかもしれません」

「壱護さん来てるんですね? それじゃあ後ほど」

 

 何とも足取り軽く移動してったな。これはまたしても案件というやつかもしれん……今回はルビーにまわすか。赤ちゃんキャラとして使うなら愛想のいいルビーのがいいだろう。

 

「何考えてるか分かるけど。たぶん向こうは双子での起用考えてると思うんだけど」

「だよなぁ……」

 

 この絵面に威力があるのは当然知っている。とは言っても、迂闊に愛嬌を振りまいた責任は取って貰わんと(使命感)

 

「色んな人がいるね」

「そうだな」

 

 アイという存在がいるせいだろうか。デビュー用のPV撮影程度に果たしてこんなに必要なんだろうかというほどスタッフが多い。監督の映画の倍はゆうにいる。ていうか半分は臨時雇いとか言ってたし、五反田スタジオ、ひょっとしてやべぇところ?

 

 そう。実は今日はアイとハルナのデュオ『STARRY the Moon』のデビュー曲のPVの撮影なのである。徐々に知名度の上がっているアイとネット界隈からの登場という異色な経歴のハルのデュオユニット。B小町専用チャンネルでの発表と苺プロ公式webでの告知くらいしか宣伝してない。

 

 

 映画は作品が出来上がらなければ上映は出来ない。この間の撮影から二週ほど経ってるけど、封切りはさらに一ヶ月後。その間に撮影と、編集などの作業がある。さらに言えば監督の作品の上映館数はかなり少ないと聞く。それだけの手間を掛けて果たしてどれほどの収益になるのか。この業界のことはとんと疎いので具体的な数字は出せないけど、大したものではない、との予想はできる。

 

 なのに。まだデビューすらしてないアイドルユニットのたかがPV撮影、それもスタジオの規模はそんなに大きくないのに来てる関係者が多いのは何故なのか。

 言ってしまうとアレだけど、苺プロは芸能界において弱小で資金などは雀の涙、とは言わなくても大した金額にはならないだろう。下手なトコから融資でも受けてるのかと勘ぐってしまう。

 

「どしたの、お兄ちゃん。難しい顔して」

「いや、明日からあのマンション出ないといけないかと考えると頭が痛くてな」

「え、なんで? なんでそーなるの?」

 

 我ながら邪推が過ぎる気がするけど。なんというか社長の経営理念が尖り過ぎてて、不安しかないんだよなぁ。一ファンとしてみてる分には気にならなかった、先鋭的な販路戦略が怖いんだよね。

 

「アクアが気にするのも分かるけどね。あのひとの感覚っておかしい時があるもの」

「ミヤコ、ママ?」

 

 相変わらずママって言いづれえな。ミヤコが頭を撫でる。ようやく板についてきたこの仕草に少しどきりとした。

 

「私はデータからしか判断出来ないけど、あの人は直感的にそれを判断するの。B小町が売れた理由もそれだからね」

 

 B小町が結成されて約五年。メンバーの若干の入替えがあったにせよ、結成時の四人全員は残ったままだ。アイの長期休養があった一年間を彼女たちは乗り切って、復帰ライブでは歴代観客動員数を大きく更新した。それも社長の手腕のおかげなのである。

 

「でもさあ。アイのソロなら分かるけど。わざわざハルナまで一緒にしてデビューさせる必要ってあるのかな?」

 

 たしかに注目度は高まってはいる。この間の動画配信からはハルナへのコメントや手紙などもきていたらしいし。

 

 でも、やはり殆どはアイの一人勝ちだ。この間の方針転換によって、より魅力的になった気がする。ミステリアスなイメージを脱却させて、どこにでも居る普通の女性という、より親しみやすい方向への転換が出来たらしい。

 

「それも織り込み済みだって話よ」

「マジで?」

「あの人、ホラも吹くから信じづらいけど。ハルナがいて、良かったって言ってたわ」

 

 ……そういう笑顔はズルいよなぁ。信頼感溢れてるのが分かって、なんというか社長爆発しろと言いたくなる。

 

「ふーん。じゃあハルねーは刺身のツマだね」

「……本当によく知ってるわね、そんなの。でも、私もアイツにそういったわよ?」

 

 彩りをよく魅せるため、お刺し身に添えられた大根の細かい千切り。家の中を程よく支えてくれていたハルナをそんな扱いにすることにミヤコも少しは気が咎めたらしい。口調からは不満が見える。

 けど。その後に続く言葉には、違う感情が見て取れた。

 

「そしたら『アイをアイドルから転身させるにはいい起爆剤だ。そんな真似するかよ』だってさ」

 

 アイの転身……それはつまりアイドルの引退って意味か?

 

「ここから先はアイツだけの時に聞いてね。たぶん、二人にはちゃんと話すと思うし」

 

 そう言って俺とルビーの頭を撫でるミヤコ。ルビーは唇を尖らせて不満を思い切り表現していた。

 

「アクア、ルビー♪」

 

 そこに、アイがやって来た。

 

「うわあ♪」

「これ、は……」

 

 そこには、新しい衣装に身を包んだ天使(アイ)がいた。

 

 膝丈のスカートは白く、パフスリーブのボレロは一転して黒い。そのボレロを繋ぐのは金色に輝く飾緒。その真ん中には星の形のブローチがあしらわれている。

 

 服自体にラメが入っているのか光が当たってところどころがキラキラと輝いて見える。

 

 足元は白の短いソックスに黒めのローファーのようで、全体のシルエットはお嬢様学校の制服のようにも感じた。

 

 髪はいつもの左側のサイドテールだけど、そこには白いリボンが飾られていた。実際にリボンで結んでいる訳ではなく、髪ゴムにリボンをつけたのだろうけど。

 白いリボンに入ったレースもまた彩りを添えて、上品なイメージを醸している。

 

 それは有り体に言って女神に等しい御姿。余りに神々しく、直視したら溶けてしまいそうな。そんな危うさを秘めていた。

 

「お兄ちゃん、早口で何言ってんの、キモ」

「なんか感情込めて言えよ。フラットに言われると余計傷つくわっ」

 

 ヤバい、声に出してたらしい。どの辺から言ってたのか分からんけど、そんな俺をアイは抱きしめてきた。

 

「嬉しいなぁ。そんなに褒めてくれるなんて♪」

「も、勿論だよ。アイねー」

「わ、わたしも言えるモンッ アイねー、とってもキレイっ!」

「ありがとね、ルビー」

 

 対抗するようにルビーも褒めるけど、相変わらず語彙が少ないな。まあ、子供らしくて全く問題ないけど。

 

 しゃがんで俺たちを抱くアイに声をかける者がいた。

 

「アイお姉ちゃん、裾が汚れるから」

 

 ハルナだった。

 

 アイとは対照的にスカートが黒、ボレロが白で袖もビショップスリーブと違っている。よく見ると衿のラインはアイボリーで、身頃の方は白と違っている。アイの方も実はここの色は変えられていたのだけど、黒と紺て、分かりづらいな。

 

 同じように銀色の飾緒で留めている。真ん中のブローチは星ではなく上半分を切り取った半円形だ。

 

 黒いハイソックスに、アイボリーのローファーもなかなかに良い感じ。服全体のラメはアイよりは少ないらしい。袖やスカートの裾にラインが入っているのでアクセントとしては十分と言えるだろう。

 

 髪は対称的に右のサイドテールで、こちらは黒のリボンだ。銀色のポニーフックで彩られている。黒のリボンやハルナ自身の亜麻色の髪にも良く映えているのは、コーディネーター素晴らしいな。

 

「……あ、あの。アーくん、そんなに、その……」

「女の子褒めるのスゴい上手いね、アクア」

「お兄ちゃん、さいてー」

 

 また、口に出してたかオレッ!?

 

 ま、まあ。ふたりともすごい似合ってるよ、ということが伝われば良いわけだけど。

 

 今度から口に出さないように気を付けないと。そのうちマジでヤバいことになりそうだからな。




星野アクア

心の声が漏れがちというデバフスキルが増えてしまったけど、アイやハルナには好印象なので問題ナシッ(現場ネコ風)壱護の経営方針にやや不信感を抱くも、子供なのでなんとも出来ないもどかしさを感じてる。餅は餅屋という言葉を贈ろう。
ちなみに女性の服飾に詳しいのはアクアになってからのもので、その知識はミヤコの女性雑誌である。お前はドコに行こうとしてるのかと聞きたい気分です(笑)

星野ルビー

そろそろ簡単な言葉は喋れる年齢に『ばぶー』言うのはズルいというかあざとくて草。赤ちゃんモデル自体は嫌じゃなくても自分だけにやらせようとするアクアを引き摺り込もうとするの、ホントイイ性格してるネb

社長

壱護と書くより座りがいいのでこれからはこう書きます。役職名ってテンプレで分かり易いし。戦略がうまくいくとは限らないけど、その辺の思い切りの良さは社長らしいと思う。

斉藤ミヤコ

保護者役が板についてきてる。誰も産んでないのにもうママだよなぁ……もう双子の事は諦めてます。普通の子じゃないよ、こんな子供(笑)

星野アイ

デュオでの衣装は基本コンセプトからシンメトリーを意識してます。アイは白を基調にしたもの。B小町と違ってうさぎの髪飾りはしてません。その代わりのシンボルは『星』。本人的にはシンプルで気に入ったもよう。

雨宮ハルナ

ハルナは黒を基調にしてます。ブローチは半月を模したもので、これは時々見せるジト目を表現したかったと社長は宣ってるようで、ハルナ的には疑問(私こんな目してますか?)。アクアに褒められて顔は真っ赤だったらしい。
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