吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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いつかは分からない。誰かもわからない。
そんな内容です。

追記
誤字報告ありがとうございました。


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 面白くない。

 

 私は苛つく心を宥めてステージをこなす。いつもはセンターにアイ。アイがいない時はたかみー。だから序列で言えば私が三番目のハズなのに。

 

「どうも、ありがとうございましたーっ!」

 

 地方巡業でのセンターは、一番後から入ったみーりゃんだった。

 

 納得なんていかなかったけど、社長に文句なんて言えやしない。アイのことを軽くイジメただけで辞めさせられた子がいたけど、その時の社長の宣告は今でも覚えている。

 

『イジメなんてやる奴はウチには要らんッ! アイだからじゃねえぞ? 仲良し小好しでいろとは言わねえけどな。イジメ容認するほど落ちぶれちゃいねえんだよっ!』

 

 おかげでアイはB小町でありながら神聖不可侵の存在になった。みんなの妬む対象はアイだから。

 

 でも、私は違う。

 

 何かと絡んでくるたかみーも、優柔不断なめいめいも、嫌いだ。他の二人だって私をマスコットみたいにしか思ってないし、みーりゃんだって私のことを懐疑的な目で見てる。

 

 でも。一番キライなのはアイだ。

 

 アイに比べたら、みんなは全然許せる。

 

 私とおんなじくらいしか背がないのに、小顔だからキライ。あの子と並ぶと私は頭でっかちに見えてしまうから。

 

 あの子のバカなキャラもキライ。私のポジションでしょ、マスコット枠なんだから。そのくらい空気読めよっ

 

 あの子の美貌がキライ。たかみーがいちいち弄ってくるのが腹が立つ。仕方ないでしょ、丸顔なんだから。私だって潰れアンパンみたいな顔になりたくなかったわよっ!

 

 でも。アイがいたからこそ、B小町が伸びたのも事実だ。

 

 惹きつけられる天性の瞳。暴力的なまでに完成された美貌。同じ年頃とは思えないほどのオーラを放つ彼女は、たしかに一時代に一人の天才。一番星の輝きを持つ彼女には、同じ土俵では絶対に勝てない。そう思わせる何かがあった。

 

 そんなのを相手にするのはバカのすることだ。なのでその光の残滓で、私たちも輝こう。みんなの共通認識はいつの間にかそうなっていた。

 

 イジメなんかせずに、適当に話を合わせ。干渉させず、干渉もしない。お互いプロという立場を理解し、アイのおこぼれでスターダムをのし上がる。それで楽に知名度が上がるのだから。

 

 アイがバカやっても笑って許容し、アイがやらかした事をなんとなくみんなでフォローして。波風立てなければ、社長だって文句は言えない。イジメてもいないし、無視だってしてない。言われたとおりにしているだけなんだから。

 

 そんなアイが長期休養となった時はざまぁと思ったもんよ。何も考えてないのに心病んだとか笑えないわ。

 

 まあ、一抹の不安はあった。

 

 アイがいないと確かにパンチ力に欠けたのは事実で、センターを入れ替えて個別のキャラをアピールする戦略に切り替えた社長はやっぱり凄いと感じた。アイの不在を健気に埋めるという美談も後押ししてなんとか一年を乗り切って。

 

 戻ってきた。

 アイが。

 

 一年も休んで、どうせついてこれない。顔とか手入れもせずに暮らしてて、今までの神話を崩すんじゃないかと内心、慄いたし、ほくそ笑んだ。

 

 でも、変わらなかった。

 

 いや。

 

 より、高めてきていたが正解か。

 

 少しだけ背が伸びて、体型も凹凸が目立ってグラマラスになって。前のままでも十分に可愛かったのに、さらに神々しさを増した。

 

 アイの問題の一つは未だ改善されていなかったのは幸いだったけど。

 

 

 

『アイの笑顔って、完成され過ぎてて造り物っぽいんだよね』

 

 

 掲示板の書き込みがそれを表していた。

 

 ライブパフォーマンスの先生の言葉を守り、アイは完璧な笑顔を身に付けた。それは万人に笑顔と認識される黄金比を守ったもの。

 

 それは武器としてはかなり強いが同時に造り物だと分かる人間には分かってしまう。

 

 あの動画が配信されるまでは。

 

 

『きゃわわ〜♪』

『かわいい……です……』

 

 

 動画配信サービスを使ったB小町の番宣「まるごとB小町」。そこで社長の双子ちゃんのヲタ芸を見たアイの蕩けるような笑顔。

 それまでの冷たい雰囲気を一転させる笑顔を身に付けたアイは、紛うことなき女神となった。

 

 それはいい。

 もうアイのことは構いやしない。

 アレはもう人には敵わない存在。

 そう思えば、納得できた。

 

 でも、新たな存在が私の心を乱す。

 

 雨宮ハルナ。

 

 まるごとB小町のMCとして出てきた正体不明の女の子。社長のとこに住み着いたらしい。アイの身元も引き受けてるから周りも何も言わないけど、あらぬ誤解を受けてもおかしくない存在でもある。

 

 そういうゴシップはともかく。初めに動画を見た時は、こりゃ色物枠だと思った。

 

 なにせ、表情がほとんど変わらない。喜怒哀楽が感じられないけど、顔の造形はとても良くて。まるで能面を被っているかのようで。

 

 顔が良くてもこれじゃあアイドルとしては不合格。アイのような完璧な笑顔も出来ないのだから。

 

 

 けど。

 その評価はすぐに一変した。

 

 理由はやはり双子ちゃんのヲタ芸のせいだった。それを見た時の彼女のそれは、まるで慈しむ母親のような笑顔。

 

 ずるい。

 私より年下なのに、なんでそんな顔出来るの?

 

 それまでの無表情とも相まって、その威力はとんでもない事になっていた。

 

 ネットでの意見はアイに集まってたけど、それは先入観から来るものだ。インパクトで言えば、あの子の方が印象に残ってしまった。少なくとも、私たちには。

 

 そしてそれはよりプロに近い目線の人間にも当てはまった。

 

『顔もいいけど、この落差はちょっと見ないね。面白そうな子じゃないか』

 

 アイのことを気にかけていた鏑木さんがそう言っていたのを聞いて、私は愕然とした。

 

『アイの後釜を取られる』

 

 アイは役者としての転身を図っているのは明白だ。彼女の演技はベタ褒めするほどではない。でも、あの瞳がある限りは彼女はドラマでも映画でも主演をかっ攫うに違いない。

 

 B小町をアイが卒業したのなら、私にだってチャンスはあるかも。

 

 

 たかみーはキレイだけど、少しお高く止まっているのが鼻につく。

 

 めいめいもかわいいといえば可愛いけど、私ほどではない、と思う。

 

 なべちゃんはあんまり自己主張しないし、ありぴゃんはセンターに拘らないと公言するくらいだ。

 

 目下のライバルは一番後輩のみーりゃん。今回のセンターも取られたし。

 これが暫定でなくて固定されてしまったら、もう私は輝くことなんて出来なくなってしまう。

 

『雨宮ハルナをB小町に入れさせてはいけない』

 

 私はそう判断した。たぶん、他のメンバーもそうなのだろう。

 

 彼女のダンスはかなり上手だった。けど、リズムに正確すぎてフォーメーションを組む際の微調整が恐ろしく下手だったので、『私たちとは合わない』という事を演出できたと思う。

 

 ハルナ自身は気にした様子もないけど、あれは表情に出てないだけだと気付いた。俯いて考え込んだり、ぼうっとしてたりしてるけど、よく見るとその瞳に力はないし、顔色も良くない。

 

 それと、こちらが見る視線が違うと気が付いた。

 

 この子は、私たちと視線を合わせてない。鼻と口の辺り、目より少し下に視線を合わせていた。

 

 筋肉モリモリの講師が来た時に『目を見るんだ』とか言ってたのはそういう意味だろう。アイコンタクトが出来てないからダンスがズレる。

 

 要はコミュ障ということだ。たぶん内向的な性格なんだろう。まあ、誰彼構わず雑談しにいくタイプではないし。問われれば答えるし、意見も言うけど、それも聞かれた時だけだ。

 

 これなら、大丈夫かな。

 

 思った通り、B小町には彼女は入らなかった。私とたかみーとでまるごとB小町のMCの件も持ち回りでやることに出来たし。

 

 排除は出来た。

 そう楽観した。

 

『デュオユニット、【STARRY the Moon】デビューッ! B小町の枠を飛び出たアイと新進気鋭の新人(ニュービー)ハルが織りなす新機軸』

 

 まさか、そんな。

 

 B小町に入らなければ問題ないと考えた、浅はかな自分を怒りたい。

 

 お披露目のPVを見た。

 

 そんなバカな。

 

 あのアイと並び立っていた。

 あのおバカなアイが信頼するような笑顔をして。それを受け流すような無表情……いや、違う。ほんの僅かだけど笑っている。口角がちょっと上がる程度だけど、瞳に宿る輝きは私たちと合わせた時とまるで違う。

 

 それに、アイとはちゃんとコンタクトは取れているようだ。ダンスも調和されていて白と黒が入れ替わり立ち変わる。

 

 歌声もかなりいい。普段の話し声から若干高いと思われていた声は意外なことにかなり低目。この子、声域まで広いのか。

 声質もはっきりしてるアイの声と違って、息が抜けがちで透明感を覚える。まだまだ声量が足りないけど、アイのサポートとしてはこれでいい。

 

 それにしても。

 

 ずるいなぁ。

 

 なんでこんな子たちがいる時代に生まれちゃったんだろ。

 

 ひどいよ、神様ぁ。

 

 

 

        xx年 ◯月✕日

 

 

 

 私は日記帳を閉じる。

 我ながら不平ばかり、泣き言ばかりだと思うけど。

 

 でも。

 

 これが私の青春だったというのは間違いないだろう。

 

 今になって考えると。

 アイに対しては羨望や憧憬を感じていたのだろうし。ハルナには嫉妬していたのだろう。

 

 ハルナに謝ることはついぞ出来なかったし。

 

 アイにだけは伝えたほうがいいのかもしれない。




書いた人

誰でしょうか。
消去法ですぐわかるかと思いますが。
tipsのようなものと捉えて下さい。
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