吾郎の妹ポジになった転生者 作:とくめいです
だんだん寒くなってますね。皆様も御身体ご自愛下さい。私も少し風邪気味ですが(笑)
お気に入り500突破しましたっ!
ランキングの力はスゴく、凄いですねっ!
感想や評価などもお待ちしてます。今後ともヨロシクです(^o^)/
追記
誤字報告、ありがとうございました。
今日は布団で寝ながらDVDの視聴。なんという贅沢。ああ、なんていう堕落だろうか。怠惰の烙印を押されてもやむ無しな所業。
これで身体を起こして見れたらもっといいんだけどなぁ。
「おにいちゃん……げんきだね」
「サイリウム振ってるお前には負けるよ」
また声出してたか、気を付けんと。
ルビーもなんだか出征する子供を見送る親のような振り方……そこまで無理すんなよ。ほら、肩出てるから。
「むう、おにいちゃん、すき」
「はいはい、オレも好きだよー」
サイリウムを枕元に置いて、肩まで布団をかけ直す。いつも元気なルビーも、さすがにから元気だったようだ。すぴーと寝息が少し荒々しい。
「もう、アクア起きてちゃダメでしょ」
「いや、ルビーが……まあいいや」
アイがぱたぱたとやって来て、俺を布団に寝かせた。
「ルビーはもう寝た?」
「さっきまで起きてそれ振ってた」
「そう。ちゃんと寝てれば治るからね。ベッドに移る?」
「ここでいい」
ルビーがここで見てるって言うから付き合ったけど、よく考えたら寝たままテレビ見れるなんて贅沢だもんね。このままでいいよ。少なくとも今は。
二月に入る頃、俺たちは風邪をひいた。
まあこの年頃は免疫も少ないし、体温の調節もうまく出来てない。風邪くらいは普通にひくのに、アイはめちゃめちゃ慌てまくってた。
「どどどどうしよお、ハルちゃん」
「まずはお医者さんに連れていきましょう」
「今日は収録があるのに……」
ミヤコがはあ、とため息をつく。ゴメン、ミヤコ。こんなタイミングで風邪ひくとは思わなかったよ。しかも。
「ママぁ、おしごとなんでしょお? がんばってねぇ」
「お仕事なんてしてる場合じゃないよっ! ハルちゃん、いこう」
「ああ、まずは支度を。それに双子ちゃんもお着替えしないと……」
後ほど、社長が頭を下げてきたのでなんとか延期したという話だ。迷惑かけて、本当にごめんなさい。
昨今は開業医もよほど少ないらしく、その小児科はごった返していた。順番はかなり待つようだけど、診察できるとのことで待つことにした二人。そこに声をかける人物が居た。
「あれ、雨宮じゃん」
「森本さん。奇遇ですね」
ハルナと知り合いらしき女子。年格好から見て同年代、学校の同級生かと思ってたら当たりらしい。
「いやー布団熱くて蹴っ飛ばしてたら寝冷えしたわ。雨宮も風邪?」
「いえ、私は付き添いです」
「わ、かわいい。弟さん? もしかしてそっちの子は妹ちゃん?」
「そうだよー、ハルちゃんのお友だち? 私はお姉ちゃんのアイだよ」
「はじめまして。森本やすみって言います。同級生でして」
「仲良くしてあげてね」
ルビーを抱くアイも挨拶してる。いつもの星の輝きを見せずに普通の女の子として対応とかTPOも弁えてきたみたい。ちょっと感動だ。
ちなみに二人とも変装してるので巷で噂の二人とは気付かれてない……とは思う。ただ、群を抜いたレベルの美少女二人が幼児を抱いてる姿はなかなかに周りの目を引いてるようだ。そんな中で声を掛けてきた子もわりときれいなので偏差値は上がる一方だ。
「弟に感染す前に病院行っておけ、て母さんに追い出されてさ」
「ケンゴ君は無事なんですね。それは良かったです」
ケンゴ某とやらは弟のようだ。ハルナの様子から俺等と同年代っぽい。まあ、風邪なんてひかない方がいいに決まってるし。
「そっちは? やっぱり風邪?」
「おそらく……熱はそこまで高くないですが」
「お姉さんも気を付けなよ? この風邪、喉に来るっぽいよ」
「うん。マスクもしてるし、手洗いうがいもしてるし。ハルちゃん特製ドリンクもあるからね」
「特製ドリンク?」
「喉に良いハーブと生姜を使ってまして。蜂蜜を使ってるのでこの子達には飲ませられないのですが」
「へえ。料理するって言ってたけど、ガチなんだね」
前世でも俺は飲んだことがある。というか冬の間、これのお陰か風邪知らずだった。ただ、蜂蜜が幼児にいけないのは腸内細菌が整ってないのが原因なはずなんで、離乳食を始めてる俺たちには問題はない、はず。ハルナも大事を取って飲ませないだけなんだろう。
「試してみますか」
「あるの? あ、いやここではアレだからいいや」
「そうですね」
……ちゃんと会話してるな。この環境は、やはりハルナには良かったらしい。男だとどうしてもこうはいかないからなぁ。
「森本さーん。森本やすみさーん」
「呼ばれた。じゃ、また」
「はい」
わたわたと診察室へと向かう森本嬢。それを見送る二人とオレ。ルビーはまだ寝てる。熱が辛そうだけど、痙攣してる訳でもない。今のところ問題はなさそうなので町医者先生に任せておこうと思う……俺が診察したらさすがにヤバいしな。
「ハルちゃんにも友だちできたか。お姉ちゃんとしては、嬉しいけど」
「アイ……さん?」
「そのうち私ほったらかして友だちと遊び歩くんだろうなぁ」
ほんわりとした笑い方に僅かな哀愁。
「そんなこと、しませんよ」
静かに呟くハルナの声は、雑踏の中でも分かるほどに透き通っていた。
「わたしの一番は、アイさんやアーくん、ルビーちゃん。他にご夫妻だけです。ほったらかしなんかできません」
アイを見つめて、そう言い切るハルナ。その瞳に迷いはなく、揺らぐのはアイの方だった。
「あ、うん。嬉しいけど……ちょっと照れるね」
「はっ……そうですね」
見つめ合ったのを気付いたのか、照れ始めた二人。
なんだ、これ。
新手の営業出来そうだな、おい。
ミヤコがいなくて本当に良かったわ。
「うん、麻疹でも風疹では無くて、特徴的な発疹もない。耳下腺の腫れもないので、風邪で間違いないかな?」
「ほう……」
いや、アイさんや。さっぱり分からんだろうに思わせぶりに頷くのはどうなの。ハルナもふんふんと頷いてるけど、あっちは完全に理解してる顔だ。なんていうか、面構えが違う。
まあ俺自身の見立てもそんな感じだし。小児用の薬とか飲むの久しぶりだな。
「うまい」
「それは良かった。ルビーちゃんは起きたらこんな感じで飲ませてあげてね」
「はい。瓶から直接ではなく、スプーンに移してですね」
「そうそう。面倒だけど細菌も怖いからね、幼児の場合は」
ここのお医者さんは予防接種とかでもお世話になってるところだ。歳は正確には覚えてないけど俺より下だった。ちょっと面長の端正な顔付きの男性で、名前は田沼
わりと中二臭い名前だけど、その父親は田沼正造。あの小児心臓バイパス手術の第一人者であるゴッドハンドなのである。
その息子もやはり凄腕らしいとは聞いてたけど、まさか町医者してるとは思わなかった。まあ、今の御時世に繁盛してる町医者なんだから、凄いっちゃスゴいけどな。
「ちょっと席を外して」
「はい」
看護師に席を外させると、彼はぽそりと言葉を紡ぐ。なるべく内密な内容だからだ。
「星野さんは身体の方は如何です? 双子ちゃんの風邪とかかかってませんか?」
「大丈夫ですよー、わたし頑丈ですから♪」
「そのようですね。経産の影響もそろそろ抜けてくるかと思いますし。でも、異常がありましたらすぐにおいで下さい」
「はぁい」
「ハルナさんもアイさんのこと、よく見ててくださいね」
「分かりました。身命を賭して」
「そこまで気を張らなくてもいいですよ。なにせあなたももうアイドルなんですから。見せて頂きましたよ、PV。お二人とも素晴らしかったです」
「ありがと、先生」
「お褒めを頂き恐縮です」
この男は俺たち双子がアイの子どもと知っている部外者のうちの一人でもある。医者には守秘義務があるし、そもそもアイドルに興味を持つ数少ない人間でもある。
「雨宮先生の薫陶は行き届いてるみたいですね。草葉の陰から誇らしく見てるでしょう」
「……そうでしょうか?」
「アイさんを守り立てて、二人の子供も健やかに育ってます。ま、今はアレですが、特に問題もなくすくすくと成長してます。実に有能だ。息子の嫁に欲しいくらいですよ」
「フン」
ハルナに抱きついて田沼を睨みつける。
ふざけんな、ハルナを嫁にするんならともかく、息子にあてがおうとはふてェ野郎だ。そういうのは本人がやらなきゃ意味ねえだろっ!
「ふふ。アクア君に嫌われるのは困りますからね。翼の嫁は、やっぱり自分で探させますか」
「ありがとね、アーくん」
「おおう、アクア。やるねぇ♪」
まあ、これくらいしか出来ないけど。嬉しそうなハルナと感心してるアイの笑顔は、ご褒美だと思っておこう。
「それにしても、本当に残念です。雨宮先生にアイさんの復帰ライブで逢おうと話してたので」
「その際は申し訳なく」
「ハルナさんが謝ることじゃないですよ。話によると不幸な事故だったそうですし」
「……」
「人の命は儚いものです。こんな仕事をしてるとそれがよく分かりますから。おそらく雨宮先生も同じように考えていたと僕は思いますよ」
彼の言葉は淡々としていて、だからこそ本心だということが伺える。確かにそうなのだ。人の命は失われやすい。助けを求めている声が聞こえたなら、すぐにでも動かないと。
「例の少年の救命措置をした、との話でもそれは伺えます。立派な人だったと思います」
「……でも、そのせいで死んじゃったのかもしれないんじゃ?」
アイがそう呟いた。
珍しく、低く押し出すような声色。瞳の輝きは少しなりを潜めていた。
「そうかもしれません。でも、自分の容態というのは意外と分からないんですよ。医者の不養生とも言いますが」
「でも、ハルちゃんがいるなら自分の事を優先すべきじゃなかったのかな?」
アイの抗弁に彼もようやく怪訝な顔をし始めた。
「……今日はこれでいいでしょう。アイさんも一度、お一人で診察に来て頂けますか?」
「先生」
「子供の前では話しづらいこともお有りのようですし。そのときに伺います。ハルナさんもお大事に。双子ちゃんの介護疲れとか笑えませんからね」
「は、はい……」
診察室を出ると、ハルナがアイに声をかけた。
「ん? どしたの、ハルちゃん?」
そこには、瞳に輝きを戻したアイがいた。言葉を失うハルナに、帰ったらご飯にしようと朗らかに笑うアイ。
アイのやつ、ひょっとしてまだ俺のこと気にしてるのかな?
何度も思うけどあれは俺のミスであって、アイが気にする必要なんて無いんだ。とは言っても伝える方法が無いんだよなぁ。数えで二歳になった俺が知ってる内容でもないし。ハルナに注意してもらうしか無いけど。
見上げると、ハルナはハルナで沈痛な面持ちだった。あのときのこと、思い出したのかもしれない。
「ハルねー」
「え」
手を伸ばして、ハルナの頬を撫でる。本当は頭に手を伸ばしたかったのだけど、この背じゃ届きはしない。
「帰ったらプリン食べたいな」
「……そうですね。プリン、作りますね」
アイの事も気にかかるけど、ハルナだって大事な義妹なのだ。あ、今は義姉か? ま、どうでもいいか。
「んあ。なに、ママ。ここどこぉ?」
「ルビー、おっきした? ここは病院だよ」
「うえ? 病院やだ~」
「もう帰るから平気だよー♪」
ルビーが病院を嫌がってる。生前になんか嫌なこと……あるだろうな。死ななきゃ転生はしないし、死ぬってことは病院の中で起こる事が多い。つくづく因果な場所だよな。
にしても、チャット仲間が医者でしかもゴッドハンドの息子とか聞いた時は驚いたものだ。手帳にメモしといてよかったよ。おかげでハルナがその病院を薦めるようになったし。
「プリンおいしい?」
「うん」
「おいしー♪」
帰ってから作ってくれたプリンは、ハルナ直伝の物だった。甘さ控えめだけど丁寧に濾された生地はとろけるようだ。
「ようございました」
ほっこりとした様子のハルナには、薄暗い雰囲気は見られない。やっぱりルーチンワークって大事だな、と思った。
「うん、うまい」
星野アクア
優雅な鑑賞かと思ったら病床という(笑)
ルビーと並んで寝るのも慣れたものです。もうすっかり兄妹ですね。
星野ルビー
都合の良い所で眠る『眠りの小五郎』のようなルビーちゃん。推理はしませんw 体が辛くてもサイリウムを振る根性は立派なものですが、やめたほうが良いかと。
星野アイ
お母さんしてるし、アイドルもしてるので忙しい毎日ですが、ふとした瞬間に思い出す事って有りますよね。お菓子作りも手慣れてきました。
雨宮ハルナ
だんだんお姉ちゃんぶりが板についてきてますね。プリンは自分で作らずにアイに教えてました。うまく出来て自身もちょっぴり誇らし気です。
森本やすみ
この後何日か休む事になりましたとさ。で。学校に行ったら今度はハルナが休みという(笑)
田沼造硯
かぐや様設定からの間借りオリキャラです。柏木さんという運命の相手が居るんだからハルナは渡せません(笑)一応、吾郎医師とはチャット仲間という繋がりがあります。なので多少は深入りした事情も知ってます。田沼医院は元は祖父のものでしたが、父の正造が大学病院やら四宮やらに関わってたため息子が継いだという経緯にしてます。