吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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二歳の春の一幕。アクア視点になります。


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『それがはじまり』の封切りに伴い、公開する映画館での舞台挨拶が催された。もちろん、主演の女優さん(名前がどうしても思い出せない)と共にアイも呼ばれた訳だ。

 

 ちなみに今は封切りってあまり言わないらしいね。つい言葉が出てしまってアイがキョトンとしてたよ。同じようにルビーも知らなかったらしい。

 

「ふうぎりって、なに?」

「お前知らないのかよ、大人の女性」

「し、しってるわよ? あれでしょ、封を切るんでしょ?」

 

 そのまんまかよ。

 まあ、なんだ。現代の子供世代の言葉とかもちゃんとは覚えていかないといけないな。チャラい言葉とかも使わんといかんのか……ちぇけらっ!

 

「いきなりなに? きも」

「だからフラットに言うなって。ツッコむならちゃんとツッコんでくれよ」

「おまえら、そろそろ始まるんだから少し黙れ」

 

 社長がツッコんできたので、黙ることにする。ここは人目につかない、いわゆるVIP席。関係者の中でも関わりのあるメンツしか居ないのだけど、そこに有馬の姿はなかった。話によれば、今日はドラマの収録らしい。演技派の子役として引っ張りだこなわけだから、イベントくらいには来られないのだろう。

 

 

 イベント自体は恙無く進行し、監督の挨拶も女優さんの挨拶も無難に終わった。問題はアイなんだけど、ここでは特に問題も起こさなかった。なんとなく意外ではあったけど、昨今の彼女は少し落ち着いてきたような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おにいちゃん、はやくでてぇ」

 

 ここ最近の事を思い出してたら、長居しすぎた。いそいそと片付け、手元のパネルで水を流す。

 ドアは軽く閉じてあるだけなので押せば開く。まだドアノブに手が届かないからね。

 

「わるい、おまた「はやくどいてぇっ!」」

 

 ルビーが押しのけるように入ってきて下を脱ぎ始めた。

 

「早く出てけぇ、ばかぁ」

「す、スマン」

 

 慌ててドアを閉じると、中から「ふぅあー」と開放に伴う歓喜の声が。おっと、これは事案発生になってしまうのでそそくさと離れた。

 

 既に俺たちはオムツを卒業していた。そのため次の段階に進むのだったけど、それはかなりの羞恥を伴う物だった。

 

 

 

 

「こ、コレは……」

「まさか……」

 

 てん、と置かれたそれは、おまるである。

 

「いやいやいや無理ですぅ」

「ママ、ハルちゃん、これは嫌だよぉ」

「「え、ええ……」」

 

 二人が絶句するのも無理はないが、中身が大人の俺たちにはこれは無理だ。二人の見守る中で排泄行為とか、変な扉が開いちゃうかもしれない。

 

 

 

 

 盛大に駄々をこねた俺たちにミヤコが妥協したのは、赤ちゃん用の便座だった。普通の便座の上に乗せて使うこれは、階段状になってるので一人でも便座に登れる。流すボタンも横にあるから問題はない。ただ、紙の位置が少し高いのが厄介だけど。まあ、手を伸ばせばなんとかいける。

 

「アーくん。はい」

「ありがと」

 

 ハルナがおしぼりを渡してくれる。さすがに洗面台には届かないのでこうして手を拭いている。何度か持ち上げてもらって手を洗ってはみたものの、まだ早いなと思ったからだ。

 

「ふい〜……」

 

 カチャリ、とルビーが出てくる。どうやらセーフだったようだ。ただ下は履いてこいよ。さすがに幼児ではなんとも思わんけど。

 

「みるなスケベ。あと早く出ろ」

「はいはい。すまないね」

 

 ルビーの悪態を受け流し、ソファーの根元に腰を下ろす。手を見れば、ぷよぷよとした丸まっちい手で吾郎のようなゴツゴツとした印象はまるでない。

 

 男らしい手に戻るには、どれくらいかかるだろうか。一般には十五くらいまでが成長期であり、それくらいで背が伸びる速度は急速に落ち込む。つまりあと十三年近くか。長いと見るのは早計だけど、実際には相当長い。

 

「どうしました? アーくん」

 

 ほぼ表情を変えない、いつものハルナ。だけど雰囲気は柔らかい。あの頃から変わってはいない。彼女は俺の隣に座りそんなふうに問いかけてきた。

 

「いや、別に。大人になるのにあと何年かかるかなって思って」

 

 すると、肩に手を回してくいっと引き寄せられ、ぽすん、と腿の上に頭を乗せられた。

 

「ハ、ハルナ?」

「私としては……いつまでもそのままでいてほしい、ですね」

 

 髪を撫でてもらうと、すごく安心する。それは俺の幼少期には無かった優しさだ。

 

 母を殺し、父に捨てられ、祖父も祖母もそんなに構う余裕もなかったのだから。

 

「でも、はやく大人になりたいな」

 

 この優しさは心地よい。

 アイという母親もハルナという義姉も。社長やミヤコだって、俺たちを守ってくれている。

 

 だからこそ、はやく大人になりたい。

 

「そうですね……アーくんはどんな人になりたいんですか?」

「ん……そうだな」

「わたしはね、アイドルになるんだっ♪」

 

 そこに反対側に座ったルビーが言ってきた。ハルナの膝のあたりに顎を乗せる感じで、例えれば犬のようだ……犬耳、似合いそうだな。

 

「ルビーちゃんはアイドルですか。ママとお揃いですね」

「うん、ママと並んでライブするの♪」

「いや。アイがその頃までアイドルやるなんて無茶だろ」

「無茶なわけないもんっ ママはいつまでもアイドルだもん!」

 

 だって、そのくらいだともう三十オーバーだぞ? さすがにアイドルはムリだって。

 

「ハルちゃんとだって歌うんだよ? 全員で組むのもいいよね♪」

「あら、いいですね」

「うふふ♪」

 

 うちの妹は幸せだなぁ。ハルナだってその頃はもうアイドルなんてしてないだろ。それこそどこかの誰かと結婚とかしててもおかしくない……

 

「むう」

「どしたの、おにいちゃん」

「いや、なんとなく」

 

 ムカついた。ハルナが他の男と結婚とか嫌だと思ってしまった。吾郎の頃は、そんなものだと割り切っていたのに。

 

「?」

 

 ハルナに視線を向けると、彼女は不思議そうな顔をしていた。

 

「ハルねーは、さ」

「はい」

「将来、どうするの?」

 

 聞くべきではないと思った。でも聞くべきだとも思った。ハルナ自身の考えは一番優先されるべきことだ。その思いを蔑ろにはしたくないし、させたくはない。

 

「そうですね……みんなと一緒に過ごしてたいですね」

「え……」

「アイさんと壱護さんとミヤコさんと、ルビーちゃんとアーくんと。みんなで一緒にいたいです。だから、今はとても幸せです」

 

 はにかむ姿が、とても眩しく見えた。将来に渡っても一緒にいたいと言ってくれた。それは。

 

「私もしあわせだよっ!」

「わあ」

 

 ルビーがハルナに飛び付くように抱きつく。驚くハルナは年頃の娘のようであり、年上の異性でもあり。胸の高まりを感じずにはいられなかった。

 

 

 その日はアイは仕事で出掛けていたし、ミヤコも残務に追われていた。結果として、俺たちはハルナを独り占めにして長閑な午後を満喫していた。そろそろ春も近いため、日差しもぽかぽかしていた。ハルナのちょっと高めの体温を感じつつ、惰眠を貪るのは至福の時だった。

 

『いっしょがいい、な』

 

 夢うつつに聴こえたのは、誰の声だったのか。俺にはわからなかった。

 

 

 

 

 そののち、『15年の嘘』の企画が立ち上がった。発起人は星野アイ、企画は斉藤壱護。監督は五反田泰志。これはほぼ社外秘で進められるドキュメンタリー映画であり、その実態を知るものは、この時点では関係者のみであった。

 

 当然のように、俺も知らなかったのである。

 




星野アクア

トイレで長居するアクアとか(笑)家族内だとよくある話です。ハルナの膝枕でうたた寝できるとか幸せすぎる吾郎であった……変換するととたんにアブねぇなw

星野ルビー

おまる拒否同盟を樹立したけどトイレを専有されておもらし危機一髪。そりゃ怒りますよね。ルビーにとってはアイドルは絶対的なものです。前世の夢でもあるから当然。大好きな人たちと一緒のステージとか夢を見ても仕方ないですね。

雨宮ハルナ

穏やかな午後に双子ちゃんを独り占め。ハルナ的には一番のご褒美でした。
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