吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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オリキャラの森本やすみの視点です。


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 ある土曜日の昼下がり。母さんに頼まれてケンゴとお散歩に出掛けた。

 

「ねーちゃん」

「? なぁに、ケンゴ」

「あれなに?」 

「ああ、あれはね……」

 

 色々なものに興味を持ち出す頃らしく、事あるごとに両親や私に聞いてくる。もともとあんまりやんちゃとかはしない大人しめのこの子も、こういう時は瞳を輝かせて楽しげに話している。

 

「へえ、すげえなぁ」

 

 分かってるのかどうかはともかく。そうやって感心する感じは父さんのものまねなのか。似てるような似てないような。ま、どうでもいいや。

 

 ゴールデンウィークも終わってそろそろあったかさが暑さに変わるかもという季節。昼間になると上着もいらなくない? ケンゴのためにちょっと公園に寄り道しようか。

 

「ん?」

「あはははっ♪」

「ヤベぇ、たのしーわぁっ!」

 

 楽しそうな子どもたちの声。

 ではあるけど……え。

 

「アーくん、ルビーちゃん。ちゃんと掴んでて下さい、ね」

「だいじょーぶぃ!」

「はいよー、シルヴァーっ!」

 

 アグレッシヴに遊具で遊び散らかしてる幼児が、いた。

 

 下がバネになってて上のトコに乗って動くアレ。パンダの方は女の子、ウマの方は男の子だけど。その動き方がエグかった。ケンゴにもやらせたことあるけど、あんなには動いてなかった。かなり地面に近づく姿勢にもなってる。

 

 ちなみに、それを見て青い顔してるのは私のクラスメートだ。普段は無、というような風情の彼女が震えながら二人を見守る姿は……ちょっと面白かった。

 

「あ、森本さん。こんにちは」

「ヨッス。おさんぽ?」

「はい。そうなんですが」

 

 おろおろしてる。かわいいが過ぎるなw 双子ちゃんが心配なのは分かるけど。しゃーないから手助けしてやっか。

 

 男の子の前に回って馬の頭を足で押さえた。

 

「っわあ?」

 

 反動で前に来るのは分かってるからそれを受け止める。だいたいの体重はケンゴで知ってるし、頭とかぶつけないように気を付けた。

 なのに、アイツの顔ときたらこの世の終わりみたい。大袈裟な。

 

「いきなり止めんなよ、アブネェだろう」

「そんなロックな遊び方してっからだろ、クソジャリ」

 

 私にほぼ逆さまに抱きかかえられてるのに悪態をついてきた。面白い子だな。

 病院で会ったときは大人しそうな雰囲気だったけど、この子は意外と活動的なのかもしれない。

 

「アーくん、おけがはないですか?」

「ううん、ぜんぜん」

「私だって怪我するように停めたつもりは無いよ」

 

 そんな様子を見てたのか、女の子の方は自然に停めて降りてきた。なかなか賢い。普通だと降りるタイミング分からなくて泣くとこなのに。

 

「ねーちゃん心配させるよーな遊び方はイカンね」

「それは、申し訳ない。ちょっと羽目外しすぎた」

 

 うえ? なんか普通に謝ってきた? しかも申し訳ないとか、子供の使う言葉じゃねえし。

 

「……どちら様?」

 

 どちら様ときたか。どうやらフツーのガキじゃなさそうだ。まあハルナの弟ならフツーじゃないか。

 

「あたしは森本。雨宮の同級生だよ」

「俺はあ、アクア。ハルナの弟です……病院で会ったっけ?」

「覚えてたか」

 

 ちなみにケンゴは一発で人の顔を覚えられてない。それだけでも十分異質な存在だとは分かった。

 

 後ろの方では女の子を抱きしめてる雨宮。愛情表現が大げさだな、表情と違って。いや、今は普通に泣きそうな顔してる。

 

「あの、そろそろ降ろしてくれない?」

「ああ、悪い」

 

 ケンゴよりも軽い。一つくらい下かな? にしては賢すぎて怖いくらいだ。上下逆さまを元に戻して、改めて抱いてみた。

 

 柔らかそうな金髪と青々とした碧眼。右眼だけはやたらと輝くように見えるけど気のせい? 大きくなったらイケメン間違いなしの端正な顔立ちだ。

 

「あの、降ろしてくれると助かるんだけどな」

「ああ、悪いね。抱き心地良くて」

 

 抱き心地良いというの本当だ。ケンゴは落ち着きがないのでわちゃわちゃ動くし。

 

 降ろしてやるとハルナの方へ戻るアクア君。ハルナが女の子を離して代わりにアクア君を抱きしめてた。

 

「ねーちゃん」

「ああ」

 

 ケンゴがズボンを引っ張ってきた。そういえば少し休むつもりだったのだ。

 

「きみ、だあれ?」

 

 女の子の方がケンゴに興味を抱いたのか聞いてきた。というか物怖じしないな、この子。

 

 キラキラとした瞳は赤く、髪もアクア君と同じく金髪だ。

 

「う、あ……」

 

 ケンゴが困ったように見上げてくる。これくらいが普通の子の反応だ。まあ、この子もずば抜けて可愛いせいもあるけど。凄いな、顔面偏差値が高すぎるぞ雨宮んち。

 

「これは森本ケンゴ。私の弟」

「ケンゴくんか、ヨロシクね♪」

「う、うん」

 

 おお、顔赤らめて。マセてんなウチの弟。

 

「わたしルビー。星野ルビーって言うの」

「るびー?」

「そう、ルビーよ?」

 

 ……? いま、星野って言った?

 雨宮のいもうとなら、ええ?

 

「ケンゴくん、あそぼ?」

「うん」

 

 ルビーちゃんの魔力(?)にかかり、あわれケンゴは遊びに誘われてしまいましたとさ。まあ、あんな笑顔で言われちゃ断れないよね。いつの間にかアクア君も合流して砂場の方に行く三人の幼児。

 

「なあ」

「はい?」

 

 今日のハルナは変装していない、フラットなハルナだ。最近は黒髪の方も見慣れたけど、やっぱりコッチのほうがハルナらしい。臙脂色のベレー帽がよく似合ってる。私はさっき気になった事を聞いてみた。

 

「あの、苗字が違うのはなんでなん?」

「……私たちは本当の兄弟ではないんです」

 

 私は公式のwebサイトとかあんまり見ないので知らなかったのだけど、この双子ちゃんは社長夫婦の子供らしい。雨宮はそこに引き取られてたのだそうだ。

 ちなみに彼女のユニットのもう一人、アイもそんな立場らしい。

 

「そんな訳で姓が違うのです」

「そうなんだ。色々と訳ありなんだ」

 

 言われてみれば、九州から引っ越して来たのもそういうことなのかも。気になったので聞いてみたら

 

「両親はもう居ません」

 

 表情が無に戻ってしまった。

 

「私を引き取った方が雨宮でして。その方たちも既におなくなりになってます」

「……そ、そうなんだ」

 

 しまった。まさかこんな重い話が出てくるとは思わなかった。

 

「申し訳ありません」

「なんで、雨宮があやまるの?」

「重い話題でしょう? 誰しも聞きたくはないはずです」

 

 それは、そのとおりだ。

 

 でも。雨宮がどうしてそうなったのかと考えたら。

 そんなに納得出来ない話ではなかった。というか必然であった。

 

 そりゃあ、感情表現も下手になるだろ。平然としてる方がおかしい。あの子が義理の子どもたちにあれだけ愛情を注いでいるのも、たぶん代償行為なんじゃないかな。

 

「……聞けて、よかった」

「……?」

 

 雨宮が不思議そうに見てくる。

 

「ウチのケンゴとも、仲良くしてやって。たまに遊ぼうか、一緒に」

「……はい」

 

 だから。無防備な笑顔はやめろよ……カワイイじゃんかよ。

 

 

 

 

「なにしてんの?」

 

 砂場の方を見に来ると、そこに変なオブジェがあった。

 

「ん。上出来だな」

 

 なんかお城みたいなモノ作ってたアクア君。てかクオリティ高いな。砂場の砂ってそんな固まんないよ?

 

「こんなモン?」

 

 ルビーちゃんの方はなんか緩めのうさぎみたいなオブジェ。それでもすごいと思う。ちなみにケンゴの作ってたのは単なるお山。もう少し頑張れとしか言えないなぁ。

 

「ケンゴ君、じょーずだねぇ」

「えへへ」

 

 そんなケンゴにも称賛をするルビーちゃん。ヤバいなこの子。コミュ力高すぎるぞ? ケンゴもてへへとか笑ってて満更でも無さそうだし。

 

「お二人とも、ちゃんと手をあらいましょうね。ケンゴ君も」

「「「うん♪」」」

 

 水場に案内して手を洗わせる雨宮。もう完璧に若奥様だ。

 

「はい、お水ですよ。ケンゴ君もいかがですか?」

「いいの?」

「もちろん♪」

 

 憐れケンゴは、今度は雨宮の魔力に魅入られてしまったのでした。ていうか水筒持参でお散歩とかしないと思うけどな。アタシ? 自販機で買おうと思ってたよ。めんどいじゃん。

 

「はい、森本さん」

「……さんきゅ」

 

 自然に紙カップを渡してくる雨宮。ベンチに座って飲む水は適度に冷えててうまい。なんだろ、この気遣い。本当にママなんじゃないかな?

 

「ケンゴ君は幾つですか?」

「ん? 四歳。今年から幼稚園なんだ」

「そうですか。ちなみにどこでしょうか?」

「あじさい幼稚園、とか言ってたかな? 母さんに聞けば場所も分かるけど」

「何処にしようかと考えてまして」

「アンタ、本当にママだな」

 

 こりゃあレベルが違うのは当たり前だ。同世代のガキとは違う訳だよ。年下の兄弟のためにいい幼稚園の情報集めてるとか、中学生女子の考えてる内容じゃないよ。

 

「良ければ母さんにも会う? 今日は居ないけど明日だったら平気だと思うけど」

「宜しいのですか? では明日、はこちらの予定がありました」

「そりゃ残念」

 

 

 

 その日、帰ってから母さんに聞いた予定と雨宮のオフの日を調べたら次の週の土曜日に決まりそうだった。

 

「やすみの友だちとか珍しいわね」

「そう? そうかもね」

 

 小学校の頃はそれなりに遊ぶ友だちもいたけど、小四の頃から楽器を習い始めたらそっちにのめり込んでしまった。お陰様でぼっちな音楽ライフを送ってたんだけど、母さんにとっては少し心配だったらしい。

 

「どうせなら双子ちゃんも連れておいでなさいな。私も直で見てみたいわ」

「聞いとくよ」

 

 

 

 その日、やって来たのは雨宮と双子ちゃん、だけではなかった。

 

「どうもー♪ お招きありがとうございます。アイです♪」

 

 いやいや。スタムン揃っちゃったよ。

 

「あはは……ついてくると駄々をこねられてしまって」

「さいですか……」

 

 ちなみに母さんはテンション爆上がりだった。ミーハーなんだよね、クラシックやってるわりに。

 

 その後は子どもたちはお部屋で遊んで。要件が済んだら私らも遊ぶことにした。

 

「楽しかったです。ありがとうございました」

 

 雨宮の嬉しそうな笑顔。

 学校では見られない、素顔。

 

「いつでも来てよ。歓迎する」

 

 それを独り占め出来る優越感は、なかなかに心地よかった。

 

「つぎは、いつくるの?」

「いつになるかな?」

 

 ケンゴも楽しみが出来たようでなによりだ。




森本やすみ

ぼっちな音楽オタク女子なんだけど、わりと面倒見の良さそうな感じ。ハルナに興味はあるものの深入りはしてなかったのですが、それもこれまでかもしれません(笑)

森本ケンゴ

わりと一般的な幼児です。悪ガキでもなくおとなしい訳でもない、普通の子供ですね。

星野アクア

遊具で危険な遊びをする悪ガキその1。大人の感覚だと面白いとは思えないけど、実際やってみると面白いです。その際は通報されないように。当方は一切関知しません(笑)

星野ルビー

悪ガキその2。ケンゴを籠絡させる手腕が見事すぎて草。ルビーのこういう人誑しなところ、ヤバいと思います。

雨宮ハルナ

関係を問われると説明の難しい立場です。結果として相手が慮ってしまう展開にもなりがち。美少女はそれで済んでしまうのはズルい(笑)
立ち振舞が既にママの域に達しているのはやすみの母にも理解されました。
『あの子達、ハルナちゃんの子供じゃないわよね?』
『はは、そんなわけ無いじゃん。私と同級生なんだし……無いよね?』
森本親子の間でそんな不穏な会話がされたとか。ある意味、正解っ!

星野アイ

ひょいっとでてきたアイドル様。まあ、面白そうな事に顔をツッコミたかっただけだと思います。
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