吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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前回の続き。ですが、視点は変わります。公園の外れから垣間見た女子中学生。彼女の見たものは?


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 学校帰りにスーパーに寄ってたら少し遅くなってしまった。今日のおかずとかそんなではない。いわゆる置き菓子の購入である。

 

 最近のケンゴのお気にの駄菓子をたんまりと買って意気揚々と帰宅途中。その事件に遭遇した。

 

 ちょっとデカ目の黒塗りの車。見るからに高そうなそれに女の子を連れ込もうとしている、やはり女の子。

 

 男性もいるけど、こちらは周囲を伺ってキョロキョロしてる。普通は逆じゃないか、と訝しんだけどその相手が雨宮だと分かった。

 

 防犯ブザーを持ち出し、彼女たちの前に飛び出すと同時に警告した。

 

「うちの友達に何してんの?」

 

 防犯ブザーを見せつけて、そう脅す。よく見るとお嬢様学校のような制服を着た同世代の女の子。それに結構イケてる。

 後ろの男はひいい、と慄いてるけどこちらの子は動じてない。

 

「ハルナさんのお友だち?」

「そ、そうだけど」

 

 そう言われて雨宮を見ると。

 その顔は土気色で瞼を辛そうに顰めていた。

 

「お、おい。雨宮、どうかしたのか?」

「立ち話は私も辛いの。お乗りになって」

 

 どうも思っていたのと状況が違うらしい。

 私は雨宮のもう片方の肩を担いで補助する。そして、後部座席へと送り込み、中に座った。

 

「あの、どういう状況なの?」

 

 あらためて状況を聞くと、彼女は運転手の人に向かって耳を閉じろとジェスチャーをする。

 彼は律儀に前を向いて耳を塞ぐ。お抱えの運転手付きなんだ、この子。

 

「ハルナさん、どうやらあの日らしいの」

「え……あ、そっか」

 

 まあ、うちらの年代ならもう来てる人のほうが多いはずだけど。

 

「私は彼女の家を正確には知らない。貴女は?」

「私も……彼女の家には行ったことないな」

「なら、緊急避難ということでいいわね」

 

 ニヤリと笑う彼女。ツリ目がちな感じで凄く迫力があるな。

 

 トントンと運転席を叩いて運転手さんを呼ぶ。

 

「芦原、ウチへ向かって頂戴」

「え、あの。ほんとに宜しいので?」

 

 構わないと返事をすると、こちらを向く彼女。

 

「ハルナさんの友人なら放りだしていかないわよね?」

「と、当然じゃん。でも、連絡だけはさせて」

「もちろん。電話はあります?」

「うん」

 

 有無を言わせぬこの押しの強さ。どうやらとんでもない子らしい。雨宮の知り合いは、大概なのばっかりだなぁ。

 

 母さんに、友達の家に行くから遅れると連絡すると、誰のお家か聞かれた。彼女の方を見ると、彼女は生徒手帳を見せてきた。

 

「えっと、九条、一華さん。秀知院中等部ぅ?」

 

 声がうわずってしまうのは仕方ない。あの秀知院か。ていうか中等部って制服、白なんだな。

 

「お電話、よろしくて?」

「は、はい」

 

 彼女は携帯を受け取ると、母さんにこれまでの経緯(いきさつ)を話し始めた。一通り説明が終わると携帯を私に返してくる彼女。

 

『やすみちゃん、雨宮さんが心配なら付いてあげなさい』

「え……いいの?」

『話してみたらしっかりしたお嬢さんみたいだし。こちらから雨宮さんのご自宅の方に連絡は入れておくから』

 

 心配かと聞かれたら、それはそうだ。友達なわけだし。彼女の方は特に気にもしてないようなので同行することにした。

 

 

 

「ひょっとして、雨宮さん。初潮なのかしら?」

「うーん、そうかな?」

 

 人の事なんてそこまで気にしてなかったけど、確かに今までそういう感じは見受けられなかったかも。だとすると、この辛そうな感じも分かる。最初ん時、マジキツかったからなぁ。

 

 冷や汗にへばりつく前髪を、そっとよけて手を乗せる。ひんやりとしてる。体温が下がってるのかもしれない。

 

「貧血を起こしてますわね」

「分かるの?」

「マ……お母様が同じようになってましたので」

 

 そう言うと、彼女は雨宮のベルトを緩めた。なんか、聞いたことがあるな。こういう対処法。本当は横にしたほうがいいんだっけ。

 

「ハルナさんを支えてあげて」

「う、うん」

 

 もたれ掛かる雨宮。いい匂いがするけど、少し軽すぎないかな? ちゃんと食べてないのかも。見た目からして線の細い子だし。

 

 私がそんな事を考えてる間にも、彼女はほうぼうに電話をかけている。自宅の家政婦さんに、父親にと掛けているけど、何かに気付いたのかこちらに問うてきた。

 

「貴女、ハルナさんのご自宅の番号は分かります?」

「え……いや。ハルナの携帯番号くらいしか交換してない」

「むう……仕方ありませんね」

 

 そう言って、彼女は雨宮のカバンを探り始めた。

 

「無いですわね……」

「あ、携帯探してる?」

「住所録でも構いませんが。おかしいですわね」

 

 鞄の他に巾着も持っているけど、こちらには生理用品しか入ってない。ちなみに未開封。用意だけはしてあったんだ。

 

 と。そこに電話の音が鳴り響く。

 

 場所は雨宮のスカートの辺り。

 

「この子は……女子の嗜みも知りませんの?」

 

 そう言ってスカートのポケットから携帯を取り出す彼女。私も笑えないんだよね、実は。鞄とかに入れると面倒じゃん。

 

「は『ハルちゃんっ! 無事ぃ!?』」

 

 電話に出た途端にこの大声。間違いなくアイさんだ。彼女は耳を押さえて携帯を離していた。どうもやられたらしい。仕方ないので私が代わり、電話口に出る。

 

「もしもし、アイさん? 森本です。クラスメートの森本やすみです」

『やすみちゃん? ああ、良かった。なんか連絡入ってて』

「あの、雨宮はその貧血起こしてるみたいなんで」

『ええ? それってヤバくない?』

 

 あ、却って慌てさせたかも。

 復帰してきた彼女が電話を変わる。

 

「もしもし、アイさんですか? わたくし、九条一華と申します。ハルナさんとは幼なじみでして」

『あ、クリスマスの時の子かぁ。そうだそうだ、いちかちゃんだ』

 

 なんと。ちゃんとした知り合いだったようだ。疑いの目で見て申し訳ない。

 

「それで、一度わたくしの家で休ませておこうかと思いまして」

『あ、あ~そうだね。社長もミヤコママも手は離せないだろうし。病院とかに行かなくても平気なの?』

「おそらく生理だと思うので」

『あ~、そっかぁ。じゃあお赤飯炊かないとねぇ』

 

 そんな会話をしてる。そういやわたしん時も母さんお赤飯作ってたなぁ。

 

 ちなみに車はもう発車している。なかなかに乗り心地の良い。さすが高級車……だと思うけど。電話を切ると、ようやく一息つく彼女。

 

「ふう……あの人はよく喋りますわね」

「そうだねー」

 

 私のうちに来たときもかなりはしゃいでいた気がする。ふと、視線が合うと、お互い吹き出してしまった。

 

 ピピピッ

 

 さらに電話が鳴り響く。持っていた彼女が出ると今度は違う人が声を上げていた。

 

『ハルナは無事かっ!』

「……大丈夫ですわよ、アクアさん」

『む、その声は……九条か』

「相変わらずこまっしゃくれた子ですわね」

 

 声の感じからするとアクア君ぽい。悪ガキムーブしてる時の声に近いけど。

 

『あー、確かに今日は家に誰も居ないしな。ミヤコと一緒にうちら出掛けててさ。社長とアイも仕事だし』

「ちゃんとお預かりしますから心配ご無用ですわよ。家には家政婦の方もおりますし」

『いちおう主治医の番号教えとくよ。アンタのトコなら往診してくれると思う』

 

 アクア君は幼児とは思えない聡明さを発揮することがしばしばある。まるで大人みたいに話すし、立ち振舞も大人っぽいのだ。早熟と言って片付けていいレベルには思えないけど、とうの雨宮自身は全く意に介してない。どういうことなんだろ?

 

 アクア君との電話の後、彼女はもう一度自分の電話でかけ始めた。どうやら紹介された病院にかけたらしい。二言三言のやり取りのあと、電話を切る。

 

「午後七時頃に来てくださるそうよ。お夕飯、食べていく?」

「え、悪いよ」

「構いませんわ。いま、連絡するから」

 

 む、むう。雨宮のことは心配だけど。ほぼ初対面の人のお宅にお邪魔して、晩ごはんまでごちそうになるのは少しまずくないかな? 失礼過ぎない? 平気?

 

「どうしてもお嫌でしたら、送らせますわ」

「……お願いします」

 

 雨宮を人質に取られているようなものだ。背に腹は代えられない。私がお願いしますと答えると、にこっと笑って電話を掛けた。

 

 その間も、雨宮はずっと死んだように眠っている。息はそこまで荒くないけど、少し苦しそうだ。私はとりあえず手を握ってあげることにした。

 

 きゅ……

 

 弱く、握り返してくる。

 その手は比較的冷たくはないけど、逆に額とかは驚くほど冷たい。頭に血がいってないのだ。

 

「そろそろ着きますわ」

 

 車に乗って二十分くらい経っただろうか。車は鉄格子の門扉を抜けた。薄暗いけど照明のお陰で外観はうっすらと分かる。だけど、逆に驚いてしまう。

 

「え。ここどこ?」

「うちの別邸ですわ。住所は、私も詳しくは知りませんの。でも、きちんと送り届けますからご安心下さいね」

「べ、別邸?」

 

 べってい……別の建物って意味か。つまり他に家があるってこと? マジかよー、超お金持ちじゃんこの子。

 

 混乱する私を尻目に、車はガレージに停まる。ドアを開けて雨宮を連れて降りると、二人の大人がやって来た。壮年の男女だ。

 

「お嬢様、おかえりなさいませ」

「気分の優れない友人がいるの。橘は客間の用意を。篠原は雨宮さんの方をお願い」

「「かしこまりました」」

 

 女性の方が雨宮を担ぐと一人でのっしのっしと歩いていく。男性の方も足早に立ち去った。残るのはわたし達と運転手さんだけだ。

 

「芦原、ご苦労さま。超過分は付けておくから、少し待機してて」

「かしこまりました」

 

 そう言うと、私にこちらへと案内をする彼女。

 

 玄関の扉、おっきい。

 周りの観葉植物、図鑑で見たものばっか。

 エントランスホール、広い。

 シャンデリアとか生で初めて見た。

 何あのツボ。なんかやたらと高そうな感じ。

 置かれてるスリッパ、ファーがすごくふわふわで高級感丸だし。

 

「何なさってるの? 早く上がりなさいな」

「お、おう……」

 

 やべえ。

 まじで別世界だ、ここ。

 

 付いていくと言ったけど。

 私は少し後悔していた。

 

 ここは、庶民の子供がいていい場所じゃない。




森本やすみ

事件現場を見てしまった女子中学生は、哀れ一緒に拉致されてしまいました(笑) まあ、ハルナが心配だったのは間違いないので、仕方ないかな。

九条一華

前回はパワー系な所をお見せしましたが、本来の姿はこちらです。多方面との連絡をきちんと取り、根回しを行うのがスマートなやり方。まあ、強引なところもありますが、全てはハルナのため、です。
ちなみに。かつて自分がした事をやすみにされて、少しツボに入ってました。

星野アイ

やすみの母から連絡を受けてハルナの携帯にかけました。面識ありますからね。いちおう状況を聞いて一安心。一華ともクリスマスで対面してて、その人となりは理解してます。『この子は、ハルちゃんガチ勢だね♪』

星野アクア

こちらもやすみの母から電話をもらってます。やすみの母は知り合いの電話番号を集めるのが趣味なのかも。田沼先生の個人の携帯番号は、吾郎のときに取得済みです。

森本の母

前に遊びに来た時にアイや双子とも番号を交換してます。あと、実は秀知院卒業生です。
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