吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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少し体調崩して更新遅れました。申し訳ありません。あと、年末にかかり業務が忙しくなるので更新を三日毎に変更したいと思います。

今回はアクア視点です。前回より少し時間が経ちました。三歳に突入です。


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 年も開けて、春真っ盛りの四月。俺たちはあじさい幼稚園に入学した。現行では三年保育が主流らしい。俺の子供の頃は二年だったような……これがジェネレーションギャップというものか(愕然)

 

「どお、どお? にあってる?」

「はいはい、可愛いよ」

「やーん、アクアの正直ものー♪」

 

 幼稚園の制服(水色のスモックとパステルピンクのキュロットパンツ。帽子は白。靴は自由らしいので普通の運動靴だが、今は履いてない)を着て鏡の前でくるくる回るルビー。

 

 まあ。……とても可愛い。

 髪もけっこう伸びてて、アイを意識して左のサイドテールにしてるのも含めて。わりとマジで誘拐とかを心配するレベルだ。

 

「アクアも、格好いいよ」

「はいはい、ありがとお」

「もー、普通に褒めてるんですけど〜」

 

 まあ、アイと見知らぬ劇団員の遺伝子の力なんだろう。こう、斜めにキメ顔をするとなんだか凄いかっこよく見える。

 ナルシストが鏡の前から離れない気持ちも少し分かる。自己肯定感がすごく高まるのだ。全ての存在から認められてるような全能感。顔がいいというのは、確かに才能なのだ。

 

「二人とも素敵ですよ」

「さすが私の子たち。とってもイイよ♪」

 

 ハルナとアイもご満悦らしい。それを見守る社長とミヤコも満更でもなさそう。

 

 ちなみに。この春からアイは通信制の高校に、ハルナも来年の受験に向けて本格的に取り組むことになった。そのため、『STARRY the Moon』の活動は一時控えることになった。公式webでの発表後、掲示板では物議を醸されたが、大勢は『受験なら仕方ない』との意見を占めた。

 

「それで、ハル坊。本当に大丈夫なのか?」

「問題ありません」

 

 社長の問いにすっきりと答えるハルナ。それは志望校のことだ。

 

「天下の秀知院高等部……確かにあそこは芸能活動にも寛容だけどよ。その分、成績の維持とか大変だぜ?」

 

 そう。

 九条の勧めに従い、ハルナは秀知院への進学を決めた。

 

 それは芸能活動に対する姿勢もそうなのだが、もう一つの要因もあった。

 

「別に一般でいいじゃねえか。金なら出せるぞ。アイが頑張ってくれるから」

「ええ? 佐藤社長、そりゃないよ」

「だから、おれは斉藤だって言ってるだろうが」

 

 社長とアイのいつもの掛け合い。

 

 この頃になると、これはどうやらコミニケーションの一環だと分かってきた。アイがわざと巫山戯て間違え、それをツッコむ。

 

 確かに他の大人の名前は憶えづらいらしいけど、社長との間にはそれ以上の繋がりがあるのは明白で。それを確かめあってるのだろう。

 

 成績の維持が大変とも言っていたが、それは彼女が秀知院奨励制度を利用するためだ。ハルナの学力に疑問は持っていないだろうけど、相手は天下の秀知院。確実に期すなら一般入試の方がリスクは少ない。

 

「いえ。奨励制度があるのならそれを使います」

 

 一方、ハルナは頑なだ。これはアレだ。俺の真似をしてるのだろう。

 

 俺も大学に行くときには奨学金制度を利用していたし、それを話してしまったことがある。

 俺が口を滑らせたのが悪いのだけど、彼女なら自分でそれを探し出したに違いない。

 

 つまり、言っても無駄なのだ。

 だから俺から言えることはたった一つ。

 

「ハルねー、ふぁいとっ!」

「うん。がんばります」

 

 小さな拳を握って出す。ハルナがそれに応じて軽く握ってコツンと当てる。

 

 吾朗だった頃も、ハルナにやる気を出させる時にこうして励ました事を思い出す。

 

「まあ。ハル坊の事だから成績は問題無いだろうけど。受験終わった後は芸能活動復帰だぞ? 高校在学中も同程度は活動してもらうつもりなんだが」

「そちらも問題ありません。学業にリソースを割かなくても普通に卒業は可能ですから」

 

 珍しく自信に満ちた顔で答えるハルナ。繰り返すが、こと勉学に関してはハルナはガチだ。たとえ秀知院であろうとも奨励の求める成績を維持することは可能だろう。

 

 そして、秀知院はその成り立ちから学生の学外活動にも理解がある。まあ、それだけが理由ではないのだろう。

 

 九条一華。

 化粧品メーカーとして有名な七聖堂とその傘下の関連会社に影響力を持つ九条賢実(たかさね)の一人娘だったとはさすがの俺も知らなかった。俺の知っていた事は、『ハルナの友だち』『母親は病弱で祖父の家に療養に来ている』だった。

 ちなみにその祖父というのは細川の傍流なんだそうだ。家柄を考えたらそりゃあそうかと頷ける。

 

 そんな子がハルナと友だちだったわけだ。親代わりとしてはなんとも複雑である。

 社会的な地位の差があり過ぎると友人関係は成立しない。本人たちがどう思ってるかは関係なく、周りがそれを認めないのだ。

 

 だが、悲観ばかりではない。

 ハルナが九条の傍にいたいと考えたことに、大いなる前進が見られたのだ。万事に流され主張の少ない彼女が自分で決めて選んだ道。俺はそこを評価したい。親バカと言われようが構うまい。俺はお前を応援するぞ(覚悟完了)

 

 

 

 

「あくあ、こっちだ」

「おう」

「まってよー」

 

 幼稚園の年長にいるケンゴが手招きすると俺とルビーは走り出す。ルビーはあんまり歩かないから走るのも遅い。前世は引きこもり厄介オタクらしいから、走るのは苦手なのかもしれない。

 

 あじさい幼稚園の児童の数はおおよそ六十人程度。年少、年中、年長がそれぞれ二十人なので枠としてこれくらいに留めているのだろう。

 

 すでに知り合いのケンゴは先輩風を吹かせたいのか、率先して俺達に絡んでくる。

 

「るびーちゃん、へいき?」

「うん、だいじょーぶだよ」

 

 というよりルビーに絡んでるついでに俺にも絡んでる、が正解かも。まあ、この中でもずば抜けて可愛いからな、仕方ない。

 

 でも、実はルビーに次くらいに可愛い子もいた。おかっぱ頭が有馬によく似てるけど、アイツより物静かな少女。いつも絵本を見て、目をキラキラさせている。

 

「シュトーレンマン、面白い?」

「! は、はい。あなたも、よみますか?」

 

 子供向けの絵本の定番、シュトーレンマン。

 全身真っ白な彼は、困っている人に自分の手足を切って分け与える。頭だけになった所をベッカーさんが助けに来て、新しい身体に挿げ替えてまた人助けに行く……なんとも世知辛い童話だとつくづく思う。

 社畜根性丸出しじゃないか。この本を読むことで未来の人材を確保しているのだとしたら、これこそ害悪を振りまく書物と言える。

 

 それでも、無私の心で人助けをする姿は幼児の心を打つのだろう。現に彼女はその瞳を更に輝かせている。彼女の前途に、健やかなるものを願うしか無い。

 

「わたし、くろかわあかね。よろしくね、あくあくん」

「宜しく、あかねちゃん。僕は星野アクア。今年から入った年少組だよ」

「わあ、私のほうがとしうえだね。えへへ♪」

 

 名札を見て挨拶してきたので返したらすごくいい笑顔でお返事してきた。どうやらとてもいい子らしい。

 

 

 

 この場面を見ていたルビーに後でしっかり追求された。園の裏側だからあんまり人も来ないので内緒話をするには丁度いいのだけど。

 

「デレデレしちゃって」

「し、してねえし」

 

 ルビーが少しむくれたように言ってきたのでそう返した。すると、ハルナから渡されたポシェットから小さな手鏡を出してこちらに向けてくる。そこに映るのは口角をわずかに上げて緩んでる俺の顔。

 

「あーあ、ママやハルちゃんに言っちゃおうかなー♪」

「な、なにが望みだ」

「おやつのプリン、半分でいいわ」

「くっ……」

 

 この雌狐め……そのうちとんでもない悪女になるぞ。可愛いから余計にタチが悪い。項垂れる俺に勝った余勢で煽ってくる。

 

「アクアってやっぱり清楚系が好きなんだね、オタクだなぁ」

「せ、清楚系が好きで何が悪い」

 

 あと、髪はロングがいいな。

 

「まあ、かなちゃんも喋らなければ清楚に見えるしね」

「なんでそこにかなが出てくんだよ」

 

 ルビーが不思議そうにこちらを見る。なんか変なこと言ったか?

 

「だいたい、お前だってケンゴとかに愛想いいじゃねえか」

「えー。だってケンゴ君カワイイじゃん」

 

 まあ、それは分かる。顔立ちはスッキリしてるし、大人しめだけどリーダーシップはちゃんと取れるみたいだし。やすみちゃんを見てると分かるけど、大人になったらそれなりに人気になりそうだ。

 

「……交際とかは認めんぞ」

「あーあ、お兄ちゃん(かぜ)吹かせてるぅ」

「まあ、兄貴だしな」

 

 こんな小さいうちでも、間違いがあっては後々困る。どう間違うのかは知らないけど。

 

「あ、こんな所にいた」

 

 年少組の教諭の一人が俺達を探していたようだ。

 

「お母さんが迎えに来てるよ」

「「はーい」」

 

 

 

「二人とも大丈夫でしたか?」

 

 車にはチャイルドシートが二つ付いている。実は社長の車だけだと不便なのでもう一台買ったのだ。いわゆるコンパクトカーであるそれはミヤコの所有する車で、後部座席にはチャイルドシートが二つ付けられている。

 

 実はあじさい幼稚園まではそこそこに距離があるので徒歩や自転車での通園は少し無理があったのだ。

 この際買っておこうと社長は判断したのだけど、ミヤコ自身が動けるようになるのはそれなりに便利なわけだ。社長の車は少し大きくて使いづらいとの意見もあったし。

 

「大丈夫だよ。ケンゴもいるし、雰囲気もいいし」

「お兄ちゃんのお気にの子もいたしね」

「おま、それは言うなよ」

 

 ルビーが余計な事を言う。ミヤコが呆れたように呟いた。

 

「またですか」

「またとは聞き捨てならない。俺は誰彼粉かける人間じゃないぞ?」

「有馬さんに不知火さんに続いて一般の子にまで……将来が心配だわ……」

「本当だよ」

 

 女二人からこんなふうに言われるとか……いや、何もしてねえだろ(ハァ)




星野アクア

原作と違い三歳から幼稚園入りです。ルッキズムの権化としては整ってるあかねを見逃すなんてありえません(笑)

星野ルビー

段々と小悪魔らしいムーブをし始めてるルビー。原作と同じように運動は苦手ですが、環境が変わってるのでどうなるか。

星野アイ

活動の中心がB小町からマルチタレントの方にシフトしつつあるアイ。通信制とはいえ学業をしながらなので活動は少なめになってます。原作はこの頃から出番が多くなったらしいので、未来は少し変わってくるかもしれません。

雨宮ハルナ

陽東ではなく秀知院を目指します。ハードルは高いですが、陽東と違い芸能科ではなくでも芸能活動には寛容です。是非とも、入学式に番宣で間に合わなかったとやってほしい(笑)

社長

出費はかなりありますけど、B小町やアイの活動(ハルナ自身も含めて)によって経営は良化してます。親としては学歴は気になるもの。仕方ありません。

ミヤコ

個人所有の車は赤いコンパクトカー。車種は特に決めてません。アクアの将来に頭を痛めてますが、こんなものじゃ済まないゾ(笑)

森本ケンゴ

年長組。いちおうリーダーっぽい位置らしい。でも、ぐいぐい引っ張るタイプではなく周りから信頼されてるタイプ。姉と似たような立ち位置になりそう。

黒川あかね

年中組の物静かな少女。この頃はまだかなのことも知らないし、意識もしてないです。何かにのめり込む気質はこの頃からです。それにしてもシュトーレンマンとか……なにパンマンなのか。いや、シュトーレンだろ(笑)
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