吾郎の妹ポジになった転生者 作:とくめいです
前回の続きからです。
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読んでる皆様のおかげです。ありがとうございます。
m(_ _)m
アイを呼び出して、今回の事を説明する。一応、渡辺にも許可は取っているが周りには、公表しないでほしいと懇願されたのでそれも含めて伝えた。
「あー……そうだったんだ」
アイは不思議そうな顔をしていた。あまり人と関わるのが上手くはないコイツは、よくこんな顔をする。
「ナベちゃん、そんなに私を推してたんだ。言ってくれたらよかったのに」
「お前ら、あんまり仲良くねえからさ。浮いちまうんだと」
「それ分かるー。ガッコーでもそんな子たちいたし」
「そうだったのか?」
初めて聞いた。浮世離れした容姿をしてるからさぞ浮いてただろうとは思っていたが。
「こんな私にも、親切にしてくれた子も居たんだよ? でもね」
クラスで浮いてる女子と絡むと、そいつもハブられる。イジメのよくある構図だ。
アイもそんな洗礼を受けていたのは想像に固くない。ましてや施設に入ってからはそれも要因の一つとなっただろう。
「……すまねえ」
「? なんであやまるの?」
頭を下げる俺に、アイはきょとんとした様子だ。
「いちおう、後見人だからな。そういうの、気づかなかった。悪かった」
施設から出すためには後見人が必要だった。あれこれ手を尽くして、ようやく後見人として認められたのはアイが14の頃だった。
「いいよ、別に」
なんてこと無いように、アイは答える。こういう所は全く変わらない。
「それに今はガッコーも楽しいし」
「うまくいってるか?」
「おかげさま? かな。ハルちゃんのおかげで勉強も捗ってるんだ♪」
今年からアイは通信制の高校に通い出した。双子の将来を考えてのことだ。
俺としては芸能界でずっと稼いで貰うつもりだけど、この世界は何があるかは分からない。
学歴があれば一般的な職業にも就きやすくなるのだから、スキルアップのためにもやれるうちにやっておくほうがいいと許可したのだ。
「先生と画面越しに授業するって、発想がすごいよね。考えた人天才だわ〜」
ハルナとの勉強も継続しているところを見ると、アイは別に勉強自体は嫌いではなかったのかもしれない。学校という、同年代の狭い世界の軋轢が嫌だったのだろう。
そもそも、アイは考えなしのように見えて色々と考えている。アイドルとして、自分たちを魅せる方法の模索や演出なんかもしているのだ。
「話、戻すぞ。幸いなことに事件性も少ないし、ナベ本人だって確証も少ない。他人の空似って線で折り合いを付けてく。他の連中にも言っとくけど、お前は特に気ぃつけろよ。ぽろっと言いかねないから」
「ひどいな〜。わたし、そんな事言わないよ」
アイがB小町のメンバーに対してネガティブな意見をするのは、実際にほぼ無い。彼女にとっては、同僚以上の意味はないのかもしれない。
「ともかく取材に限らず、業界人だろうとスポンサーだろうとはぐらかすこと。嘘は得意なんだろ」
「それはもちろん」
フンス、と得意げな顔をするアイ。これなら安心かもしれない。
無敵モードとも言えるこの状態は、長らく続いたB小町の空気の悪かった時代でも変わらずに猛威を発揮してアイを最強の存在に押し上げた。
敵を敵として認識しない事で一定の距離を開け、相互に不干渉させるという難事を成し遂げたのだ。
まあ、簡単に言えば『言ってもきかない人間を相手するだけムダ』という事だが。
「あと、子供たちやハルナにも話すなよ」
「……なんで?」
「ハルナは素直そうだから、知ってたら取材とかで動揺するかもしれん。子供らは精神衛生上良くない」
ハルナは芸能界の在籍も浅く、こういった場面に対処する経験が少ない。知らなければ情報は漏れるわけもないから教えないほうがいい。
双子は言わずもがなだ。スキャンダラスなネタを教える理由はない。
だが、アイは珍しく不満げにしていた。口を尖らせ、こちらを軽く睨んでくる。
「事情があるから話せない、て言ってもいい?」
「……らしくねぇなあ。嘘つくのが得意なんだろ?」
少し
「そうだけど。出来れば、ハルちゃんや子供たちにはあんまり嘘はつきたくない……だめ?」
そう言われるとダメとは言いづらくなる。
ハルナは頭がいいから事情を察するかもしれない。自分が知らないほうがいいと理解するだろう。
子供らもある程度は理解するはずだ。特にアクアは幼児とは思えない聡明さがある。ルビーに言い聞かせるくらいはするはずだ。
「構わねえよ。ほとぼり冷めるまで燃料投下しないだけの話だ。ナベの話が広まらなきゃいい。火消しはこっちの仕事だ」
とりあえず当の新聞社への抗議と他の連中への対応、例の店への訪問とかもして事実誤認を訴えていく。
ミキ某と盗撮者がつるんでいる可能性もあるが、そのケースだとこういう報道にはならないと思う。その場合、店員の証言ではなくミキ某の証言となるはずだ。
記者だってバカじゃない。重要な証言を取れる相手が分かってるならそちらから裏取りをする筈。
それが記述されてないということは、奴らはミキ某に接触出来なかった、ないしミキ某が接触を嫌がっている、かだ。
こんな不確定な記事になったのも確証がなかったからに他ならない。
そういや、もう一つ聞かなきゃいかんことがあった。
「アイ……あいつらの父親のことなんだが。ひょっとして、このミキ某って奴じゃねえのか?」
この言葉に、アイの表情が消える。この反応だけでもビンゴだと判った。
「どうしてそう思ったの?」
「お前のファンらしい。それもとびっきりの。お前と接点のある人間なんて仕事以外はほぼ無いからな」
地下ライブ出のどマイナーな頃からのファンならそれだけこいつに執着しているかもしれない。そして、それは嫌な妄想を生み出す。
「お前まさか。そいつに襲われて出来た子供とか……」
最悪の想像が頭をよぎる。
アイはこの通り嘘が上手い。自分が性的被害を受けたということもひた隠して産むという選択をした、なんて事もあり得た。
だとしたらそいつは憎むべき敵だ。許すわけにはいかない。地の果てまでも追いかけて、滅しないといけない。邪智暴虐の輩は除かれねばならない。
内心に鬼を潜ませた俺に、アイは淡々と語る。
「そんなじゃないよ。あれは合意の上でのこと。さすがに私だって、そんな事納得するわけないもん」
「なら、なんで教えない?」
「教えたら、どうするの?」
間髪入れずに出された問いに、俺は答えを窮した。
確かに、どうするのか。
まともに考えれば、責任取って籍に入れろとか言うだろう。だが、それではアイはどうなる? アイドルとしてやっていく事は難しくなるだろう。
では、賠償でもさせるか。
それもアイを矢面に立たせる事になる。傷のついたアイドルなど、価値はなくなる。たとえたんまり儲けたとしても後ろ指はさされるだろう。
「彼はね」
ぽつりとアイが呟いた。
それから言葉が続いていく。
「わたしと同じように、彼も愛がよく分からなかったらしいの。詳しいことは聞いてないから知らないけど。そんな感じで理解し合えると思ったんだ」
静かに語るアイは、俺の知っている不敵で最強なアイドルではなかった。
「そんな彼となら、子供を作れるんじゃないかって思ったの。それで私は身体を重ねた」
でも、と言葉が途切れる。
そのあと、アイの様子が変わった。
「彼はね。結局、愛が何なのかは分からなかったらしいの」
──無表情。
完全に感情を消し去ったアイの瞳はどす黒く染まっていた。深淵のようなその瞳の奥に何があったのか。俺には分からなかった。
「私も分からなかった。身体に感じたものはあったけど、それは愛なんかじゃなくて。ただの体液でしかなかった」
生々しいことを平然とした顔で語るアイ。
俺は、少し恐ろしくなっていた。
遥かに歳下の小娘に恐怖を感じていたのだ。
「だから、それっきり。二度と会ってもいないし、私自身は会いたいとも思ってないの。これは本当」
くすり、と笑うアイ。
能面のような顔から表情がつくだけでこんなにも心安らぐものなのかと、俺は初めて知った。
「佐藤社長が二人目だよ」
「な、なにが?」
瞳を輝かせるアイ。
先ほどから一転して、雰囲気は柔らかくなった。
そして、右手でピースのサインを作り口元に当てる。小悪魔のような笑みが可愛らしい。
「彼のことを教えたの。せんせの次なんだ♪」
その時のアイは、それまでに見た笑顔とは少し違うように思えた。
そして、俺はようやく気付いた。
もう既に。
この世にいない男なのだと。
社長
ナベちゃんの事件からアイの父親まで、色々と悩ませられる社長……ガンバレ(笑)
星野アイ
愛って、なんだろうを命題にしてる。愛ってコンビニで298円で売ってるところもあるらしいけど、今だともっと高そうだな……498円くらいかな? ひょっとして一番くじみたいなものだったりして。
双子の父親
彼も愛の求道者。似た者同士だけど共感しなかった……同担拒否みたいなもの? 違うか(笑)