吾郎の妹ポジになった転生者   作:とくめいです

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なんだか纏まらないと思う時ありますか? 今のわたしです……今回は知らん人視点となってます。


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 春うららかな新学期。とはいえ純院(幼等部から通っている生え抜きのこと)としては些かも高揚は感じ得ない。ほとんどが見知った、ないし友人たちばかりの環境である。

 

 進級することで何が変わるかといえば、制服が中等部の白い基調から黒いものに変わるだけのこと。これに関しては正直有り難い。白って汚れ目立つし、カレーうどんとか最悪だったからな。

 

「よう、ご無沙汰だな」

「日本語はきちんと使え。二週間程度でご無沙汰とは言わん」

 

 古くからの悪友がそう声をかけてくると、いつものように少し悪ぶった口調で返す。こいつとの付き合いも長いのだが、ここを出てからも続く付き合いと思えば体裁をつくろうのもバカらしい。

 

 ここ秀知院学園は国内のそれなりの門地の子供が多く通っている。政治家から官僚、会社の社長や役員、医者や法曹界の人間などなど、数え上げるのもアホな所業と言える。

 

 この悪友も財務官僚の息子だし、俺自身は警察庁情報通信局長の子だ。日本の将来を背負って立つ、とは言い過ぎだがそれなりの影響力を与える人間たち。

 そんな連中ばかりなのだが、今の段階ではただの子供である。お互いにバカをやって楽しい学生生活を送れれば言うことは特に無い。

 

「そういや新入生の挨拶、九条がやるらしいぜ」

「……まあ、そうだろうな」

 

 九条一華は、俺の人生に汚点を付けた数少ない人間のうちの一人だ。それまでは学年首席を誇っていた俺を、編入後の期末考査であっさりと抜かしたのだ。

 

 あいつは気が強過ぎる。言い出したらきかないし、自分の考えは滅多なことでは曲げない。鎮西の人間はこれだからタチが悪い……おっと、口が滑った(笑)

 

 ちなみに九条も御多分に漏れず社長令嬢という肩書を持つ。天下の七聖堂グループといえば、化粧品業界では知らぬものはいないだろう。なんで純院でなかったのかは知らないが、家庭の事情なんだろう。

 

 ともかく、この世代で言えば間違いなく頂点に位置している。新入生代表となるのは半ば当然と言えた。

 

「だけどな。外部からとんでもないのが来たって話だぞ」

「外部生か……」

 

 ここ秀知院学園は初等部から高等部までほぼエスカレーターだ。だが、外部生というのも居たりする。先程の九条も外部生と言える。ここに通うべき家柄の人間だったからそうは扱われてないが。

 

 この外部生というのは、大概が長続きしないという通説がある、らしい。ここは偏差値も高く勉学についていけなくなることも多いのだろうが……それよりも学生たちとの折り合いが付かなくて辞めるケースが多い。

 

 考えても見てほしい。

 一般の家庭で暮らしていた子供が、日頃からお茶会とかしてる奴らと反りが合うかどうか。ダンスパーティーでソシアルダンスとかやらかしてる連中ばかりなのだ。

 

 そういった格差に打ち拉がれて、辞めていく外部生が殆ど。九条が外部生扱いされてないのも、そういう事に通じていて家庭の資金力も問題がないからなのだ。本当に例外なのである。

 

「このクラスに居るらしい」

「マジか」

 

 ざっとクラスを見回すと、空席が一つだけある。名簿は憶えていないから名前は分からない。

 

「雨宮 華月って、書いてあったぞ」

 

 コイツ、空席に貼ってある付箋を見てやがった。抜け目ない。名前の漢字からして女子だよな。

 

「しかし居ないじゃないか。そろそろ講堂で入学式だ」

「やっぱ、プレッシャーに負けたのかね」

「外部生なら、あり得るな」

 

 そんな真似をするなら最初から受けねば良いのに。数少ない外部枠が無駄になったわけだ。まあ、誰が来ても似たようなものかも知れないが。

 

 

 

 入学式も終わり、担任との顔合わせのためのホームルームが終われば今日の所は開放となる。教科書、参考書の類は外部生のみ購買で買わないといけないのだが、内部進学の連中は既に購入済みである。中等部でも高等部へ入ることは許可されてるからだ。

 

「申し訳ありません、遅れてしまいました」

 

 ガラリ

 

 教室の扉を開けて入ってきたのは。

 

「え……」

「ハル……?」

「Starry the moonの、ハルだ……」

 

 ぽそりぽそりと声が響く。

 どの声も理解できて無さそうな感じだが、それも仕方がない。

 

 B小町のセンター、アイとユニットを組んだ新進気鋭、経歴不詳のアイドル、ハル。目映い恒星のような輝きを放つアイと比べると、その印象はいくらか薄いと言えるだろう。

 

 だが、一個人としてみると異彩を放っている事がよく分かる。まずは容姿だが、幼い印象ではある。

 でも目鼻立ちは整っていて成熟途中の果実と見るならそれは将来的に悲観するものではない。

 

 吸い込まれるような瞳には、アイとは違った輝きを宿している。アイが見るものを惹きつけるというのなら、ハルのそれは吸い込まれるというのが正しい。見る者の視線を逃さないという点では同じではあるが。

 

 亜麻色の髪は金糸のように緩やかに毛先の方でウェーブするものの、基本的には真っ直ぐに流れる。

 右だけ結んでいるのはアイとのユニットの時だけなのか、動画で見る時は大概そのままだ。男というのは長い髪に目を奪われがちになるが、こんなものを見せられたらそうなるのは当たり前だ。

 

 肌も極めが細かく、血色もいい。鼻は小さく、唇もやや薄めであるがソコが儚げな印象を醸し出す。

 

 スリーサイズは、……ここはアイとは比べるべくもない。

 が、敢えて言えば無い方がこれは正解だ。ユニットとして考えるなら、足りないものを補うのが正しいのだ。薄い胸とか小さなおしりとか、とてもいいじゃないか。

 

 完全無敵なアイと比べれば身体的なスペックが足りないのはやむを得ない。しかし彼女には別の武器がある。

 

 それは歌声だ。よく通る透明感のある声は、アイの強めの声を抜けて飛び込んでくる。しかも音を外す事はほぼ無いそうだ。

 

 初めはB小町に参入ということを考えていたらしいが、そのスペックの高さから見送られたというのだから首肯せざるを得ない。

 

 言ってはアレだがB小町はアイという際立つ存在が一人居るから成立しているアイドルグループであり、それが二人もいたりすれば収まりが悪くなる。他のメンバーとの差が浮き彫りになるからだ。

 

 惜しむらくは活動自体は縮小していた事だ。これも受験ということであったが、SNSでは活動再開との吉報があった。今朝のテレビ番組には番宣で顔出しするとの情報もあり、急いで録画設定をしてきたのだ……て、あれ? それが原因なのか? ということは、ここにいるハルは、同級生になるって事かっ!

 

「ヒャッホーウッ!!」

「どうした急に」

「ぴっ」

 

 いきなり上げた歓喜の声に、驚く小さな悲鳴、かわいい……

 

 

 

 代わり映えのない日常よ、さらば。

 

 同級生にアイドルがいたというラノベ世界よ、こんにちは。

 

 ──高校生になるのも、捨てたもんじゃない。

 

 

 

 

 なお。すぐ後に九条と、やはり知らない女子(こっちも可愛い)がやってきて購買へと連れて行ってしまった……お近づきの機会が失われてしまったが、小心者なオレにそんな真似は出来なかったと後で気が付いた。無念。




知らん人

心のなかで解説とかしてくれるありがたいモブ。たぶんこの世代では上澄みの一人。それにしてもこの世界、アイドルオタク多いな(笑)

知らん人の友人

彼は悪友と言ってるけど、どうも彼自身が悪友ポジのように見える。情報提供をしてくれるいいヤツ。

雨宮ハルナ

不知火ころものアレをやりたかっただけでした。
この導入とか考えてるの、すごく面倒でした(笑)

九条一華

彼女自身も主人公クラスに設定が盛られてますね。ちなみに一緒にいたのは森本やすみ嬢です。合格おめでとう(笑)
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