未来を掴むヒーローアカデミア   作:和賀苗知暉

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二つの未来
未来との出会い


 俺は今、雄英高校の校舎入り口に立っている。

 

 ここがあの雄英高校か、なんて感激することはない。

 なぜならもうそれは済んだからだ。

 

 それは俺が先生だからでも在校生だからでもない。俺は受験生だ。

 俺は受験会場に荷物を置いて、わざわざ寒い外に出たんだ。

 

 こんなことをする受験生は他にいないだろうな。それも受験説明の1時間半前に。

 こんな時間だと、当然駅で受験生っぽい人は見なかった。

 もうここに30分ほど立ち続けているが、受験生とは誰とも会っていない。

 だがようやく、受験生第二号が正門を通って来た。ガタイの良い眼鏡をかけた男、メガネ君だな。

 

 そして彼が俺の所にやってきて何かを話しかけてくる──。

 

 うん、知ってた。メガネ君が、というとこまでは知らなかったが、ここに立っていて、まだ人が少ない時間帯に話しかけられることはもう視ていたから。

 

「君、僕は私立聡明中の飯田天哉だ。君も受験生だよな。案内などは無かったが、受験生はここで待機する、ということだろうか。いや、そもそも神聖な受験会場にトランプなんて持ち込んで! 君は何を考えているんだ!!」

 

 はぁー。そういう事ね。はいはいはい。

 どうも怒られたのに関係なく外に立てるし、受験も問題なくできるからなんだろうかと思ったら、怒るのは先生じゃなくて受験生のメガネ君だったのね。

 にしてもすごい手の動きだな。ロボットでもそんな動きしないぞ。

 

 んま、この状況で悪いのは俺だ。

 

「まず、俺は広島市立東中の視渡で、同じ受験生です。校舎の中に受験番号ごとに筆記試験の会場が書かれてるからそれ見て会場に入って大丈夫だよ」

 

「そうか! ありがとう! だが、これとトランプの話は別だ。今日は日本最高峰たる雄英高校ヒーロー科の受験日なんだぞ!!」

 

「悪い悪い。俺緊張しちゃってさ。外の風にあたりたくて。トランプは触りなれてるからシャッフルしてれば緊張ほぐれるかなって。気ぃ―散らさせてごめんね」

 

「そんな事情があったのか。すまない。僕も緊張で気が立っていたようだ。お互い最善を尽くそう」

 

 そう言って飯田君は校舎に体を向けようとする。

 ふーむ。見た感じ、彼はほぼ確で合格するみたいだからな。迷惑料代わりにアドバイスの一つぐらいするか。

 

「そうだな。お互いに。あと迷惑料ついでに一つアドバイスさせてくれ」

 

「迷惑料だなんて、そこまで気にしないでくれ。だがアドバイスとはどういうことだ? 僕たちは敵とまではいかないが、限られた席を奪い合うライバルにあたるんだぞ?」

 

「ああ、そうだな。確かに飯田君の言う通りなんだが──」

 

 俺は飯田君が話しかけるまでさんざんシャッフルしたトランプの中から一枚取り出して、飯田君に見せるように掲げる。

 

「今日はヒーロー科の試験だ。俺たちはまだヒーローじゃない。だけど、自分がヒーローにふさわしい存在であるのならば、ヒーローの心は今からでも持てるんじゃないかって、俺は思うんだ」

 

 ヒーローの心。

 

 ほんと、どの口が言ってんだって話だ。

 きっと俺は、受験生の中で誰よりもヒーローの心を持ってない。

 まあ目指してないからな。嘘や適当言ったわけじゃない。

 これは俺が、ヒーローにふさわしくないっていう自己評価を持ってるだけだ。

 

「ヒーローの心か。確かに君の言う通りだ。日本最高峰の雄英高校ヒーロー科を目指しているんだ。それにふさわしい心構えを持つのは当然だが、さらにその先、ヒーローとしての心構えを持つところまでは考えていなかった。ありがとう。君ともう一度ヒーロー科の生徒として会えることを願っている」

 

 飯田君はそう言って校舎の中に入っていった。

 頑張れよ。もっとも、君は9割がた合格するようだからな。

 俺の個性がそう言ってる。

 

 そう、俺の個性は『未来視』だ。とんでもない強個性。

 弱点といえばさっきみたく、見たことのない人間の未来が見えないことと、あくまで視る個性だから音や匂いは分かんないぐらいだな。

 あと子供の時は頭痛と鼻血が止まらなかったことぐらいで、今となっちゃどっちも治ってる。

 見える未来だが、時間的に近い未来はほとんどはっきり見える。時間的に遠い先の未来でも、確率が高いものは見える。

 

 そう。確率の高い未来なら時間的に遠い先の未来まで見えるんだ。

 

 それで視えた未来が何かって言うと、社会が崩壊する未来だ。

 

 ほんと勘弁してほしい。

 社会なんてぶっ壊してどうすんだよ。

 美味しいものは食べられなくなるし、漫画やらも読めなくなる。夏はクソ暑いし冬は寒いのにエアコンは当然使えない。

 今の社会が一番とまでは言わないよ? そりゃ貧困とかいろいろあるし。

 だけどマジで。社会ぶっ壊してどうすんのよ。そこにメリットあるか? ないだろ。

 

 と、俺は思うわけだが、どうにもこの未来でほぼ確定らしい。

 何てったって、これまで会った人間のほとんどが崩壊した社会を生きる未来だったからな。

 例外はそうなるより前に死ぬ年寄りぐらいだ。

 

 俺なりに努力したんだぜ? 

 親に協力してもらってとにかくたくさんの人の未来を見に、渋谷に道頓堀と人が多い場所はだいたい行った。

 だけどみんな同じ暗い未来だった。

 俺が一人でいろいろしたところで、未来が変わるような小さな変化もなかった。

 

 もう未来は詰んでるんだ。

 それにどうやら来年ぐらいがタイムリミットらしいから。

 俺は偏差値の低いヤンキー校に行って、世紀末社会になってから協力できそうなやつと友達になる。

 俺はもうその未来を見越して、体を鍛えてきたし、知識も蓄えてきた。

 

 もう俺は未来を諦めたんだ。

 なのに……。

 俺は今日ここに来ちまった。

 明るい未来に未練たらたらで、もしかしたら誰か未来にでっかい波紋を作れるような奴がいるんじゃないかって。俺は思っちゃったんだ。

 だけど、結局これは無駄足だったみたいだ。

 

 今の時間は8時半。もうちょいで筆記が始まる。人の波も収まって来た。

 受かってもヒーロー科なんて早死にするだけだから行く気はないけど、親も友達も応援してくれてるから、受かるだけ受かろう。

 傲慢な話だが、俺の基礎スペックと未来視の個性があれば大抵の事はできる。

 

 

 さて、これは多分電車の時間だろうな。ちょっとした一団が来た。

 この集団だけ確認してから中に入ろう。まあ同じことだろうけどな。

 

 って、オイオイ凄いな。イガグリ君。

 

 最初に会った飯田君でも合格率8割ってとこだったのに、イガグリ君は落ちてる未来が見えない。

 この受験、結果が不確定でかつ、その後の人生に大きく影響を与えるから、入学後から社会が崩壊するまでの未来はそうそう見えなかったのに、彼に関しちゃ入学後もはっきり見えそうだ。

 すっげー顔つき悪いけど、相当努力してきたんだろうな。

 

 んで、他のやつらはまあ普通の未来で……。

 あ、緑君こけ……。

 

 ……マジかよ。

 

 ……あの緑君。崩壊する社会の未来もある。それは驚くことじゃない。

 

 彼だけは明るい未来が視える。

 

 

続く、、、




始めまして。和賀苗知暉です。

この度初めて小説を投稿させていただきました。
たくさんの作品の中から「未来を掴むヒーローアカデミア」を選んで、最後まで読んでいただきありがとうございました。

これまではずっと読み専で、ハーメルンとの付き合いは7年ほどになります。

執筆自体はラノベの新人賞狙いで書いたことがありますが、二次創作も投稿も初めてです。
何か不備などございましたら、教えて頂けると幸いです。

最後になりましたが、今後も投稿を続けていく所存です。
今後とも「未来を掴むヒーローアカデミア」をよろしくお願いします。

和賀苗知暉
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